東京国立博物館『出雲と大和』展、記者発表会レポート 国宝20件以上、重要文化財70件以上が集結!

2019.6.14
レポート
アート

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日本書紀成立1300年特別展『出雲と大和』が、2020年1月15日(水)〜3月8日(日)まで、東京国立博物館 平成館にて開催される。国宝20件以上、重要文化財70件以上が集結する本展の見どころを、2019年6月4日(火)に開催された記者発表会より紹介しよう。

出雲と大和の優れた文化財から、古代日本の成り立ちを知る

重要文化財 日本書紀 巻第二(部分)南北朝時代・永和1~3年(1375~1377) 後期展示 愛知・熱田神宮蔵

オリンピック・パラリンピックを控える2020年は、日本最古の正史『日本書紀』が編纂された720年から1300年という、記念すべき年でもある。『日本書紀』の冒頭に記された国譲り神話によると、出雲大社に鎮座するオオクニヌシは「幽(ゆう)」、すなわち人間の能力を超えた世界、いわば神々や祭祀の世界を司るとされている。一方で、天皇は大和の地において「顕(けん)」、すなわち目に見える現実世界、政治の世界を司るとされている。つまり、古代において出雲と大和は、それぞれ「幽」と「顕」を象徴する場所として、重要な役割を担っていたのだ。

東京国立博物館副館長の井上洋一氏は、「コンセプトから展示作品まで、島根・奈良両県の研究者らと本当に色々なアイディアを持ち寄り、様々な議論を繰り返し、やっとここまでこぎつけた」と、開催にかける熱い想いを語った。本展は、出雲と大和で育まれた優れた文化財を通して、古代日本の国の成り立ちを知ることを目的としているという。続いて登壇した島根・奈良両県知事も、オリンピック・パラリンピックで日本が世界からも注目される2020年の開催ということで、「国内だけでなく、海外にも語りかけられるような展覧会になれば」と語った。

本展は、全4章の構成からなる。続いて、各章で特に注目したい展示品の数々を紹介しよう。

1章:巨大本殿 出雲大社

出雲大社の創建は、神話の世界にまで遡る。「幽」の世界を司るオオクニヌシをまつる出雲大社は、古代には48メートルの高さを誇ったと言われている。本章では、鎌倉時代に本殿を支えた巨大な「宇豆柱(うづばしら)」とともに、出雲大社の歴史と出雲に伝来するご神宝の数々を紹介する。

重要文化財 宇豆柱 島根県出雲市 出雲大社境内遺跡出土 鎌倉時代・宝治2年(1248) 島根・出雲大社蔵

宇豆柱は、2000年に出雲大社境内から発見された3本1組の柱。それぞれの柱の直径は約1.3メートルで、3本束ねた直径は約3メートルとなる。この巨大な柱が支えていた本殿が、いかに大きなものであったかが想像できるだろう。

国宝 秋野鹿蒔絵手箱 鎌倉時代・13世紀 後期展示 島根・出雲大社蔵

出雲大社に伝わる古神宝《秋野鹿蒔絵手箱》は、1248年の造営の際に奉納された可能性が指摘されている。ふたの表には鹿の親子、萩に群がる小鳥が描かれ、鎌倉時代の手箱を代表する優品となっている。

重要文化財 赤糸威肩白鎧 室町時代・15世紀 前期展示 島根・出雲大社蔵

《赤糸威肩白鎧》は、社伝によると、1467年の遷宮の際に8代将軍足利義政が寄進したもので、6代将軍義教が着用していたとされる。現存している室町時代の大鎧は大変貴重なもので、各所に見られる金具は幽霊で美しい。展示会場では、是非とも間近で鑑賞してほしい。

2章:出雲 古代祭祀の源流

弥生時代は、銅鐸などの青銅器を用いた祭祀が盛んに行われたが、のちに出雲では、特徴的な形の墳丘墓を舞台とした祭祀へと独自に変化していった。本章では、弥生時代の祭祀に用いられた品々の移り変わりを通して、出雲における古代祭祀の源流を探る。

国宝 銅剣・銅鐸・銅矛(部分) 島根県出雲市 荒神谷遺跡出土 弥生時代・前2~前1世紀 文化庁蔵(島根県立古代出雲歴史博物館保管)

荒神谷遺跡は、1984年に行われた発掘によって銅剣が358本、銅鐸が6本、銅矛が16本発見されている。武器形青銅器と銅鐸が一緒に埋納されていたことから、「教科書を書き換える」と評された、弥生時代を代表する青銅器群だ。

国宝 銅鐸 島根県雲南市 加茂岩倉遺跡出土 弥生時代・前2~前1世紀 文化庁蔵(島根県立古代出雲歴史博物館保管)

加茂岩倉遺跡からは、日本最多となる39個の銅鐸が一度に出土した。銅鐸の中には、シカやウミガメなどの絵や特殊な文様を持つものなど、他であまり見られない独自色の強い銅鐸もある。

勾玉 島根県出雲市 西谷3号墓出土 弥生時代・1~3世紀  島根大学法文学部考古学研究室蔵(出雲弥生の森博物館保管)

四隅突出型墳丘墓と呼ばれる、特殊な墳墓から出土したガラス製の勾玉。大小ふたつの孔を持つ独特な形状で、ほとんど風化せず、半透明のコバルトブルーの美しい色合いを堪能できる。

3章:大和 王権誕生の地

大和に出現した前方後円墳は政治権力の象徴で、王権の儀礼が繰り広げられた舞台でもある。本章では、埴輪や副葬品にみる古墳時代の多彩な造形が豊かに展開するさまを辿りつつ、ヤマト王権成立の背景に迫る。

重要文化財 画文帯神獣鏡・三角縁神獣鏡(部分) 奈良県天理市 黒塚古墳出土 古墳時代・3世紀  文化庁蔵(奈良県立橿原考古学研究所保管)

日本でもっとも有名な鏡のひとつである、《画文帯神獣鏡・三角縁神獣鏡》。この神獣鏡には、中国の魏の年号「景初3年」と書かれたものがあることから、魏志倭人伝にある魏の皇帝が、邪馬台国の女王・卑弥呼に送った銅鏡だと考えられている。

重要文化財 円筒埴輪 奈良県桜井市 メスリ山古墳出土 古墳時代・4世紀 奈良県立橿原考古学研究所附属博物館蔵

前方後円墳の上に並べられた、高さ約2.5メートルという世界最大の円筒埴輪。被葬者が眠る埋葬施設と外界を遮断し、「聖域」を保護していた。破格の大きさもさることながら、こうした巨大な埴輪を作った高度な技術も見どころだ。

国宝 七支刀 古墳時代・4世紀 奈良・石上神宮蔵

左右に枝のように伸びる3つの刃と、幹となる本体の刃先を合わせ、7つの枝があるように見える刀剣《七支刀》。表裏あわせて61文字の銘文には、倭国と百済の密接な関係が示されているほか、日本書紀の記載を裏付けており、日本史の一級資料とも言える。

第4章:仏と政

古墳時代後期に伝来した仏教は、飛鳥時代や奈良時代には天皇、貴族、地方豪族を中心に人々の信仰を集めた。本章では、仏教を中心とした国づくりが進められるなかで、国の安泰と人々の生活の安寧を祈り、誕生した造形を紹介する。

重要文化財 持国天立像(四天王像のうち) 飛鳥時代・7世紀 奈良・當麻寺蔵 画像提供:奈良国立博物館(撮影:佐々木香輔)

仏の世界を守護する四天王像のうちの1体である、《持国天立像》。現存する四天王像のうちでも古い像で、2メートルを超える巨大な立ち姿と、ひげを蓄えた凛々しい顔立ちが見どころ。脱活缶室という、当時の最新技法で造られた。

重要文化財 持国天立像(四天王像のうち) 平安時代・9世紀 島根・萬福寺(大寺薬師)蔵

出雲は神々の国というイメージがあるが、実は古い寺も多く、優れた仏像が数多く現存している。この《持国天立像》は、出雲を代表する平安仏。2メートル近くある一木像が4体揃い、迫力のある空間で鑑賞することができる。

重要文化財 浮彫伝薬師三尊像 飛鳥~奈良時代・7~8世紀 奈良・石位寺蔵

遣唐使の時代、中国から伝わった造形をもとに造られた石仏《浮彫伝薬師三尊像》。奈良時代以前の石仏は大変珍しく、風化せずにここまで残ったのは奇跡的なことだ。会場では、正面からだけでなく、左右からも造形美を堪能したい。


「日本の始まり、ここにあり」というキャッチコピーを裏付ける、日本の優品がこれまでもかというほど集結する本展。オリンピック・パラリンピックで日本が世界から注目される2020年に、ぜひ目の当たりにしてほしい。

イベント情報

日本書紀成立1300年 特別展『出雲と大和』
会期:2020年1月15日(水)〜3月8日(日)
前期展示:1月15日(水)~2月9日(日) 後期展示:2月11日(火・祝)~3月8日(日)
会場:東京国立博物館 平成館(上野公園)
開館時間:午前9時30分~午後5時※金曜・土曜は午後9時まで開館※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、2月25日(火)※ただし2月24日(月・休)は開館
お問い合わせ:ハローダイヤル 03-5777-8600
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