SHISHAMO『START UP!!-ロックの春2021-』ライブレポートーープレイヤーとしての確固たる実力と新たな境地を開くナンバーで魅了
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SHISHAMO 撮影=渡邉一生
ブレイクタイムを終えたWEST UP!! STAGEには、FM802のDJ・樋口大喜が登場。これまでのアクトを讃え、消毒を徹底しマスクを着用する人々、感染防止対策のオリジナルデザインシートを活用して待機する人々へも感謝を込めながら、次なるステージ・SHISHAMOの名をコール!
SHISHAMO
まずは1曲目の「明日も」から、彼女たちの時間がスタート。モニターに投影された歌詞が、宮崎朝子(Vo.Gt)の健やかな歌声と共に全身へ染み入るようで、<痛いけど走った 苦しいけど走った>と、もがきながらも光ある歌のパワーに、この日を迎えられた喜びを重ねずにはいられない。オーディエンスは力強いバンド・アンサンブルに合わせめいっぱい拳を突き上げ、声は出せずとも通じ合うことができるライブの醍醐味を体現するのだから、しょっぱなから胸いっぱいの心地だ。
SHISHAMO
「……あけましておめでとうございます!」(宮崎朝子)
「え!? 驚くべきことに!」(吉川美冴貴/Dr)
「3月末ですが」(松岡彩/Ba)
「大阪の皆さん、今年もSHISHAMOをお願いします。私たちは今年初ライブ。大阪に来ることができてうれしいです!」(宮崎)
SHISHAMO
ライブやフェスに欠かせないSHISHAMOだけに、ここまでステージに立つことがなかったとはまさに異常事態!? とはいえ、そんなブランクなど微塵も感じさせず、続いては新曲「君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!」へ。バンド史上最長タイトルに込めたインパクトたっぷりの恋心をポップネスに歌い上げるや、幾重にも重なるコーラスが耳を占拠する「人間」へと突入。誰もが持ちつつもふたをしているようなドロドロした感情を惜しげもなく見せつけるソリッドな楽曲世界は、これまでのSHISHAMO像とリンクしづらい人もいるかもしれない。
SHISHAMO
続く「君の大事にしてるもの」でも、思わぬ展開へと転がるヒリヒリしたラブソングを絶唱。宮崎のチャーミングな声はそのリリックとのギャップでより人間臭さを浮き彫りにし、バンドが新たなステージへと歩みを進めたことを強く感じずにはいられないのだ。
SHISHAMO
「人前で演奏するのが久しぶりで。みんなに会えて本当に嬉しかったです! またたくさん大阪でライブができるように頑張りますので、またライブ会場で会えたら!」(宮崎)
SHISHAMO
最後は「明日はない」でフィナーレへ。新曲多めで攻めのセットにも関わらず、観客をくまなく沸かせた手腕は、それぞれがプレイヤーとしての厚みを備えるがゆえ。アグレッシブに跳ねる松岡のベースプレイに、吉川は躍動感たっぷりのビートを放出。そして鮮烈かつニュアンス豊かなギターソロを奏でながら、どんなドラマも描き出す歌声の宮崎。そう、SHISHAMOという、この上ないバランスのトライアングルを再確認することとなったステージだった。
SHISHAMO
取材・文=後藤愛 撮影=渡邉一生