舞台『俺たち賞金稼ぎ団』演出・きだつよしが語る“観逃せない理由”
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『俺たち賞金稼ぎ団』演出のきだつよし 撮影:坂野 則幸
強く光る瞬発力、きだつよしが見る話題作の見どころとは
12月4日(金)より、シアター1010にて幕が開く舞台『俺たち賞金稼ぎ団』。2014年に上映された同名映画の続編で、キャストは全員、スーパー戦隊出身! 演出は、TV『仮面ライダーウィザード』脚本やスーパー戦隊シリーズのショーの演出を手掛けるなど、特撮物とゆかりの深いきだつよしさん。今回の舞台にかける想い、そして未来への展望までを、SPICEに語ってくれた。
――初日まで間もなくですが、きださんから見て、稽古場はどんな様子ですか?
「役者みんなのポテンシャルが高いですね。正直、稽古の日数は少なめなんですが、稽古1週間で荒通しができたからすごい。推理物の要素もあるのでセリフは多いのですが、ちゃんと覚えてきていて。僕が役者のときは、こんなに早く覚えてないなあと(笑)。あとは、全員スーパー戦隊シリーズ出身という独特の連帯感があり、とても雰囲気がいいですね」
――キャストを見ていて、どんなところに光るものを感じますか?
「強く感じるのは、パッと対応できる瞬発力。1年間、TVシリーズで鍛えられてきただけあり、長丁場を乗り切る持久力もある。どちらも、舞台ではベースになる要素ですね」
――そんな役者陣を、演出でどのように動かそうと思っていますか?
「いただいた台本が会話劇だったので、どうやって立体的で動きのあるアクション物にするかがカギでした。あとは、僕のなかでの今回のテーマが、“変身しないヒーロー物”なんです。全員がスーパー戦隊出身なんて、とても貴重なチャンスですから、ヒーロー物の要素はしっかり入れていきたいなと」
――具体的には、どんなふうに?
「アクション監修の坂本浩一さんとも相談して、要所要所で、本人が戦隊で演じた役にちなんだフリやセリフを入れることにしました。 「ああ、あのときの○○レンジャーのあのポーズだ」とか、「あのキメゼリフだ」とか」
――わかる人は感動しそうですね!
「稽古場も、「おおーっ」と沸いてますよ(笑)」
きだつよし 撮影:坂野 則幸
――ますます楽しみです。ほかに、注目のポイントは?
「ストーリーとしては、前作の映画のいわゆる続編です。前作ファンには、『第2話』のように楽しんでいただけるかなと。そしてなんといっても、特撮、ヒーローショーを長く手掛けてきた東映さんが、本格的に挑戦するお芝居、という点です。前作を知らない俳優ファンや演劇ファンにも、楽しんでいただけると思います!」
――ある意味で、歴史的な瞬間ですね。きださん自身が、特撮物がお好きだそうですが。
「語弊があるかもしれませんが、いい意味での“大味”、そして独特の“ケレン味”があるのが、僕の好きな東映特撮作品のイメージです。近年の特撮ものはどちらかというとリアル志向でマンガっぽさは消されがちですけど、今回はその反対。ベースはリアルだけど、「なんでこうなるの!?」という面白みを出したいですね。ご都合主義にはもちろんしませんが、“東映調の舞台”にしたいんです」
――“東映調の舞台”を体現するうえで、演出面ではどんなところにこだわっていますか?
「一つは、さっき言った動感。映像と違って、舞台は映像と違って役者自身が動いてくれないとシーンが止まって見えるので、フリを大きくしたりアングルを変えるような演出をつけたり、役者にも積極的に動いてもらっています。もう一つは、場面転換。実は暗転というのがあまり好きではなくて。はっきり言って、暗転というのは作り手の都合なので。シーンの切れ目をなるべく暗転にせず、もし暗転するにしても、それが余韻や間として芝居の一つとして感じてもらえるよう、シーンのつなぎ方とテンポ感には細心の注意を払っています 」
きだつよし 撮影:坂野 則幸
――なるほど。特撮そのものの魅力については、きださんはどう感じていますか?
「リアルタイムでは『仮面ライダーV3』くらいから観ていますが、僕にとって特撮の魅力は、変身とメカニックですね。変身=姿が変わって強くなることで、僕のなかで、カッコいいヒーロー=変身なんです。その変身にいたるまでのドラマが、カタルシスにつながるわけです。ある種のファンタジーですね。昭和の香りのファンタジーを大事に守っているのが、唯一、特撮だと僕は思っています。ぜひ守り続けてほしいですね」
――では、今回の舞台に、変身などの要素は入っているのでしょうか?
「ヒーローの姿に変身はしないけど、変身=成長という意味では、変身のドラマになっています。主人公たちは、ポンコツでダメ人間の集まりなのですが(笑)、最後に「人が変わったな!」と思ってもらえたら、この舞台は成功じゃないかと思っています」
――いろいろ話を伺ってきましたが、きださんが主宰していた劇団「TEAM 発砲・B・ZIN」を知っている者としては余計、今回の舞台は、きださんにしか演出できない、という気がします。
「そもそも、『TEAM 発砲・B・ZIN』のテーマが、「大の大人が泣いて笑えるヒーロー物」だったんです。リアルな人間ドラマにヒーローもののケレン味とガジェット感をミックスした、現実とファンタジーの中間的な世界観を描いていて。 今回、演出に呼ばれたのも、まさにその部分を求められたからなのかなと。ポビュラーさとマニアックさをバランスよく組み合わせられる作り手って、意外と少ないみたいで」
きだつよし 撮影:坂野 則幸
――ファンとしてはまた、きださんオリジナルのお芝居も観たいところですが……。
「そうですね……。解散後、舞台に飽きちゃっていた時期もあるんですが(笑)、最近また面白さを感じているんです。また自分発信の作品を作りたいなあと」
――おおっ!
「劇団の解散から8年、依頼される仕事をこなしていく中で、人見知りながらも(笑)知り合いが増えたので。このネットワークを活かして、新たなプロジェクトを立ち上げてもいいかなと。最近は原作ありきの舞台…いわゆる2.5次元モノと呼ばれる作品が台頭してきて、ちょっぴり複雑な気持ちもあります。 舞台でオリジナルを作ってきた人間としてはやっぱり、舞台のオリジナル作品を一から作って、大事に育てて、演劇発のメディアミックスを展開したいなあと。 先ほども言ったように、最近のTVはリアル志向で、ファンタジーやアクションものは敬遠されがち。 でも舞台というのは、適度な曖昧さがかえって武器になり、様々なことが豊かに表現できるファンタジーで自由な空間なんですよね。 特撮と同じように、今の舞台でしかやれないことがあるのかもしれない、やっぱり演劇もいいな、と考えているところです」
――それは楽しみです!! まずは『俺たち賞金稼ぎ団』の初日が、待ち遠しいですね。
「東映の『TOEI HERO NEXT ステージ』としての第1弾ということで、ぜひ観逃さないようにしていただきたいですね。盛り上がって、第2弾、3弾になってからでは遅いので。ぜひ、今、観てください!」
日時:2015年12月4日(金)~9日(水)
会場:THEATRE1010(シアター1010)
出演者:斉藤秀翼/馬場良馬/清水一希/森高愛/金城大和/丸山敦史
和田三四郎/秦瑞穂/平田裕香(声の出演)
三村幸司 杉口秀樹 村岡友憲 野田論司
唐橋充/及川奈央/伊勢大貴/細貝圭
<日替わりアフタートークゲスト>
塩野瑛久/小澤亮太/竜星涼/今野鮎莉/平牧仁/長濱慎
スタッフ:演出:きだつよし
脚本:酒井善史(ヨーロッパ企画)
音楽:三澤康広
アクション監督:野口彰宏
アクション監修:坂本浩一
詳細は公式サイトまで