UNIDOTS、“覚醒”へ向けて更なる進化を遂げたツアーファイナル・東京公演

2019.8.1
レポート
音楽

UNIDOTS『Live Tour 2019 幼生 - larva -』

画像を全て表示(10件)

UNIDOTS『Live Tour 2019 幼生 - larva -』
2019.7.27 渋谷 WWW

「ちょっとずつ順調に大きくなってきている実感があります。傍からはイケイケに映るかもしれないけど、まだ全然ドキドキしていて。歌というのは自分自身の人間性をさらけ出す行為でもあり、時々苦しくなったり、悩んだりもするけど、みんなが落ち込んだり、日々のニュースに心がきしむ時に私たちの音楽が寄り添えられればなって。私にとって歌うことは、その瞬間が全てです。私たちに勇気をくれてありがとう。今日はなんだかUNIDOTSとみなさんが一対一で対話しているみたいな気持ちで凄く喜びを感じます。孵化、幼生、そして覚醒。少しずつ輪郭が見えてきて、やっとゆっくり眼が開いて……。私たちの進化の過程に寄り添ってくれて本当にありがとう」
と、この日の最終盤。唯一のMCとも言える箇所でボーカルの瑞葵はこんな言葉を満場に贈った。そしてこれらにはどこか、ここまで私がこの日に感受していた従来以上の身近さや親しみやすさ、これまでは伺えなかった、どこか傍らに居たり歌に気持ちを重ねさせていた「新要素」の要因へと行き当たらせた。

UNIDOTS『Live Tour 2019 幼生 - larva -』

UNIDOTS『Live Tour 2019 幼生 - larva -』

瑞葵(Vo)とコンノツグヒト(Ba)によるUNIDOTSが『Live Tour 2019 「幼生 - larva - 」』と題した初のワンマンライブツアーを行い各所大成功に収めた。7月6日名古屋 APOLLO BASE、7月7日心斎橋 VARONと行われた今回のツアー。この7月27日の渋谷 WWWはそのファイナルであった。
「幼生」とは孵化した後、成体への過程での進化の姿。カエルならオタマジャクシ、昆虫なら幼虫にあたる。そしてこの日のライブはその題通り、進化の過程をしっかりと活眼させながらも、近いうちに確実に成虫になり、その美しい姿態を多くの下に誇示してくれるであろう様までを想起させ確信させてくれた。

UNIDOTS『Live Tour 2019 幼生 - larva -』

UNIDOTS『Live Tour 2019 幼生 - larva -』

数々の神秘的で幻想的、荘厳、それでいてノスタルジックさを掻立てる開演前の場内BGMが止み、場内がゆっくりと暗転していく。間をおき登場SEが。鼓動のようなビートが印象深い。薄紫に浮かび上がったステージに、まずはコンノ、サポートギターの木下哲、サポートドラムのUが現れ「fringe~幼生のテーマ~」を始める。この日のオープナー用の特別な曲だ。明るく弾んだタイプのインストの中、瑞葵もステージへ。ハンドマイクでハミングやスキャット、伸びやかなボイス等、まるで楽器のような歌声を場内いっぱいに広げていく。続く「僕らの終着点」ではプリセットされた幻想的なフレーズのループの上、シューゲイズな音壁と疾走8ビートが加わり、我々を引き連れるが如くライブを走り出させていく。また、「神様の言うとおり」ではミラーボールも回り出し、天空まで引き上げる歌声と共に幻想さを寄与。同曲では抜き差しも現れ、コンノのベースが浮き彫りになった箇所も印象深い。対してノスタルジックなメロトロンの音も交え、確かに愛していた痕跡を感じた「白昼夢」では、いつもの歌謡性に幻想さもプラス。大サビによるドラマティックさと物語性が、哀しいはずの物語をどこか良い想い出へとスライドさせていった。
サビで現れる歌謡性とそこはかとない哀しさに場内を浸らせた「渇き」からは楽曲に妖艶さが加わり出す。また、哀しげなピアノの音色とピンスポットの下で瑞葵の歌い出しから入った「サンデーブルー」では、途中から加わるバンドサウンドと共に楽曲が生命力を帯びてくるのを感じた。

UNIDOTS『Live Tour 2019 幼生 - larva -』

中盤は躍動感やダンサブルな曲たちがライブを彩った「memento」は、物憂げな鍵盤音と共にたゆたうような木下のギター、レアグルーヴのようなファンキーグラマーなビートながら涼しげなUのドラミングが、彼ららしさを醸し出し、そこに瑞葵の伸びやかで声楽のような表情豊かな歌声が響く。トレンドを交えた「狐の嫁入り」では、コンノもベースにサムピングやプラッキングを交え、そのファンキーさが場内を躍らせていく。また、哀しさを交えたディスコタイプの「バスルーム・リフレクション」の際には瑞葵もハンドマイクを活かしステージを左右に移りながら歌う場面もあり、対して「sayosigure」では、不穏さと妖しさを伴ったファンキーさが会場を惹き込んでいった。そんなファンキーなナンバー連射のハイライトは「裏街道ハイウェイ」。ミラーボールも回り出し、高揚感溢れる同場面は、ダンサブルながらスピード感もある同曲の特性も活きグイグイと場内が惹き込まれていく様を見た。

UNIDOTS『Live Tour 2019 幼生 - larva -』

ラスト2曲は共に切ないほどの不器用なラブソングが会場いっぱいに広がっていった。無伴奏の中、瑞葵による「舗道に咲いた花」の印象的なサビフレーズが響く。その後加わったバンドサウンドが、荘厳さとそこを抜けた凛とした覚悟と決意をたくましく育んでいき、そこに舗道に咲いた花がたくましく凛と咲くさまをみなに想像させ、本編最後はまるでこの日を昇華させるように、神秘性を帯びた「あなたは嘘つきだ」がどことなくの安堵感を交え、ライブを帰着させた。精一杯の感情を交えて歌われた同曲。荘厳さと力強さを伴い、その歌声が果てしなくどこまでも高く長く広がっていく。それらを歌い遂げると使命を終えたとばかりに舞台袖へと引っ込む瑞葵。ボーカル不在のステージではその後も3人による場内を惹き込むような荘厳な演奏がしばし続いた。

UNIDOTS『Live Tour 2019 幼生 - larva -』

アンコールはまずは2人だけで現れ、「睡眠」の成長過程を確認させてくれた。深海性のあるくぐもったシンセとプリセットされたビートとトラップを交えたグリッチサウンド。そこに躍動感や隙間を湛えたコンノのベースに、たゆたうように乗る瑞葵の歌声。連呼される<キスミー>のフレーズの連呼も印象的であった。
ここで「大切なメンバー」と称しサポートの木下とUが再度呼び込まれる。「私にとって大切な始まりの歌をこの4人でやりたい」と「かえるの子」を披露。加わるバンドサウンドと共に感謝の気持ちが場内いっぱいに広がっていく。なんとなくの安堵と帰着、繋がっているといった感覚が満場へと浸透していくのが伺えた。
冒頭に記述したMCを受け、最後は「東京の精神」がとてつもない荘厳さと共に、各々が持つ営みの大事さや尊さを、哀激併せ持ったサウンドにて伝えられた同曲。そこではどこか浄化され白く綺麗になれた自分と出会えた。

UNIDOTS『Live Tour 2019 幼生 - larva -』

事後、この文章の作成時に気づいたのだが、実はこの日は一部を除き、ほぼ前回のワンマンの際と演曲は変わってはいない。しかし、その曲順や込めた想い、表し方や対し方で、前回とはまた違った新しい感受や解釈があった。その、「なぜ今回、同じ曲たちながら違った感受があったのか?」を考えた。その一つが、彼らがこれまで2曲のMVのYouTubeへのアップ以外、一切その音源をリリースしていないことへと思い当たった。「形」は無いが「型」は存在する音源という形態。が故に、個毎にその楽曲に対しての固定概念は一人一人に存在する。対して彼らの楽曲たちは今のところライブでしか存在しない。そこに都度の記憶という装置がリフレッシュを及ぼし臨めるからではないか? が故にいつでも新鮮に接せられ、プレイ毎に違った感受を受けるのではないかと思い至った。

UNIDOTS『Live Tour 2019 幼生 - larva -』

秋には『UNIDOTS Live Tour 2019 覚醒 - adolescence -』と題し、11月4日渋谷CLUB QUATTRO、11月16日愛知伏見JAMMIN’、11月17日大阪梅田SHANGRI-LAでの東名阪の各地過去最大規模のワンマンライブツアーも発表した彼ら。そこでもきっと「覚醒」を経た新しい成体が惜しみなく披露されることだろう。そしてそこでは、これらの曲たちも今度はどんな感受を我々に与えてくれるのだろう? ちょっと気が早いが、私の想いは既に彼らの秋のツアーへと馳せ始めている。


文=池田スカオ和宏 撮影=Koji Nishida (nirnor inc.)

セットリスト

UNIDOTS『Live Tour 2019 幼生 - larva -』
2019.7.27 渋谷 WWW

1.fringe~幼生のテーマ~
2.僕らの終着点
3.神様の言うとおり
4.白昼夢
5.渇き
6.サンデーブルー
7.memento
8.狐の嫁入り
9.バスルーム・リフレクション
10.sayosigure
11.裏街道ハイウェイ
12.舗道に咲いた花
13.あなたは嘘つきだ
[ENCORE]
14.睡眠
15.かえるの子
16.東京の精神

ツアー情報

UNIDOTS Live Tour 2019
覚醒 - adolescence –
2019年
11/4(祝・月) 渋谷CLUB QUATTRO [東京]
11/16(土) 伏見JAMMIN’[愛知]
11/17(日) 梅田 Shangri-La [大阪]
open16:00 / start17:00
前売り¥3,000

■最速プレオーダー
7月27日(土)19:00~8月6日(火)23:00
■2次プレオーダー
8月27日(火)12:00~9月3日(火)23:00
■一般発売
10月12日(土)~
  • イープラス
  • UNIDOTS
  • UNIDOTS、“覚醒”へ向けて更なる進化を遂げたツアーファイナル・東京公演