辻井伸行の熱演に拍手喝采 ケント・ナガノ指揮ハンブルク・フィル現地公演が終演~日本ツアーは10/31開幕
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Photo:Claudia Höhne / Philharmonisches Staatsorchester Hamburg
2019年10月31日(木)より全国7箇所で行われるハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団の日本ツアーに先立ち、ピアニストの辻井伸行が、10月27日(日)・28日(月)現地ハンブルクのエルプフィルハーモニーで行われた同団の定期演奏会に出演した。公演曲目は日本公演の東京(10月31日(木))、名古屋(11月2日(土))、大阪(11月4日(月・祝))でも演奏される、ベートーヴェン「エグモント」序曲、リストのピアノ協奏曲第1番、マーラーの交響曲第5番。
公演に先立って行われたリハーサルで辻井と指揮のケント・ナガノは初顔合わせ。リハーサルを終えたナガノは辻井を、「見事なまでにクリアな方向性を感じさせる演奏で、大変感動した。ともに演奏できることを大変光栄に思う」と称賛した。実は辻井にとってリストの協奏曲第1番は初めて披露する曲。この日の為に入念な準備を重ねリハーサルに臨んだだけに、マエストロからの想像以上の賛辞に辻井も大変感激していた。
Photo:Claudia Höhne / Philharmonisches Staatsorchester Hamburg
エグモント序曲で始まる今回のプログラム。ベートーヴェンの作風にある「苦悩からの歓喜」を、僅か10分程度のこの曲でナガノは丹念に想いを込めて表現してゆく。華々しく終わる序曲から、この後に控えるリストの協奏曲への期待を一層膨らませていく。
序曲を終え、舞台上にピアノが運ばれ辻井の出番となる。冒頭からリストならではの華やかでピアニスティックな演奏が展開されていく。辻井の得意とする繊細で柔らかな音色でオーケストラと掛け合う場面もあれば、互いに丁々発止のスピード感あふれるスリリングな展開を繰り広げる場面もあり、この協奏曲とオーケストラ、そして辻井の相性の良さを存分に楽しめる時間である。熱演を終えた辻井は現地ハンブルクの聴衆に熱狂的に受け入れられ、度々ステージに呼び戻されていた。
Photo:Claudia Höhne / Philharmonisches Staatsorchester Hamburg
後半のマーラー交響曲第5番は、マーラーの作品の中でもマスターピースと言える大曲。オーケストラの醍醐味を存分に体感できるこの作品で、ナガノは丁寧に旋律を描いてゆく。こちらも入念なリハーサルを経て迎えた演奏とあって、アンサンブルは考えぬかれ、旋律の掛け合いも見事に描かれ、マーラーの意図するところをナガノは余すことなく汲み上げ音楽を創ってゆく。怒涛のクライマックスを経てこの大曲を聞き終えた後の充実感はなかなか得難い経験と言えるだろう。
ハンブルク州立歌劇場の現総監督を務めるナガノの遥か昔の前任者は、他でもないこの曲を創ったマーラー、彼自身である。「長い伝統によって培われてきたオーケストラの独特の響きと音色を日本の皆さんにもぜひ楽しんでもらいたい」。ナガノの想いを日本の聴衆に余すことなく伝える準備は整ったようである。この貴重な経験を日本で味わえる瞬間が間もなく訪れようとしている。