<2015年末回顧>お萩の「大衆演劇お芝居」ベスト5

特集
舞台
2015.12.29
たつみ演劇BOX・辰巳小龍さん(2015/2/21)

たつみ演劇BOX・辰巳小龍さん(2015/2/21)

2015年も毎日、毎日、全国で熱演が繰り広げられた大衆演劇。あらゆる演劇ジャンルの中でも、とにかく客席と近いこの舞台で。腕を伸ばせば届きそうなところで広がっていく物語には、いつまでも心に留めておきたい景色がたくさんありました。

とりわけ筆者の心に突き刺さったお芝居を、5つ。みんな違ってみんないい!が大衆演劇なので、あえて順位は付けずに。

★たつみ演劇BOX「夜叉ヶ池」(2015.2.11 夜の部@篠原演芸場)

★劇団KAZUMA「品川心中」(2015.6.13 昼の部@三吉演芸場)

★橘劇団「鶴八鶴次郎」(2015.9.13 夜の部@篠原演芸場)

★劇団天華「釣忍」(2015.11.22 夜の部@篠原演芸場)

★劇団炎舞「留と棟梁」(2015.11.29 昼の部@つくば湯~ワールド)

1~3月のたつみ演劇BOXの関東公演は、たくさんの名作を残してくれた。中でも「夜叉ヶ池」は、辰巳小龍さんの描き出した妖気漂う水の世界に飲まれた。たとえば花道を走る村人に舞台袖からシューッと赤いテープが投げかけられる…こんな場面で、黄昏時のような異界と人間の世界の境目が現れる。来月は横浜公演とあって、関東ファンはすでに盛り上がっているようだ。(たつみ演劇BOX:1月公演先 神奈川・三吉演芸場)

劇団KAZUMA・柚姫将副座長(2015/6/24)

劇団KAZUMA・柚姫将副座長(2015/6/24)

劇団KAZUMAの持つ温かな情味は、とりわけ落語ネタの芝居に活きる。「品川心中」で印象深いのは柚姫将副座長の演じたお染の可愛さ!行動だけなぞったら相当利己的な女郎役を、将さんの人懐っこい持ち味が、ワガママだけども憎めない女性に見せてくれた。悲喜こもごもの人間模様が楽しく、愛おしい物語だった。(劇団KAZUMA:1月公演先 三重・ユラックス)

橘劇団・橘大五郎座長(2015/8/18)

橘劇団・橘大五郎座長(2015/8/18)

橘劇団「鶴八鶴次郎」が圧巻だったのはカーテンコールの後。橘大五郎座長演じる鶴次郎が、篠原演芸場の客席間の通路を歩いて去っていく。決意の目で懐に手を入れて。信じられなかったのが、お客さんの中に立っても「鶴次郎」としての雰囲気・姿がひとすじも崩れなかったこと。目の前、数十センチの距離を“物語”が通り過ぎていくという体験をした。(橘劇団:1月公演先 大阪・梅田呉服座)

劇団天華・澤村千夜座長(2015/11/26)

劇団天華・澤村千夜座長(2015/11/26)

9~11月の劇団天華の初東京公演はまだ記憶に新しい。芝居にもショーにも突き抜けた独自性が光る。「釣忍」は大衆演劇定番のお芝居だけれど、澤村千夜座長演じる定次郎を観て、この役の明るさに隠れた悲哀の深さに気づかされた。恵まれた生まれの中にうまく身を置けない…そういった人間の切なさが、お面を着けて踊る見せ場で流れ込んできた。(劇団天華:1月公演先 大阪・京橋羅い舞座)

劇団炎舞・橘炎鷹座長(2015/11/7)

劇団炎舞・橘炎鷹座長(2015/11/7)

今年一番の大笑いをくれたのが、つくば湯~ワールド・劇団炎舞千秋楽の「留と棟梁」橘炎鷹座長の始終トボけた留の表情、仕草、一つ一つがおかしくて仕方がなかった。日常風景を描いたような芝居だからこそ、炎鷹座長の芸達者さがよくわかる。巧みなセリフ回し、たっぷりこぼれる愛嬌が、観衆の心に飛び込んでくる。千秋楽の会場は爆笑に包まれていた。(劇団炎舞:1月公演先 石川・大江戸温泉物語ながやま)

すべての役者さん・裏方さん・劇場スタッフさん、2015年お疲れ様でした&ありがとうございました!これは私の個人的なベストなので、これを読んで下さっている大衆演劇ファンの方には、それぞれどんなベスト芝居との出会いがあったでしょうか…?2016年も心が飛翔するようなお芝居を、たくさん一緒に体験できますように!

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