BBHF、キタニタツヤの初共演が実現したライブハウスイベント『DOSUKOI night -NSB!!-』をレポート

レポート
音楽
2022.8.13
『DOSUKOI night -NSB!!-』

『DOSUKOI night -NSB!!-』

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DOSUKOI night -NSB!!-
2022.7.28 新横浜 NEW SIDE BEACH!!

7月28日(木)に新横浜 NEW SIDE BEACH!!にて開催された『DOSUKOI night -NSB!!-』。『DOSUKOI night』は、これまで不定期で開催されてきたライブハウスイベント。久々の開催となった今回は、キタニタツヤとBBHFのツーマンという初顔合わせの2組が共演することとなった。

イベントのオープニングアクトを務めたのは、熊本発の4ピース・バンド、Mercy Woodpecker。バンドにとって初のオープニングアクトであり、初の横浜でのライブということで、「初めて観てもらうからこそ、しっかり僕らのライブをやって帰ります」と、MCで意気込みを話していた彼らは、1曲目の「nocturne」で美しいアルペジオが絡め合った後、一気に音を爆発させる。彼らの音楽は、いわゆるギターロックの括りにはなるのだが、90年代のエモやポストロックからの影響が垣間見える、力強さと繊細さを兼ね備えたバンドサウンドが特徴的。「アルターエゴ」のヒリついた疾走感でオーディエンスを突き動かせば、瑞々しさのある「さよならスターライト」ではたくさんの手が挙がり、そして“約束の歌”として届けられた骨太な「日陰に咲く」まで、全6曲を披露。短い時間ではあったものの、フロアに強いインパクトを残していた。

Mercy Woodpecker

Mercy Woodpecker

Mercy Woodpecker

Mercy Woodpecker


Mercy Woodpeckerの熱演を受けて、先攻で登場したのは、BBHF。荘厳かつ強烈なまでの低音を浴びせる「月の靴」からライブスタート。尾崎雄貴が鍵盤を柔らかく奏でながら歌を届けると、続く「流氷」は、尾崎和樹の叩くドラムがずっしりとフロアに響き渡り、サビではDAIKIが放つ煌びやかなギターの音色と、雄貴の伸びやかな歌声がフロアに放たれる。海外のインディミュージックを咀嚼したサウンドが印象的なBBHFだが、生でそれを体感すると、とてもバンド然とした迫力のある音であり、フィジカルに訴えかけてくるアレンジにじわじわと興奮が昂ってくる。80'sポップスの匂いが漂う「僕らの生活」の豪快なアウトロや、逆光気味に照らされた白い光に包まれながら繰り広げた「シェイク」、ラテンフレーバーなビートを虹色の照明が彩った「花のように」……。そのどれもが美しく、一音一音がしっかりとした存在感を持ってフロアに届けられていた。

BBHF

BBHF

BBHF

BBHF

オーディエンスの身体を心地よく、それでいて力強く揺らしていく彼らのサウンドは、曲を追うごとにどんどんと輝きを増していく。カントリーな趣きもある「黄金」では、柔らかな空気でフロアを包み込み、瑞々しいサウンドに身を委ねていると、続く「なにもしらない」が、その陶酔感を極限まで高めていくように響き渡る。アコースティックギターに持ち替えた雄貴が、オーディエンスに感謝を告げた後、ラストナンバーの「バックファイア」へ。過去を振り返りながら、それと同時に未来へと思いを馳せるような言葉達であり、どこか郷愁的な感じもあるサウンドでありメロディは、きっと何十年先も変わらずに、いや、いまよりもさらに強く光を放つことを想起させるエンディングとなった。

BBHF

BBHF

BBHF

BBHF


後攻はキタニタツヤ。ドラムンベース的なビートが不穏さを放つSEが流れる中、ステージに登場した彼がこの日の1曲目に選んだのは「聖者の行進」だ。強烈なギターリフを擁した重厚感のある音塊をフロアにぶっ放すと、「PINK」「Ghost!?」と、怪しくて艶やかなサウンドでオーディエンスを激しく踊らせていく。ハンドマイクでパフォーマンスする姿も、ギラついた視線もとにかくクールで、その一挙手一投足を一瞬たりとも見逃せないオーラが全身から漲っている。そんな雰囲気を放ちながらも、MCでは屈託のない表情でオーディエンスに話しかけていくギャップもあり、瞬く間にフロアの空気を掌握していった。

キタニタツヤ

キタニタツヤ

キタニタツヤ

キタニタツヤ

タメの効いたビートが心地よいメロウな「白無垢」や、アンニュイながらもファンキーな「人間みたいね」など、やり切れなさや厭世感をたたえた楽曲達を、圧倒的なまでのグルーヴでもって繰り出していくキタニ。爆発力が高く、実に快楽的な曲達を畳み掛けていたが、空気を変えたのは「プラネテス」。16ビートに乗せられたセンチメンタルなメロディが、胸の奥底まで潜り込み、突き刺さってくる。曲中のシンガロングパートで、オーディエンスは手を挙げて左右に降っていたが、彼/彼女達の声もここに加わり、120%の力を持って響き渡る日がとても待ち遠しくなった。最後に届けられたのは「ハイドアンドシーク」。暴走する正義や相互監視社会の息苦しさを嘆くように、それでいて、そんな現実世界を打ち壊すように力強く叩きつけ、イベントを締め括った。

キタニタツヤ

キタニタツヤ

キタニタツヤ

キタニタツヤ

それぞれの持ち味を存分に堪能できるイベントだったが、この日のMCで、キタニが共演相手のBBHFについて話す場面があった。キタニいわく、BBHFは「たくさんの変化を経てきていて、毎回出すアルバムが素晴らしいし、その変化の形そのものが美しい。それは自分の理想像にめちゃくちゃ近い」とのこと。両者が奏でている音楽は、パっと聴きしただけではやや距離がある印象もあるが、様々なものを貪欲なまでに吸収/咀嚼しながら、自身の生み出す音楽を更新していこうとするメンタリティは、とても近いように思う。「変わっていくことを恐れたくないし、それを含めて愛してもらえる存在でありたい」とキタニは話していたが、それはおそらくBBHFも同じような考えを持っているだろう。そんな遠いようで近い2組の共演に心を踊らされた夜だった。また、『DOSUKOI night』というイベントについて、「久々にやったということは、きっとこれからバンバンやっていくんだと思います」と、キタニ。こちらのイベントも、次にどんな企画が用意されるのか、楽しみにしていたい。


文=山口哲生 撮影=白石達也

セットリスト

DOSUKOI night -NSB!!-
2022.7.28 新横浜 NEW SIDE BEACH!!
 
<Mercy Woodpecker>
1. nocturne
2. ⻘の証明
3. アルターエゴ
4. 宇宙船の窓から
5. さよならスターライト
6. ⽇陰に咲く
 
<BBHF>
1. ⽉の靴
2. 流氷
3. サラブレッド
4. 僕らの⽣活
5. シェイク
6. 花のように
7. 死神
8. Torch
9. ⻩⾦
10. なにもしらない
11. バックファイア
 
<キタニタツヤ>
1. 聖者の⾏進
2. PINK
3. Ghost!?
4. ⽩無垢
5. Sad Girl
6. ⼈間みたいね
7. 夜警
8. Rapport
9. プラネテス
10. トリガーハッピー
11. ハイドアンドシーク
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