【全6回連載】“傷だらけの天才バッター”西岡剛が今だから話せる『過去・現在・そして僕の未来』《第3回》「あらためて分かったイチローのすごさ」

2019.5.15
インタビュー
スポーツ

「小4の時、球場でイチローさんが外野守備でストレッチしていた姿は、今でも忘れられません」。アメリカに行ってもそのツラく、地味な努力を怠らないスーパースターの姿勢から、西岡はあらためて多くのものを学んだ

 

イチローさんは比べることすら失礼なほど『ジャンル』が違う


―西岡さんの今の姿勢や話は栃木GBの若手にかなり影響が出ているのでは?
「それはチームの若い子に聞いてください(笑)。でも、できる限り伝えるようにはしています。悲しいかな、人間って失敗しないと気がつかない生き物なんですよ。僕だって20代のころ、上の方から『もっとこうした方が良い』と言われましたが、結果が出てたら『何言ってんだ、この人』とか『(過去に)どんだけの怪我したことあるん?』『どんだけ成績残してきたん?』というマインドになっていましたから」

―才能ゆえのプライドでしょうか?
「はい。でも今は、僕は自分より1年でも長く生きている方って、何らかの経験をしているわけだと思っているんですよ。いや、自分自身が経験していなくても、他人を見て感じ取った人もいるだろうし、その感じ取っていたことを僕に伝えてくれていたのかもしれないし。そこは自分なりに年を取った証拠かもしれませんね。でも、僕は(良いことも悪いことも)経験というのを人一倍持っているので、僕自身としても伝え方は変わってくると思っています」

―才能に経験が加わるとイチローさんのようなスーパースターになれる?
「才能ある人間っていうのは努力を怠りますよね。でも、才能っていうのはそもそも親や先祖からもらったもの、つまり持って生まれたものです。でも、その才能をすごく持っている人より『少し欠けている人』と言ったら失礼になるかもしれないですが、こういう人って才能のある人間に勝とうと努力をするわけなんですよ。で、自分は若いうちにドーン!と行きましたけれども、30歳過ぎてくらいから、(自分を追い抜こうと努力してきた人が)上になっていくわけなんですよ。誰とは言いませんけれども、僕はそれにも気づかされたんで。でも、才能を持った人間が、(才能のある人に追い抜こうと努力してきた人と同じ)努力を持ち合わせた時って、誰も追いつけないですよ。それが僕はイチローさんだと思っているんです。僕はもう、人間として『ジャンルが違う』と思っているんで(笑)。比べる人でもないと思っているくらいですよね(苦笑)」

―イチローさんはカラダが堅いと聞いたことがあります
「はい、もちろん僕も知っています。そこを彼は若いうちに気づけてるじゃないですか。僕がちょうど小学校4年生の時に、イチローさんがオリックスで200本打たれたんですけれども、外野守備の時にずっとストレッチしているっていうのは、テレビを観ていた僕の脳裏にすごく残っているんですよ。それを今でもやられているじゃないですか。すごいですよ。本当に小さいことの積み重ねがつながっていく…。でも、その『小さくて』『簡単なこと』がメチャクチャしんどいんですよ。『今日は本当にカラダ疲れてしんどいなぁ』って時に、座りたいんですよ。そのすごくツライ時にカラダをちょっとでも動かすっていうのは、なかなかできないことなんです」

―でも、身に付いてくるとしなかったら気持ち悪いのでは?
「僕も今は頑張ってやるように努力しています。で、続けていくと(そのしんどい小さな努力が)日課になっていくんですよ。もちろん、それやらないと気持ち悪くなるけれども、それよりやらずにケガした時にすごく後悔すると思うんです。20代の自分を振り返ると後悔たくさんしてるんで。だから4年前から(まわりの人に)言っているんですけれども、(野球を)辞める時には何らかしら必ず後悔はあると。でも(このカラダづくりに)気づいたからには、辞める時に後悔の数を減らせるように努力をしていく生き方をしたいと思っているんです」

―自分が納得するとか、折り合いを付けたいという感じですか?
「いや、そこまでは多分、持って行けないかもしれません。でも、必ず後悔すると思うんで。その中で後悔の数を少しでも、一個でも減らすっていうのが僕が今から生きていく中での目標なんです」

―今のNPBのトップ選手でも気づいていない人は多い?
「ただNPBにいてる時に、僕自身がそこまで真剣にできなかったのは事実です。だから偉そうには言えないですよね。仮に今、伝えられるとするのであれば、(自分が)こういう失敗をしてきてしまったから、少しずつでもいいから、こういうことを続けていけば、将来幸せになれるよと」

―そんなにご自身を卑下する必要はないのでは?
「いやいや、だってWBC、オリンピックに出て、34歳でクビを切られるってあり得ます?野球人としてはやっぱり、『今年引退します』と言って華やかな引退試合をしてもらって辞めていくのが理想じゃないですか。それなりの実績を残している選手であればあるほど、皆そういう終わり方をしていくわけじゃないですか。でも僕自身、それができなかったってことは、その20代の時にそういう積み重ねができなかった自分の弱さのせいなんですよ」
 



「イチローは別格」「イチローはジャンルが違う」。笑いながらそう話した西岡。天才がゆえにその上を歩く天才を認める。しかし、その自分のずっと空の上にいる天才は、自分がやってこなかった努力を怠らなった。そして、それがゆえに、その領域に達していたのをあらためて思い知らされた。でも、知ったからには…。ケガに泣いた人生を送ってきた西岡は、そのケガで入院した時にも気づかされたことがあった。入院中、引退を覚悟した西岡の気持ちを覆したものとは…(第4回に続く、敬称略)

 

取材・文:青木秀道(SPICEスポーツ記者)
 

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2019.5.26(日)試合開始:13:00~
小山運動公園野球場 (栃木県)

■栃木ゴールデンブレーブス×新潟アルビレックスBC
2019.5.31(金)試合開始:13:00~
小山運動公園野球場 (栃木県)

■栃木ゴールデンブレーブス×埼玉武蔵ヒートベアーズ
2019.6.7(金)試合開始:18:00~
小山運動公園野球場 (栃木県)

■栃木ゴールデンブレーブス×埼玉武蔵ヒートベアーズ
2019.6.8(土)試合開始:13:00~
小山運動公園野球場 (栃木県)

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2019.6.9(日)試合開始:13:00~
小山運動公園野球場 (栃木県)

■栃木ゴールデンブレーブス×茨城アストロプラネッツ
2019.6.15(土)試合開始:13:00~
小山運動公園野球場 (栃木県)

■栃木ゴールデンブレーブス×読売ジャイアンツ(三軍)
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栃木市総合運動公園野球場 (栃木県)

■栃木ゴールデンブレーブス×読売ジャイアンツ(三軍)
2019.7.28(日)試合開始:13:00~
栃木市総合運動公園野球場 (栃木県)

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