シンセ番長・齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム第四十八沼(だいよんじゅうななしょう) 『おうちキャンプ!沼』

2019.5.23
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「welcome to THE沼!」

沼。

皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?

私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく、息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。

一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、その世界にどっぷりと溺れること

という言葉で比喩される。

底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。

これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。

毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。

第四十八沼(だいよんじゅうななしょう) 『おうちでキャンプ!沼』

今年も始まった我が家恒例の庭キャンプ。

すっかり近所でもテントのある庭として認識されていて、またテントを設営したときには通学路でうちの前を通る子ども達に

「あ、またテントが始まった!」

と言われてしまったほどだ。

キャンプの定義ってなんだ?家でやってもキャンプなのか?

昨年、老朽化した実家を建て直そうと我々は東京から私の生まれた千葉県へ引っ越してきた。

引っ越してほどなく、何気なく立ち寄ったアウトドアーショップで一つのテントと運命の出会をしてしまった。

もともとテントは持っていたのだが、家族構成的にソレはすでに容量に収まるサイズではなかったのだ。

早速その新しいテントを購入し、庭に設営してみた。

 

鉄で出来た頑丈なペグとペグハンマーで数十本を地面に打ち込んだ時思った。

「コレ、超たいへん」

そして同時にこうも思った。

「撤収する気力が起きない」

 

妻や子供達は2〜3日したら撤収するものだと思っていたようだ。(自分もだが)

 

子供達は喜んだ。そして、彼らは『コレがキャンプ』だと思い込んでいる。

つまりだ。

キャンプ場に行くのではなく、庭にテントを設営する事が本物のキャンプだと思い込んでいるのだ。

 

その証拠に、先日 本物のキャンプ場に行った時には子供達から苦情の声が上がった。

「なんでわざわざ遠くまできてテントを張るの?」

 

なんとも言葉が出なかった。

 

2〜3日で撤収するはずの庭キャンプも1週間、2週間、1ヶ月、3ヶ月、半年と

気がつけば150日にも及ぶ超ロング庭キャンプとなってしまった。

 

居心地が良いのだ。

とてもとても居心地が良くて撤去できないのだ。

 

母屋(おもや)がテントに逆転!おうちキャンプはブームになるのか?

敷地内に家が2つある感覚で、何か考え事やストレスが溜まった時にいつでも逃げる場所がある。

 

それがウチのテントの役割だ。

いや、初めはそうだった。

 

しばらくすると、テントと自宅の役割が逆転してしまった。

 

家族でテントで寝て、食事をし、居間スペースで団欒する。

そして、仕事とお風呂に入るために家に入る。

ライブがある時もテントから出動する。

友達が来ても、母屋には入らず、テントでもてなす。

 

ある日、ロンドンからウチのテントに泊まりにきて、そのままテントで寝てまたロンドンに帰ったヤツがいた。

 

様々なメディアも取材に来た。

先日はTVメディアからの取材を受けたが、まさか芸人さんをうちのテントでもてなす日がくるとは思ってもいなかった。

ON AIRされたさいには是非ご覧いただきたい。

 

こんなバカげた生活を送っているのはウチだけだろうと思っていた矢先、インターネット広告で信じられない情報が入ってきた。

 

「テント生活のできる分譲マンション」というテーマの集合住宅が販売されているというのだ。

 

思わず目を疑ったが、現に己が快適に庭キャンプを楽しんでいるのだから、そういったニーズがあってもおかしくはない。

 

ただ、集合住宅でしょ?事件の匂いしかしないんだよね。

イビキの煩いヤツとか、夜中まで騒ぐ若者とか、トラブルの危険しか感じない。

 

テント生活で学んだアウトドアの知恵

長いテント生活で一番困った事が「虫対策」だ。

居間スペースにいる時は、蚊帳が無いので、どうしても虫が近づいてくる。

 

いいか皆んな、良く聞いておくんだ。これさえあれば蚊が一切寄ってこない

魔法のグッズがあるんだ。

 

『森林香』

 

これは林業のプロも愛用する虫除け。超強力な蚊取り線香だ。

これは、足元に置いておく事もできるし、ズボンにひっかけて携行する事もできる最強の虫除けなんだ。

真っ赤な渦巻きの蚊取り線香だ。

 

第44沼で紹介した通り、自然界で最も人を殺している生物は『蚊』なんだぜ。

 

蚊に伝えたい。

いくら刺しても良いから、かゆみ成分と、へんな病原菌だけは移さないでくれ、

 

そんな具合で、今年も『森林香』を炊きながら庭キャンプライフを満喫している齋藤家だが、前述したように先月 本物のキャンプ場へ行った。

 

テントのプロになったつもりでいたが・・・

行くまで全く気づかなかったが、150日のテント生活で、テントを設営したのが

たったの1回。

つまり、設営に関しては大初心者だった事に現場できづいてしまった。

 

そりゃあもう汗だくで設営したよ。

友達の手を借りながらみんなで必死で設営した。

 

そして、念願の「小川張り」ってヤツをおもいきりやってみた。

 

設営したのはこれで2回目だが、夏、冬と寒暖の激しい季節を乗り越えてきた

我が家のテントは、去年買ったとは思えないほど、ベテランの風格を誇っている。

(つまりボロだ)

まわりのキャンパー達も、きっと「ベテランキャンパー登場!」みたいに思ったはずだ。

 

まあ、とにかくだ。外に出る事はとても素晴らしいんだよ。

暑い日にたまに吹くそよ風がありがたく感じる。

毎日変わる植物達の様子。

蜂に追いかけられる恐怖。

ハスクバーナーで割った薪で焚き火をし、トライポッドにつるしたダッヂオーブンで作った料理を味わう。

贅沢の極みだ。

家の建て直しが伸びそうな気配を感じつつ、このわがままを許してくれている家族には感謝をしているよ。

みんなも外で暮らしてみようよ。

橋の下じゃない方の。

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