初来日の中国国立バレエ団、5/12『白鳥の湖』公演と今後の来日に期待~馮英(フォン・イン)芸術監督にインタビュー

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2019.5.11
馮英(フォン・イン)芸術監督

馮英(フォン・イン)芸術監督

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日本に初来日中の中国国立バレエ団が2019年5月10日、『赤いランタン』のゲネプロを公開。その際、馮英(フォン・イン)芸術監督が会見を行い、5月12日に上演される『白鳥の湖』の見どころについて語った。

■バレエ団設立60周年に上演するマカロワ版『白鳥の湖』

中国国立バレエ団は今年設立60周年を迎える、同国最高峰のバレエ団。「その節目の年に初来日することができ、非常に光栄だ」とフォン芸術監督。今回の来日公演の演目『赤いランタン』は映画監督の張芸謀(チャン・イーモウ)が自身の映画『紅夢』をバレエ化した作品で、コンテンポラリーバレエと中国文化の融合とも言える傑作。一方『白鳥の湖』はバレエ団が設立時から取り組んだ最初の古典バレエで、「私どものバレエ団を象徴するにふさわしい2作を選んだ」という。

12日に上演される『白鳥の湖』は、『ラ・バヤデール』の改訂振付でおなじみのナタリア・マカロワが同じく改訂振付したヴァージョンで、同バレエ団では2007年からこのプロダクションを取り入れている。マカロワ版の特徴についてフォン監督は「マカロワ氏は“白鳥”の名手。キーロフバレエ(現マリインスキーバレエ)時代や亡命後のアメリカン・バレエ・シアター、英国ロイヤルバレエなどで様々な経験を積んだ彼女の改訂版は登場人物の個性が鮮明で、物語の要素が凝縮して抽出され、長すぎず複雑すぎず簡潔。見る側にとってとてもわかりやすく楽しめる」。

馮英(フォン・イン)芸術監督

馮英(フォン・イン)芸術監督

■「目の肥えた日本のバレエファンに、ぜひ見ていただきたい」

『白鳥の湖』の主演には、現在のバレエ団でもトップクラスのダンサーを配している。

オデット/オディールを踊る曹舒慈(ツァオ・シューツ)は2010年にジャクソン国際バレエコンクールで1位を獲得し、中国国内では映画出演もしている、バレエ団で現在最も勢いのあるダンサーで、「若いながらも非常に繊細な表現力が魅力」とフォン監督。

ジークフリート王子役の孫瑞辰(スン・ルイチェン)は2008年に同バレエ団に入団後、めきめきと頭角を現し、現在ではバレエ団の持つレパートリーのほとんどで主演を務めている「非常に存在感のある、優秀なアーティストだ」。

またフォン監督は今回の公演では「日本のお客様は世界中のバレエをご覧になって非常に目が肥えている。そうしたお客様に敬意を表し、主演以外にも私たちがお見せし得る最高のダンサー達を起用した」と語る。「大きな白鳥」に登場する邱芸庭(チウ・ユンティン)は2018年ジャクソン国際コンクール1位の実力者。徐琰(シュー・イエン)など「彼女らプリンシパルダンサーにも注目してほしい。バレエに詳しい日本のお客様の目に私たちのバレエがどう映るのか、非常に楽しみだ」とも。

■幅広いレパートリーを踊るダンサー達。その技術と表現力に期待

中国国立バレエ団は『白鳥の湖』『ジゼル』といった古典作品のほか、クランコ振付『オネーギン』やノイマイヤー振付『人魚姫』など、世界トップクラスの振付家による作品をレパートリーとしている。日本初来日でその真の姿がどのようなものなのか未知数ではあるが、クランコやノイマイヤーの作品を上演する実力は有していると見ていい。

このほどゲネプロに続いて上演された『赤いランタン』も、その身体能力の高さがうかがえるのはもとより、登場人物一人ひとりの感情表現が非常に豊か。想いがまっすぐ、ダイレクトに胸に響く力があり、何よりも中国ならではの新たなバレエ芸術を生み出そうとする前向きな意欲が、ひしひしと感じられた。

『赤いランタン』

『赤いランタン』

『赤いランタン』は1日のみの上演だったが、「チャン・イーモウの演出は、映画監督ならではの視点でこの作品をより一層ユニークで、物語性の強いものにした」とフォン芸術監督が語る通り、スクリーンに映るシルエットを駆使した主人公の初夜のシーン、京劇観賞の場面での主人公と恋人との心のやり取りや、視覚と聴覚にも訴えるラストシーンなど様々な手法が取り入れられていて、それが心に強烈な印象を残す。音楽も京劇歌手や中国の伝統楽器もふんだんに取り入れ、麻雀のシーンには算盤をオーケストラピットに持ち込むなど、斬新なアイデアを駆使した、まさに中国文化を結実した舞台となっていた。こうした表現力を持つバレエ団がどのような古典を踊るのか、非常に興味をそそられる。マカロワ版「白鳥」という、あまり見る機会がないプロダクションにも注目だ。

「この公演が日中友好の懸け橋となれば」とフォン芸術監督。これを機に、今後の来日公演にも期待したい。

『赤いランタン』

『赤いランタン』

取材・写真:西原朋未

公演情報

中国国立バレエ団 2019年日本公演
 
【日時】2019年5月10日(金)『赤いランタン 〜紅夢〜(全2幕)』・5月12日(日)『白鳥の湖(全3幕)』
【会場】東京文化会館 大ホール
【出演】中国国立バレエ団
【指揮】張藝(チャン・イー)
【演奏】東京フィルハーモニー交響楽団
 
【演目】
『赤いランタン 〜紅夢〜(全2幕)』(公演終了)
​■演出:張芸謀(チャン・イーモウ)
​■振付:王新鵬(ワン・シンポン)、王媛媛(ワン・エンエン)
​■音楽:陳其鋼(チェン・チーガン)
​■舞台美術:曽力(ジェン・リー) 
■公演日時:2019年5月10日(金)19:00
 
『白鳥の湖(全3幕)』
■振付:ナタリア・マカロワ
■音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
■公演日時:2019年5月12日(日)15:00
 
■公式サイト:http://www.chinaballet.jp/
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