清春、マーティ・フリードマン、尾崎世界観らが“賛否”入りまじる評価 映画『ロード・オブ・カオス』ミュージシャンらのコメントが到着
(C)2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC
3月26日(金)公開の『ロード・オブ・カオス』を鑑賞したミュージシャンや評論家らのコメントが到着した。
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映画『ロード・オブ・カオス』は、ノルウェー・オスロに拠点を置き、初期ブラック・メタル・シーンの中核的な存在となったバンド「メイヘム(Mayhem)」を題材とした映画。メイヘムは、サタニズム(悪魔崇拝主義)を標榜し、過激なライブパフォーマンスとコープスペイント(死化粧)で世界のメタルシーンを席捲すると同時に、バンドリーダーのユーロニモスが“誰が一番邪悪か”を競い合うアンダーグラウンド集団「インナーサークル」を結成。活動の過激化により、教会連続放火、暴動、果ては複数の殺人事件まで引き起こした。本作では、ノンフィクション『ロード・オブ・カオス ブラック・メタルの血塗られた歴史』を原作に、メイヘムにまつわるいまだ解明されていない事件に触れつつ青春を描いた映画だ。メガホンをとったのは、バンド・バソリー(Bathory)の元ドラマーでもあるジョナス・アカーランド監督。また、シガー・ロスが音楽を担当している。主人公でメイヘムのギタリスト・ユーロニモスを演じるのは、マコーレー・カルキンの実弟でもあるロリー・カルキン。同じくヴォーカルのデッドを、ヴァル・キルマーの息子のジャック・キルマーが演じている。
今回到着したのは、本作をいちはやく鑑賞したミュージシャンや評論家ら。絶賛するものから、「あまり観て欲しくないと」との言葉まで、賛否両論が寄せられている。
コメント一覧は以下のとおり。
清春(ミュージシャン)
ブラック・メタル、詳しくなくて内容いろいろショッキングでした。
やっぱ、こうして後々、映画になっちゃうような、ファンじゃない人達もそれを観て衝撃受けるようなストーリーがロックには必要不可欠なんだと再確認出来ました。
改めて思いますが、僕らの生まれた国、ひたすら平和ですね。
ビビる大木(お笑いタレント)
オレは何を観てしまったのか?ワビサビもない、哀愁もない、青春もない。
オレはポーザーで結構。スコーピオンズを聴きます!
なのに、なのにメイヘムを買っちゃったよ!!!バカヤロー!!
マーティ・フリードマン(intoxicate vol.150 より)
この映画を、あまり観て欲しくないという気持ちもありますね。
メタラーは危険だって誤解されるかもしれないから。
尾崎世界観(クリープハイプ)
ファンには絶対に勧められない。観たら駄目だ。
今でもまだ、ゴムを噛んだ時のようなあの微妙な感じが残ってる。
でも、死ぬ前に思い出すのはこういう映画なのかもしれない。
あー、自分たちが何の変哲もない普通のバンドで良かった!
KOBAMETAL(プロデューサー)
結論から申し上げると、この映画は観てはいけない。
映画ではあるが、あまりにも生々しくて、感じるはずのない「匂い」が感じられるのだ。
ライブハウス特有の酒やいろんな煙が入り混じった匂い。
Schweigaards gateをすり抜ける透き通った北欧の風の匂い。
自らが現地に赴き、体感した匂いの記憶に加え、この映画のおかげで、知るはずのない匂いの記憶まで感じられてしまうことが、あまりにも恐ろしい。
神を焼き尽くす悪魔の炎の匂い。そして、赤く染まった鋼鉄の刃の匂い。
もちろんこの映画を観たい方を引き留めるつもりはない。「ブラック・メタルワールドへようこうそ!」とテーマパークのウェルカムゲートのキャストのように、明るく元気にお出迎えしよう。
ただし、この映画を通して、ブラック・メタルワールドに浸る前に、行きの切符と同時に帰りの切符も必ず手に入れておくことをお勧めする。
片道切符では生贄にされてしまうぞ。
迷える小山羊にならないように、みなさんお気を付けて。
川嶋未来(SIGH)
「今日は教会放火の話はしないでくれ。ICPO が俺たちの会話を盗聴している可能性があるんだ。」電話越しにそんなことを言っていたユーロニモス。
ICPO ってあのインターポール?そもそも教会を焼き払い、それを吹聴し、それで逮捕もされないなんてあり得るだろうか?ヘヴィメタル特有のギミックではないのか?
インターネットもなかった時代、その真偽のほどを見定めるのは容易ではなかった。
そのくらい、彼が伝える話の内容は現実離れしていたのだ。
しかし、蓋を開けてみれば、すべてが真実だった。
放火も、自殺も、そして殺人も。
この『ロード・オブ・カオス』に描かれているように!
増田勇一(音楽ライター)
想像を絶する事実に基づいた、狂気の物語。
しかもその登場人物たちは、あくまで自分たちの価値観や美意識に忠実に、正気を保っているつもりでいる。
物語の舞台は美しく長閑な北欧ノルウェー。しかしその地下にはブラック・メタルが根付き、狭くも深いそのシーン界隈ではさまざまな血なまぐさい事件が繰り返されていく。
ただ、そうした音楽を邪悪なものと決めつけていると、ふとしたはずみに美しさを見出し、驚かされることがあるのと同様に、物語が進んでいくにつれ、この闇の住人たちの言動は、実は純真さゆえのものなのだと気付かされる。漆黒の混じりけのなさは純白にも等しい。
だからこそ怖い。そこに気付いた時にはもう遅いのかもしれない。
ユーロニモスの人生の結末と同じように。
益子寺かおり(ベッド・イン)
あゝ無情。こんなに切なくて残酷な青春映画、やまだかつてない!
メタラーの間では伝説のように語られている、悪名高いメイヘムの逸話。そのイメージを覆す、ピュアで繊細な少年たちの人間ドラマがここにあった。
モノホンを追求するほど加速するパフォーマンス。少年たちが作り上げた過激なルールが、救いようのない悲劇を生む。
ピュアさゆえの狂気、若さゆえの過ち。
きっと誰の心の中にもメイヘムは潜んでいる。
冠 徹弥(THE 冠)
どえらいものを観てしまった。
しばらく頭にこびりついて離れない程ショッキングな作品だ。
そういや 90 年代当時あらゆるメタルに精通していたバンドメンバーにメイヘムの曲を聞かされた事があったな。
その時ブラック・メタルに興味を示さなかったが、もしこの狂気の音楽にどっぷりはまっていたら俺はどうなっていただろう。
宇野維正(映画・音楽ジャーナリスト)
気がついたら仲間に紛れ込んでいる、マジでイカれたヤツ。
冗談が冗談ではなくなる、ポイント・オブ・ノー・リターン。
集団心理のメカニズムとその愚かさをシャープに描いた、「実話ベースの音楽映画」の枠に収まらない震撼の一本。
アメリカでも、日本でも、同じような風景を最近見たばかりだ。
団長(NoGoD)
「思想」は音楽にとって非常に重要なものだと私も認識しているが、彼等のそれは倫理観、そして音楽を置き去りにしていた。
以前『UNTIL THE LIGHT TAKES US』というブラック・メタルのドキュメンタリーを観た時よりも、今作品を観た衝撃の方が遥かに大きかった。
この映画を軽い気持ちで観るのはお勧めできない。白塗りメタルバンドマンのコメディでは決してない。
これは「思想」に取りつかれた若者たちの狂気を描いた「事実」でしかないのだから。
川西全(TBS 報道局/ドキュメンタリー作品"MR.BIG"監督)
ちょっとした虚栄心や嫉妬がエスカレートし、暴走につながるという「若者の危うさ」が良く描かれていました。いちメタルファンとして誤解を恐れずに言えば、メタルというのは音楽性がどうというよりも、反抗心を含む「精神性」にアイデンティティーがあると考えています。基本的に悪魔崇拝などは、そういった反抗心の発露の「手段」であり、「ポーズ」であることがほとんどですが、「ガチな人たちとぶつかるとどうなるか」というメタル界でよくあるテーマが描かれていて溜飲が下がる人もいると思います。『ヘヴィ・トリップ』とは全然ジャンルが違う映画なで、観る前に覚悟が必要ですが、エンドロールまで席を立つことができない、そんな映画です。
人間食べ食べカエル(人喰いツイッタラー)
凄い……。こんなに血と死体が出る音楽映画は今まで観たことがない!!過激を極めるあまり破滅へと向かう若者たちの姿を、妥協一切なしの肉体破壊と共に描いた暗黒青春物語の傑作!
氏家譲寿 a.k.a."ナマニク"(映画評論家)
この映画を観れば嫌でも思い知るはずだ。
ブラック・メタルは”清い”と。
よく「ブラック・メタルは”ヤバい”」と言われるがそうではない。
ブラック・メタルの本質は、希死願望でも殺人衝動でも反キリストでもサタニズムでもレイシズムでもない。その根本となる暴力的なまでの無邪気さだ。
無邪気さ故に、彼らは全てを破壊する。音楽を壊し、友情を壊し、人生を壊す。ただ、その瞳に涙が浮かんでいるよう見えるのは何故だろう?
これは最悪の残酷青春映画。
だから、この映画は”ヤバい”のではない。”清い”のだ。
(順不同・敬称略)
『ロード・オブ・カオス』は2021年3月26日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにてロードショー。以降順次公開。