ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』開幕!バーンスタインの名曲がステージ上で躍動する
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Photo: Jun Wajda
ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』が2019年8月22日(木)、東京・IHIステージアラウンド東京にて開幕した。本作は1957年のブロードウェイ初演以来、多くの観客に変わらぬ感動を与え続けたミュージカルの金字塔とも呼べるミュージカル。この作品を2017年に東京・豊洲にオープンした、客席が360°回転し、その周囲を巨大な可動式スクリーンとステージが取り囲む特殊な劇場、IHIステージアラウンド東京にて上演される事となったのはもちろん世界初となる。
本公演開幕に先立ち、2019年8月19日(月)と20日(火)にプレビュー公演が行われた。その初日の模様をレポートする。
Photo: Jun Wajda
舞台は1950年代後半のニューヨーク・マンハッタンのウエストサイド。セントラルパークを挟んで東には高級住宅街が、西には多くの移民が住んでいた時代の物語。世界中から多くの移民が夢と希望を求めて集まり、やがて彼らはそれぞれにギャング集団を作りお互いに敵対するようになった。
しかし、ポーランド系移民のトニーと、プエルトリコ系移民のマリアは偶然出会い、激しい恋に落ちる。二人の禁断の愛はやがて多くの人を巻き込み、悲劇の連鎖を生む―。
Photo: Jun Wajda
『ロミオとジュリエット』に着想を得た男女の普遍的な愛と、人種の対立、偏見、暴力など、避けては通れない問題が絡まり合う悲劇的なストーリーが縦糸なら、巨匠レナード・バーンスタインが手掛けた「トゥナイト」「アメリカ」など数々の名曲が横糸。両者が緻密に交わり色鮮やかな作品が織りあがったのがこの作品。だからこそ、何物にも代えがたい魅力を放ちながら長い間多くのファンの心を掴んで離さないのだろう。
Photo: Jun Wajda
生オーケストラの演奏に乗せ、ジェット団とシャーク団の抗争では両グループのリーダーであるリフとベルナルドが仲間と共に、歌い踊りながら、魂の叫びを繰り返す。一方ではトニーとマリアが運命的な出会いを経て心を通わせる。ステージアラウンドの機構をうまく使った場面転換や、リフターと映像効果を用いてトニーとマリアが歌いながら夜空に吸い込まれていく演出には思わず心が浄化されるような感覚を味わった。
Photo: Jun Wajda
海外キャストによる上演につきものなのが「日本語字幕をどこに表示するか」問題。場面転換が比較的少ない1幕はスクリーンの左右に縦書きで表示し、次々に新たな場面に変わっていく2幕ではステージの上部に横書きで表示させることで、舞台上で行われている物語の世界観を邪魔しないよう配慮されていた。
トニー、マリア、ベルナルド、リフ、アニータといった主要キャストは皆、音域が上にも下にも広く、伸びのある美しい歌声とパワフルなダンスパフォーマンスを披露しては何度となく観客の拍手と歓声を浴びていた。特に1幕終盤でジェット団とシャーク団のメンバーが今夜の決闘を、アニータは決闘後のベルナルドとの逢瀬を、そしてトニーとマリアは夜の再会に想いを馳せながら歌う「トゥナイト」の4重奏の美しさと迫力に対する反響が特に大きかったように感じられた。
Photo: Jun Wajda
終演後、オーケストラが名残惜しそうに劇中歌のダイジェスト演奏を披露する。そのなかで「The Dance at the Gym」の一番の盛り上がり曲である「Mambo」が流れると、場内のあちこちから「Mambo!」と声が上がっていたのが非常に嬉しい瞬間だった。
本作は2日間のプレビュー公演の後、2019年8月22日(木)から本公演がスタートした。SPICEでは、初日公演前、映画『ウエスト・サイド物語』でベルナルド役を演じたジョージ・チャキリスや、劇団四季在籍中に同作に出演した市村正親らが出席し行われたレッドカーペットセレモニーの様子もレポートしている。(※関連記事参照)
懐かしの映画版を想いだしてみるもよし、この後11月に控えている日本キャスト版に向けて「予習」してみるのもよし。自由に『ウエスト・サイド・ストーリー』の世界を楽しんでみてはいかがだろう。
取材・文=こむらさき 写真=オフィシャル提供(Photo: Jun Wajda)