岸惠子「負けてめげない。何かをつかみ、勝ちにする」 スペシャルトークショー『岸惠子 いまを生きる』記者会見レポート

2020.8.20
レポート
舞台

岸惠子

画像を全て表示(3件)

 

女優・作家として活躍する岸惠子が2020年10月、自身が企画・構成・出演するスペシャルトークショー『岸惠子 いまを生きる』を開催する。公演に先駆けて8月14日(金)、記者会見を開いた。

8月11日(火)に88歳の誕生日を迎えたという岸は「長いこと生きてしまって、今更生きることについて語るのは照れくさい」としながらも、「ごまかしのない。自分に正直な生き方をしてきた」と柔らかにほほえんだ。結婚を機に拠点を持ったフランスでは、差別もあったが「負けても負けたままではいない。そこから何かをつかみ取って、それを勝ちにするという技を手に入れた」と吐露した。

岸は18歳の時に映画『我が家は楽し』でデビュー。終戦からその後を描いた映画『君の名は』のヒットで人気は全国区になった。岸が演じたヒロイン・真知子が、ストールを頭から肩までくるりと巻いた姿は、「真知子巻き」と呼ばれ、女性たちの間で大流行した。人気絶頂の中、映画の仕事で出会ったフランス人の映画監督イヴ・シァンピと結婚するため24歳で渡仏。岸は「日本が外国への旅行を禁止していた時代に、飛び立っていった。祖国を捨てて、2度と帰らないかもしれないという覚悟だった」と当時の決意を語った。

岸惠子

意を決して向かったフランスでは「文化も違い精神も違い、カルチャーショックなんて簡単な言葉では尽くされない、非常に強いショックを受けた」と告白。暮らしを続けていく中で、「日本には『敵の懐に飛び込め』という言葉があるけれど、フランスには『敵を自分のポケットにねじ込め』っていう言葉があることに気がついた。だから私はこの両刀使いになりました」と柔軟に生きていく術を手にしたことを明かした。

しかし国境が地続きのフランス人は、島国で生きてきた自身にない「したたかな強さがあり、負けてしまうことも多い」。「現在も壁にぶつかることがある」と頭を悩ませる。だが「負けてめげない。負けた中から何かを学び取るというのを、何年も何年も経っていくうちにどこかで拾ってきたんです。それで気がついてみたら、私もしたたかに強い女になったと思います。それがいいことか、悪いことかは分からないけれど。生まれたままの私よりも、かなり試練に耐えた分だけ、強い女になったと思います」とほほえんだ。

会見では試練の一つとして、1975年に経験した離婚を挙げ、「当時の日本は、私が母親であったために、娘に日本国籍をくれなかった。父親であったらくれたんですけれど。その後、法律は変わりましたけれど、そのときにはすでに彼女はフランス人になってしまって、日本語もしゃべれない。読み書きもできない。外国の人になってしまった。そういういろんな巡り合わせが、私にひどい苦労をかけてしまうことになった。でもその苦労を生きたことで、どこかで『あぁ、負けても負けたままではいない。そこから何かをつかみ取って、それを勝ちにする』という技を手に入れた気がします」と振り返った。

岸惠子

新型コロナウイルス感染者が世界で2千万人を突破(米ジョンズ・ホプキンス大学発表)している今、日仏に拠点を置き活動する岸にも暗い影を落としている。日仏の往来が制限されていたこともあり、今年はまだフランス訪問がかなっていない。一人娘や孫たちに会えない生活に「ストレスが溜まっている」と眉をひそめる。自らの生活については「コロナが始まる前も今も、生きる姿勢に変わりはありません」と口にしたが、「地域主義が進み、国際的な感覚がなくなっていくことが不安。世界中が閉じこもった国ばかりになること。それが一番怖い」と思いを込めた。

米寿を迎えたことを知った人に、『88歳には見えないですね』と言われることもあるというが、「今の私は、『88歳に見えない』という部分しか、褒め言葉がないのでしょうか。情けないですね」とおどけて見せた。若さの秘訣は「自然体で、自分にできることを誠心誠意やることです」と話した目が輝いた。

トークショーでは、しなやかに生きる術を学んだ自身の経験なども語られる予定だ。一人語りで行われる公演は、10月3日(土)の新宿文化センター(東京都新宿区)を皮切りに、神奈川・埼玉・千葉の4都市で8公演を展開。最終公演は、岸が生まれ育った神奈川県横浜市にある神奈川県民ホール 大ホールで10月26日(月)に開催される。「(公演がある)10月にコロナがどうなっているのか分からないので、『どうぞ劇場にいらしてください』と今、話すことは、ちょっと気が引けるけれど、足を運んでいただけたらうれしいです」と呼びかけた。

取材・文=Ayano Nishimura

公演情報

『岸惠子 いまを生きる』
 
■公演期間 ※開場は開演の60分前
2020年
10月3日(土)13:00 新宿文化センター 大ホール(東京)
10月4日(日)13:00 新宿文化センター 大ホール(東京)
10月10日(土)13:00 相模女子大学グリーンホール(神奈川)
10月11日(日)13:00 川口リリア大ホール(埼玉)
10月14日(水)13:00 オリンパスホール八王子(東京)
10月18日(日)13:00 なかのZERO大ホール(東京)
10月24日(土)13:00 習志野文化ホール(千葉)
10月26日(月)13:00 神奈川県民ホール 大ホール(神奈川)
 
料金: 前売 4,800円 / 当日 5,000円(全席指定/税込)
※上演時間は約60分。 ※未就学児入場不可
※会場内ではマスクの着用を必須とさせていただきます。 必ずご持参ください。
※新型コロナウイルス感染防止対策のため、 購入された席位置から隣に移動して頂き、
お席の間隔を確保した上でご観劇頂く場合がございます。
一般発売: 2020年9月5日(土)AM10:00~ ※8月12日(水)から先行販売開始予定。
公式サイト: https://kishikeiko2020.wixsite.com/imawoikiru
お問い合せ: サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
 
■企画・構成・出演:岸惠子
■ヘアメイク:石田 伸(アーツ)
■装花:小野寺千絵(mermelo)
■制作:スペースポンド
■協力:MY Promotion
■主催 :サンライズプロモーション東京
■後援 :ニッポン放送、 TBSラジオ
  • イープラス
  • 岸惠子
  • 岸惠子「負けてめげない。何かをつかみ、勝ちにする」 スペシャルトークショー『岸惠子 いまを生きる』記者会見レポート