るぅと(すとぷり)「これまでとは違った自分の音楽を見せていけたら」 配信限定作品『僕は雨に濡れた』インタビュー
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るぅと
動画配信エンタメユニット・すとぷりのメンバーであり、グループの音楽クリエイターとして精力的に楽曲制作を行っている“るぅと”が、2020年8月17日(月)に配信限定作品『僕は雨に濡れた』をリリースした。1stアルバム『君と僕の秘密基地』や元気で明るく楽しいグループイメージとは違う雰囲気に仕上がった今作。制作背景や楽曲に込めた思いなど、『僕は雨に濡れた』が完成するまでに迫ったインタビューをお届けします。
――コロナ禍でなかなか心安まらない日々が続いていますが、るぅとさんはどんな楽しみを見つけながら過ごしていますか?
僕は普段、外にいるときに曲のアイデアがパっと浮かんだりすることが多いんですけど、家にいる時間がすごく長くなったぶん、いろんな音楽を聴く時間が増えて。そのおかげで、音楽の引き出しが増えたんじゃないかな?という気はします。あと、ドラマやアニメを観る時間も増えたから、ドラマやアニメの登場人物たちの人間関係とか、それぞれの置かれている状況をヒントにして、自分の中で新しい物語が生まれてきたりもするんですよ。そういう意味では、コロナ禍の中でも自分なりに有意義に過ごせているとは思います。
――すとぷりでも作詞・作曲を手がけ、コンポーザーとして多くの引き出しを持っていることを感じさせるるぅとさんですが、たくさんインプットすることでますます表現の幅が広がりそうですね。ちなみに、そもそもの音楽的ルーツというと?
中学生のころに好きだったJ-POPのアーティストさんはじめ、いろいろな音楽を聴いてきたので……実を言うと、これがルーツです!というどしっとした柱のようなものはないんです。音楽配信サイトの公式おすすめとか、誰かが作ったプレイリストをいろいろと聴き漁って、このジャンルの曲を作ってみたいなと思ったらとりあえず挑戦してみるという感じで曲作りをしています。
――とても柔軟に、貪欲に吸収しているからこその豊かな音楽性なのですね。
いやぁ、僕は松くん、TOKUくんと一緒に3人で曲を作っていて、みんなで話し合った結果ボツになる曲も多いんですけど(苦笑)。
――決して妥協はしない、ということでもありますよね。
そうですね。少しでも自信が持てないものは、待っていてくださる方たちに届けたくないので。
――だから1曲1曲の完成度が高いのだなと納得です。また、るぅとさんはファンとの直接的な対面ができない中でも、曲を作り、動画投稿や生放送ライブをしているわけですが、その原動力は?
自分の作る音楽を誰かに楽しみにしていただくことって、普通に過ごしていたらなかなかないことだし、特別なことだと思っていまして。動画投稿するにしても、生放送するにしても、僕がなにか発信するときに応援してくださる方たちからの温かい言葉、待っていてくれる想いは、僕にとってとてもありがたいものだし、原動力になっています。
――応援してくださるファンの方たちの存在そのものが、るぅとさんのモチベーションになっているのですね。
本当に、応援してくださる方たちの存在は大きいです。
――8月17日に配信リリースされるEP『僕は雨に濡れた』にしても、ファンのみなさんがとても楽しみにされていることと思います。コンポーザーとして多彩な表情を見せた1stアルバム『君と僕の秘密基地』や元気で明るく楽しいすとぷりのグループイメージとはまた違った、タイトルが示すようにウェットで、心の暗い部分を掘り下げたディープな作品だと感じました。どんな想いやきっかけから制作に向かうにことになったのでしょうか。
確かに、去年リリースした『君と僕の秘密基地』とは曲調がガラっと変わっているから、驚く人もいると思うんですけど……これまでとは違った自分の音楽を見せていけたらなと思いまして。新しいところに踏み込んでみるという挑戦をしてみました。
――『僕は雨に濡れた』のリリースに先駆けて5月に動画投稿された「ジェスター」も、ツイートされたように「新しい僕を感じられる曲」になっていました。
みなさんにちゃんと受け入れてもらえるのか、喜んでもらえるのかっていう不安もあったんですけど、たくさんの方がしっかり受け取ってくれて、喜んでくれて。よかったなと思っています。
――その「ジェスター」は、“中世ヨーロッパの宮廷道化師”を意味するタイトルを冠し、スタイリッシュでジャジーな曲調に“道化師”の悲哀が漂いますが、どんなイメージから生まれた曲なのでしょうか。
「ジェスター」はですね、自分が中学生くらいのころになんとなく感じていた人間関係の「面倒くささ」のような部分を、曲にしてみたんです。
――<悲しいや 成れないや ワンペアには><君らどちらかの居場所を奪いたい>というフレーズ然り、共感してしまう人も多い歌詞だろうなと思います。
たとえば、3人組なんだけど前に2人が並んで歩いていて、自分はそのうしろにひとりでついていくとき、まさに<悲しいや 成れないや ワンペアには>とか、<君らどちらかの居場所を奪いたい>とかって思ってしまっていたよなっていう。今になれば、もし自分がどちらかの居場所を奪ってしまっていたら、あぶれてしまった人は哀しい想いをするって気づくんですけどね。あのころはそこまで考えられなかったよなぁと。
――るぅとさん、やさしいですね。
いえいえ! そんなことは……でも、そう思えるようになったというのが人としての成長であるなら、ポジティブに受け止めたいです。
――それから、孤独、嫉妬、羨望、諦めなど感情があふれ出すいっぽうで、軽やかな言葉遊びや韻踏みもちりばめられていて。それも、「ジェスター」という曲を何度でも聴きたくなる理由なのかなと感じます。
ありがとうございます。聴き心地を重視しながら書いた歌詞でもあるので、そう言っていただけるとうれしいです。
――「ジェスター」に続き、『僕は雨に濡れた』のリリースに先駆け6月に動画投稿された「夜桜非行」は、「今までになくオシャンな曲」というツイート通りのナンバーですね。
「夜桜非行」は、テーマである“夜の街”に似合う、僕なりに思うオシャレなメロディをつけてみました。
――猫目線で描かれているようにも思える「夜桜非行」の歌詞は、“あなた”への届かない想いを抱いている人に痛いほど刺さるのではないかなと。
自分の好きな人に想いがなかなか届かない切なさ、自分の声が届かないような存在の人に想いを寄せている苦しさを、猫を題材に描いてみました。
――るぅとさん自身の体験や記憶がいくらかちりばめられているのか、完全に想像した物語なのか、そのあたりはどうなのでしょう。
「夜桜非行」の歌詞は、僕が頭の中で作り上げた物語ですね。さっきお話ししたように、自分が観たドラマやアニメの場面からイメージが膨らんで、ひとつのオリジナルの物語になりました。
――るぅとさんの楽曲全体に言えることでもあると思いますが、「夜桜非行」は特に、聴いていて鮮やかに情景が浮かぶナンバーです。
自分が曲を作るとき、最初に設定やストーリーを決めてからメロディをつけて、それに合った歌詞をつけるので……だからかもしれないです。聴く人それぞれに、いろいろな世界をイメージしてもらえたらいいなと思っています。
――そして、軽やかでダンサブルな曲調にして<心から笑えない>と歌う、タイトル曲でもある「僕は雨に濡れた」。そのコントラストに驚かされました。
そうなんですよね、この曲。明るいのかと思いきや実はダークっていう(笑)。暗い歌詞を暗い曲調にのせるのではなく、意図的に“カラ元気”を表現してみました。歌詞には、思春期に自分が感じていたこと、つらかったことを書きまして。今、当時の僕と同じように悩みを抱えている人たちに共感してもらえたらいいなという想いで書いた歌詞でもあります。
――日々をもがきながら生きている人にとって、きっと救いにもなる言葉たちです。また、曲調や歌詞がダークであっても、マニアックなものにならずにたくさんの人が受け取りやすい口当たりになる、というのもるぅとさんならではの手腕なのかなと感じました。
松くんやTOKUくんとも話し合って、聴きやすいものようにしよう、ということはいつも考えていて。自分だけがいいと思うのではなく、たくさんの方の心に響くものになっているのだとしたらうれしい限りです。
――人が心の内に抱える哀しみや切なさ、儚さがあらわになった『僕は雨に濡れた』という作品。曲、歌詞、歌い方で場面ごとの心情をていねいに描いていくるぅとさんですが、今回の制作を通じて見つけたものや気づいたことはありますか?
楽曲の幅、自分のできることの幅が広がったなという実感はあって。今後、より可能性を広げていきたいし、広げていけるんじゃないかなという自分に対しての期待感もあります。
――そうやって音楽を生み出すことは、るぅとさんにとってやはり楽しいことですか。
もともと、音楽を作るというのは好きなことだし、楽しいこと。今回また、新たな面を見せることができて、その楽しさもうれしさもどんどん大きくなっているなと感じています。
――『僕は雨に濡れた』を聴いてくれる方たちからの反応も楽しみですね。すとぷりメンバーは、『僕は雨に濡れた』の楽曲を聴いてなにか言ってくれていますか?
「すごいじゃん!」ってホメてくれたりとかはします(笑)。やっぱり、メンバーにそう言ってもらえるっていうのはすごくうれしいし、リスナーさんたちだけでなく、メンバーの声も励みになっています。
――さて、すとぷりとしては、今夏本来であれば初の東京ドーム単独公演を開催するはずが、コロナ禍を受け残念ながら中止になってしまいました。しかし、8月27日には二度目の生配信無観客ライブ『すとろべりーめもりー in すとぷりちゃんねるっ!【Vol.2!!】』の開催が決定しています。3月に行った生配信無観客ライブでは、大きな困難にも突然の理不尽にも負けず、いついかなるときもリスナーのために頑張り続ける姿勢を示し、同じ場所にいなくてもメンバーとリスナーの心はしっかりとつながっていることを証明しましたが、るぅとさんは無観客配信ライブをどうとらえているのでしょうか。
お客さんと対面できなくても、どうにかみなさんを楽しませる方法はないかなということをメンバーみんなで考えて、3月に初めてやってみた無観客ライブ。目の前にお客さんがいない中でライブをするっていうのは、最初はどうしても戸惑いがあって……1曲目を歌っているとき、いつもより緊張してしまったりしたんですよ(苦笑)。でも、画面の向こうでたくさんのリスナーさんが観てくれていると思うと力が湧くし、1回目の経験を生かして、よりよいライブをお届けできたらいいなと思ってます!
――ファンの方からのリクエスト曲を取り入れたスペシャルプログラムを予定されているんですよね。
そうです。すでにリスナーさんからたくさんのリクエストをいただいているので、その中からどの曲を披露しようかとか、夏に相応しい曲も入れたいねとか、メンバーみんなで相談しながらセットリストを考えています。この夏の一大イベントとして、とにかくリスナーのみなさんに楽しんでいただきたいし、喜んでいただける内容にするために、全力で臨みたいと思っています。
――楽しみにしております! すとぷりは今年6月に4周年を迎え、5周年というひとつの節目に向かって走り続けているわけですが、すとぷりメンバーとして、今るぅとさんが思うのはどんなことなのでしょうか。
すとぷりって、歌を歌っている人もいればゲーム実況をしている人、ツイッターでおもしろ動画を投稿している人もいて、本当に方向性がバラバラな人間が集まったグループなんですけど(笑)、だからこそ集まったときにおもしろい化学変化が生まれるんですよ。これからもお互いの個性やいいところは大事にしながら、一緒に進んでいきたいな、リスナーのみなさんが楽しめることを届けていきたいな、と思っています。
――ソロでもグループのメンバーとしても、“楽しんでもらいたい”という気持ちがとにかく大きいのですね。では、るぅとさんにとってすとぷりとは?と問われたら、どう答えますか?
すごく長い時間一緒にいるし、つらいことも一緒に乗り越えてきたメンバーは、戦友でもあるし、家族でもあるし、かけがえのない存在。すとぷりは、僕にとって大事な居場所です。
――そんな大切なホームがあるいっぽう、ソロ活動だからできること・したいこともあるわけですよね。
ライブにしろ生放送にしろ動画投稿にしろ、グループとしてももちろん気持ちは伝えることはできますけど、ソロでは僕個人が届けたい想いを、より深く、ていねいに届けられるというか。そういう自分の発する音楽を好きになってくれたり、応援してくれたりする人たちのためにも、期待に応えられる作品をこれからも生み出していきたいなと思っております。
――今後、ソロで挑戦してみたいこともあるのでしょうか。
音楽的には、どんどんいろいろなジャンルに挑んでみたいです。音楽以外では……すとぷりのメンバーってみんなすごくおもしろいので、自分もおもしろくなりたいなという気持ちもあります!(笑) 今は本当にたくさんの人に応援してもらえているわけですけど、それってすごく特別なことで、奇跡だなとも思っていまして。みなさんの愛に感謝をしつつ、いろいろな表現でみなさんのことを楽しませ続けていきたいです。
取材・文=杉江優花
リリース情報
2020年8月17日(月)配信スタート
1.ジェスター
2.夜桜非行
3.アイディー
4.腐心
5.僕は雨に濡れた