学んで・遊んで・参加できる 国立歴史民俗博物館『どこでもれきはく』のユニークな魅力をオンラインで体感【ネット DE アート 第7館】

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2020.6.24
ネット DE アート 第7館:どこでもれきはく

ネット DE アート 第7館:どこでもれきはく

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全国の展覧会が延期・中止となっていた最中、多くの美術館や博物館が、外出しなくても楽しむことができる多彩なオンラインコンテンツを公開してきました。自宅で鑑賞する場合、人目や時間を気にすることなく作品に没頭でき、インターネットでの閲覧は、目当ての企画展のみならず、開催する施設や機関の調査や研究、その他の多彩な試みを知るきっかけを与えてくれるでしょう。オンラインを通じての鑑賞は、実際に足を運んで作品に対峙するのとはまた別の喜びを与えてくれるように思います。
今回は、千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館の『どこでもれきはく』より、休館中でも楽しめるコンテンツを紹介します。開催中止となった国際企画展示『昆布とミヨク-潮香るくらしの日韓比較文化誌』など企画展示や特集展示の動画を公開する「歴博公式YouTubeチャンネル」のほか、《洛中洛外図屏風》などの高精細資料画像を見ることができる「WEBギャラリー」など、充実している貴重な資料を活かしたコンテンツを公開。先史・古代から現代まで広く楽しめる博物館でありつつ、貴重な資料を収集・研究・保管・公開し、先端技術をも活用している“歴博”の幅広い魅力をお伝えします。

どこでもれきはく

どこでもれきはく

“歴博”で親しまれる国立歴史民俗博物館の魅力
日本の歴史・文化の見どころをユニークな切り口で紹介

“歴博”を通称とする国立歴史民俗博物館は、日本の歴史・文化を広く研究対象とする施設で、歴史・考古・民俗という三分野を展示の柱としており、確かな研究成果に支えられた、骨太で個性的な企画を行っています。

国立歴史民俗博物館 紹介映像 全編 (一般向け映像)

例えば、残念ながら開催中止となってしまった『昆布とミヨク-潮香るくらしの日韓比較文化誌』は、海産物を素材とする食品の製法や、漁師の信仰、漁民の関わり方の変化などの多様な題材を扱っていますが、共同研究した日本と韓国の二国の関係性が、似ているがどこか違う二つの海藻「昆布とわかめ(ミヨク)」に象徴されるのではないか、という発想に起因しているそうです。日韓を昆布とわかめになぞらえるという視点はとてもユニークで意表を突かれます。本展の動画は3部構成でプロローグ・エピローグがつき、担当教員の熱い想いが伝わる、大変充実した内容です。

国際企画展示「昆布とミヨク-潮香るくらしの日韓比較文化誌」(1)プロローグ 海のひろがる日常

「歴博公式YouTubeチャンネル」では、他にも歴博の概要と各展示室を紹介する紹介映像や、第3展示室の特集展示『『もの』からみる近世「和宮ゆかりの雛かざり」』などを公開しており、歴博の多種多様な展示や活動を窺い知ることができます。

第3展示室 特集展示『もの』からみる近世「和宮ゆかりの雛かざり」

歴博の所蔵する充実した資料の高精細画像
あの《洛中洛外図屏風》も拡大して鑑賞できる

大学共同利用機関である歴博は、地図や古文書・拓本などのほか、屏風や絵巻・絵画なども数多く所持しています。「WEBギャラリー」の《洛中洛外図屏風(歴博甲本)》コンテンツは、人々の服装や髪型などの細かい点を確認できる高精細画像版や、龍安寺や衣笠山などの図中の場所を確認できる説明入り画像版のほか、屏風が作成された背景や主題などが学習できるeラーニングなど、驚きの充実ぶり。人の流れや時間を気にせずじっくり鑑賞できるのは、オンラインならではの楽しみの一つです。

WEBギャラリー:《洛中洛外図屏風(歴博甲本)》左隻 〔高精細画像版〕

WEBギャラリー:《洛中洛外図屏風(歴博甲本)》左隻 〔高精細画像版〕

WEBギャラリー:《洛中洛外図屏風(歴博甲本)》左隻 〔高精細画像版〕 部分

WEBギャラリー:《洛中洛外図屏風(歴博甲本)》左隻 〔高精細画像版〕 部分

スマートフォンからでも見やすい館内マップ「れきはく宝探し(館内マップ)」でも、資料画像を解説つきで見ることが可能。イラストが豊富でわかりやすくまとまっており、まるでダンジョンに散らばるアイテムを収集・確認するような感覚で楽しむことができる、遊び心豊かなコンテンツです。

れきはく宝探し(館内マップ):説明は日本語のほかに英語、中国語、韓国語と多言語対応している。

れきはく宝探し(館内マップ):説明は日本語のほかに英語、中国語、韓国語と多言語対応している。

先史・古代の文化と最先端の技術
バラエティ豊かなコンテンツと新しい試み

佐倉城址の一角につくられた歴博は、約13万平方メートル、延べ床面積約3万8千平方メートルの壮大な規模を有する機関です。また、博物館から歩いて10分ほどのところにある『くらしの植物苑』は、日本の生活文化を支えてきた植物が栽培されており、「食べる」「織る、すく」「染める」「治す」「道具を作る」「塗る、燃やす」という6つの地区に分けて植栽されています。また、随時公開されている「今週のみどころ」から旬を迎えている植物をオンライン上で楽しむことができます。

くらしの植物苑

くらしの植物苑

くらしの植物苑 今週のみごろ

くらしの植物苑 今週のみごろ

また、これまでも公開されていた、日本の歴史や文化について楽しく学べる子ども向けの《こどもれきはく》があります。ダウンロードができる手作りキットや館内こどもマップなどはイラストと写真入りでカラフルですし、書き込みができるスペースもあるので、遊び用にも学習用にも活用できるでしょう。

こどもれきはく

こどもれきはく

こどもれきはく 手作りキット

こどもれきはく 手作りキット

こどもれきはく 館内こどもマップ

こどもれきはく 館内こどもマップ

歴博の研究対象は、先史・古代から始まり、1970年代の現代までが中心となりますが、参加しているプロジェクトや活用している技術には最先端のものが含まれます。例えば《古文書プロジェクト》では、歴史資料を現代の活字にしてデータとして扱いやすくする作業「翻刻」を共同で行う「みんなで翻刻」という参加型のプロジェクトもあります。「みんなで翻刻」は、凸版印刷株式会社が開発したAIと、人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)が開発したAIを利用して、AIによる自動くずし字認識などを行うことができます。

みんなで翻刻

みんなで翻刻

博物館や美術館の展示は、何年も前から準備をおこない積み上げてきた努力の結晶ですが、今春は多くの展覧会が延期・中止となっています。国際企画展示『昆布とミヨク-潮香るくらしの日韓比較文化誌』についても、調査・研究から考えると5年がかりの企画だそうですが、残念ながら一般公開されずに終わってしまいました。本企画のYouTubeコンテンツは「なんとしても紹介したい一心で」制作された、熱い想いの塊です。『どこでもれきはく』を閲覧すると、研究者をはじめ企画に携わった人々の傾けた情熱や注いだ時間を実感できるでしょう。再開した暁には実際に足を運び、ユニークな展示の数々を季節の花々と共に楽しんでいただければと思います。

文=中野昭子、画像=オフィシャルサイト引用

施設情報

 
国立歴史民俗博物館
〒285-8502 千葉県佐倉市城内町 117
https://www.rekihaku.ac.jp
 
新型コロナウイルス感染防止のため、現在、臨時休館・休苑中の本館並びにくらしの植物苑について、6月30日(火) を目標に再開館・開苑の準備を進めております。
詳細につきましては決まり次第、国立歴史民俗博物館公式サイトなどでお知らせいたします。

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