フラメンコギターデュオ・徳永兄弟『フラメンコギター ニューイヤー・ライブ2022』インタビュー
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徳永兄弟 (C)Toshinori Iida
フラメンコギタリストの父とフラメンコダンサーの母のもとに生まれ、幼少期からフラメンコギターに親しんだ徳永兄弟(兄健太郎、弟康次郎)は、中学卒業後スペインへと渡り、フラメンコの本場セビリアで修行を重ねた。その後、日本のフラメンコ界の登竜門である、日本フラメンコ協会新人公演で奨励賞を兄弟で立て続けに受賞し、新星登場を華々しく印象付けた。そんな徳永兄弟が、1月27日にeplus LIVING ROOM CAFE&DININGで『フラメンコギター ニューイヤー・ライブ2022』を開催する。
日本はスペインに次いでフラメンコが盛んな国であり、全国にフラメンコ教室があって、歌(カンテ)もダンス(バイレ)もギターも身近に習うことができる。しかし、徳永兄弟がスペインで目の当たりにしたフラメンコ文化は、日本のそれとは次元の異なる、人々の暮らしに根ざしたものだった。
「日本でフラメンコと言ったら、赤いドレスを着た女性が踊っている姿をイメージするかと思いますが、それはフラメンコのひとつの要素に過ぎません。スペインではフラメンコを老若男女が気軽に日常的に楽しんでいます。フラメンコの歴史は歌に起源があって、そこにダンスやギターが加わって今の形になりました。歌、ダンス、ギターどれかひとつだけでもフラメンコは成立します。スペインの人たちはフラメンコを公園でも路上でも自宅でも、街のいたるところで思い思いに楽しんでいます」(徳永康次郎、以下同)
今回のライブでは、本場スペインで楽しまれているフラメンコの多様な側面を盛り込みながら、フラメンコ初心者でも楽しめる工夫を施している。
「フラメンコはリズムが複雑ですが、音楽そのものはシンプルです。まずは難しいことを考えずに、感覚的にそのノリを楽しんでほしいですね。今回のライブでは、フラメンコの重要な要素のひとつである手拍子(パルマ)とフラメンコのリズムについて知っていただくコーナーも設けますし、地方ごとに異なるフラメンコの音楽の特色や背景についてもお話しします。またフラメンコの特徴をよりわかりやすくお伝えするために、皆さんがよく知っている日本の歌をフラメンコ・バージョンで聴いていただくなど、フラメンコの音楽に楽しく親しんでいただけるライブにしたいと思っています」
すでに4枚のアルバムをリリースしている徳永兄弟だが、ふたりの音楽は私たちが想像するフラメンコからさらに踏み込んだ、コスモポリタンな魅力を持っている。
「フラメンコには楽譜がないので、師匠から弟子へと音楽が伝えられていき、そのプロセスで音楽は少しずつ変化していきます。伝統的な作品も確固とした形があるわけではないので、フラメンコギターではオリジナル作品を弾くのが基本です。私たちは日本に生まれて日本の音楽を聴いて育ったので、そうした要素は作品に反映されていると思います。スペイン人たちの土着のエネルギーも凄いけれど、彼らの真似だけをしていてもつまらないので、徳永兄弟は日本の空気を含んだ日本人ならではのフラメンコギターを追求していきたいと思っています」
徳永兄弟は、若い世代にもっとフラメンコギターを聴いてもらうために、SNSやYouTubeなどさまざまなツールを駆使して、その魅力や楽しみ方を発信している。
「フラメンコ人口の多い日本ですが、これからはフラメンコの外にいる人たちにも、もっとフラメンコに親しんでもらいたいと思っています。特に若い世代へは積極的に発信していきたいですね。スペインの若者たちは、スケートボードのような感覚で、ストリートで気軽にフラメンコを楽しんでいます。日本でもスペインのように、ラフにフラメンコを楽しんでもらいたいですし、まずは一度、ライブに来て、フラメンコの迫力や面白さを生で体験してもらいたいです。今はコロナ禍で思い切り声を出すのは難しいですが、好きなところで掛け声を発するのもフラメンコの楽しみのひとつです。どうかリラックスしてフラメンコギターを楽しんでいただけたら嬉しいです」
日本のフラメンコギター界を背負う若き兄弟による、エネルギー溢れる音楽で、新しい1年をスタートしてみてはいかがだろうか。
※原文ママ
取材・文=八木宏之(フロイデ) 撮影=Toshinori Iida