牧阿佐美バレヱ団「サマー・バレエコンサート 2020」、一夜限りのガラ公演~歴史あるバレヱ団ならではのレア演目にも注目

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2020.6.26
『ラ・バヤデール』 (C)スタッフ・テス㈱

『ラ・バヤデール』 (C)スタッフ・テス㈱

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牧阿佐美バレヱ団では2020年8月11日に一夜限りのガラ公演「サマー・バレエコンサート 2020」を上演する。コロナ禍により座席数などに制限はあるものの、ファンにとっては待望のバレエ公演だ。演目は『シェヘラザード』や『ラ・バヤデール』、『海賊』など古典作品のパ・ド・ドゥのほか、日本バレエの草分けとし、60年以上にわたる長い歴史を積み重ねてきたバレヱ団ならではの演目も並ぶ、バレヱ団の個性が非常によくあらわれたもの。中には数十年振りに上演されるというレアな演目もあるなど、日本のバレエの歴史にもふれられるような、そんな味わいも含んだ公演となるだろう。(文章中敬称略)


■バレヱ団64年の歩みのなかから、選りすぐりの作品を上演

牧阿佐美バレヱ団の創立は1956年。日本バレエの草分けの一人、牧の母である橘秋子(1907~1971)が1933年に設立した橘バレヱ研究所と橘秋子バレヱ団を母体としており、64年の歩みの中で海外の古典作品や名作の上演のほか、日本の物語や文化をテーマとした作品を含む数々の創作バレエも生み出しながら、日本のバレエを牽引してきた。今回のサマー・コンサートで上演される牧阿佐

美振付『ゴットシャルクの組曲』(1985年)、『カルメン』(1971年)、『トリプティーク(青春三章)』(1968年年)、あるいは橘秋子振付『角兵衛獅子』(1963年)などは、日本のバレエの発展を目指し、様々な試行錯誤や交流の中で生まれてきた、バレヱ団ならではのオリジナル作品である。

『角兵衛獅子』 (C)エーアイ、撮影:塩谷武

『角兵衛獅子』 (C)エーアイ、撮影:塩谷武

なかでも『角兵衛獅子』は日本文化を題材とした、バレヱ団の代表的な作品のひとつ。実はこれは牧阿佐美バレヱ団ゆかりの橘バレヱ学校が2020年に創立70周年を迎えることから、4月の記念公演の演目として予定されていたものだった。初演時は森下洋子や大原永子(新国立劇場バレエ団芸術監督)が、さらには川口ゆり子(バレエ・シャンブルウエスト芸術監督)などが主要キャストを踊ったという歴史的演目の第2幕が、今回42年振りに再演される。ダンサーには阿部裕恵、光永百花という期待の若手が名を連ねているのも楽しみだ。

さらに『ゴットシャルクの組曲』は牧阿佐美が指導する若手ダンサーの登竜門「A.M.ステューデンツ」で踊られている作品で、今回は男性ダンサーのために新たな振付でお目見えする。

『コサックの歌』 (C)O.S.アーツプロダクション㈱

『コサックの歌』 (C)O.S.アーツプロダクション㈱

また『カルメン組曲』は牧と交流のある音楽家、芥川也寸志がシチェドリンに音楽使用の許可を得て、牧に振り付けを依頼した作品。さらに芥川自身が書いた曲に牧が振り付けた『トリプティーク(青春三章)』はテレビでも放映され、評判を博した。この『トリプティーク(青春三章)』は現在牧が所長を務める新国立劇場バレエ研修所で振付を変えて上演されているので、目にした者もいるかもしれない。今回はオリジナルの振り付けが30年振りに上演される予定だ。現在指導者としても活躍しているダンサー、イルギス・ガリムーリンによりロシアから日本に伝えられた『コサックの歌』は2019年に初演し、今回は2度目の上演となる。

『シェヘラザード』 (C)スタッフ・テス㈱

『シェヘラザード』 (C)スタッフ・テス㈱

コロナ禍により海外との交流再開も依然不透明で、外国生まれの作品の上演がなかなか難儀しそうな状況にある一方で日本の振付家、日本生まれのバレエへの注目も高まりつつある。そうしたなか、このたびのサマー・コンサートで牧阿佐美バレヱ団がコツコツと創り上げてきた作品が上演されるのは実に興味深い。1960年代、あるいは70年代につくられた作品に若いダンサー達がどのような命を吹き込み新たな時代の風を生み出すのか、その点にもぜひ注目してみたい。

公演情報

牧阿佐美バレヱ団
サマー・バレエコンサート 2020

【日時】2020年8月11日(火)17:00開演(16:30開場)
【会場】文京シビックホール 大ホール
<1回公演>上演時間 約2時間(休憩1回含む)

 
【演目・キャスト】
■第一部
〇『ゴットシャルクの組曲』より
音楽:ハーシー・ケイ/ルイス・モロー・ゴットシャルク
振付:牧阿佐美
キャスト:菊地研 ほか
〇『カルメン』より カルメンの踊り
音楽:ジョルジュ・ビゼー/ロディオン・シチェドリン『カルメン組曲』
振付:牧阿佐美
キャスト:織山万梨子
〇『コサックの歌』
音楽:ロシア民謡
振付:ニコライ・アンドロソフ
キャスト:濱田雄冴、山本達史
〇『シェヘラザード』より パ・ド・ドゥ
音楽:ニコライ・リムスキー=コルサコフ
振付:ミハイル・フォーキン
キャスト:日髙有梨、ラグワスレン・オトゴンニャム
〇『ラ・バヤデール』幻想の場より
音楽:レオン・ミンクス
振付:マリウス・プティパ
キャスト:中川郁、清瀧千晴、茂田絵美子、三宅里奈、佐藤かんな
〇『海賊』よりグラン・パ・ド・ドゥ
音楽:レオン・ミンクス
振付:マリウス・プティパ
キャスト:青山季可、水井駿介
〇『トリプティーク(青春三章)』
音楽:芥川也寸志(1953年作曲『弦楽のための三楽章(トリプティーク)』)
振付:牧阿佐美
キャスト:米澤真弓、坂爪智来 ほか

 
■第二部
『角兵衛獅子』第2幕
音楽:山内正
振付:橘秋子
キャスト:阿部裕恵、光永百花 ほか

【公式サイト】https://www.ambt.jp/summerballet2020/
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