Dragon Ash、BRAHMAN、ロットンら出演 四星球が地元・徳島で開催した20周年記念フェス『徳島ジッターバグ』2日目のレポートが到着(画像:全45枚)

2022.11.24
レポート
音楽

四星球 撮影=石井麻木

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初日本番前独特のソワソワ感とは打って変わり、2日目は演者も関係者にもリラックス感が漂っている。ダイスケはんはお気に入りの徳島の大野海苔について、康雄と話し込んでいる。ちなみに初日にも1パック渡されていたが、既に食べきっており、2日目の大野海苔を配給されている。そんな中、14時5分入りであるBRAHMANが早くも開演前の11時半に到着。今や各フェスのムードメイカーでありキーマンであり番長であるTOSHI-LOWが舞台裏に現れるだけで場は大きく和む。そして、終盤、やはりTOSHI-LOWは、この2日目を大いに盛り上げてくれる事になっていく。

11時50分。司会のダイスケはんが登場して、たくさん地元店が出店している飲食ブースや地元店とのコラボお土産などを丁寧に説明していく。その他にも馴染みのあるアパレルブースなど、四星球と関係性がしっかり築かれた店しか出店していないというのは、出展ブースエリア前を通る度に気持ち良かった。文化祭の出し物的な温もりしかない。あっ、アスティとくしま30周年、四星球20周年の他にも、康雄が地元半田の半田そうめん王子になって10周年というアニバーサリーの話題にもなった! そう言えば、初日の四星球は20分押したらしいが、この日もオープニングから危うく押しそうになり、慌ててトップバッターへ!

そのガガガSPのコザック前田は、『前説から押すイベントあるか?!』と笑いながら登場。前田は、四星球が元々ガガガSPのコピーバンドをしていた事も明かし、だから主演者の中で一番付き合いが長いとも話す。

『僕らなんて、本当はステージぞめきなんですよ。それを四星球の計らいで…、後輩やけど親心あっての大きなステージなんです』

このMCに泣いた観客、演者、関係者は多かったのではなかろうか。四星球のバンドマンシップともいうべき、真の意味での絆を感じるしか無かった。2日目のトップバッターは、ガガガSPでしか有り得なかった。

ガガガSP 撮影=石井麻木

ガガガSP 撮影=石井麻木


それでいうと、その後は後輩の04 Limited Sazabys。名古屋のバンドであり、彼らも地元でフェスを開催し続けている。そのフェスの準レギュラーと四星球の事をGENは話していたが、それぞれのバンドが、それぞれのフェスに呼び合う姿は本当に美しい。一昨日34歳になったばかりのGENは、どの現場でも中堅になってきたが、この場では後輩だと嬉しそうに話すのも良かった。フェスをやり続けるという意味では、地元京都でやり続けるROTTENGRAFFTYも、だからこそのメッセージを贈った。

『徳島でロックバンドが集まるフェスになると思うので、毎年やってくれ!』

このメッセージを贈ったN∀OKIは、その後、本番前の四星球の楽屋に現れて、ずっと地元でフェスをやり続ける大切さを説いていた。町興しになるんだと何度も説いていた。あくまで舞台裏でのワンシーンだが、このシーンは脳裏に焼き付いている。

04Limited Sazabys 撮影=石井麻木

04Limited Sazabys 撮影=石井麻木


ROTTENGRAFFTY 撮影=石井麻木


ROTTENGRAFFTY 撮影=石井麻木


ROTTENGRAFFTY 撮影=石井麻木


ROTTENGRAFFTY 撮影=石井麻木


関係性で言うと14時半登場のクリープハイプは、他の演者とは、また違う特殊な関係性であった。お互い20年近く前の10代の頃から対バンはした事があったというが、そこまで近い関係性でも無く、尾崎は自分がライブハウスにコンプレックスがあっただけに、そこに確かな居場所を築いていた四星球が羨ましかったという。20年近く中々交われなかった中、今年の京都大作戦を尾崎がコロナで出演できなくなり、その代打を務めてくれたのが四星球であり、その出来事もあって、今回の共演に繋がる。康雄がクリープハイプ紹介を間違えた事を、尾崎はイジリながらも、『ここから仲良くなりたいと思います』という言葉を四星球に贈ったのは、バンドマンの関係性って素敵だなと感じるしかない好きな場面であった。

クリープハイプ 撮影=石井麻木

クリープハイプ 撮影=石井麻木

クリープハイプ 撮影=石井麻木


続くBRAHMAN。神秘的な登場SEと共に、神秘的な映像演出もBRAHMANならではで惹きこまれる。観客たちは、これからの儀式に向けての聖なる気持ちを表現するかの様に手を合わせて待つ。ライブが始まると、MCが無くただただストロングスタイルで、エモーショナルに鳴らされるライブには圧倒されるばかり…。その気迫、気合いの凄さは普段のライブとは、また違うものを感じた。それは四星球への熱い気持ちがあった上の事であるし、『今夜』で登場した康雄も法被にブリーフという姿ながら、その熱い気持ちを真っ直ぐ受け止める姿は凛々しすぎた。康雄とTOSHI-LOWは熱く抱き合い、TOSHI-LOWの『お前、細美武士じゃねぇな?!』というユーモラスな問いにも、康雄は熱い気持ちが高まってか、ジャンプしながら発狂して応える。TOSHI-LOWにキスを仕掛ける康雄の度胸も凄まじかったし、ふたりの歌う気迫がとてつもなかった。ラストナンバーの最後で堰を切ったかのように長く喋り出すTOSHI-LOW。『クラーク博士と僕』の歌詞を引用しながら、四星球のバンド人生を語っていく。

『強いバンドだ、四星球』

この〆的なエールは凄かった。そして、そのMCによって暗転して終わる。簡単に演劇的などとは言いたくないが、音を鳴らすだけが、歌を歌うだけが、〆る方法では無く、メッセージによって〆る…、その〆方は凄まじすぎた…。そして、四星球を後輩では無く、仲間と言い続けるのも誠にかっこよかった。

BRAHMAN 撮影=石井麻木

BRAHMAN 撮影=石井麻木

BRAHMAN 撮影=石井麻木

BRAHMAN 撮影=石井麻木


気付くと大演舞場はDragon Ashと大トリ四星球を残すのみに。この日のステージぞめきも振り返ってみたい。まさやん軍団を名乗り続けたユタ州だが、長年の付き合いがあるからこそ石井ジャイアンツなど四星球との共通の仲間の名前も出てくる。初日も思ったがライブハウスで四星球が出逢ってきたバンドたちは、どれだけいるのだろうか…。色々な歴史があってこその今なのだろう…。そしてBugLugはビジュアル系とも付き合いがある交流の幅広さを感じさせられたし、彼らもビジュアル系と胸を張って舞台に立っていたのは潔かった。初日の橋本に続いて、高橋久美子、それから福岡晃子がメンバーのくもゆきとチャットモンチーなふたりが続く。特に康雄、U太、まさやんと高橋、福岡は鳴門教育大学の軽音楽部で一緒に過ごした仲間だけに、当時を知らないのに、観ているこちら側も感慨深いものがあった。ステージぞめき大トリは、好き好きロンちゃん。先程、凄まじいライブを魅せつけてくれたBRAHMANのドラムRONZIと思わしき男性が女装でコミカルに破壊的なキュートソングを歌うのだが、気付けばTOSHI-LOWもステージに上がり、伝説のAIR JAMのステージばりに袖に集まったバンドマンたちも巻き込んで、全員笑うしかない強烈な時間に! これもフェスならではの光景である!

ユタ州 撮影=北川成年

BugLug 撮影=北川成年

高橋久美子 撮影=北川成年

くもゆき 撮影=北川成年

好き好きロンちゃん 撮影=北川成年


18時15分Dragon Ash。25周年を迎える彼らだが、Kjは『20年前にここでやった俺たちを、20年後に友達のバンドがパンパンに埋めるなんてロックも捨てたもんじゃない』とのっけから言い放った。BRAHMAN同様だが、後輩では無くて、友達という表現をしたのは、当の本人では無い私でもむちゃくちゃ嬉しかったのだから、四星球はどれだけ嬉しかった事だろうか…。綺麗な女性とのキスや高い車を買うといった一瞬の夢や財産よりも、365日間バンドを続けて20年間過ごすという事の方が愛おしくて難しくて素晴らしいと語っていたのも素晴らしかった。まさしく音楽と音楽が好きな奴の逆襲を祝福してくれていたし、『今も音楽を好きでいてくれてありがとうね』というメッセージも素敵すぎた。ラストナンバー『陽はまたのぼりくりかえす』…、1998年のロック大名曲を…、当時中学生だった四星球は、どんな想いで聴いていたのだろう…。いよいよ大トリの出番時間。先輩と後輩が、いや、仲間と友達が完全に温めてくれた舞台で、後は暴れまくるのみだ。

Dragon Ash 撮影=石井麻木

Dragon Ash 撮影=石井麻木

Dragon Ash 撮影=石井麻木

Dragon Ash 撮影=石井麻木


19時15分。ダイスケはん最後の司会タイム。2日間の中で一番落ち着いたトーンで喋り出した。2日間、四星球と楽屋が同じだった事から話し出す。この2日間共に、四星球は自分たちのライブについて、15時過ぎくらいに出演者の出番時間に殆ど被る事が無い様、時間は短くも内容は濃密すぎる綿密な打ち合わせを行なっていた。本来は無茶かも知れない康雄の構成指示を『大丈夫でしょ』と強く言い切る長年の付き合いがある舞台監督に、台本に細かく書き込みをするメンバーと同世代や後輩のスタッフたち。それを全て観ていたダイスケはんは、『コミックバンドという屋号を抱えてやっている康雄の頭の中を具現化するメンバー、チームに感銘を受けてきました』と観客の前で明かした。そして、バンドというものについて、続ける事の難しさを話した上で、2日間全出演者について決してブレない強い筋が通った人たちばかりだとも述べた。この真っ直ぐなダイスケはんの総括の様な大トリ四星球への言葉には重みがあった。

『この後、繰り広げられる喜怒哀楽…、20周年の総決算みたいなライブが繰り広げられようとしています。徳島が生んだ稀代のコミックバンド四星球!!!!』

マジで泣き出す5秒前みたいな感動的な呼び込みで、どうしてなのかBRAHMANの登場SEが流れて、あの神秘的な映像も再び流れる。もちろん観客たちは手を合わせて待つ。観客もとてつもなくノリが良い。そしてBRAHMANが登場して、楽器のスタンバイもして、TOSHI-LOWが先程までのライブMCの続編の如く、真剣に喋り出して、ひとこと『俺たちBRAHMAN始めます!』と威勢よく言ったところで、康雄が『BRAHMAN始めるな! アホちゃう!』と切り返す。この台本を書いた康雄も凄いが、これに乗っかったBRAHMANはほんまに凄いと心から想った。仲間の為なら、真剣に祝うという姿勢…。感謝しながらも、『俺たちの仲間BRAHMAN! BRAHMANいやブリーフマン始めます!』と台本にも無い一瞬の判断での言葉で、どんどん切り返していく康雄も凄すぎた…。それを袖からでは無く、観客席からじっと見つめるKj…。熱い漢たちの関係は何物にも代えがたい…。

康雄は、BRAHMANをイジったりする事も踏まえて、昔から怖いもの無しと言われると話して、でも怖がって好きな事をやれなくなると後悔するし、それが一番怖いとまとめる。そこから、BRAHMAN『SEE OFF』のカバーと見せかけて、BOOK OFFの曲を披露する。まさしく怖いもの知らずだなと思ったが、彼らには礼儀があって敬意があって、何よりも可愛げがあって、だからルールとマナーとモラルを持った上で多少のイジリをけしかけても、多くの大人たちは笑って許してくれる。彼らが末っ子だから、そんな末っ子気質もあるのかもと、変な持論も考えたりしたが、彼らは末っ子でありながら、今や末から真ん中へとしっかりと歩み出している。

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

『ライブハウス音頭』では、康雄はお手製の神輿に乗って場内を一周ぐるっと周る。それを支える同世代や後輩のスタッフたちを観ると、余計に胸が熱くなってしまう。既に書いたTHE 春夏秋冬を筆頭に、アイアムアイのメンバー、元テンションパーマのメンバーなど、四星球とライブハウスで一緒に過ごした数多くの人間が、この徳島ジッターバグを全身全霊で支えている。それから、2日目出演者たちが何かしら全組残っている事に触れて、その中でも尾崎世界観がどうしても仕事で帰らないといけなかった事を明かした。そんな尾崎と昔はガラガラのライブハウスフロアを共有していたのが、ずっと互いにバンドを続けていたら、多くの人が集まるフェスフロアを共有できたと観客たちに訴えかける。

『ずっと続けていたら、こうなって…、バンドすげーなと思いました。みなさん、おいくつになってもライブハウスにいらして下さい!』

これ以上の言葉があるだろうかと思うも、その後も『オーバーグラウンドとアンダーグラウンドの中間地点で這いつくばってやってます!』などとエモーショナル過ぎる言葉が連打される。

『フェス開催して絶対赤字なんですよ! これを返済していくには、バンド続けていって返済するしか無いから、四星球にお金を使って下さい! そしたら返済終わった後に、またフェスをやれるんで! 1万円高いと思うけど、みなさんクタクタになるまで働いているんでしょ? だったら好きなもんに使って下さい! みなさんの1万円、ライブハウスシーンの未来に使わせてもらいます!』

もう、これが全てだろう。こんなに馬鹿正直に全てを曝け出すバンドマンがどこにいるだろうか。まだまだコロナ禍もあるので、5000人満杯収容というわけにはいかなかっただろうし、フェスを開催するには多大なる予算もかかってくる。だからこそ、簡単に毎年開催して欲しいなんて言う事を部外者の私は安直に言えないが、みんなの少しづつの積み重ねとして毎回ライブを応援していく事が、毎年フェス開催を叶えられなかったとしても、いつか、またフェス開催へと繋がったら嬉しい。そして、四星球は何に対しても嘘が無い。体調不良の静養の為、ライブ活動からは離脱して、サウンドプロデューサーに専念する事になったROTTENGRAFFTY・KAZUOMIへの感謝のエールを忘れなかった事も誠実であった。

遂に2日間のラストナンバー。1曲目でも披露された『UMA WITH MISSION』を再び演奏するが、この曲はコロナ禍で完成した新曲である。だが、馬に扮した康雄が何度も立ち上がろうとしては立ち上がれない中、まさやんが童謡のような応援歌を振り付きで歌う『UMA WITH MISSION』の真意を掴む事を、私は出来ていなかった。出し物としては本当に楽しいわけであるし、コミックバンドに真意を求めるのも野暮だと思っていた。が、この日、康雄は、その真意を話してくれた。

『コミックバンドがこんなん言ったら恥ずかしいから、言わんとこと思ったけど、この曲はコロナ禍で作って、最後にみんなの「がんばれ!」っていう声援が入って、初めて完成するんです。「がんばれ!」って言っても良いじゃないですか!』

そういう事だったのか…。目から鱗が落ちた…。再度、康雄が神輿に乗って場内を周り、ずっとこの2年半も声援を我慢していた観客たちが『がんばれ!』と声援を贈る。この声は攻めであり真っ当であり、本来あるべきライブの姿であった。いつのまにやらステージには全出演者が、四星球の楽屋から勝手に持ち出した段ボールなどの小道具を自由に身に着けて、気付くとKjが馬のマスクをかぶり必死に立ち上がろうとしてたりもする! みんなの自由さを康雄は注意していたものの、Kjを始めとして、バンドマンたちが普段の自分たちのステージとは違う姿を見せてくれたのは感無量だっただろう。それはバンドマンたちから四星球への何よりもの声援であった。

最後は何故だか、まさやんが次いつアスティとくしまでライブが出来るかわからないから、ローションを浴びたいと言い出す展開に。飾り物であったハロウィンのカボチャの顔パーツを分解していくとローションの文字が浮かび上がる緻密な小道具使いなど、最後の最後までニヤリとさせられる。まさやんがゴムプールの中でローションを浴びるという謎の暴挙が繰り広げられると、U太とモリスまでローションを浴び始めて、遂には康雄も仲良くローションを浴び始めるという大オチ!

『こいつらとバンドをやれて幸せだ~!』

そう康雄は最後に叫び、『これからもスベリながら頑張っていきます!』とローションプールでスベリながら、これまた叫んでいる。フェス主催バンドメンバー全員がブルーシートにくるまれてステージから消えていく中、ダイスケはんが袖からステージに現れてお約束の様にしっかりとローションプールにコケてダイブする。こんなに体を張る司会があるだろうか?!

『俺が「四星球~!」と言ったら、デッカイ声で「おめでとう~!」と言ってくれ! あいつらにデッカイ声で「20周年おめでとう~!」と言ってやれなかったから! 俺が全て責任を取るから!!』

アスティとくしまに、この2年半で一番デッカイ声が響いた後、『徳島ジッターバグこれにて終了~!!』とダイスケはんが大絶叫してローションプールに深く沈んでいき暗転になった。こんなにも破天荒なのに、こんなにも美しいフェスの〆を目撃できて、本当に本当に幸せだった。どっからどう見たって素晴らしき祝祭だった。

舞台裏にブルーシートに包まれた四星球メンバーがひとりづつ運ばれてきて、待ち構えていた全出演者たちに挨拶をする。

『至らぬ点も多かったと思いますが、これが四星球のフェスです!』

誰が言ったか、次の返答が四星球のフェスを全て言い表していた。

『何なん?! このフェス!?』

そーです! そうなんです! それが答えだ!

『徳島ジッターバグこれにて終了~!!』

撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木

四星球 撮影=石井麻木


取材・文=鈴木淳史

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