HAZUKI 初ツアーファイナル東京公演にみた圧倒的存在感と求心力、そしてバンドとしての結束の強さ
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HAZUKI
HAZUKI『TOUR'22 "AM I A LØSER?”』2022.06.15(wed) 恵比寿リキッドルーム
「今日は世界で一番楽しんでって下さい! オレに負けるなよ!!」
ライブのど頭から、とんでもない盛り上がりを見せるフロアに向けて、HAZUKIが嬉しそうに叫ぶ。2022年2月1日に始動した、lynch.(Vo)の葉月によるソロプロジェクト・HAZUKI。全国8箇所8公演を回った、初のライブハウスツアー『TOUR'22 "AM I A LØSER?”』のファイナル公演が、恵比寿リキッドルームにて行われた。1stシングル「XANADU/HEROIN(E)」を3月にリリースし、同月末にはHAZUKIソロファンクラブ会員限定のワンマンライブを敢行。4月には2ndシングル「+ULTRA / AM I A LØSER?」を間髪入れずにリリースし、その曲名をタイトルとした初のツアーを決行! プロジェクト始動から破竹の勢いで爆進し続け、勢いそのまま駆け抜けた今ツアー。ツアーファイナルとなったこの日も、1曲目「HEROIN(E)」からフルスロットルでライブがスタートする。
派手やかなレーザーが飛び交う中、気合いと気概に満ち溢れたパワフルな歌と演奏に、オーディエンスが熱い手拍子やジャンプを合わせて応え、異常な熱気に包まれる会場。続いて、HAZUKIがクラップを煽って始まったのは、「XANADU」。バンドの力強く正確な演奏に乗せて、全ての始まりであるこの曲を丁寧にしっかり歌い上げ、夢幻を魅せるHAZUKI。「ようこそ、東京のXANADUへ!」と、オーディエンスを桃源郷へと誘う。初ツアーながらソールドアウト、フロアを埋めつくす満員のオーディエンスの盛り上がりに「コロナ禍の前みたいです、ヤバーッ!」と、思わず喜びの声を上げたHAZUKI。「頭、振りたいよね?」と始まった新曲ではダイナミックなビートに合わせてフロアがヘドバンで波打ち、「七夕乃雷」では激しい四つ打ちビートに会場中がジャンプを合わせて会場を揺らし、前半戦からクライマックス級の盛り上がりを見せる。すげぇ!
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鳴り止まない拍手の中で始まったMCでは、たくさんのファンが集まってくれたことへの感謝を語り、PABLO(Gt/Pay money To my Pain他)、TSUYOSHI(Gt/Unveil Raze)、明徳(B/lynch.)、響(Dr/摩天楼オペラ)、hico(key)という最強の布陣で固めた、HAZUKIバンドのメンバーを紹介。ジャジーでスリリングなサウンドに鍵盤の音色と艶っぽい歌声が映えた「CALIGULA」、疾走感ある曲調と感情的で表現力豊かなボーカルで聴かせた「SAD SONG」と続き、強固なバンドサウンドに乗せて1stシングル収録の「目眩」を歌い上げたHAZUKI。曲調の異なる幅広い楽曲が並び、聴く者の感情を揺さぶる中盤戦は、メンバーそれぞれの技術の高さに加え、初ツアーとは思えない息の合った演奏とグルーヴを見せる楽器隊や、楽曲ごとに様々な表情を見せるHAZUKIのボーカリストとしてのスキルの高さと魅力に会場中が釘付け。「奈落迦 -Naraka- Feat.PABLO」ではPABLOとTSUYOSHIがアコギを背負い、空気をガラリと変えるネイチャーなサウンドに乗せてHAZUKIが熱唱。自身の人柄を表すような温かく人間味溢れる歌声とボーカリストとしての圧倒的存在感と求心力にバンドの結束の強さの理由や、未発表曲や未リリース曲だらけの初ツアーながら、大きな期待を抱いて集まるファンの気持ちがよく分かった気がした。
ダークでヘヴィなサウンド、切ないハイトーンボイスと悲痛な咆哮の新曲で闇に誘うと、「ロックバンドのライブじゃないですか、暴れねば!」とHAZUKIが煽り、「+ULTRA」で再び熱狂を生む。激しくラウドな演奏に拳突き上げ、激しく手拍子を合わせるフロアの混沌ぶりは、まさにコロナ禍前のそれ! スウィンギンな「ROMANCE」で踊りまくって、ファストナンバー「A CRUCIFIED FATE」で頭振り乱す中、聴き慣れたイントロにオーディエンスが反応したのは、2020年にリリースしたソロアルバム『葬艶 -FUNERAL-』でセルフカバーした、lynch.の楽曲「PHOENIX」。lynch.の演奏でもない、オーケストラの演奏でもない、現在のHAZUKIバンドで演奏されるこの曲が全く新しい印象と新たな輝きを放つ。
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「PHOENIX」の演奏後、鳴り止まぬ熱い拍手に「この愛しすぎる音! コロナ禍がなかったら、この素晴らしい音を知れなかったかも知れないから、ちょっと感謝してます。」と感激するHAZUKI。「まだ暴れられますか?」と放った曲は、この日のライブタイトルでもある、「AM I A LØSER?」。イントロの掛け声にオーディエンスが明るく手拍子を合わせると、感情をおし殺すようなボーカルから、爆発力あるサビへ。ゆっさゆっさと会場を揺らすように、手を挙げてジャンプするフロアの様子を見て、ごく近い将来、声出しなどのあらゆる規制が解けたら、コロナ前よりもとんでもない光景が見れるだろうなと期待してしまう。本編ラストは、未来への希望の旋律を描いた「LIGHT」を気持ちいっぱいに届けて、美しくフィニッシュ。構成、演出、選曲、未発表曲含む楽曲たちのクオリティの高さと、どれを取っても初ツアーとは思えない、異常に完成度の高いライブだった。
アンコールでは8月末に1stフルアルバムをリリースすること、秋には全国10都市13公演のリリースツアーを開催することを発表。このツアー自体が曲作りで、未発表曲をライブで披露して反応を見て、“直接的なヒント”をもらって、レコーディングに反映するという斬新なスタイルでアルバム制作をしているという話から、「アルバム自信あるんです、めちゃくちゃ!」と自信満々に語るHAZUKIだったが。この日のライブを見る限り、その言葉に偽りが無いことは間違いないだろう。さらにメンバーとアットホームな雰囲気で、本当に楽しそうにツアーを振り返ったHAZUKI。バンマスでもあるPABLOが、「HAZUKI、楽しんでるかな?」と口癖のように言っているという最高の愛されエピソードは実に微笑ましかったし、グッと来たし、8月にリリースされるアルバムがより一層楽しみになった。
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ツアーの充実ぶりをたっぷり語ったMCを経て、バンドのグルーヴ感が増したように聴こえた「七夕乃雷」、エネルギッシュに本当に楽しそうに演奏した「HEROIN(E)」を演奏し、名残惜しそうにアンコールを終幕。かと思いきや、まだまだ物足りないとばかりに、予定に無かったダブルアンコールに、全ての始まりの曲である「XANADU」を全力で披露し、ツアーファイナルの幕を閉じた。まだ1stアルバムも出していないどころか、全国流通盤のCDも出す前から、猛烈なスタートダッシュを見せているHAZUKI。そう、HAZUKIの歴史はまだ始まってもいないのだ。
取材・文=フジジュン 撮影=江隈 麗志(C-LOVe CREATORS)