朝海ひかるインタビュー~舞台『サロメ奇譚』で「私なりのサロメを表現したい」

2022.2.11
インタビュー
舞台

朝海ひかる

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2022年3月21日(月)~31日(木)東京芸術劇場シアターイースト、4月9日(土)~10日(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて、舞台『サロメ奇譚』が上演される。

本作は、演劇ユニット「ブス会*」を主宰するペヤンヌマキによる脚本で、オスカー・ワイルドが新約聖書を元に書いた戯曲『サロメ』を新たに描いた作品。演出は所属する文学座のみならず劇団内外でその才能に注目が集まる稲葉賀恵が手掛ける。

主演のサロメを演じるのは、1991年に宝塚歌劇団月組公演「ベルサイユのばら」で初舞台を踏み、芸能生活30周年を迎えた朝海ひかる。共演者には、サロメの母親に松永玲子、預言者ヨカナーンに牧島輝、サロメの義父にベンガルと実力派キャストが顔をそろえている。

ミュージカルのみならず、ストレートプレイや映像作品など活躍の場を広げてきた朝海に、30周年から次の31周年目の芸能生活に向けて一歩を進みだすスタートの作品となる本作に挑む今の気持ちを聞いた。

『サロメ』へのリスペクトがありつつ、ペヤンヌさんらしさあふれる脚本

――まずはこの企画についてお話があったときの、最初のお気持ちをお聞かせください。

「私がサロメ⁈」と思いました。サロメは確かまだ初々しい少女の設定じゃなかったかな、と。けれど、そのサロメより多少は人生経験を積んで来た私が演じることによって、今まで表現されてこなかったサロメの心情や感情のひだのようなものを私なりに表現できるのではないかな、と思いました。例えばバレエでもサロメを題材にした作品がありますが、やはり演じる方の年齢は関係なく、サロメの世界観が表現されていますから、私もそのようにできたらいいなと思っています。

――ペヤンヌさんの台本を読まれた感想はいかがでしたか。

ペヤンヌさん独特の面白みがありつつ、原作の『サロメ』へのリスペクトもしっかりとあるところが素敵だなと思いました。現代的なセリフが飛び交う中で、ヨカナーンのセリフはそのまま原作から持ってきていたりと、時空が歪んで現代と原作の世界を行き来しているような感じを覚えました。それでいてまったく違和感なく脚本を読むことができて、ペヤンヌさんらしさあふれる脚本だな、ととても嬉しくなりました。

――確かに、原案の『サロメ』ではユダヤの王であるサロメの義父が、本作では会社の社長といった設定に最初驚くんですけど、最後まで読んでみると全体を通してちゃんと『サロメ』なんですよね。

そうなんです。だからお客様も、舞台の導入では戸惑うかもしれませんが(笑)、きっと見終えた後には「『サロメ』を見た!」という気持ちになってくださると思うんです。そのあたりは、ライトとヘビーのバランスがとてもうまくできている脚本だと思うので、飽きることなく見ていただける作品になると思います。

「なぜ首を切ったのか」という永遠の謎が作品の一番のポイント

朝海ひかる

――本作の企画は演出の稲葉さんから「朝海さんとご一緒するならば『サロメ』をやりたい」というご提案があったとうかがいました。それをお聞きになってどう思われましたか。

稲葉さんは、私の宝塚時代の舞台をご覧くださっていたみたいです。確かに宝塚時代は耽美的な世界観の役をやらせていただくことが多かったのでそのイメージも強かったのだと思いますが、そんなふうに見てくださっていたんだな、と率直に嬉しかったです。

――お稽古はまだこれからですが、打ち合わせ等で稲葉さんとはどのようなお話をされましたか。

稲葉さんやペヤンヌさんと打ち合わせをしたときに、やはり、サロメがなぜヨカナーンの首を切ってしまったのか、切らずにはいられなかったのか、永遠の謎といいますか、そこに至るまでのサロメの気持ちや彼女がおかれた環境などについて話しました。サロメの取った行動には、たくさんの「なぜ」と感じるところがあって、みんなで何回も話し合いましたが、「なぜ首を切ったのか」というところだけがどうしても腑に落ちないんです。やはり見にいらしてくださるお客様には腑に落ちる形でこの作品をお届けしたいよね、という思いはみんな持っていますし、脚本はペヤンヌさんが書いたものですが、稲葉さんも演出する上でそこが一番のポイントだととらえていらっしゃると思います。

――稲葉さんにはどのような印象を抱かれていますか。

様々なところに視点を向けられる方で、「そうか、そこを突き詰めるんだ!」と自分では気づかないところに気づかせてくださる演出家さんだと思いました。作品に対しての向き合い方や深掘りをする部分などが私にはとても新鮮といいますか、自分にはない視点をお持ちなので、お話しをうかがっていてとても楽しかったです。お稽古に入ってからどんな演出をしてくださるのか楽しみですね。

――共演者の方たちについても教えてください。

ベンガルさんと松永さんはもう、お一人で10人分ぐらい働いてくださるんじゃないか、という感じですよね(笑)。(チラシビジュアルを見ながら)このお写真を見たときに、「ああ、もう(作品の世界観が)できたな」って思っちゃいました。「お父さんとお母さん、すごいな」って。ビジュアル撮影の現場にいらしていた稲葉さんも「すごいのが撮れちゃったんです!(笑)」とおっしゃっていました。サロメにとっては父親も母親も憎む対象ですが、どんな父親と母親になるのかまだ想像がつかないので、お二人のパワーに耐えうる体力を持っておこうと思っています。

舞台『サロメ奇譚』ビジュアル

松永さんとは以前、舞台『御宿かわせみ』(2016年)でご一緒させていただいたのですが、その時はセリフを交わす役ではなかったので、いつかぜひ一緒にお芝居をしたいと思っていました。でもまさか親子役をやることになるなんて……そんなに年齢変わらないんですよ。だからこの作品が発表になったときに「ごめん母ちゃん、こんな年の娘で」と個人的にメッセージをお送りしました(笑)。

ヨカナーン役の牧島さんは、ビジュアル撮影のときが初めましてだったのに「じゃ、首絞めまーす」って言いながら首を締めさせてもらって(笑)。でも「はい、どうぞ!」みたいな感じで応えてくださって、とてもフランクな好青年で、壁を感じる事なく接することができました。 彼となら意見をどんどん言い合って面白いことができそうだな、と強く思えたので楽しみですね。

「セリフに嘘がなく自分の感情で言えるか」を心がけている

――朝海さんは宝塚ご出身ということもあり、やはりミュージカルなどでの歌や踊りを生かしたご活躍が印象的ですが、一方で『かもめ』(2019年)や『近松心中物語』(2021年)などのストレートプレイでは、演じる役を等身大の人間としてじっくり見せる演技力に引き付けられます。ご自身としては、ミュージカルを演じるときと、ストレートプレイを演じるときに何か違いを感じていらっしゃいますか。

ミュージカルは音楽の中に伝えるべきものが詰め込まれているので、そこに演じる側のエッセンスを入れるとなると、なかなか難しいところがあります。ストレートプレイは、セリフやト書きはありますが、あとは自由と言いますか、役の状況と心情に集中できるところが私はとても好きです。これからもストレートプレイにもどんどん挑戦していきたいです。

――演じるにあたり、何か心がけていることはありますか。

『かもめ』でアルカージナを演じたときは、チェーホフが書いたセリフ、その言葉がちゃんと自分の感情で言えるか、ということを心がけました。演出の鈴木裕美さんが、「今の自分に嘘がないように」と仰っていたので、そこは気を付けていました。単語一つにしても、「このときになんでこの単語を言うんだろう」と思いながら言ってしまったら、やっぱりそこは嘘になってしまうので、嘘がないように一つずつ潰していく作業を、ストレートプレイのときはいつもしています。

――本作ではどんな“嘘のない”朝海さんの演技を拝見できるのか、とても楽しみにしています。

ありがとうございます、頑張ります!

取材・文=久田絢子

公演情報

『サロメ奇譚』

原 案:オスカー・ワイルド『サロメ』
脚 本:ぺヤンヌマキ
演 出:稲葉賀恵
出 演:朝海ひかる、松永玲子(ナイロン 100℃)、牧島 輝、ベンガル
    東谷英人(DULL-COLORED POP)、伊藤壮太郎、萩原亮介
日 程:
【東京】 2022年3月21日(月)~3月31日(木) 東京芸術劇場 シアターイースト
【大阪】 2022年4月9日(土)~10日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

料金(全席指定・税込): 東京 全席 8,800 円/大阪 全席 9,500 円
一般発売日:2022年2月12日(土)

公式 HP: https://www.umegei.com/schedule/981/
Twitter : @salomeoddities
企画・制作・主催:梅田芸術劇場
お問合せ: 梅田芸術劇場(東京)0570-077-039/(大阪)06-6377-3888