SHISHAMO 確かな成長と足跡を刻んだ全国ツアー・Zepp Tokyoの一夜

2015.11.29
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SHISHAMO photo by 柴田恵理

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10月29日に東京・Zepp Tokyoで行われた、「SHISHAMO ワンマンツアー 2015 秋『熱帯夜はまだ続くけど、ガールは今日も笑わなきゃいけない』」東京公演。SHISHAMOらしさはそのままに、どんどん大きなステージへと進んでいる3人は、この日何を見せたのか。レポートにてお届けする。

全15公演で18000人を動員した全国ツアー「SHISHAMO ワンマンツアー 2015 秋『熱帯夜はまだ続くけど、ガールは今日も笑わなきゃいけない』」Zepp Tokyo公演。ヒット曲「君と夏フェス」「量産型彼氏」、最新シングル「熱帯夜」、12月2日にリリースされる新曲「君とゲレンデ」、未発表曲など全21曲を披露した3人は、精度と勢いを増した演奏、素のキャラクターが伝わるMCを含めて、バンドとしての急激な成長ぶりを真っ直ぐに見せつけた。

SEの流れる中、吉川美冴貴(Dr)、松岡彩(Ba)、宮崎朝子(Gt/Vo)の順番で登場した3人。宮崎が右手を上げ、タイトル未定の新曲からライブはスタートした。宮崎のギターと歌でゆったりと始まり、吉川のスネアをきっかけにして一気にスピードを上げるこの曲は、パンキッシュな勢いと切なさたっぷりのメロディがひとつになったアッパーチューン。いきなり新曲から始めるという大胆なオープニングに一瞬戸惑ったオーディエンスも、すぐに身体を揺らし始める。さらに間髪入れず、宮崎のギターリフに導かれた「僕に彼女ができたんだ」。ガレージテイストのロックンロールと“彼女が出来たことを誰かにしゃべりたい”という男子の気持ちを描いた歌が混ざり合ったこの曲によって、会場のテンションは一気にアップ。緩急を付けながら緊張感をしていく間奏、フロアとの一体感を生み出すサビのパートもめちゃくちゃ気持ちいい。

photo by 柴田恵理

続く「僕、実は」は松岡のベースラインが楽曲を引っ張る。2014年9月のバンド加入から約1年、彼女の演奏は明らかにレベルが上がっている……というか「たった1年でこんなに変わる?!」という驚きが湧きあがってきてしまう。もちろん、宮崎のエッジの効いたギター、吉川のキレのいいドラムを含めたアンサンブルもさらに進化。松岡をバンドに入れた理由について宮崎は「顔で選びました」なんて言っていたが、じつはベーシストとしての素質をちゃんと見抜いていたのだろうなと思う。

「こんばんは! 本日は“SHISHAMO ワンマンツアー 2015秋『熱帯夜はまだ続くけど、ガールは今日も笑わなきゃいけない』”in Zepp Tokyoにお越しくださいまして、ありがとうございます」と丁寧にあいさつした直後、前方の観客に対して「大丈夫ですか? 苦しいですか? 前の女が苦しそうなので、あまりギューと押さないでくださいね。見苦しいのでね」という優しいのか何だかわからない言葉を口にする宮崎(すかさず吉川が“ひどいな”とフォロー)。そして「私たちも楽しみにしてました。最後までよろしくおねがいします!」という可愛いコメントから「量産型彼氏」を披露。「僕じゃだめなのは分かっているよ」という歌詞に象徴される切なくも情けない男の子の恋愛感情が強く伝わってきて、楽曲の魅力がしっかりと引き出されているのがわかる。ツアーが始まる前のインタビューで吉川は「以前は演奏するだけで精一杯だったけど、最近は曲のなかにある感情を表現することを意識するようになってる」という趣旨のコメントをしていたが、その効果は今回のツアーでさらに明確になっている。宮崎の単音のギターソロから吉川のドラムソロに繋がる場面も、それぞれのプレイヤーとしての個性が感じられて楽しい。

宮崎朝子(Gt/Vo) photo by 柴田恵理

「高校のときに吉川といっしょにandymoriのライブを見に来たことがあって。名だたるロックバンドがライブをやってきたZepp Tokyoでワンマンをやれて、しかも、こんなにたくさんの人が来てくれるのは本当に嬉しいです」「フェスで知ってくれた人もいると思うんですけど、ワンマンでしかやらない曲もやろうと思います!」というMCのあとは、SHISHAMOの多彩な表情が感じられる楽曲が続く。まずはシャッフル系のリズムと“いつでもそばにいるような男だと思ってた”(←宮崎の感情あふれるボーカルが印象的)というフレーズが溶け合う「花」、“ヘタレな僕”と“経験豊富な女の子”の関係をテーマにした「こんな僕そんな君」、ノスタルジックな雰囲気のメロディとともに、眠れない夜に“君”のことを考え続ける“私”を映し出す「昼夜逆転」。思春期の恋愛というきわめてオーソドックなテーマを軸にしながら、繊細で鋭利な感情を掬い取る宮崎のソングライティングは、いまのバンドシーンのなかでも際立っていると思う。だからこそSHISHAMOの音楽は、バンド好き、フェス好きのオーディエンスだけではなく、J-POPユーザーを含む幅広いリスナーに支持されているのだろう(この日も小学校1年生から社会人まで、男女問わず幅広いオーディエンスが集まっていました)。

松岡彩(Ba) photo by 柴田恵理

「この曲のミュージックビデオ、どうでしたか? 私と美冴貴ちゃんの演技が下手くそで…」(松岡)「松岡の撮影に時間がかかりすぎて、私の時間がなくなって。監督も最後“まあ、こんなもんでいいでしょ”って」(吉川)のほんわかトークを挟んで披露された「熱帯夜」は、このツアーの大きなポイントだった。ブラックミュージックのテイストを取り入れたアレンジ、憂いを帯びたメロディラインなど、宮崎の音楽的ルーツが強く反映されたこの曲を豊かな表現力、奥深いグルーヴ、なめらかなコーラスワークととともに描き出す3人。この曲をライブで演奏することで(かなり練習したそうです)彼女たちは、バンドとしての質を大きく向上させたようだ。

ライブ中盤では、ワンマンライブの定番コーナー「吉川美冴貴のホントにあった〇〇な話」も。小学、中学とサッカーをやっていた吉川。同じチームでお互いに高め合っていた同じ名前のミサキちゃんが高校受験のためにサッカー休み、そのことにショックを受けた吉川は、ミサキちゃんと距離を置いてしまう。高校に入り、バンドを始めてからも気まずい関係が続いていたが、2016年1月4日に行われる武道館ライブに勇気を出して誘ってみたところ、「買ったよ!」という返事が…。「うわー、いい話」とホッコリしつつ拍手を送る観客に対して「はい。では次の曲にいきます」というバッサリ流れを変える宮崎。こういう気の置けない(遠慮のない)サバサバした関係性もSHISHAMOの魅力だ。

吉川美冴貴(Dr) photo by 柴田恵理

この後は新曲2曲を続けて演奏。骨太にしてしなやかなロックンロール・サウンドのなかで少女同士の純粋で残酷な友情をテーマにした歌が響く「中庭の少女たち」、そして、片思いしていた“君”と“”ミディアムチューン「女ごころ」(シングル「君とゲレンデ」収録)からは、このバンドの音楽が大きく広がり続けていることが確かに感じられた。

大好きだった彼氏と別れても“笑わなくちゃいけない”と言い聞かせて生きる女子を描いたアップチューン「生きるガール」からライブは後半戦へ突入。“私は今あのバンドマンに夢中です”と歌い出した瞬間、大きな歓声が巻き起こった「バンドマン」、“グルグルグルグルグルグルグルグル”というサビに合わせてオーディエンスがタオルを回しまくるライブの定番曲「タオル」、SHISHAMOの存在を広く知らしめた「君と夏フェス」。楽曲を重ねるたびに高揚していくバンドサウンド、徐々に感情をさらけ出しながらも“歌を伝える”という意思をキープし続ける宮崎のボーカルのバランスも素晴らしい。

本編ラストはデビューアルバム「SHISHAMO」の最後に収録されている「恋する」。華やかな開放感に満ちたサウンドと「一瞬でいいから/私のこと女の子だと思って接してみてよ」という切実な思いがひとつになった楽曲、そして、上から降ってきた色とりどりの風船によってZepp Tokyoは気持ちいい熱気に包まれた。

photo by 柴田恵理

アンコールはミディアムバラード「あの子のバラード」から。「モテるあの子は私の親友」という状況を歌ったこの曲によって、オーディエンスは“じっくりと聴くモード”へ。みんなでいっしょに盛り上がることに意識を置いたバンドが多い現在のシーンのなかで、1000人単位のライブでも“1対1”で歌を伝えられるSHISHAMOの存在はきわめて貴重だ。さらに「きみと話せないのは」「休日」「さよならの季節」を披露した後、メンバーは改めて観客に語り掛ける。

「こんなに人が来てくれて、ホントに嬉しいなと思って…(「え、泣いてんの? キショ!」と宮崎が突っ込む)いや、泣いてないですけど、いろいろ思い出してしまって、ライブ中。2~3年前はこんなふうになるって想像してなかったので、ホントに幸せだなって思いました」(吉川)
「自分もすごい楽しくて。後ろの方の人、上(2階)の人も楽しんでくれてるみたいで、本当に嬉しいなって思いました!」(松岡)
「不思議な気分っていうのが、わりと正直な気持ちで。みなさんが連れてきてくれたという気持ちもありますが、もっともっと大きいところに行けるんじゃないかって思ってますので、これからもよろしくお願いします」(宮崎)
 

ラストは新曲「君とゲレンデ」。SHISHAMOのポップサイドを象徴するこのナンバーによってオーディエンスが楽しそうに身体を揺らし、開放感と切なさが混ざり合う空気のなかライブはエンディングを迎えた。

優れた楽曲クオリティ、表現力を増したアンサンブル、本音がぶつかり合う3人の関係性など、自らの魅力をダイレクトに示したSHISHAMO。2016年1月4日に行われる初の日本武道館公演(開催時の平均年齢は20.4歳)への期待が膨らむ、充実のライブだった。


 

撮影=柴田恵理 文=森朋之

photo by 柴田恵理

 
セットリスト
SHISHAMO ワンマンツアー 2015 秋
『熱帯夜はまだ続くけど、ガールは今日も笑わなきゃいけない』


2015.10.29 Zepp Tokyo
1. 未発表曲
2. 僕に彼女ができたんだ
3. 僕、実は
4. 量産型彼氏
5. デートプラン
6. 花
7. こんな僕そんな君
8. 昼夜逆転
9. 熱帯夜
10. 中庭の少女たち(未発表曲)
11. 女ごころ
12. 生きるガール
13. バンドマン
14. タオル
15. 君と夏フェス
16. 恋する
[ENCORE]
17. あの子のバラード
18. きみと話せないのは
19. 休日
20. さよならの季節
21. 君とゲレンデ

 

リリース情報
シングル「君とゲレンデ」
2015/12/02(水) リリース

「君とゲレンデ」

XQFQ-1414 ¥1,000(税込)
1, 君とゲレンデ 2, 女ごころ
 

 

 
 
武道館ライブ情報
SHISHAMO NO BUDOKAN!!!

2016.01.04(月)日本武道館
OPEN 16:30 / START 17:30