中村倫也が熱演! 洗練された演技が光る、MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』が開幕

レポート
舞台
2022.10.29

ゲネプロレポート

劇場に入ると、すぐに目に飛び込んでくるのは、ステージ中央に置かれたグランドピアノとその上空に吊るされた鍵盤を模したかのようなオブジェだ。グランドピアノの周りは盆になっており、これが河原が仕掛けた演出のひとつであることが分かる。

MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』のゲネプロの様子  (C)MUSICAL「ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~」製作委員会/岩田えり

MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』のゲネプロの様子  (C)MUSICAL「ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~」製作委員会/岩田えり

物語は、ある修道院にピアニストの男(木暮真一郎)が入ってくるところから始まる。男がピアノを弾いていると、修道女(木下)が現れ、男に声を掛ける。すると、男は彼女宛ての手紙を預かってきたと言い、それを渡す。手紙は生前のベートーベンからだった。残り少ない人生を前に彼の想いが綴られていた。

続いて、幼いルードヴィヒ(高畑遼大)が現れ、父親(福士)から厳しいピアノの指導を受けるシーンが続く。ここで注意しておきたいのが、この作品ではルードヴィヒは中村、福士、高畑の3人によって演じられる。しかも、舞台上でその配役はコロコロと変わる。

MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』のゲネプロの様子  (C)MUSICAL「ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~」製作委員会/岩田えり

MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』のゲネプロの様子  (C)MUSICAL「ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~」製作委員会/岩田えり

例えば、幼いルードヴィヒと父親が話していたかと思えば、次の瞬間には立場が入れ替わっていたり、中村と福士がそれぞれ年代の違うルードヴィヒとして同時にステージ上に立っているが、そのどちらかはその場面を俯瞰で見ている“ナレーション役”としての登場だったりする。

決して理解が難しいということはないが、特に前半は入れ替わりが激しいため、今、どの時代のストーリーが展開しているのかを意識していると混乱を避けられるだろう。

MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』のゲネプロの様子  (C)MUSICAL「ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~」製作委員会/岩田えり

MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』のゲネプロの様子  (C)MUSICAL「ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~」製作委員会/岩田えり

それにしても、福士の役の切り替えは素晴らしい。場面転換も暗転もない中、一瞬で声音も表情も変わり、時に壮年期のルードヴィヒを、時にルードヴィヒの父親を、そのほか多数の役を演じ分けていた。この作品は、彼のその演技力あってのものであることは言うまでもない。

MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』のゲネプロの様子  (C)MUSICAL「ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~」製作委員会/岩田えり

MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』のゲネプロの様子  (C)MUSICAL「ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~」製作委員会/岩田えり

中村の演じるルードヴィヒは、「陽」を感じさせる。軽やかなセリフ回しはひたすら明るく、天才の自分に酔うナルシストさを持ちながらも洗練されていた。だからこそ、ルードヴィヒが絶望し、苦しむシーンではより苦悩が際立つ。そして、物語後半の(ルードヴィヒが引き取って育てる甥の)カールとのやりとりの中では、ルードヴィヒの「陽」の部分が彼の狂気を強調しているようにも感じられ、空恐ろしくなった。計算し尽くされた演技にただただ称賛を送りたい。

木下の演じるマリーは、強く自分の道を生きる姿が印象的だった。ルードヴィヒにとって、彼女の存在は「光」。舞台に登場するたびに、その真摯な姿や前に一歩踏み出そうとする強さに目が奪われる。木下にとっては、これまでにない役柄ではないだろうか。そういう意味で、新鮮さも感じた。

MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』のゲネプロの様子  (C)MUSICAL「ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~」製作委員会/岩田えり

MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』のゲネプロの様子  (C)MUSICAL「ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~」製作委員会/岩田えり

また、劇中には、印象深いシーンが山ほどあるのだが、ルードヴィヒが耳の異常に苦しむシーンは特に印象に残っている。ルードヴィヒが異常を感じた瞬間に、客席にも「キーン」という不快音が聞こえ、ルードヴィヒと同じ状態を体感できる。実際にその音を聞くことで、よりルードヴィヒに思いを寄せて観ることができた。

MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』のゲネプロの様子  (C)MUSICAL「ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~」製作委員会/岩田えり

MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』のゲネプロの様子  (C)MUSICAL「ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~」製作委員会/岩田えり

取材会で河原が話していた通り、ルードヴィヒの人生の名場面が次々と登場する、まるで走馬灯のような構成の本作。幕が開いた瞬間からカーテンコールまで全力疾走で駆け抜ける。役者たちの熱量の高い演技を、そして激動のベートーベンの人生をぜひ劇場で体感してもらいたい。上演時間は2時間5分(休憩なし)を予定。

取材・文・撮影(会見)=嶋田真己

公演情報

MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』
ORIGINAL PRODUCTION BY ORCHARD MUSICAL COMPANY
MUSIC BY SOO HYUN HUH
BOOK BY JUNG HWA CHOO
 
【上演台本・演出】河原雅彦 
【訳詞】森 雪之丞
 
【出演】
中村倫也/木下晴香/木暮真一郎/高畑遼大・大廣アンナ(Wキャスト)/福士誠治
 
【日時/会場/席種】
<東京公演>
日程:2022年10月29日(土)~11月13日(日)
会場:東京芸術劇場プレイハウス 
料金:全席指定(パンフレット付き) 14,000円(税込)/全席指定 12,000円(税込)
 
<大阪公演>
日程:2022年11月16日(水) ~11月21日(月)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 
料金:全席指定(パンフレット付き)15,000円(税込)/全席指定 13,000円(税込)
 
<金沢公演>
日程:2022年11月25日(金)18:30開演、11月26日(土)14:00開演
会場:​北國新聞赤羽ホール 
料金:S席 9,800円(税込)/A席 8,800円(税込)
 
<仙台公演>
日程:2022年11月29日(火)18:30開演、11月30日(水)13:00開演
会場:電力ホール 
料金:全席指定(パンフレット付き)13,000円(税込)/全席指定11,000円(税込) /U-255,500円(税込)
 
【ライブ配信】
■配信日程
【1】2022年11月13日(日)13:00回(東京公演 千穐楽公演)
【2】2022年11月30日(水)13:00回(大千穐楽公演)
※アーカイブ配信はございません。
発売情報:ぴあ
 
【主催・お問い合わせ】
<東京公演>
主催:MUSICAL『ルードヴィヒ』製作委員会
お問合せ:公演事務局 https://supportform.jp/event (営業時間:平日10:00~17:00)
※お問い合わせは24時間承っておりますが、対応は営業時間内とさせていただきます。 なお、内容によってはご回答までに少々お時間をいただく場合もございます。予めご了承いただけますようお願い申し上げます。
<大阪公演>
主催:サンライズプロモーション大阪
お問合せ:キョードーインフォメーション:0570-200-888(平日・土曜11:00~18:00)
<金沢公演>
主催:北國芸術振興財団、北陸放送、MUSICAL『ルードヴィヒ』製作委員会
共催:北國新聞社、石川県芸術文化協会
お問合せ:北國芸術振興財団 076-260-3555(平日10:00~18:00)
<仙台公演>
主催:仙台放送
お問合せ:仙台放送 022-268-2174(平日11:00~16:00)

【公式HP】 https://musical-ludwig.jp/
【公式Twitter】 mu_Ludwig
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