鈴木このみインタビュー「曲も思いも10年分ある」 日比谷野外大音楽堂での10周年記念ライブに向けて語る

インタビュー
アニメ/ゲーム
2022.8.19
鈴木このみ 撮影:池上夢貢

鈴木このみ 撮影:池上夢貢

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15歳でデビューして以来、アニソンシンガーとして快進撃を続け10周年を迎えた鈴木このみが、SPICEに2016年以来2度目の登場! 個人事務所を立ち上げ「社長」になった彼女に、独立に際して考えたこと、そして10月1日に行われる日比谷野外大音楽堂での記念ライブ「10th Anniversary Live ~LOVELY HOUR~」についての思いを聞いた。


■活動10周年、いちばん衝撃だったのは「やっぱり社長になったこと」

――日比谷野音のお話に入る前に、SPICEでインタビューに答えていただくのは約6年ぶりということで、まずはその間に印象に残っている出来事からお聞きしたいです。

そうですね。意外とこの5年はめちゃくちゃスピーディーに動いたなという印象があって。コロナの影響でというのはもちろんあるんですけど、1年1年環境が変わりつつあった気がするんですよね。良くも悪くも落ち着かない状態が続いたのがこの5~6年だったなと思っていて。そのなかで考えたことが、シングルやアルバム、ライブに色濃く出ていた気がします。でも、やっぱり最近のいちばんは社長になったこと……って(笑)。それが一番衝撃ですね、自分のなかでも。

――印象的ではなく衝撃という言葉を選んだことからも感じられます(笑)。つきなみな言い方ではありますけど、デビューした10年前は自分が社長になっている未来は想像しないですよね。

自分のファンクラブコミュニティのなかとかでは話しているんですけど、実はこういう媒体でしっかり話すのは今日が初めてなんです。

――たしかにネット上で独立について語っている記事は見かけませんでしたが、これが初めてですか!?

そうですね、意外と(笑)。デビューしたときは、社長になるとはまったく思っていなかったですね(笑)。「ずっと歌えればいいや~」と思ってピヨピヨ入ってきたので。こんなに自分が右往左往するとも思っていなかったですし、その末に独立という選択を25歳で選ぶことになるとは全く思っていなかったなと思います。

――今年は25歳&デビュー10周年という区切りにしやすい数字が並ぶ年でもあります。それに合わせて独立しようと考えていたのか、たまたまこのタイミングに重なったのかどちらでしょうか。

たまたまです。ただ、たしかに5年単位で大きな出来事が私にはあったなと思っていて。それこそ、前回にSPICEさんにインタビューしていただいたときも、19歳~20歳で精神的に少し大人になっていくタイミングで、自分のなかで大きな事件がありました。もしかしたら、10周年というワード的にも、そろそろ自分で舵を切って行こうかしらという考えもあったのかもしれません。

――10周年を期に、仕切り直すというか。

すごく現実的な話かもしれないんですけど、事務所に所属していると「自分はこうやりたい」と思ってもOKをもらうまで中々動けなかったり、色々考えたときに、私は結構欲張りかもしれないと思い始めて。だったら自分で先頭に立ってやった方がいいのかもしれないなと。今回独立という道を選んだんですが、 今年入ってすぐくらいからずっと悩んでいました。

――悩みというのは、どういったことですか?

環境を変えて新しいチャレンジをしたいとは思っていたものの、別の事務所に入るのがいいのかとかですね。そもそも、独立するのかと、年明けからずっと考えていました。

■「もうちょっとスーツを着る機会が増えると思っていたのに」

――これまでの活動で深い接点のある方のなかには、畑 亜貴さんや草野華余子さんがいらっしゃいます。活動方針の参考にした方はいましたか?

それこそ、デビューから見ていただいている畑さんは、私がもっと大人になったらああなりたいと思う一人ですし、華余子さんは太陽みたいな人で、エネルギーが枯れない人。どうやったらあんな風になれるんだろうと思いますし。ただ、意外と独立という点では意識していなくて。ただ「自分がやりたいからやる」「そっちのほうが面白そう」と思って決めた感じですね。(新型コロナウイルスが発生してから)この2年で、世の中的に「できること/できないこと」がすごくあったじゃないですか。そうなったときに、私はこれをやりたいんだ、これをやりたくないんだという2つもはっきりしてきたなと。

――では、やりたいことができている実感はあるのでしょうか?

まだ全然(笑)。ほしい、実感ほしい! これまでもチームで相談しながら決めてきたので、そんなに大きくは変わらないなとは思うんですけど、以前よりも責任がたくさんあるなと感じます。あと、もうちょっとスーツを着る機会が増えると思っていたのに、全然増えないんですよ(笑)。

――ちなみに、その「やりたいこと・やりたくないこと」がはっきりしてきた、というのは具体的に言うとどんなことでしょう?

そうですね、肌感的なものでもあるので、うまく説明できるかわからないんですが、ライブでずっと歌っていけるアーティストでいるということを大事にしたいなと思います。やっぱり10年間守ってきた鈴木このみ、みたいなものもありつつ。面白いことにはどんどんチャレンジしたいから。そうですね、でも、すごく今「自分で切り開きたい」なと。とにかく、10年目を終えてこれからどうやって長く走っていこうかなと。正直「面白そう!」っていうのが一番かもしれないですね。

――歌手として活動しつつ社長でもあるという先駆者はアニソンシーンにも多くいらっしゃいます。そういう方に相談したりはしましたか?

業務提携でお世話になっている、CAT entertainmentのTom-H@ckさんにお話を聞いたりとか。あとは、もちろん畑亜貴さんにも。なにかに迷った時は、畑さんにいつも最初に相談するんですけど、いつも「このみちゃんならできるよ」と真っ先に言ってくれるんです。畑さんにそう言っていただけると、自分でもそういう気持ちになります。Tomさんも「協力するよ」と言ってくださって。すごく心強いスタートが切れたんじゃないかなと思っています。

――独立の話は、今回のインタビューの前に下調べしていても、あまり情報がなかったので、どれくらい聞けるのか悩んでいたんですが、かなりしっかり話していただけてビックリしています。

そうですよね(笑)。正直にいうと、あまりポジティブじゃない面での心境の変化みたいなところも、すごくこの行動に至るまでのエネルギーにはなったとは思うんです。だけど、ポジティブな気持ちもあるっていう感じで。自然とこういう感じになったなっていう。自分にとって筋が通った歌手人生を長く送るために考えたところ、全部の責任を背負うしかないよねということに落ち着いたっていうのがひとつです。この話をするのは初めてなので、どれくらい話して大丈夫なのか、わからない部分はあるんですけど(笑)。

――こちらとしてはありがたいです。独立の発表は7月1日でしたね。

発表の瞬間はドキドキしました。6月のツアー(『鈴木このみ 10th Anniversary LIVE TOUR ~ULTRA HYPER FLASH~』)中はもう次に向けて動いている最中で、ドタバタだったりはしていて、ツアー中もずっと「この後発表するんだよな~」と思いながら(笑)。ちょっとドキドキしながらライブをしていたりして。でも、何よりファンの皆さんが「応援します」って言ってくださったことが一番心の支えになりました。

撮影:池上夢貢

撮影:池上夢貢

■日比谷野音でのライブ、告知にある「主催:株式会社115」の文字にシビレる

――具体的に、活動する上で変わったことはなにかありました? 気持ちの面でも業務的なところでも。

嬉しいことでいうと、「社長」っていう響きは単純に嬉しいなっていうのもありますし(笑)。まだ3センチくらい浮いてるような気分なんです。あとは自分がやりたいことを、もっともっと純粋な気持ちでやっていけるということが嬉しいです。大変だなっていうところは、アーティスト脳と経営者的な悩みって遠く離れているところにあるんだなって。あと、自分が商品そのものなので、たまに少し落ち込むときとかももちろんありますね。全部を聞かなくちゃいけないので。でも、今のところは、やってみてよかったなという感想が一言目にあるなと思います。

――「代表取締役社長」の名刺は作られたんですか?

名刺はいま作っているところです。いつもはCDを名刺代わりにするような形でいろいろなアーティストさんと交換していたんですけど、今後は名刺もそっと添えられるということで。

――「お世話になっております」と(笑)。

はい、ちゃんとビジネスマナーに則って差し出します(笑)。

――日比谷野音のライブを発表しましたが、その文言に「初めての自社興業」とあるのも、すごく珍しいなと。

面白いですよね(笑)。でも、やっぱりちょっと震えますよ。告知に「主催:株式会社115」と入っていると。なかなかシビレるものがあるなとは思いますね。

――そのシビレる感じを楽しんでるところなんですかね?

あ、それが近いと思います。やっぱり私、さっきも言ったとおり自分が矢面に立たないといけないので、アーティスト活動じゃないところで傷ついたりすることももちろんあるんですけど、でも逆に知れてよかったなということの方が多いですし。色々考えられることが楽しいなと。

――見えるものが広がってきたことが楽しいと。

はい。でもまだ全然、社長としてはこれからだと思っているので。たくさん勉強していきたいと思っています。とはいえ、何がしたくて会社を作ったのかというと、アーティスト人生がもっと広くなっていくように。もっともっと深く音楽に入っていけるようにというところが一番なので。それを大事にしていこうかなと思っています。もしかしたら心配される方もいらっしゃるのかなと思うので、それだけは言っておこうかなと思います。

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