池上直子が紡ぐカルメン×ジョルジュ・サンドの愛と生と死~ダンスマルシェ vol.8 『Destiny』の挑戦とは

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2019.6.7
『Carmen カルメン』リハーサルより (c)Hiroki Nakatani

『Carmen カルメン』リハーサルより (c)Hiroki Nakatani

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Dance Marché (ダンスマルシェ)vol.8 Dance Performanceダンサー育成プロジェクト第1弾『Destiny』が2019年6月13日(木)~14日(金)に行われる。これはモダンダンスからコンテンポラリー、バレエまで国内外の著名振付家の作品に出演し、自身でも意欲的に公演をプロデュースしてきた池上直子が立ち上げた事業だ。欧米のカンパニーのように毎日じっくりとレッスン、リハーサルに取り組める環境を創り、若手ダンサーを育て、質の高い公演を行う――。賛同者を寄付(クラウドファンディング)により募ることも注目される。

オーディションにより新鋭を抜擢

『Destiny』はカルメン、ジョルジュ・サンドという“時代に翻弄されながらも、「愛と自由と孤独」を愛した女性ふたり”をテーマにしたダブルビルだ。育成対象となるダンサー6名(有光藍、糸原聖美、加藤美羽、新名かれん、前原星良、湯淺愛美)はオーディションによって選ばれ、『Carmen カルメン』に出演する。池上は6人を選んだ理由を「踊れる基礎が身体に入っていることをベースに、作品に合うかどうかと振付に対する対応力・イメージ力・性格を見ました。そして全体のバランスも見て選びました」と説明する。

池上直子 (撮影:大月信彦)

池上直子 (撮影:大月信彦)

日々メンバーが集いトレーニングを積みながら一丸となって創作に打ち込む。池上は「毎日のレッスンで私の踊りの身体の使い方・感覚など踊りの共通言語を入れていくので、振付をする段階で戸惑うことなく進みます。また環境を先に作ったことでダンサーの意識も違います。リハーサル中に少しでも空いた時間があれば各自練習して合わせるなど、私が求めるモノに真っ直ぐに応えようとしています。今ある環境をありがたいと思ってダンサーとしての仕事を務め、一人一人が真摯に取り組んでいますね」と手応え十分な様子。

(左から)有光藍、糸原聖美、湯淺愛美、池上直子、加藤美羽、新名かれん、前原星良

(左から)有光藍、糸原聖美、湯淺愛美、池上直子、加藤美羽、新名かれん、前原星良

カルメンとジョルジュ・サンドへの想い

『Carmen カルメン』の主人公カルメンの人物像について池上は「自由奔放と思われているけれど、それは彼女が作り上げている自分の像であって、生きる故に必要なこと。またトラウマや差別などの経験から痛みを知っている人で、本物の愛を探していたのではないかなと思います」と話す。カルメン役とホセ役にはゲストを迎え、カルメン役はメキシコのバレエ団で活躍した児玉アリス、ホセ役は金森穣率いるNoism出身の吉﨑裕哉だ。「お二人ともカンパニーで物語のある作品の主役経験があり、私のカルメンとホセのイメージにぴったりでした。アリスさんは女性らしくしなやかで、芯がしっかりとある方です。裕哉さんは繊細さとダイナミックさを持ち合わせていて、パートナリングがとても上手いです」と池上は信頼を寄せる。

『Carmen カルメン』リハーサルより (c)Hiroki Nakatani

『Carmen カルメン』リハーサルより (c)Hiroki Nakatani

『ジョルジュ・サンドの手紙』は池上とピアニストのイーガルとのコラボレーション。ジョルジュ・サンド(1804‐1876)は19世紀のフランスを代表する女性作家で、「ジョルジュ・サンドは自分の信念が強く、自分の想いを実行し、相手に真っ直ぐ向き合って愛にも生きた人。ショパンをはじめたくさんの芸術家と恋に落ち、激しい恋愛をもしてきたのだろうと思います」と池上はサンド像を語る。池上にとって2017年、長年ドイツを拠点に活躍してきた振付家・森優貴と共演した『Macbethマクベス』が転機となった。「ダンサーとしても振付においても、踊りの幅はグンと広がりました」と語りつつ「踊るのは楽しいですが、振付の方に興味があるので、徐々にそちらの方にシフトしていきたいですね」と先を見据える。

(左から)池上直子、イーガル (c)Hiroki Nakatani

(左から)池上直子、イーガル (c)Hiroki Nakatani

愛と信念を貫いた先の自由へ

ジョルジュ・サンドは実在した人物、いっぽうカルメンはメリメの小説(1845年)の登場人物だが、共に1800年代に生きたことに池上は着目する。「その頃、女性は結婚して男性を支え家庭に入ることが理想像の男性中心の時代でした。そんな女性にとって生き難い時代でも二人は恋多く、自分の信念を貫いた先に自由を求めました。そして生きることは孤独であるということを知っています。でも決して悲観的ではなく、その一瞬一瞬を前向きに生きているように感じました。年代は違えど、今の私たちにも共通することは多く、人と向き合うことや生と死など観ている方も共感できます」と二作品に通底するテーマがある。豊富なキャリアを誇りプロデュースにも長けた池上が、若い才能と共に挑む新たなプロジェクトの立ち上げを心して見届けたい。

ダンスマルシェ vol.8 『Destiny』予告動画



取材・文=高橋森彦

公演情報

Dance Marché  vol.8 Dance Performance
ダンサー育成プロジェクト第1弾『Destiny』


■日時:2019年6月13日(木)19:00、6月14日(金)14:00、19:00
■会場:スクエア荏原ひらつかホール​(東京都)

『Carmen カルメン』
■出演:
児玉アリス 吉﨑裕哉
有光藍 糸原聖美 加藤美羽 新名かれん 前原星良 湯淺愛美
■衣装:藤森左知(Sachi Costume) 菊地はるえ 成本愛子

『ジョルジュ・サンドの手紙』
■出演:池上直子 イーガル(Piano)
■音楽監督・作曲:イーガル
■音楽編集:鉾山純也
■衣装:TASTUO

≪スタッフ≫
■構成・演出・振付:池上直子
■照明:前田文彦 照井 晨市
■舞台監督:渡辺重明
■音響:田島誠治
■ヘアメイク:北原義紀・井上唯 (SORA)
■宣伝写真:長谷良樹
■宣伝デザイン:福井直信
■宣伝衣装:菊地はるえ
■宣伝ヘア・メイク:北原義紀・井上唯 (SORA)
■記録映像:林裕人
■宣伝映像:折尾一則
■協力:studio OVA  バレエスタジオRISE
■制作:後藤かおり
■制作補佐:穴山香菜
■プロデューサー:福原秀己
■主催:ダンスマルシェ
 
■公式ホームページ:https://www.dance-marche.com/
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