チェロの鬼才、ジョヴァンニ・ソッリマの「100チェロコンサート」、いよいよ日本初演

2019.8.5
インタビュー
クラシック

日本公演でも揃いの黒Tシャツで演奏予定

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クラシックをベースに幅広い音楽性を発揮し、「チェロの魔王」「鬼才」などと呼ばれているイタリアのチェリスト&作曲家のジョヴァンニ・ソッリマが、世代、国籍、キャリアなどを超えた100人のチェリストと入魂のアンサンブルを披露する「100チェロコンサート」こと『ソッリマと100人のチェリストたち』が、8月12日に都内墨田区のすみだトリフォニーホールで日本初演される。ソッリマの思いをご紹介!

この「100チェロ」の発端は2012年。ローマの18世紀建築・ヴァッレ劇場が財政難で閉鎖されることに反対し、多くのアーティストが劇場を占拠してパフォーマスを続けるうち、ソッリマと友人のチェリストのエンリコ・メロッツィによって発足した。「劇場の占拠は1年前から始まっていて、ソロコンサートの依頼を受けたが『なんで1人で? この経験をシェアしたらいいじゃないか』とメロッツィとワインを飲みながら話し合ううち、デュオがカルテットに、12人に・・・と、どんどん人数が増え続け、ワインがなくなる頃には100人になっていた。チェロのアンサンブルは古くからの歴史があるが、100チェロはこのために書いたオリジナル作品を基にしたレパートリーによって独自の編成が出来あがってきたんだ。参加も規格外で、プロ、アマ、ソリスト、学生、初心者と実に多種多様で、年齢も6歳の子供がいたり、75歳のシニアがいたりと幅広いにもかかわらず、信じられないくらい素晴らしく、エキサイティングな混合だった」ソッリマは、クラシックに軸足を置きながらも超ジャンルの音楽を演奏&作曲。「100チェロ」ではメロッツィと集団即興をはじめ多彩なレパートリーを作り出しながら、発展的展開を続けている。2014年には、かつて巨匠ロストロポーヴィチが166人のチェリストと行った「ベルリンの壁崩壊10周年記念公演」の理念を継いだ「25周年記念公演」に、第2回を。他にも、イタリアの大統領がEU理事会議長に就任した折にハンガリーのブダペストで1万人動員、ミラノでフラッシュモブ、ラヴェンナのチェロフェス「チェロランド」など、複数の場所で展開中だ。

ソッリマを核に、突き抜けたアンサンブルが期待される

「ヴァッレ劇場をはじめ、危機状態にあるイタリアの音楽と文化発信地の状態を改善するために、われわれは劇場に寝泊まりし、すべてを共有した。100チェロはあらゆるレベル、経歴の人たちにオープンであり『真の愛の結晶』だ!」

レベルの違いによる難しさは多々あるが「問題はない」という。パートに分けて演奏し、難易度をクリアできるように工夫している。お決まりのメンバーが約20人いて、各パートのリーダー的役割を担う。今回の公演では4人随行予定で、4パートに分かれて演奏するようだ。

可能な限り100人で行動を共にし、表現の自由や音楽文化の創造発信など、アートの原点に立ち返ってクリエーションを展開。バッハやベートーヴェンから、ロックや国歌までさまざまな演奏曲候補があり、本番の前々日からのリハーサルで試行錯誤しつつ演奏曲を選定し、仕上げていくという。「いつも熱狂的な反応が返ってくるんだ。このプロジェクトは、例えばクラシック音楽を演奏していても、一方でそれを壊しているところがあり、それゆえさまざまな人々の心に届いているように思う。歴史と先進性やモダンさ、精神性と伝統が理想的に関わり合っている素晴らしい文化を持つ日本でも、同じことが起きると期待しているよ!」

ステージはまさにチェロの森だ

ソッリマは、1962年イタリア・シチリア州パレルモ生まれ。一家は音楽家で、子供の頃からチェロや作曲を学び、オーストリアの名門、シュトゥットガルト音楽大学とモーツァルテウム音楽大学を優秀な成績で卒業。だが「他のジャンルを学んだり、知識を増やしたりしたいという熱意や好奇心は今も変わらない」そうだ。ちなみに、月刊「flowers」で連載中の『僕のジョバンニ』は、作者の穂積がソッリマのオリジナル曲「チェロよ、歌え!」にインスピレーションを受けて描き始めたそうで、登場人物のジョバンニ・バッツォーニのモデルはもちろんソッリマ。

文=原納暢子

公演情報

ソッリマと100人のチェリストたち(ジョヴァンニ・ソッリマ100チェロコンサート)

●日 時:2019年8月12日(月・祝)開演18:00(開場17:15)
●場 所:すみだトリフォニーホール 大ホール
●出 演:ジョヴァンニ・ソッリマ(vc)、エンリコ・メロッツィ(vc)、公募による100人のチェリスト他
●料 金:【全席指定】6,000円 、中学生以下 3,000円(税込)
●予定曲目:※都合により変わる場合もあります
ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱」より
J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲第3番
ヘンデル/組曲第11番ニ短調より「サラバンド」
デヴィッド・ボウイ/世界を売った男
レナード・コーエン/ハレルヤ
タランテッラ(イタリア南部の舞踏曲)
ソッリマ/チェロよ、歌え!
メロッツィ/サウンド・オブ・フォーリング・ウォールズ他
●問い合わせ:プランクトン 03-3498-2881(平日 11:00~19:00)
トリフォニーホールセンター 03-5608-1212(10:00~18:00、土日祝営業)