開幕迫るKバレエ新制作『マダム・バタフライ』関連特別企画が開催 ダンサーらが神楽坂芸者の和芸を知る

レポート
クラシック
舞台
2019.9.24
 撮影:西原朋未

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Kバレエカンパニーの新制作『マダム・バタフライ』が2019年9月27日(金)、いよいよ世界初演を迎える。
それにともない、Kバレエカンパニー内で『〈特別企画:日本の伝統芸能を知る!〉熊川哲也×神楽坂・芸者?!』と題したイベントが行われた。

撮影:西原朋未

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当日はKバレエダンサーらが神楽坂芸者による唄や踊り、三味線による芸を鑑賞。その後、今度はKバレエのダンサーによる『マダム・バタフライ』の「初夜のパ・ド・ドゥ」と「花魁道中」の場面が踊られた。バレエ団のダンサーらは『マダム・バタフライ』にも登場する芸者の世界を一心に見つめていた。(文章中敬称略)

■おくゆかしい動きで世界を表現する「和」の舞踊

当日は神楽坂芸者組合の理事長、渡辺和子をはじめ、4人の芸者衆が踊りや唄、三味線などを披露した。神楽坂の花柳界は安政4(1857)年に誕生した、江戸花柳界では新橋とともに長い歴史を伝えているものだ。

撮影:西原朋未

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まずは芸者衆の1人、㐂よ乃による「佃流し」「さわざ」が披露される。彼女は齢18歳で、立場的には見習いではあるが、京都でも修行をした経験のある若手トップだ。Kバレエカンパニーのスタジオにはお座敷が設えられ、舞台でいえば上手奥に赤い毛氈が敷かれている。そこで三味線と唄が演奏される、芸者衆が踊る。お座敷に呼ばれるか、自ら一席もうける機会でもなければ、まずふれることのない世界だろう。

着物の舞踊はバレエのように大きな動きとは正反対。無論大きくジャンプをするわけでもなく動きは一歩、二歩という小さなもの。そのうえで手の仕草、手ぬぐいなど小物遣いを通して気骨やしなやかさ、少し憂いを帯びた目線などで唄の世界を醸し出す。

撮影:西原朋未

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続いてベテランの眞由美が「辰巳よいとこ」を、三味線の演奏とともに踊る。今回披露された演目はどれも江戸時代から伝わる小唄で、佃島や辰巳といった地名に、芸者をはじめとする当時の江戸っ子たちの華やぎや、どういうところで芸を磨いてきたかといった、江戸のあゆみも感じられた。

■「方向性はまちがっていない」。芸者衆にもお墨付きをいただいた『バタフライ』

引き続き、Kバレエ側から、今度は芸者衆に対して、バレエのリハーサルが披露される。
まず踊られたのはバタフライ役の成田紗弥、ピンカートン役の山本雅也による「初夜のパ・ド・ドゥ」だ。バタフライの結婚に反対した叔父ボンゾウが宴席をめちゃめちゃにし、客人も去り、2人だけが取り残されたときに踊られるものだ。成田の可憐なバタフライに山本のりりしいピンカートンが印象的だ。

撮影:西原朋未

撮影:西原朋未

続いて披露された「花魁道中」は、バタフライとピンカートンの出会いの場で踊られるもので、熊川監督がこのバレエのために加えたシーンの一つだ。中央に凛とした花魁が登場し、その周りであでやかな扇を持つ遊女たちが花を添える。

撮影:西原朋未

撮影:西原朋未

リハーサルを終え、熊川監督が渡辺理事長に「どうでしたか」と感想を問うと、「方向性は間違っていない」との返答。熊川監督による和洋折衷の「和」について、本職の芸者衆からお墨付きをいただいた。

それぞれの芸の披露を終え、初日にバタフライを踊る矢内千夏は「長い着物の裾捌きが見事で、また表現力に感動した」と感想を語る。また初日は花魁役で、別日にはバタフライを踊る中村祥子は「こうしたものを見るのは初めてで、素晴らしい体験をさせていただいた。シンプルな小さな動きでもこれほどまでに表現が伝わるのかと思い感動した。これから練習をしていきたい」と感慨深げに語った。

撮影:西原朋未

撮影:西原朋未

熊川監督と神楽坂芸者衆とのトークショーでは、東京花柳界の現状も語られた。
東京の花街は新橋や神楽坂、向島や浅草など「六花街」とよばれ、1960年代は新橋でも1000人規模、そのほかの街でも数百人規模で芸者がいたが、現在は2015年の調査では244人。神楽坂でも最盛期は300人ほどいたものが現在は18人と、「非常に貴重な存在となっている」(熊川監督)。
Kバレエの新制作『マダム・バタフライ』は、もしかしたら和の文化にこうした和の文化にもスポットを当てるという意義もあるのかもしれない。その公演は、もう間もなくだ。

取材・文・撮影=西原朋未

公演情報

Kバレエ カンパニー20周年記念公演
『マダム・バタフライ』
 
【日時・会場】
2019年9月27日(金)~9月29日(日) Bunkamuraオーチャードホール
2019年10月10日(木)~10月14日(月・祝) 東京文化会館 大ホール
 
【演出・振付・台本】熊川哲也
【原作】ジョン・ルーサー・ロング
【音楽】ジャコモ・プッチーニ(オペラ『蝶々夫人』)ほか
【舞台美術デザイン】ダニエル・オストリング
【衣裳デザイン】前田文子
【照明デザイン】足立 恒
【指揮】井田勝大
【管弦楽】シアター オーケストラ トーキョー
 
【キャスト】
■Bunkamuraオーチャードホール
9月27日(金)18:30~ マダム・バタフライ:矢内千夏、ピンカートン:堀内將平
9月28日(土)12:30~ マダム・バタフライ:成田紗弥、ピンカートン:山本雅也
9月28日(土)16:30~ マダム・バタフライ:中村祥子、ピンカートン:宮尾俊太郎
9月29日(日)13:00~ マダム・バタフライ:矢内千夏、ピンカートン:堀内將平
 
■東京文化会館 大ホール
10月10日(木)14:00~ マダム・バタフライ:矢内千夏、ピンカートン:堀内將平
10月11日(金)14:00~ マダム・バタフライ:中村祥子、ピンカートン:宮尾俊太郎
10月12日(土)12:30~ マダム・バタフライ:成田紗弥、ピンカートン:山本雅也
10月12日(土)16:30~ マダム・バタフライ:中村祥子、ピンカートン:宮尾俊太郎
10月13日(日)12:30~ マダム・バタフライ:矢内千夏、ピンカートン:堀内將平
10月13日(日)16:30~ マダム・バタフライ:成田紗弥、ピンカートン:山本雅也
10月14日(月・祝)13:00~ マダム・バタフライ:矢内千夏、ピンカートン:堀内將平
 
公式サイト http://www.k-ballet.co.jp/index.html
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