大衆演劇の入り口から[其之八] ・後編 商店街と名物アイス―横浜・三吉演芸場の魅力
三吉演芸場・客席
横浜在住の方、よく横浜へ来る方、注目!ぜひ知ってもらいたいスポットがある。南区万世町にある大衆演劇場・三吉演芸場だ。
三吉へお芝居を観に行く日。お楽しみは舞台の中身だけじゃない。向かう道中や、開演を待つ間の演芸場の雰囲気や、売店でお菓子を買って友達同士で食べる幕間…そんな諸々をひっくるめて観劇だ。しばらく筆者と一緒に、三吉演芸場を疑似体験していただきたい。
①レトロな商店街を抜けて
最寄駅は市営地下鉄の「阪東橋」駅。JR横浜駅からブルーラインで9分で着く。
阪東橋駅の改札を出るとすぐに案内がある
阪東橋駅の改札口を出ると、さっそく三吉演芸場の案内がある。出口1Aを出てまっすぐ進む。
横浜橋通商店街の看板が目印。
ほどなく「よこはまばし」の看板が見えてくる。「横浜橋通商店街」の入り口だ。
いつも地元客でにぎわっている横浜橋通商店街。懐かしい昔ながらの商店街だ。
この商店街を通っていくのがおもしろい。いつも人でにぎわっているものの、どことなく昭和っぽいレトロ感が残っている。横浜の下町の風景だ。お寿司屋さんや、お惣菜屋さんもあるので、商店街でご飯を買って演芸場へ持っていく人もいる。
商店街を抜けると横断歩道がある。横断歩道を渡って進むと、左手に三吉演芸場が現れる。
三吉演芸場・外観。当日の芝居とショーの演目を毎日貼り出してくれている。
到着!この階段が入り口だ。公演している劇団のポスターと、当日の芝居・ショーの演目が貼り出してある。今日はどんな舞台に出会えるだろうと期待しながら、階段を上っていく。いよいよ、中へ!
②観やすい客席と劇場名物
常連さんたちの談笑が響くロビー。
「清潔感」という面では、全国の大衆演劇場でもピカ一ではないだろうか?いつもチリ一つなく掃除されていて、お客さんが気持ちよく観劇できるように…という演芸場側の心づくしを感じる。階段を上りきったところで、制服を着た女性が「いらっしゃいませ」と挨拶してくれる。受付で入場料2200円を払うと、すぐそこがロビーだ。広々として座れるスペースがあるので、常連さん同士が顔を合わせる憩いの場にもなっている。
「久しぶり~。今月初でしょ?」
「ちょっと体調が良くなくて出遅れちゃって。後半頑張って来るわ」
などのはずんだ声が行き来する。
ロビーの奥まで進むと、廊下には先の公演予定の劇団のポスターが貼られている。あの劇団が久しぶりに関東公演するのか、この劇団は初めてだけどどんな芸風なんだろう…なとど考えながら通り過ぎる。
勾配があって後ろのほうでも観やすい。
客席はこのような椅子席だ。舞台位置に適度な高さがあり、勾配があるため、後ろのほうの席でも観やすい。通路幅も大きく、役者さんが舞踊ショーの最中に通路に降りてくると、その艶やかな姿をじっくり観ることができる。
売店では飲みものやお菓子、大衆演劇雑誌を取り揃えている。中でも筆者のお気に入りは…
観劇前や幕間のお楽しみ、三吉アイス。
多種類ある“三吉アイス”!夏はもちろん冬でも、暖かな場内ではひんやりアイスがとびきりおいしい。観劇前、友人や家族と一緒にロビーでアイスを食べつつ、今日の芝居・ショーはどんなのだろう?と話に花を咲かせるのも楽しい。
③昔は一階が銭湯、二階が演芸場だった
少々、三吉演芸場の歴史を紐解いてみる。演芸場の階下に、かつては銭湯「元祖草津温泉」があった。先に一階の銭湯があり、昭和48年、貸し小屋だった二階に三吉演芸場が開場した。にょっきりと高い灰色の煙突に、「ドントコイ、ドントコイ」と演芸場の呼びこみの太鼓が響く、全国的にもユニークな小屋だった。
「今舞台を終えた劇団の人たちが、裏からゾロゾロ銭湯に入って来るの。観てたお客さんも風呂に入って、役者さんとお客さんが、中で背中流しっこしたり、お風呂から上がって牛乳を飲みっこしたり」(三吉演芸場・本田玉江会長)
銭湯のほうは、残念ながら平成9年の建て替えで無くなってしまった。だが今も名残のように、公演している役者さんが三人ぐらい一緒に入れる、大きな楽屋風呂があるという。
銭湯時代に描かれた三吉演芸場の絵。絵の中央右寄りに高い煙突がある。
2016年で開場から43年になる。地元のお客さんに愛されながら、時代の変化を生き抜いてきた演芸場。“背中流しっこした”役者とお客の親しさが、この温かな空間のどこかに残っているような気がする。
ここまで読んでいただいて、三吉演芸場に興味をもっていただいた方へ。ここでどんな舞台が観られるの?大衆演劇ってどんなものなの?ということは、ぜひ「前編」をチェックしてみてください!
会場:三吉演芸場 公式サイト
期間:1/1(金)~1/29(金) 夜の部まで
●横羽線「横浜公園出口IC」より5分、または東名高速「横浜町田IC」より30分