音声ガイド初挑戦の木村多江「日常を振り返り、人の道を見返す機会」 『法隆寺金堂壁画と百済観音』展取材レポート
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『法隆寺金堂壁画と百済観音』音声ガイドを担当する木村多江
※展覧会の中止が決定しました。前売券の払い戻しなど詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。
東京国立博物館にて今春開催予定の展覧会『法隆寺金堂壁画と百済観音』は、昭和の火災によって焼損した巨大な壁画群を、焼損前に残された数々の模写や写真資料を通して会場に再現する機会。金堂ゆかりの寺宝とあわせて、東京では23年ぶりの公開となる国宝・百済観音の出品も注目を集めている。
展覧会の音声ガイドをつとめるのは、女優の木村多江。落ち着きのある穏やかな声で鑑賞者に寄り添いながら、法隆寺金堂壁画や百済観音の魅力をナレーションする。開幕前に行われた囲み取材では、「金堂壁画に関わる方々の情熱が伝わってきた」と話す木村に、音声ガイドのナビゲーターに初挑戦した感想や、展覧会の印象について語ってもらった。
国宝 観音菩薩立像(百済観音) 飛鳥時代 法隆寺蔵
目には見えない「心」が感じられる展覧会
——まずは、展覧会の感想をお聞かせください。
これまで写真でしか見たことのなかった作品も、実際に会場を回ってみると、どれも美術品として本当に美しいものばかりでした。金堂壁画の模本に関しては、制作に参加された方々の情熱が伝わってきて、目に見える美しさだけでなく、目には見えない心を感じ取ることができました。
——特に印象に残った作品はありましたか?
国宝の百済観音(観音菩薩立像)には、硬い素材のクスノキが使われていますが、しなやかさや柔らかさが感じられて、仏さまの慈悲の心が伝わってくるようでした。目には見えないけれど、心に訴えかけるものがあって、穏やかで謙虚な気持ちになれる気がいたしました。
自分を出さず、鑑賞者の心に寄り添えるように
——はじめての音声ガイドの収録はいかがでしたか?
本展は、金堂壁画に関わってきた方々の思いや、日本の美しい文化を継承するということの中に、何かしら感じるものがある展覧会だと思います。ですので、展覧会をご覧になる方々が、想像したり、何かを感じたりすることを極力邪魔しないように、みなさんの心に寄り添えたら良いなと思いました。普段のナレーションのお仕事では、私らしさのようなものを込める部分もありますが、今回の音声ガイドでは、なるべく自分を出さないよう心がけました。
——木村さんなりの、美術館や博物館の楽しみ方を教えてください。
会場に足を運ぶ前に、作品を作られた方の背景や気持ちが分かるような資料を読んだり勉強したりしてから行くと、なぜこのような作品を描いたのか、といった作者の情熱まで見えてくるような気がします。鑑賞前に少し勉強することで、面白さが増すのではないかと思っています。
——ありがとうございました。最後に、会場にいらっしゃるお客様に向けてメッセージをお願いします。
金堂壁画の模本に描かれた線ひとつをとっても、本当に心を込めて描いているのが感じられて、ひとつのことに傾けた情熱のようなものが伝わってきました。仏の世界ということで日常を忘れる部分もありますが、日常を振り返るような、人の道を見返せる機会にもなっていると思います。このような時期だからこそ、いろいろなことに対して丁寧に生きようと改めて感じています。心が穏やかに、そして心が清らかになる展覧会ですので、機会がありましたら、ぜひ皆様にも感じていただければと思います。
取材後には、3月16日に誕生日を迎えた木村を祝うサプライズも。プレゼントされた会津塗の酒器を手に、「お酒を飲んでいいってことですね」と、笑顔を見せていた。
囲み取材時には、誕生日を祝うサプライズも。
特別展『法隆寺金堂壁画と百済観音』は、東京国立博物館で2020年5月10日(日)までの開催(開幕日未定。公式サイトでご確認を)。木村多江が担当する音声ガイドは、会場入り口にて500円(税込)で貸し出される。