坂崎ユカインタビュー 1年間ベルトを守り抜いた魔法少女が、団体史上最大のビッグマッチでタッグパートナーと防衛戦!「東京女子でしかできない、私と瑞希にしかできない試合をしたい!」
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東京女子プロレスが旗揚げ以来最大のビッグマッチを11月7日(土)、東京・TOKYO DOME CITY HALLにて開催する。
メインは第7代王者・坂崎ユカが瑞希の挑戦を受けるプリンセス・オブ・プリンセス選手権試合。坂崎は昨年11月3日、DDT両国国技館にてライバルの中島翔子を破り同王座2度目の戴冠。以来ベルトを守り抜いているが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により大会自粛がつづき、思うような防衛活動もできなかった。しかし、TDCでのビッグマッチ開催が正式に決まり、あらためて意気込んだところで挑戦者がマジカルシュガーラビッツのタッグパートナー瑞希に決定。坂崎にはうれしさと同時に動揺も…。コロナ禍で揺れた心中とともに、ビッグマッチを控えた現在の心境を語ってもらった。
<プリンセス・オブ・プリンセス選手権試合>
[王者]坂崎ユカ vs 瑞希[挑戦者=第7回東京プリンセスカップ優勝者]
※第7代王者4度目の防衛戦。
――団体史上最大のビッグマッチ、TDCホール大会が近づいてきました。現在、どんな心境ですか。
「そうですね、やっと少しずつ、目を背けていたタイトルマッチを意識しはじめたというか、やらなきゃな!という気持ちが強くなってきています」
――目を背けていたというのは?
「瑞希とはタッグを組んでいて、プライベートでもけっこう仲良しなんですね。ふだんの瑞希ってフワフワしてるんです。お客さんもわかると思うんですけど、どっちかというと守ってあげたくなるというか、そういう気持ちになる選手。でも実際に対峙すると、打たれ強かったりとか攻撃が鋭かったりする。思ってた以上に強いんですよ。そんなこともあって、なんかやりにくいかなっていう気はするんですね」
――マジカルシュガーラビッツのパートナー対決になるとは考えておらず、次期防衛戦は別の相手を想像していた?
「ハイ、そうなんです」
――今年は坂崎選手のみならず、大変な年になってしまいました。新型コロナウイルスの影響で多くの大会が中止、再開後も中止になることがありました。
「自分が思い描いていた計画とはまったく違う状態になってしまいましたね、去年の11月に中島翔子からベルトを取ってからは、防衛を重ねて最多防衛記録を飾ってやるぞ、海外の試合も決まってけっこう意気込んでエンジン全開だったんですけど、大会がなくなり防衛戦もできなくなって、急に目の前に壁がバーンとできてしまって。最初のうちはかなり戸惑うばかりだったんですけど、でもまあとりあえず目の前のことを、団体が存続しないと意味がないとか、暗い状況で私たちが落ち込んでてもなあという、お客さんも気が落ちないように手を取り合ってといいますか、助けてもらいながら、助け合いながら意識をいま生きることの意識をけっこう高めていた時期でした。なので、より深いところで東京女子を考えられたというか、お客さんのことも考えられましたね。団体がないと選手というのはできないんだなとあらためて実感して。やっぱり全部ないと、ひとつでも欠けたらダメなんだなと。防衛もしたかったけど、まずは団体があって続くことが大事だなと思いました」
――団体を引っ張るべきチャンピオンだからこそ余計に責任感が大きくなったのではないですか。その分、不安も大きかったとは思いますが。
「そうですね、なおさら引っ張らなきゃという気持ちはありました」
――ほかの選手たちはどうでしたか。
「ほかの選手もけっこう動揺したりとかはあったんですけど、各々が配信だったりとか、そういう部分で才能を開花させた子もいましたし、いろいろとプロレス観が定まった子もいたので、そういう意味では悪くない期間だったのかなとは思います」
――個性を磨いたりとか、あらためてプロレスについて考える時間も取れたと。
「ハイ、そうですね」
――TDCホール大会はかなり早い段階から開催が発表されていました。それに向けてモチベーションは高かったと思いますが、自粛期間中には開催ができなくなるのではという不安も出てきたかと思います。
「そうですね。年内の開催は無理なんじゃないかくらいになっていたので、TDCができるとわかってからは、開催がかなりの希望になりました。それまで絶対にやるぞという気持ちもありましたけど、開催が正式に決まってからは、いままで以上にウイルス対策だったりとか、自分がかからないようにする、うつさないようにするというのをよりいっそう意識するようになりましたね」
――開催が正式に決まり、開催が東京女子の希望になったと。
「そうですね。後楽園ホール大会の再開も、どんよりした空気に光がさせたと思いました。さらにTDC開催により、またここから別の階段を上れるのかなと、別のステージにいけるのかなという気はしているので、ここ(の成功)は外せないですね」
――その希望が詰まった大会でメインでのタイトルマッチ。しかも相手がトーナメントを優勝したタッグパートナーでもある瑞希選手。決まったときには坂崎選手も涙を流していましたが、瑞希選手の優勝する姿を見て、どういう心境だったのでしょうか。
「トーナメント、私は2回戦で敗退してしまったんですけど、その間も瑞希は私のセコンドについてくれましたし、私も瑞希のトーナメントを駆け上がっている間はセコンドについたりしてて、そのときからうっすら思ってはいたんですよ、瑞希がこのまま優勝するかもって。でも実際にリングサイドではそんなこと忘れるくらい応援していたので、実際に瑞希がトロフィーを抱えたときに、やっぱりその通りになったと思い出したというか。そのあと、瑞希が挑戦するってなってから、ちょっと心が揺れたんですね。そ、そうだよね、瑞希が挑戦するんだよねっていう。なんかそのときは、やってやるぞってすぐに切り替えはできなかったんです」
――いまでは切り替えができているのでしょうか。
「やるぞ!という気持ちのときもあれば、できればなんとかならないかなと、瑞希と闘わないでいい方法を考えている自分もいたりとか。揺れ動いている状態ではあるんですけど、でも、その揺れ動いている割合が、もうやらなきゃ!っていう気持ちの方が多くなってる感じはあります」
――昨年11月、DDT両国でタイトルを取ったときは中島翔子選手からベルトを奪いました。その試合もかつてのパートナーですが、あのときと今回では違いますか。
「違いますね。中島とは組んでいるときからとなりにいてもライバルというか、個々で闘っている感じが強かったので。なので、瑞希とは全然感覚が違うかもしれません」
――では、気持ちが揺らぎながらも闘う決心をしたこの試合で、なにを見せたいですか、なにを見てほしいですか。
「東京女子の試合って東京女子でしか感じられない試合だと思うんですよ。やっぱり従来の女子プロレスと呼ばれているものとはジャンルが違うというか、フィールドが違うと思っているので、私たちは。なので、中島翔子のときは東京女子の試合、東京女子とはこういう試合(を見せたい)、だったんですけど、瑞希との今回の試合は東京女子の試合なんだけど、東京女子でしかできない試合。ニュアンスが難しいですけど。私と瑞希でしかできない試合、という気がしています」
――ということは、東京女子は女子プロというよりも東京女子というジャンルという意識でみんなが試合をしているわけですね。
「ハイ、やってます」
――ほかの選手もそうですか。
「そうだと思います。なかにはそこまで深く考えていない子もいるとは思いますけど(笑)」
――少なくとも坂崎選手はその意識でやっている。
「そうですね、ハイ!」
――では、この試合で瑞希選手になにを望みますか。
「いまの瑞希はエンジン全開でくると思ってます。前哨戦もありましたけど、タイトルマッチが決まってから瑞希とタッグを組むこともあったんですね。そのとき、いつも通り瑞希のピンチに私がアシストしたら、瑞希がすごく怒ったんですよ。なので、私がちょっと力が抜けたような攻撃でもしたら瑞希は怒るんだろうなと思うので、全力で最初からいこうと思います」
――瑞希選手はタイトル戦決定以降、完全に対戦モードに切り替えているということが伝わってきたのですね。
「ハイ、そうですね」
――過去のシングル戦績は?
「イベント的な試合も含めると4回やってますね。2勝2引き分けだと思います。ひとつは15分引き分け」
――前回の防衛戦のとき、坂崎選手は新技を出しましたね。“魔法少女にわとり野郎”という斬新なネーミングでした。魔法少女スプラッシュの進化形ですね。大会自粛期間中に開発したものですか。
「準備はけっこう昔からやっていたんですけど、出しどころというのを自分でまだ決めかねてました。でも、自粛から解放されての一発目の後楽園だったので、あえてここで出しました」
――では、次期防衛戦の瑞希戦で考えていることはありますか。
「そうですね、でも、う~ん、う~ん、お互いの技だったりとか、やることはもちろんわかっていますし、攻撃パターンも読まれているので、その裏をどれだけかけるかというところですかね。新技があったとしても、出すか出さないかの判断はまだついてないです」
――駆け引きがキーポイントになりそうですか。
「ハイ、そう思ってます」
――ここを乗り越えればベルトを取って1年を超えますよね。初戴冠時には一度も防衛できませんでしたが、2度目の戴冠となる今回は丸一年ベルトを巻いていることになります。
「そうですね。中島から取って、山下実優、ラナ・オースチン、愛野ユキに防衛して次が瑞希なので、4度目の防衛戦。期間で言ったら一年になります。長いようですけど、まだチャンピオンとしてやりたいことがあります。このベルトを持ってアメリカで興行を打つというのが流れてしまって、ホントにそれが悔しくて、それを叶えたいと思ってるんです。情勢的に難しいかもしれないですけど、世の中が明るくなるまで持ちつづけたいなという気持ちはあります」
――海外での興行も可能になり、そのときはチャンピオンとしていきたいと。
「そうですね、そうしたいです」
――東京女子のエースは山下実優選手と言われてきましたが、いまは自分だという自負はないですか。
「エースっていう概念はちょっと難しいんですけど、でも東京女子と言えば坂崎と言われるくらいにはなりたいと思ってます」
――TDC大会は団体史上最大のビッグマッチですから大きなチャンスでもありますね。
「ハイ、そうですね」
――TDC後の東京女子をどうしていきたいと考えていますか。
「いま、女子プロレス、プロレス界にもいろいろ不安だったり状況が変わってきているときですけど、東京女子らしさといいますか、東京女子らしさはなにがあっても崩さないという信念を貫き通しながらいきたいと思います」
昨年は、DDTグループでの両国大会で東京女子を代表し団体最高峰のシングルベルト奪取をやってのけた坂崎。あれから1年、こんどは東京女子単体でのビッグマッチでメインを飾る。瑞希の挑戦に複雑な思いを抱きながらも昨年以上に「やるしかない!」との気持ちを高めている坂崎。魔法少女が東京女子史上最大のビッグイベントでどんな魔法を見せてくれるのか。旗揚げから7年、初期メンバー坂崎と外部からの参入でビッグマッチのメインまで上り詰めた瑞希が最高峰のベルトをかけ運命のパートナー対決。東京女子の歴史に間違いなく残る大一番を見逃すな!
(聞き手:新井宏)