フジファブリック『START UP!!-ロックの春2021-』ライブレポートーー明るい未来へと踏み出す、希望に満ちたステージ

EAST UP!! STAGEの2日間を締めくくるのは、フジファブリック。メンバーがひとりずつ登場して楽器を手に取ると、SEからそのままなだれ込むようにして、3月にリリースした最新アルバム『I LOVE YOU』から「LOVE YOU」をセッション。一気に観客の心を引きつけ、そのまま同アルバム収録の「楽園」でライブをスタートさせた。金澤ダイスケ（Key）と加藤慎一（B）の織りなすサウンドが、衝動を滾らせるように押し寄せ、山内総一郎（Vo.Gt）の歌も後押しされるように熱をまとっていく。

続いて、山内の「今日もまたここからはじめようぜ！」の言葉から「LIFE」へ。アップテンポなメロディにのって楽しい感情がこみ上げるほど、イベントは終盤にさしかかっている寂しさに気づく。今日が終わって日常に戻っても、希望をもってまた新しい今日を始めなければいけない。きっと大丈夫だよ、と励ましてくれるような煌めくサウンドに救われる。今度は、祭のリズムで鳴らされる「Feverman」へ。＜両の手を振って返し押して返し＞、＜空を扇いでいるのさ＞の歌詞に合わせて、大きく手を振って踊る観客たち。＜明日の予定なんて関係ないし＞、＜今日は今日しかないもんね＞と歌われ、今この瞬間は踊らにゃ損！　と言わんばかりに、フェスという祭りを一心不乱に楽しむ観客たち。その場から動けなくても、一緒になって楽しめる楽曲で会場は一体に。

MCで山内は「気をつけないといけないことがいっぱいあるからこそ、スタッフの皆さんが丁寧に、丁寧に作り上げてくれて。やっと僕たちも、フェスというものに参加できて、すごくうれしいです」と、感謝と喜びを語る。

「大変な状況の中でも、音楽で繋がっていけることが素晴らしいことだと思います。音楽を愛する全ての人へ、季節はちょっとずれてしまうのですが、この曲を送ります」と想いを伝え「若者のすべて」へ。季節は春になるけれど、大切にしてきた思い出は変わらない。関西からライブやフェスを開催して、新しい門出に向かっていこうという特別な日に、バンドにとっても観客にとっても特別な楽曲が鳴らされ、感極まってしまう。

「まだまだ大変な時期が続きそうな気はしますけど、今日からまたみなさんの心の中で、確実に何かが始まっているはずです。まぶしいほど光り輝くキラキラした未来だったり、いつもどおりの平凡で平和な未来だったり、この先の未来に願いを込めて」と、最後は「光あれ」。何度も何度も「また会おうね」と語りかけていた山内。どんなときも今日を思いっきり楽しむこと。明日からどんな日々が続いても、また再会できる日まで精一杯に生きて、明るい未来に向かっていくために背中を押してくれるようなステージだった。

取材・文＝大西健斗　撮影＝渡邉一生