たなか、Ichika Nito、ササノマリイという稀有な音楽センスを持つ3人で結成されたバンドDiosの内側に迫る

2022.7.1
インタビュー
音楽

Dios

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前職・ぼくのりりっくのぼうよみ=たなか、YouTube 登録者数200万人越えの今最も注目すべき世界的ギタリスト・Ichika Nito とボカロやオンライン・ゲーム界隈ともリンクし、ぼくりり過去作も手掛けたトラックメイカー / シンガーソングライター・ササノマリイという、稀有な音楽センスを持つ3人で結成されたバンドDios。6月29日には待望の1stアルバム『CASTLE』をリリース、そして初となる全国ツアーを控える彼らに、初期衝動とも言うべき今の想いを存分に語ってもらった。

──たなかさんは、ぼくのりりっくのぼうよみを辞める決断をしたときも、音楽活動はいつかまたやりたいと思っていたそうですね。

たなか:そうですね。ぼくりりは音楽が嫌になったから辞めるみたいな話ではあまりなかったので、音楽自体との距離感は、自分にとってはそこまで変わっていなくて。普通にやりたいなっていう感じでした。

──ご自身にとって音楽ってどういう存在ですか?

たなか:なんだろう……世界に対する自分の意思表示という側面がすごく強いかもしれないですね。音楽っていろんなフェーズがあるじゃないですか。曲を完成させるときとか、演奏するときとか。そのどれが好きなのかは作り手によって異なるけど、僕は作っているときが楽しいタイプで。それは、自分が感じていることを思うように表現できて、その表現自体が、自分を今まで知らなかった場所に連れて行ってくれるというか。たとえば、何か単語を書いたとして、そこに音階がついただけで、それを書いた段階では想像も付かなかったところに連れて行ってくれる、みたいな。そういうところがすごく好きだし、自分にとって音楽はそういう存在ですね。

──再び音楽を始めるときに、バンドという形態を取ろうと思ったのは、それこそひとりでは想像も付かないようなものを作りたい、見てみたいという感覚からですか?

たなか:バンドがやりたくて人を探していたわけではなかったんですよ。どちらかというと、Ichikaと会って、一緒にやってみたいなと思ったので。バンドという形態になると、ぼくりりのときと差別化できていいよねっていうのは後付けでしたね。

──Ichikaさんは、たなかさんからバンドのお話が来たときにどう思われました?

Ichika:まったく同じタイミングで言ったんですよ。「バンドがしたい」って。

たなか:なんならIchikaのほうがちょっと先だった。

Ichika:そうそう。「バンドせえへん?」「したいと思ってた」みたいな感じで。同じこと考えてたんやなぁって。

──Ichikaさんが、たなかさんとバンドをやりたいと思った理由というと?

Ichika:技術や音楽的なセンスみたいなものが合うのは当然ですけど、やっぱり気心の知れた人、何年も何十年も付き合っていけるような友達と一緒に音楽をやれたらいいなと思っていて。そういうふうになれそうな人と出会えたらいいなと思っていたときに、たなかと出会ったんですよ。出会ったキッカケは友達の紹介なんですけど、ああいう場所ってなんていうの?

たなか:なんか、陽キャの人達の集まりみたいな?

Ichika:そういうところに放り込まれたんですよ。でも、僕ら2人は陰キャなんで、ちょっとしんどそうにしていたら、お互い目が合って。

たなか:あの瞬間の通じ合い方はすごかった!(笑)

Ichika:うん(笑)。これは仲良くなれる!って。

──たなかさんとしても、Ichikaさんとは気心知れている仲でもあるし、ギタリストとしての魅力もあって、一緒にやろうと?

たなか:そうですね。ぼくりりのときは、いろんなトラックメイカーの方と一緒にやるのが基本だったので、統一感の出しようがなかったんですよ。そこを、音のほうでもシグネチャーというか。あきらかに特徴のあるサウンドを組み合わせたらおもしろいんじゃないかなって。そこら辺は、人柄とはまた別の目論見としてはありましたね。

たなか

Ichika Nito

──トラックメイカーのお話がありましたけど、バンドをやるにあたって、ササノさんにも入ってもらおうと。

Ichika:たなかは歌で、自分はギターと、ベースもやるけど、あんまり大人数のバンドをやるイメージがそのときはなくて。最小人数でやるなら、残りのひとりが僕ら以外の全部を担ってくれる人間にしようって。それでコンタクトをとった感じでした。

──ササノさんとしてはお話が来たときにどう思われました?

ササノマリイ:断りました。

Ichika:そう(笑)。最初は断られたんですよ。

ササノ:無理だよって。僕自身は制作をするのが活動のメインだし、シンガーソングライターではあるけど、プレイヤーとしてのスキルは持っていなくて。でも、バンドをやるとなると、プレイヤーとしてそこに存在している必要があると思ったから、僕が役に立てる場所はないよっていう気持ちで断ったんですよね。

Ichika:ササマリの当時のバンド像が結構堅かったもんね?

たなか:にべもなく断られたもんね?(笑) こっちとしては、打ち出し方としては一応バンドっていうだけだったから。

Ichika:うん。バンドだろうがユニットだろうが、そこはなんでもよくて。

たなか:良いトラックが作れればなんでもいいっていう感じだったんですけど、そこが全然伝わってなくて、断られちゃったねって。

Ichika:でも、もしかしたら良い素材を送ったらやってくれるんじゃないか?っていう話になって。それでギターのデータを投げてみたら、すごく良い感じのトラックを作ってくれて。そこにたなかが歌を乗せたら、「めちゃめちゃいいね!」って、ササマリのテンションがあがってきて。そこから2曲ぐらいやりとりしているうちにやることになって。

──たなかさんが「音楽のフェーズ」のお話をされていましたけど、ササノさんとしては作ることが好きで、この3人ならすごいものが作れそうだなと思いました?

ササノ:そうですね。まず、頼られるのが好きなんですよ。自分が作ったものを「いい」と言ってもらえるのが好きなので。それに、送ってくれたギターがとにかく素晴らしくて、自分の好きな部類のものだったんですよ。これでいいものが作れたら喜んでもらえるかなと思って、送ったもののウケがめっちゃよかったから、これは楽しいなと思って。これができるのは俺だけでありたい、みたいな。

たなか:かわいい。

ササノマリイ

──打ち出し方はなんでもよかったとのことでしたけど、バンドという響きにちょっと憧れがあったりしました?

Ichika:ありました。

たなか:うん。「バンドやってます」って言いたいっていう。なんかすごく浅い感じで申し訳ないんですけど。

Ichika:Diosのサブテーマみたいなのがいくつかあるんですけど、そのうちのひとつが「青春を取り戻そう」なんですよ。

ササノ:別に公にしていることではないけどね(笑)。

Ichika:うん。やっていくうちに、そういう要素もあったら楽しいよね、ぐらいの感じでしたけど。

たなか:でもなんか、常に学園祭みたいな気分でいるっていうか。テレビに出るときとかいまだにそういう感じかも。

Ichika:分かる。音楽番組にみんなが集まってくるのがなんか学祭みたいな感じ。

──他にもサブテーマってあるんですか?

Ichika:そこは各々あると思うんですよ、このバンドをやる意義みたいなものが。ササマリだったら、ササノマリイ名義の活動の底上げもしたいって言ってたし。

ササノ:そうだね。ちょうど話をもらった時期が、スランプというか、自分のやりたいことがやれているのか、納得できるものが作れているのか、葛藤がものすごくあって。それもあって、自分がうまくいっていない状態で入ってどうするのかっていう迷いも、最初はあったんですけど。でも、やってみたら楽しかったし、一緒にやることによって、精神的なところ、技術的なところ両方含めて、うまくいくのかもしれないと思って、より本気で取り組んでいって。実際にうまく行き始めているので、感謝しかないですね。いまは心身ともに健康なので(笑)。

──大事なことですからね。Ichikaさんのサブテーマというと?

Ichika:「仲良くなれそうな人間とやりたい」っていう理由とも繋がるんですけど。そこはいろんな国のアーティストと関わっていることもあると思うんですけど、同じ母国語で年も近い人と強固な人間関係を築いていって。それが10年とか20年とか、成熟した先に、そういう関係性の人達と作る音楽は、自分ひとりで作る音楽とどれだけ違うものになるのか?っていうのを知りたかったんです。だから、これはいますぐできることではなくて。何年か経った後、もしかしたらケンカして超仲悪くなって解散していたら無理ですけど(笑)、今の感じで楽しくやっていけて、その先にできる音楽はどういうものなんだろうかっていうのを知りたいっていうのが、自分の中のサブテーマとしてありますね。

Dios

──たなかさんのサブテーマは?

たなか:僕はなんだろう……2つあるんですよ。ひとつは、あとから思い出したときに、すごく楽しかったなって思える記憶を増やしたくて。そう思えることが増えていくにしたがって、自分の人生の彩りそのものが豊かになっていくっていうのは、現状ですらわりと感じることがあるので。もちろんそこにすがりつくと話は変わってくるんですけど。それと、ポップスをちゃんとやりたいなって。そこはサブというかむしろメインですね(笑)。

──ポップスをやりたいと。

たなか:最初は「ちゃんと売れてえぜ!」みたいなところがすごくあって。でも、やっているとどんどん楽しくなってきて、わりと趣味の方向に行ったというか(笑)。

いちか:各々が思う美しい形、音楽を作った方がいいんじゃないか?っていう話も出てたしね。そこは二転三転してるんですよ。

──なるほど。先ほどシグネチャーのお話がありましたけど、これだけ際立った個性を持った3人が集まって、楽曲を作るときにどうやってバランスを取っているんだろうと思ったんですけど。

ササノ:特に何も考えてないんですよ(笑)。

──最初にササノさんがトラックを作るんですか?

ササノ:いや、ほとんどの曲と言えるんですけど、まずIchikaのギターがあって。それをもらって、僕がワンコーラスぐらいの構成を作って、そこで歌が入るか、トラックに合わせてギターを変えていくかというやりとりを何度か繰り返していくっていう。だから、曲の根本にはギターがあると思います。今回のアルバムの中で、僕が最初にトラックを作った曲となると、「Virtual Castle」とか「紙飛行機」ぐらいなので。ただ、それも僕が作ったトラックのデータをIchikaに全部渡して、音の加工とかもやってくれたりしてますね。

──出発地点はギターインストなんですね。

Ichika:そこで尖っているものをササマリがうまく混ぜ込むから馴染むんでしょうね。トラックが先にあって、そこにギターを乗っけると、最終的にイジっているのが僕になるので、まだ分離している感みたいなものがあると思うんですけど。最初にギターを作って、コードとかメロディとか、基本的には全部ある状態のものをササマリが自分の好きなように改造して、うまく混ぜ込んで、その上に歌が乗るから、バランスよくなるんだろうなと思います。

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