flumpool 復活イヤーを飾る、原点回帰の感動と熱狂のステージ 年末ライブの公式レポートが到着

レポート
音楽
2020.1.7
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FOR ROOTS~シロテン・フィールズ・ワンスモア~
2019.12.30 大阪城ホール

山村隆太(Vo)の歌唱時機能性発声障害で、2017年12月から約1年余り、バンド活動を休止していたflumpool。2019年はバンドの結成日である1月13日に地元大阪・天王寺公園でゲリラライブを実施し、活動再開を発表。その後は順調にライブを展開してきた。そして、復活の年の締めくくりを飾るのは、4人にとってもファンにとっても特別な場所となる大阪城ホール。『FOR ROOTS~シロテン・フィールズ・ワンスモア~』と題された1日限定のスペシャルな舞台にふさわしく、冒頭から遊び心あふれる演出が用意されていた。メンバーが8メートル以上もある日本一長いリムジンで会場に乗り付けると、レッドカーペットを歩いてステージ上に現れるまでを、FM802のDJ・大抜卓人氏が熱く実況中継する様子がステージ上のビジョンに映し出されたのだ。山村隆太(Vo)、阪井一生(Gt)、尼川元気(Ba)、小倉誠司(Dr)の4人が無事にステージ上に登場すると、ライブは「ベガ」から勢いよく滑り出した。

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「行くぜーオーサカー!」
山村が力強い声で叫ぶと、アリーナもスタンドも一斉にステージに向けて手を振り揺れ始める。続けて、「覚醒アイデンティティ」「labo」と序盤からこれぞロックバンド!といったMAXの熱量で畳み掛けていった。

3曲終えたところで、観客からの「おかえり~!」に、「ただいまー、帰ってきたで大阪!きてくれてありがとう!」と山村が返答すると、喜びを爆発させるような盛大な拍手が送られた。それをしっかりと受け止めるように、山村は真摯な眼差しで語り始める。10年以上前に同会場がある大阪城公園内の“シロテン”でストリートライブをしていた時のこと、2年前に声が出なくなって公演を中止せざるをえなくなったこと。そして、今年は無事に活動を再開することができて、3年ぶりにここ(=大阪城ホールの舞台)に立てることができて嬉しいという万感の思いを伝えた。

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次のブロックでは「大切なものは君以外に見当たらなくて」、デビュー曲「花になれ」を歌った直後に、待望の新曲「ネバーマインド」を披露。サビから始まり、高ぶる気持ちに突き動かされるように展開してゆくアグレッシヴなナンバーだ。続く「two of us」はイントロから大きな歓声が上がる。ハンドクラップが重なり、ステージに向けて一斉に手が振られる光景が見られた。

中盤には、“隠れた名曲”を演奏するレアなコーナーが設けられて、「Answer」「残像」「388859」が演奏された。特にキーボードとバイオリンがはえるバラードの「残像」ではオーディエンスも吸い込まれるようにじっと聞き入っていた。「ふだんのライブでは滅多にやらない曲」ということで、メンバー自身も新鮮な気分を味わっていたようだ。

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サポートメンバーの磯貝サイモン(Key)と吉田翔平(Vn)を含む、バンドメンバーの紹介を終え、後半に入って披露された2曲目の新曲は1月からスタートするドラマ『知らなくていいコト』の主題歌になる新曲「素晴らしき嘘」。山村は「バンドの活動を休止していた時のことを思って書いた」と同曲が生まれた経緯を丁寧に説明。声が出ないという絶望の日々の中で、あえて普通に接してくれていたメンバーに救われたという。そんなグッとくるエピソードを孕んだエポックメイキングな一曲。低音を強調したサウンドで、ベースミュージックに通じるエッジの効いたアレンジ。バックのスクリーンに歌詞が大文字で映し出されて、強いインパクトを与えた。

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「夜は眠れるかい?」からは、再び音圧を上げて疾走感溢れる終盤戦に突入。「いいねーいいねー、大阪!さすが俺たちのふるさと。もっともっとちょうだい!来年につなげる(今年)最後のライブだから」と山村が興奮気味に声を上げ、阪井のギターが激しく唸りを上げる。観客とのコール&レスポンスが巻き起こり、一斉にタオルを回してヒートアップしていった。さらに、尼川や阪井も歌う「Hydrangea」、ポップな「星に願いを」でますます会場全体が一体化。高揚した場内から、「ありがとう!」「サイコー」といった声が飛び交っていた。

気がつけばあっという間に時間は過ぎてゆき、「今年は本当にみんなに救われた年でした。ありがとう!」と山村が改めて感謝の思いを伝えると、場内から沸き起こる拍手が長く続いていた。そして、「どんなに辛い時、苦しい時も前を向けたのはみんながいてくれたから。みんなに支えられてここまで運んでこられた曲」と噛みしめるように本編ラストに歌われのは「HELP」。バンドとファンの確かな信頼関係が生み出す幸福な情景に胸が熱くなった。

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アンコールではアリーナの真ん中あたりに設置されたサブステージにメンバーが登場。「みんなに360度囲まれて演るのは嬉しい。いつも応援してくれてありがとう。休止する前に最後に出した曲を聴いてください」と言って山村がアコギを手に歌ったのは「とうとい」。シロテン時代をホーフツさせるような至近距離にいるメンバーを前に、ファンの中には感激して涙する人の姿も。アンコールの2曲目は再びメインステージ移動。“隠れ名曲ナンバーワン”という「春風」を穏やかにしっとりと聴かせ、「君に届け」は一転してアップテンポに。最後の最後まで全身全霊でプレイするメンバー。阪井のギターや尼川のベースもエネルギッシュに奏でられ、アウトロは小倉の力強いドラミングで締められると、アリーナ、スタンドを埋め尽くす観客から別れを惜しむようにひときわ長く熱い喝采が送られたのだった。

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しかし、その後もサプライズが待っていた。まず、「このめっちゃよかった空気感を全国に届けましょう!」とメンバー自らスマホをセットして、観客をバックにインスタライブを敢行!冷めやらぬ会場の熱気を伝えてから、最後の最後にファンを歓喜させる3つもの朗報が!ひとつは2月26日にニューシングル『素晴らしき嘘』がリリースされること、ふたつ目は2020年春に4年ぶりのニューアルバム『Real』がリリースされること。さらに、7月11日からスタートする10度目の全国ツアーが開催されることもアナウンス。「また笑顔で再開しましょう!」と約束して熱狂と感動に包まれたライブはようやく終焉となった。

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オープニングでは大スター然とした大仰さを楽しみつつ、ライブ中に関西弁で話すメンバーはあくまで自然体で、大阪から生まれたいちバンドマン、ミュージシャンなのだということを実感させてくれた。自らのルーツを確認し、“音楽を楽しむ!”という初期衝動を胸に次なる挑戦へと踏み出していく4人。新境地を感じさせる新作を携えて、2020年の音楽シーンで新たな存在感を発揮してくれるに違いない。この先、flumpoolというバンドの想いがどんなふうに具現化され、どんな世界観を共有させてくれるのか、今から楽しみに待っていたい。


文=エイミー野中 撮影=渡邉一生

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