京都国際舞台芸術祭、全貌が明らかに

2015.11.14
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舞台

トリシャ・ブラウン・ダンスカンパニー『Wall Walk(from Set and Reset, 1983) 』 レンバッハハウス(ミュンヘン)、ダン・フレヴィンギャラリー(2014年) © Städtische Galerie im Lenbachhaus und Kunstbau München

現代舞台芸術のこれまで/これからを探る、実験的&刺激的なプログラム。

2016年1月にリニューアルオープンする[ロームシアター京都]にメイン会場を移して開催される、京都発の演劇フェスティバル「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭2016  SPRING」(通称KEX)。11月9日に各公式プログラムの正式な演目、会場などの詳細が発表された。

今年のKEXは「現代舞台芸術の源流をたどる試み」「次代を担うアーティストたちのコラボレーションによる新作群」「継続的な国際交流プロジェクト」「デザインと建築の視点によるリサーチプロジェクト」の4つの軸で構成。先鋭的な表現が数多く生まれた60~70年代から活躍するアーティスト、それを受けて演劇やダンスの枠を超えた表現を試みる世代のコラボ、海外アーティストのプロジェクトを継続的にフォローしていくことを視野に入れた作品群に加え、今回はデザイン&建築のプロジェクトもプログラムに加わっている。その4つの軸ごとに、各公演の内容を簡単に紹介していこう。

松本雄吉演出『石のような水』(2013年) photo: Toshihiro Shimizu

現代舞台芸術の源流をたどる試み」では、トリシャ・ブラウン・ダンスカンパニー、大駱駝艦、松本雄吉(維新派)、ボリス・シャルマッツ/ミュゼ・ドゥ・ラ・ダンスが登場。1970年代のNYを拠点に、コンテンポラリーダンスシーンを牽引してきたトリシャ・ブラウンは、その実績に反比例して、意外と日本での公演の機会が少なかったアーティストの一人。今回はブラウンの代表的な作品をオムニバス形式で再構成した『Trisha Brown: In Plain Site』(3/19~21/日本初演)を、美術館のロビーで上演する。

大駱駝艦『ムシノホシ』(2014年) photo: Hiroyuki Kawashima

麿赤兒率いる舞踏集団・大駱駝鑑は、デトロイト・テクノの巨匠ジェフ・ミルズとのコラボレーションも話題となった、昆虫をテーマにした2014年の作品『ムシノホシ』(3/16・17)を再演する。大駱駝鑑が京都で本公演を行うのは、何と13年ぶりのことだ。そして松本雄吉は、維新派とは違う観点から現代都市を見つめるユニークな作風で注目される、林慎一郎(極東退屈道場)の書き下ろし作品を演出した『PORTAL』(3/12・13)を上演。KEXの前後には国内3都市で上演されるが、京都公演のみヒップホップユニット「降神」の志人/sibittが主演を務めるのに注目だ(その他の都市は山中崇)。

ボリス・シャルマッツ『Manger』(2015年) photo: Beniamin Boar

ボリス・シャルマッツは96年から活動を始めた若い振付家だが、トリシャ・ブラウンなどの先駆者を強く意識した活動をしているという点で、この枠内にラインアップされた。今回は2014年ドイツ初演の『喰う(manger)』(3/26・27/日本初演)を上演。通常のダンス表現ではあまり使われない器官「口」にスポットを当て、食べる/歌う/噛みつくなどの動きを、観客もダンサーと同じ空間で体感するという作品だ。

チェルフィッチュ『地面と床』(2013年) photo: Misako Shimizu

地点『光のない。』(2014年) photo: Takuya Matsumi

次代を担うアーティストたちのコラボレーションによる新作」からは、チェルフィッチュ、地点、足立智美×contact Gonzoが出演。チェルフィッチュは、光と音を効果的に用いた劇場的なインスタレーション作品で注目される現代美術家・久門剛史が作った空間で「死者に対する生者の羨望」を描く『部屋に流れる時間の旅』(3/17~21/世界初演)を上演。地点は前回のKEX参加作品『光のない。』に続いて、ノーベル賞作家のエルフリーデ・イェリネク脚本&三輪眞弘音楽の三位一体で、スポーツを政治的・社会的観点から見つめ直す『スポーツ劇』(3/5・6)を上演する。

足立智美

contact Gonzo『xapaxnannan:私たちの未来のスポーツ』(2014年) photo: Yoshikazu Inoue

一方前回のKEXでは、サッカースタジアムを舞台にスポーツ的なパフォーマンスに挑んだcontact Gonzoは、現代音楽家の足立智美と組んだ『てすらんばしり』(3/26・27/世界初演)を上演。足立がこの公演用に作る音楽は、一般の子どもたち対象のワークショップで生まれたサウンドを用いるとのことで、子ども参加型パフォーマンスとしても楽しめる趣向となっている。

マヌエラ・インファンテ / テアトロ・デ・チレ『ZOO』(2014年) © Valentino Zaldívar

継続的な国際交流プロジェクト」からは、チョイ・カファイ、ダヴィデ・ヴォンパク、マヌエラ・インファンテ / テアトロ・デ・チレが登場。この中でも、今回のKEXの目玉の一つと言えるのが、チリ演劇界のホープとして注目され、これが日本初登場となるマヌエラ・インファンテだ。今回は「人間を展示する」という主題で大きな衝撃を与えた問題作『動物園』(3/25~27/日本初演)を上演。絶滅したと思われた原住民の生き残りを発見したという架空の事件を通して、チリの虐げられた歴史、知識や文化の差異などの問題を考えさせる。

チョイ・カファイ『ソフトマシーン:Rianto』(2015年) photo: Choy Ka Fai

またKEXには4年ぶりの登場となるシンガポール人アーティストのチョイ・カファイは、アジアのコンテンポラリーダンサーたちの取材映像&本人たちの生ダンスを通して、アジアのダンスや身体を探求するプロジェクト『ソフトマシーン:スルジット&リアント』(3/11~13/日本初演)を上演(3/5~13に映像展示もあり)。そして2011年には京都に半年滞在するなど、たびたび日本を訪れてはリサーチを重ねてきたフランスのダンサー&振付家のダヴィデ・ヴォンパクは、カニバリズムをテーマにしたパフォーマンス『渇望(URGE)』(3/5~7/日本初演)を上演する。

ダヴィデ・ヴォンパク『渇望』 © Marc Coudrais

最後の「デザインと建築の視点によるリサーチプロジェクト」は、アートディレクターや建築家によるアートユニット「resarchlight」の『河童よ、ふたたび』(3/5~27)を開催。井戸端会議や河童のような妖怪を空想する力など、都市のインフラ整備によって失われてしまったものを今一度取り戻すための実験を、ロームシアターの中庭を会場にして長期的に繰り広げる。会期中は、この空間に設置するインフラに模したオブジェを使って、様々なイベントを行うそうなので、公演の合間にこまめにチェックしておきたい。

この他にも、京都の小劇場[アトリエ劇研]ディレクターのあごうさとしと、[丸亀市猪熊弦一郎現代美術館]学芸員の国枝かつらという、次世代を担う専門家がおすすめの新鋭アーティストの作品を紹介するショーケース「Forecast」(3/20・21)、国内外で活躍する劇場&フェスティバルのディレクターたちによるシンポジウム(3/20)もあり。またKEX期間中には「フリンジ企画」として、44種類もの演劇・ダンス公演や展示企画が京都市内各地で開催される予定なので、公式プログラムと上手く組み合わせて回ってみてほしい。

「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭2016  SPRING」公式プログラムの全公演のは12月8日(火)から販売。お得なフリーパスやセット券もあり(データ欄参照)。

イベント情報
「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭2016  SPRING」​
 
■日時:2016年3月5日(土)~27日(日)
■会場:ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、京都国立近代美術館、京都府立府民ホール“アルティ”(公演によって異なる)
 
■料金:公演によって異なるが、以下の特別あり。
 全公演フリーパス=一般23,000円 学生13,000円
 3演目券=一般7,500円 学生6,000円
 『てすらんばしり』おやこ(一般1名+高校生以下1名)=3,500円
 ショーケース「Forecast」セット券=4,000円
 
■公式サイト:http://kyoto-ex.jp/