go!go!vanillas 最新形でありながら原点・核心に迫る最新アルバム『FLOWERS』に詰め込まれた大事なこと

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2022.12.15
go!go!vanillas

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2021年11月リリースのEP『LIFE IS BEAUTIFUL』以降、井上惇志(Piano/showmore)、手島宏夢(Fiddle)、ファンファン(Trumpet)とともに制作を続けてきたgo!go!vanillas。楽曲を彩る音色の種類が増え、想像を実現させるための翼を得た彼らが行ったのは、自分たちの愛するルーツミュージックをさらに深く知り、表現すること。メジャー6thアルバム『FLOWERS』から感じ取れるのは、最新形でありながら原点・核心にほど近いバニラズの姿だ。螺旋階段やメビウスの輪のイメージが浮かぶ。アニバーサリーを目前にした2022年にふさわしいアルバムだが、はたしてメンバーは今作をどのように捉えているのか。自然体で笑える場所を大事にすること、永く楽しく人生を歩むこと、何年か後になってもあの頃の自分を認めてあげること、愛せる自分になること、周りの人を愛すること。バニラズの鳴らす音楽には、私たちが忘れてはならないことがたくさん詰まっている。

――まず、今年9月の大阪城ホール&日本武道館でのライブ『My Favorite Things』の振り返りをできればと。『FLOWERS』の制作にも参加した井上さん、手島さん、ファンファンさんを迎えた7人編成でのライブで、演出も盛りだくさんだったけど、音楽や演出の一つひとつにみなさんの趣味がしっかり反映されていたのがいいなと思いましたし、ステージがちゃんと熱源になっていたのも、バニラズはやっぱりロックバンドだと感じられてよかったです。改めてみなさんの感想を聞かせていただけますか?

牧 達弥(Vo/Gt):アルバムを出してからツアーをまわるのが今までの流れだったんですけど、今回はリリース前にアリーナライブをするということで、今の自分たちの熱をかなりスピーディーにライブで出せたのが楽しかったですね。“絶対いいライブになる”と思いながら、アルバムの制作と併行してライブの準備も進めましたけど、本当にいいライブになったなと思います。あとは、あの7人でライブをすることで、バニラズの未来の兆しが見えた気がしますね。ゲストミュージシャンが出るって予告していなかったから、最初はお客さんもびっくりしたと思うんですよ。だけど“どういうライブになるんだろう?”というソワソワが“超楽しい!”というドキドキに変わっていったのがよかったし、3人を呼んだ理由を僕が説明するまでもなく、“好きだから一緒にライブしてるんです”というのがお客さんにも伝わっていたと思うんですよね。お客さんからの愛をすごく感じました。

ジェットセイヤ(Dr):一緒に演奏してくれた3人やスタッフみんなの協力のおかげで、細部までこだわれたライブだったと思います。その中で、惇志くんのピアノと牧の歌だけのところとか、新しいこともやったんですけど、固くなりすぎず、自然にできたのがよかったですね。それはやっぱり、ゲストの3人が寄り添ってくれたからなんですけど……出会ってからもう2年くらい経つんですよ。7人で最初に作ったのが「LIFE IS BEAUTIFUL」だったんですけど、そこから回数を重ねて、音で分かり合うことをやってきた1年半だったなって。大阪城のライブもよかったんですけど、武道館ではさらによくなって、マジで最高のライブができたなと思ってます。

 

:僕らにとってあの3人はすごく心強い存在で、7人編成だと“やりたいことがなんでもできちゃうぜ!”という気持ちになれるんですよ。“自分の好きなものを近くに置くことが一番の自信に繋がる”というのは今回のライブのテーマでもあったけど、僕らの場合、自分を追い込んで表現するんじゃなくて、自分たちのやりやすい環境を作って、自分たちの世界を届けていく方が合っているんだなという発見もあって。バンドの可能性を広げられたライブでしたね。

――居心地の良さといえば、部屋の中を思わせるステージセットも印象的でした。ソファや間接照明が置いてあったり、カーペットが敷いてあったり。

長谷川プリティ敬祐(Ba):あの家具は、実際にアンティークショップに見に行って、自分たちで選んだものなんですよ。配置も舞台監督に一任したりせず、自分たちで“これはこっちの方がいいんじゃない?”“うん、しっくりくるな”というふうに考えていって。本当に自分たちの好きなものだけで構成された空間だったから、細部までお気に入りだったし、そういうものをお客さんと一緒に楽しめたのも嬉しくて。

柳沢進太郎(Gt):僕らは今までにないほどリラックスできたし、お客さんも本当に家に遊びに来たみたいなテンションでしたよね。牧さんが“次は2デイズやろうぜ!”って言ったのも、友達と“今日楽しかったから次はお泊りしようぜ”と約束するみたいで最高でしたし。逆に言うと、基本リラックスしていたからこそ、緊張感が必要な時は自分で付け足すことができたので、ライブっぽくいきたい時とショーっぽくいきたい時で使い分けられた感じもあって。そのスイッチを自分で切り替えられるほど、ニュートラルなポジションに自分を持っていけたのも俺にとっては結構大きかったですね。で、一度これを知ると、それ以降のライブでも、家っぽいステージじゃなくてもリラックスしてライブができるようになるんですよ。あのライブのおかげで一段ステップアップできたし、音楽をより自由にやれる状態が整いつつありますね。

牧 達弥(Vo/Gt)

牧 達弥(Vo/Gt)

――そもそもどういう流れで、ライブに居心地の良さを持ち込みたいと思うようになったんですか?

:コロナ禍で家がすごく好きになって、安心感を大事にするようになったのがデカいのかな。例えば、仕事場でコミュニケーションをとろうと思って、無理やり趣味の話をしても盛り上がらないけど、家に遊びに行った時に本棚にあるものを見て“あ、これ俺も好き”という感じで心の距離が自然と近づいたら、そこで生まれたやりとりってちゃんと記憶に残るじゃないですか。結局のところ、僕はそういう安心感をすごく求めているし、今の時代にとても大事なことだと思っているし、僕がそう思うということは、みんなもそう思っているけど最後には“それってなかなかできないよね”って諦めちゃうんだろうなって思ったんですよね。人はみんな誰かと接する時に鎧を着たりするし、多分社会がそうさせている部分もあると思うんですけど、バンドシーンにおいてそれを最初に崩していくのが俺でもいいかと思ったんです。力を抜いた方が自分の本来の力を出せるし、お客さんも、力を抜いた方がより音楽が聴こえてくるだろうし。

――なるほど。

:あと、海外のアーティストのライブを観ていると、めっちゃ自然体だなって思うんですよ。最近だとブルーノ・マーズを観て、カッコイイなと思いましたけど、それはカッコつけてるんじゃなくて、自分の居心地のいいところにいるだけなんですよね。歌もダンスも“こうしなきゃ”という感じじゃなくて、“こうやって動いたら気持ちいいよね”という少年性や“こうした方がお客さんも楽しくなるよね”というサービス精神を感じる。ずっと夢を見ている人特有のワクワク感みたいなものが伝わってきたし……多分、そうじゃないと長く続かないんでしょうね。(ローリング・)ストーンズとかもそうですけど、さらに多くの人たちに自分たちの音楽を浸透させるためには、フラットな姿を見せていった方がいいんだということに、みんなどこかのタイミングで気づくんだと思います。僕自身、歳を重ねるほど“気楽に行こうぜ”という感覚になっているのは、そういうアーティストの姿を見ているからというのもあるんじゃないですかね。

 

――今のバニラズのモードがよく分かるお話でした。ありがとうございます。アルバムについても伺いたいのですが、まず今作の大きな特徴は、井上さん、手島さん、ファンファンさんが参加していることで。

:3人に入ってもらったのは、音楽の中では常に新しい刺激を求めていたいという気持ちがあるからなんですけど、ただ全てが真新しくなったわけではなくて。自分たちが元々持っていた音楽性をさらに深めていくアルバムにしたいと思っていたし、新しいけど、どこか居心地のいいアルバムになりましたね。

――確かに、音楽性を“広げた”というよりも“深めた”アルバムだなとリスナー目線でも感じました。ゲストミュージシャンが演奏・編曲で関わっている曲は、自然豊かな景色が連想できるような、カントリー・アイリッシュ系の曲が多いですね。一方、バニラズのメンバーだけで完結させている曲はガレージっぽいというか、砂埃が舞っているような……。

:泥臭い感じですよね。

――そうそう。サウンド感は違うけど、どちらも土のイメージが浮かぶというか。

:土臭さはすごく大事にしました。「HIGHER」では《誰もが還る砂》と唄ってますけど、結局死んだら土に還るということにすごく意味があるように感じているんですよ。“子どもは土遊びをしたら強くなる”とよく言われるのも、畑から作物ができるのも、エネルギーや生命力の源がそこ(土)だからなのかなって。で、“バンドって何ぞや?”って考えた時に、俺はやっぱり土臭さだと思うんですよ。人と人が一緒に音楽をやって、化学反応が起きて、でも100%理解し合えるわけではないから、隙間みたいなものが生まれて……その隙間に土臭さがあるかどうかで、バンドと言えるかどうかが変わってくるというか。4人でやっている音楽も、7人でやっている音楽も、聴こえ方は違えどそういう音楽になっていると思うし、自分たちとしては全部地続きという感覚ですね。

柳沢進太郎(Gt)

柳沢進太郎(Gt)

――セイヤさん、プリティさん、柳沢さんは、7人でのアルバム制作を経験して、どんなことを感じましたか?

セイヤ:僕は単純に“バニラズの音楽ってスゲーな!”と思いました。アルバムの話じゃなくてライブの話になっちゃうんですけど、7人で過去の曲を演奏した時に、“ここまで進化できるんだ”と感じたんですよ。例えば「マジック」はもうずっとやってきた曲だけど、3人が加わったことでさらに色鮮やかになって。元々バンドアレンジでやる前提で作った曲なのに、7人でやっても最高なのはスゲーなと思ったし、3人も“こんなに自然に入れることってなかなかないよ”って言ってくれとったのも覚えていて。バニラズの曲に可能性があることはずっと前から知っていましたけど、実際に形になったことで、それがより明確になりましたね。

プリティ:僕は、新しく気づけたことが多かったですね。井上惇志くんから“プリちゃん、そこにこの音置いたらどう?”と言ってもらって、自分の知らない音の運びに気づけたこともあったし……あと、「青いの。」は最初のデモで進太郎がベースを入れてくれたんですけど、“プリさんはここにこういう経過音を入れたい人ですよね?”と聞かれた時に、“え? 俺より俺のこと、分かってるじゃん”って思ったんですよね。そういうふうに、自分ってこういうプレイヤーなんだなと気づかされたのは楽しかったし、メンバーがちゃんと自分のプレイスタイルを知ってくれているということが単純に嬉しかったですね。

柳沢:僕は、フィドルというギターとは違う弦楽器のプレイヤーと一緒に制作できたのが大きかったです。“こういうふうにしたらより本物のブルーグラス感が出るんだ!”という感じで、手島さんからはいろいろ学ばせてもらいました。「Two of Us feat. 林萌々子(Hump Back)」のラストの盛り上がる部分では手島さんからの影響がかなり出ているし、「ペンペン」ではカントリーリックを使いまくったし、手島さんのフィドルが入っていない楽曲でも、ギターでフィドルっぽいニュアンスを出したりしていますね。

 
 
>>次のページでは、曲作りのモードの変化と来年1月からのツアーについて訊いています。
 
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