マンガ・アニメ・ゲーム・特撮など、500点以上の作品から見えてくる“東京”の過去・現在・未来 『MANGA都市TOKYO』鑑賞レポート

2020.8.25
レポート
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アート

『MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020』

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これまで数々の物語の舞台となっている巨大都市・東京。破壊と復興を繰り返してきた街の姿は、時にアニメやマンガなどの作品を通して、人々に鮮烈な印象を残してきた。国立新美術館にて開催中の『MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020』(会期:〜2020年11月3日)は、東京がマンガ・アニメ・ゲーム・特撮作品のなかでどのように表現されてきたかを、豊富な原画やアニメ制作資料、映像などから紐解いていくもの。90以上の作品タイトルと500点以上の作品から東京の歴史と日常をたどりつつ、現実と虚構が織りなす都市の様相に迫る展示となっている。

『美少女戦士セーラームーン』(原作:武内直子)

『シティハンター』(北条司)

『STEINS; GATE』(発売元:MAGES./Nitroplus)

巨大な東京の都市模型をはじめ、『初音ミク』や『ラブライブ!』など、東京の街に溶け込むキャラクターや作品による再現インスタレーションも見逃せない。リアルとフィクションが交差する会場より、本展の見どころをお伝えしよう。

『龍が如く 極2』(発売元:セガ)

本展オリジナルキャラクターのヨリコ(右)とその相方ヴィッピー(左)。キャラクターデザインを手がけたのは吉成曜(トリガー所属)

会場エントランス

破壊と創造を繰り返してきた都市・東京

本展覧会は、2018年冬にパリで開催され、3万人超を動員した『MANGA⇔TOKYO』展の、日本への凱旋展示となる。会場の中心には縮尺1/1000の巨大な東京都市模型が置かれ、これを囲むような形で四方に展示が展開する。

1/1000 巨大東京都市模型 インスタレーション

前方の巨大スクリーンには、東京の破壊を描いた『AKIRA』や『ゴジラ』、『シン・ゴジラ』の象徴的なシーンをはじめ、東京の街を美しい映像で描き出した、新海誠監督による『言の葉の庭』や『秒速5センチメートル』、お台場に出現した実物大のユニコーンガンダム立像、都内を疾走する『グランツーリスモ』の画面などが、迫力満点に映し出される。ゴジラが破壊したエリアがライトアップされるなど、スクリーンの映像と都市模型が呼応するような演出にも注目したい。

巨大スクリーンの映像に合わせて、ゴジラの破壊したエリアが明るく照らされている

東京の街の変化は、マンガ・アニメ・ゲーム・特撮によって多面的に写し取られてきた。展示は大きく3つのセクションに分かれており、セクション1「破壊と復興の反復」では、天災や戦争によって破壊と復興を繰り返してきた歴史を持つ東京を題材にした、代表的な作品を取り上げている。

セクション1「破壊と復興の反復」より『AKIRA』(大友克洋)の展示風景

セクション1「破壊と復興の反復」より『ゴジラ』の展示風景

2019年の「ネオ東京」を舞台に少年たちの戦いを描いた『AKIRA』や、巨大な怪獣が都内を次々と襲撃し破壊する『ゴジラ』シリーズ、東京が水没した後の世界で、新たに築かれた計画都市・第3新東京市を舞台に「使徒」の侵攻にあらがう『エヴァンゲリオン』シリーズなど、フィクションの中で度々破壊されてきた東京の姿を展示資料からたどる。ほかにも、東京大空襲や関東大震災など、東京の災害史と結びついてきたマンガやアニメ作品が紹介されている。

セクション1「破壊と復興の反復」より『エヴァンゲリオン』シリーズ(庵野秀明)の展示風景

『陽だまりの樹』(手塚治虫)

めまぐるしく変化する東京の日常

破壊と復興の合間には、人々の日常が存在した。セクション2「東京の日常」では、前章とは対照的に、平和な日常の世界を描写した作品群を「プレ東京としての江戸」「近代化の幕開けからポストモダン都市まで」「世紀末から現在まで」の3つの区分に分けて展示。展示前半には町民や武士の生活、遊郭や遊女などを題材に、江戸の暮らしや文化をテーマにした作品が続く。

『竹光侍』(松本大洋・永福一成)

江戸時代に浮世絵の木版画が流行し、歌舞伎役者や茶屋の看板娘が人気の題材になったように、日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮の多くも、キャラクターの魅力が作品の人気を支えている。参考資料として展示される浮世絵とマンガ原画の表現を見比べてみても面白いだろう。

『さくらん』(安野モヨコ)

19世紀後半から急速に近代化が進んだ首都・東京は、第二次世界大戦での敗戦を経て、20世紀後半には著しい経済発展を遂げた。その激動の時代のなかで、人々の生活もめまぐるしく変化してきた。

『はいからさんが通る』(大和和紀)

そのような時代を背景とした特徴的な作品として、大正時代を舞台にしたラブコメディ『はいからさんが通る』や、高度経済成長期の日本を描いたボクシング漫画の名作『あしたのジョー』、華やかなバブル期の都内の名所が登場する短編連作マンガ『東京エデン』などの原画が出品されている。

『あしたのジョー』(高森朝雄・ちばてつや)

『東京エデン』(わたせせいぞう)

一方、20世紀末以降、経済的な低迷期に入った日本では、ささやかな日常の中に幸せや美しさを見出すような傾向が見られるようになった。展示後半では、近年国内で大ブームを巻き起こしたアニメ映画『君の名は。』の映像資料や、高校生棋士を主人公にした『3月のライオン』の原画などが紹介されている。多種多様な作品を通して東京の街の変遷をたどりながら、現実の<東京>と、フィクションの<東京>の姿が複合していくような感覚を味わいたい。

セクション2「東京の日常」展示風景

『3月のライオン』(羽海野チカ)

街に現れ、街に溶け込むキャラクターたち

最後のセクション「キャラクターvs.都市」では、現実の都市空間に現れたキャラクターたちを取り上げる。人型の誘導用看板から製薬会社のマスコットキャラクター、招き猫や信楽焼の狸など、マンガ・アニメのキャラクターより以前から、国内ではさまざまなキャラクターを街中で見かけることができた。

セクション3「キャラクターvs.都市」展示風景

現在では、アニメ・マンガ・ゲーム・特撮のキャラクターたちが、電車やバスなどの公共交通機関の外装や、コンビニや商業施設の大型広告などに日常的に現れるようになった。彼らが秋葉原の街や池袋の「乙女ロード」と呼ばれる特定のエリアを彩ることによって、フィクションが時にリアルな東京の街の印象を形作るうえで大きな影響を及ぼしていることがわかる。

電車と『ラブライブ!』展示風景

会場には、2016年に行われたJR山手線での『ラブライブ!』のキャンペーンから、広告物の一部を展示した車内の様子や、2017年に行われたコンビニエンスストア・NewDaysとボーカロイドの『初音ミク』とのタイアップ空間が、インスタレーションで再現される。ほかにも、作品の舞台となったロケ地をめぐる“聖地巡礼”が東京の特定のスポットに作用した事例などを紹介している。

コンビニエンスストアと『初音ミク』展示風景

『MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020』は2020年11月3日まで。東京という街とフィクションの相互関係によって生み出される巨大都市のイメージを、ぜひ会場で膨らませてみてはいかがだろうか。

文・撮影=田中未来

イベント情報

『MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020』
会期:2020年8月12日(水)〜11月3日(火・祝)
休館日:毎週火曜日 
※ただし、9月22日、11月3日は開館(9月23日(水)は休館)
会場:国立新美術館 企画展示室1E
開館時間:10:00〜18:00 ※入場は閉館の30分前まで
は事前予約制。専用オンラインサイトで日時指定券をご購入ください。
展覧会ホームページ:https://manga-toshi-tokyo.jp
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