満員御礼!『アニメソングの可能性』を現地で検証してみた結果……?! イベントレポート

レポート
アニメ/ゲーム
2022.12.14

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アニメソングの可能性!~ということで現地で検証してみた〜』 2022.12.3(SAT)OR TOKYO 3階

SPICEでは「アニメソングの可能性」と銘打って、これまでに計6回に渡り”アニメソング"の輪郭を探すインタビュー連載を行ってきた。時代やタイアップ作品などに合わせて多種多様な変化を遂げる"アニメソング"。音楽ジャンルと呼ぶにはあまりにも規則性は無いが、そんな"アニメソング"が近年ではヒットチャート上位を独占することがままあるのも事実。我々が慣れ親しむ"アニメソング"が持つポテンシャルとは? そもそも”アニメソング"とは何なのか? それは引き続き当連載で探っていくとして、今回はある意味、ここまでの調査結果の発表会とも言える場を設け、皆さんと楽しみつつ振り返っていくべく『アニメソングの可能性~ということで現地で検証してみた~』を12月3日(土)に渋谷orにて主催する運びとなった。果たして、アニメソングの可能性を来場者の皆さんに体感してもらうことは出来ただろうか? イベントの様子をレポートする。


まず先にざっくりとした話をしてしまえば、SPICE編集部内には2名のアニメソングDJとして活動しているものがおり、そこに加えライターである筆者(前田勇介/DJネーム:ろーるすこー)も同シーンで7~8年くらいはDJを続けている。

元々、お互いにこのようなメディアの仕事をし合う前からの関係値があり、逆にこの数年で何故か一緒に仕事をし合うような、数奇な運命がそこにはあるのだが、それはさておき。仕事でもプライベートでも会うたびに半分冗談混じりで「SPICEでアニメソングDJイベントをやったら絶対面白いよな!」とよく言っていた……という裏話をバラすと、本連載の担当である一野大悟(DJネーム:いっちょ)のメンツが立たなくなってしまうかもしれない(笑)。

ともあれ、そんな我々をもってしても時々「アニメソングって何だ?」と思うことがある。そんな疑問を業界の最前線にいる方々へ恐れ多くもブツけてみよう!という連載は我々にとっても学びが多い。実際にアニメソングDJのシーンでずっと活動を続けるには、何かしらのアニメソングの魅力に取り憑かれているからに他ないし、アニメやアニメソングの発展とともにアニメソングDJシーンが拡大していく様子も見てきたつもりだ。普段「楽しい!」だけで済ませてしまっている問題について、何がそうさせているのか?を解明できれば、今後のエンタメ業界はもっと楽しい方向に進めるかもしれない。そんな実験のフォーマットとして、我々が相応しいと感じたのはやはりアニメソングクラブ、通称“アニクラ”であった。

ということで、当連載でインタビューさせて頂いたり、普段取材に協力して頂いているSPICEに所縁あるアーティストの方々をお招きし、第1回目のリアルイベント開催と相成った。今回のゲストは記念すべき連載初回にお話を伺った水島精二監督、第3回のつんこ&葉月ひまり、第5回のMOTSUに加え、春奈るなによるスペシャルライブセットという豪華なラインナップとなった。

途中、1時間ほど生トークセッションやライブがありつつも、あくまで“アニクラ”がベースという事で15時から21時まで、6時間の長丁場でお届けしたのだが、まず驚きなのが来場者の体力だった。「初めてアニクラに来ました!」という方も非常に多く、慣れた人間からすれば6時間は割と当たり前だからこそ、途中で1~2時間くらいは座ってゆっくり過ごす時間があったり、各々のペースでクラブでの1/4日を過ごすものなのだが、ずっとDJブース前の熱量が高かったことに驚きを隠せなかったし、そこにもアニメソングの可能性をビシビシと感じずにはいられなかった。

この日のトップバッターを務めたのは、当連載の担当でもある”いっちょ”ことSPICE編集部の一野大悟。DJ中に編集長の加東からもツッコミがあったが(ツッコミがあった理由は後述する)、本当に1番手とは思えないほどにフロアを盛り上げた。水島精二監督作品の主題歌をかけたタイミングでは、監督自身もDJブースに現れてマイクを握るなど、まるでトリのようなプレイで次のDJへバトンを渡していたのが印象的だった(かくいう次のDJが筆者だった(苦笑))。ある意味この日の方向性を決定的にしていたと言っても過言ではないだろう。

クラブイベントにおけるDJの重要な作業として、遊び慣れた人ほど分かってもらえると思うが、その日のお客さんを見て選曲を行うことがある。ハチャメチャに盛り上がった状態でバトンが回ってきたら、否が応でもその流れに後続のDJも引っ張られてしまう。何故なら、フロアがその流れを求めているからだ。

2番手のろーるすこー(筆者)は、映像演出がなくても楽しさが伝わるようにようにワードプレイ(歌詞繋ぎ)で紡いでいくスタイルでこの日に臨んだ。いっちょのプレイは旬なものから"アンセム"と呼ばれる殿堂入り的な定番曲まで、割とストレートなアニメソングで攻めた王道なプレイだったのに対して、やや変化球だったのもトータルとして見ればバランスが良かったように思えた。「こういうアニメソングの楽しみ方もあるよ!」という提起がしたかったので、少しでも興味を持って頂けたら何よりだ。

最後には自分がSPICEで頻繁にインタビューを担当させて頂いているバンドリ!からRoseliaの「BLACK SHOUT」をキッカケにPoppin' Partyの「キラキラだとか夢だとか~Sing Girls~」「ティアドロップス」と3曲続けて出番を終えたのだが、バンドリ!のターンへ入った瞬間の盛り上がりは想像以上。改めてコンテンツの人気さを感じた。ただ、これと同時に転換の直前でドカンと盛り上げられたら次のDJは誰だってやりづらいもの、という事をつい先ほどに自分が痛感したばかりだったので、申し訳なさも感じていたのだった(笑)。

3番手を務めたのは、1人目のゲストDJの水島監督だ。「まだまだこの先もあるけど、みんな大丈夫? オレのターンは前半は休憩時間だからね!」とMCで気を使って頂いたが、「悪魔くん」(水木しげる原作、1966年の特撮テレビドラマ)のオープニングテーマからスタートさせると、アニメソングの黎明期から現代にかけての変遷を振り返る超スペクタクルな40分間のショーが行われた。「流石に誰も知らないよね?オレも産まれてないもん!これじゃ盛り上がれないでしょ?(笑)」と実は本人も狙い通りのフロアの反応で、監督もニンマリ。

途中からは自身が手掛けた作品のゾーンがあったり、最後にはPhoton MaidenやD4DJで着地させる辺りもさすがで"水島精二"という人だからこそ出来る圧巻のDJプレイだった。

続いては葉月ひまりが"from D4DJ"として登場。D4DJキャストとして外部のクラブイベントにゲスト出演するのは初ということで、ディグラーはもちろん、多くのブシロード関係者も注目をしており、実際にたくさんの方々がそのデビュー戦を見届けに来ていた。DJを題材にしたコンテンツなだけに「実は企画当初から外部のDJイベントにD4DJキャストを出演させたかった」とは関係者の談だが、情勢の関係もあって、ようやく念願叶ったカタチとなった。

「準備が出来ましたので、それではスタートします!……あれれっ?音が流れないぞ~」と転換時のミスもクラブイベントならではのあるあるだが、そんなこともあり筆者や編集長、水島監督も固唾を飲んで見守っていたが、始まってしまえばそんな事は杞憂となった。「DJ始めたばかりの子がこれだけ上手ければ、オレたちの立つ瀬がないよね(笑)」と水島監督も太鼓判を押したプレイは、会場にいたディグラーへ十分伝わっていたと思う。今回は”from D4DJ”ということでコンテンツの楽曲に限った内容だったが、間違いなくこの日イチバンの盛り上がりを見せていた。

さて、ここまで前半戦を終え、ここからはつんこ、春奈るな、MOTSU、水島監督ら4名にご登壇頂き、トークセッションへ。SNSへの投稿厳禁ということで生の現場ならではのギリギリなオフレコトークも飛び出し、レポーターとしては非常に書きづらい部分も多かったのだが(笑)、ここでのトークがキッカケで、後ほどMOTSUのターンで発売前のエクスクルーシブ音源をお披露目する流れが生まれたり、非常に濃い内容だったが故に、詳細にお届け出来ないのがもどかしい。それでも、やはりアニクラをベースにしたイベントという事で、それぞれのアニメソングDJに対する向き合い方だったり、逆に自分の関わった楽曲がこういう場で流れることに対してだったり、そもそものアニメソングの歴史的な流れといった大きな話題にまで発展したのは、イチDJとしても非常に聞き応えのある内容だった。


アニメ監督、クラブミュージックからアニメソングにアプローチし続けた人、アニメソングシンガー、アニメソングDJからアニメ業界へ入った人と、それぞれの視点から語られるアニメソングの可能性は必聴と言えただろう。唯一ここでSNSへの記載が許された内容として、水島精二監督が西川貴教、田中れいなとともに消臭力のCMをつくりたいと言っていたことだけをここに記しておこう。

後半戦はSPICEアニメゲーム部門の総大将、編集長の加東岳史ことkaxtupeが登場。得意のアニメソングRemixとクラブミュージックライクなアニメソング原曲を織り交ぜての踊れるプレイで、トークセッション直後のフロアに再び熱を入れていく姿が印象的だった。途中でMerm4id×燐舞曲の「FAKE OFF」がドロップされると、つんこがブースへ駆けつけマイクを握るシーンもあった。

最後には特大エクスクルーシブも飛び出すと「何でそんな音源があるんだ~!」と思わず叫んだ水島監督の様子が本当に面白かった(笑)。

ここで春奈るなによるスペシャルライブが披露された。クラブイベントでもこのようにボーカリストを迎えてのゲストライブが行われることがあったりする。こういった際のライブハウスとの違いで特記しておきたいのはやはり出演者との距離の近さが挙げられるだろう。彼女の歌声を超至近距離で堪能できた方々は本当に幸運だったと思う。この日のセットリストは「アイヲウタエ」「君色シグナル」「BLUE ROSE」「Ripple Effect」「Overfly」の5曲だった。

続くMOTSUはマイクスタンドをブースへ持ち込み、喋り、ラップし、時に歌いながらDJスタイルで、得意のユーロビートを基調にフロアへ檄を飛ばす。直前のトークセッションで急遽関係者からの許可が降りた、未公開音源の公開というサプライズに大いにフロアは盛り上がった。クラブでアニメソングでDJをしているSPICE編集部の誰よりも、その遥か前からアニメソングとダンスミュージックとの可能性に挑戦してきた氏だからこそできるプレイ、食い入るように見てしまった。ぜひ連載第5回のインタビュー記事を読んで頂けると、その力強さはさらに伝わるかと思う……!

この日のトリを任されたのはつんこだ。

アニメソングRemix好きな彼女にしては珍しく原曲寄りなプレイだったのが印象深いが、途中でMCにMOTSUを呼び込んでの“もつんこ"のコラボも大いに盛り上がった。「世代がバレるぞ~」なんて茶々を入れつつも、基本的には彼女の本当に好きなアニメの好きな曲を軸に、ワードプレイがあったり、戦艦繋ぎがあったりと所々でテクニカルな小技を仕込んでいたように見受けられたが、皆さんはお気付きだっただろうか?基本的にこういったクラブイベントにおいては、オープンとトリは主催側の人間がやることが多かったりもするのだが、既にアニクラでの活動歴も豊富な彼女だからこそ、1回目の大トリを任せられたのだろうなと思った。そしてその役目を見事に果たしてくれた。

これもクラブ独特のカルチャーなのかもしれないがオファーの際などに「こういうDJをやってください!」と主催が指示を出したりすることはあまり無い。貼り出されたタイムテーブルを見て、DJがその時間に自分がやるべき事を考えるのだ。冒頭にあった編集長のツッコミとはまさにコレに該当するのだが、この日に限ってみれば正解だったし、それを嗅ぎ分けたDJいっちょの嗅覚は間違っていなかったということになるのだが、この日のつんこにも同じことが言えた。私がクラブカルチャーを語る上で、ついつい"粋"という言葉を使いたくなってしまうのだが、これもまたクラブの"粋"な文化の1つだと私は思っている。

ここまで色々と振り返ってみたが、クラブイベントのレポートではセットリストもあまり自由に書くことが出来なかったりする。今回、大人の事情で動画撮影と一部出演者は写真撮影もNGとさせてもらったが、それと同様な問題だ。イベントレポートで明確に曲名を表記できるのも、その辺のさじ加減で限られている。そんなクラブカルチャーの特殊な部分は当連載や、次回以降のイベント開催時にでもお伝え出来ればと思う。

しかしこの件に関して、レポートの場で1つだけ言える事があるとすれば、暗黙のルールというか、マナーがあるからこそクラブイベントは楽しいのだという事。これはその場で同じ一夜を過ごした人たちだけの特別な時間であると考えて欲しい。それを壊すような行為は、粋じゃないよね?と。

ただ、その一方でマナーをキチンと教えてくれる人があまりいないのも事実。自分だって明確に誰かに教わったという記憶はないし、クラブで遊んでいく中で自然と覚えたものだ。これがクラブの醍醐味でもある半面、クラブにハードルの高いイメージを植え付けている部分でもある。特に今回みたいに初めて来ました!という方が多ければそれも尚のことだ。

今回、勇気を持って初めてのクラブへ足を運んでくれたみんなにそれを伝えていくのも我々メディアの役目だとSPICEは考える。普段はインタビューをして、記事を書いて、伝えているが、こればっかりは実際にクラブで遊んでみて体験しないと伝わらない、文字だけでは伝えきれない部分ではある。

“何が”とは具体的に書けないが、クラブのノリだからこそ起こったミラクルも多くあった。

その場で流れた曲がいくつかあった。こういうのが起こりうるのもクラブの醍醐味だ。"こういうの"は"アレ"を良しとしてくれた関係者の"粋"で成り立っているので、レポートを執筆しているいま現在、無粋なことをする人が現れてなくて本当にホッとしてるし、だからこそ「じゃあココのお客さんにだけならもしかしたら次も…?」と信頼で育まれていくのがクラブカルチャーなのだ。

具体的に何が良くて、何がダメで、何がグレーなのか。その話は追々するとして、改めて振り返ってみても、各演者が色んな角度から"アニメソングの可能性"を試していたのが本当に印象的で、それだけでも開催した意義があったと思っている。

とはいえイベントごとなので、お客さんが入らなければ続けていくのも難しい。その点でも次回に希望が持てたのも本当に良かった。こればっかりはやってみないと本当に分からない部分なので、ホッとしたというのが本音だろうか。

アニメソングが進化を続ける限り、アニメソングの可能性も無限に拡がりを見せる。我々、エンタメを発信するメディアとしては、その最前線でアニメソングの可能性を広げ続けるクリエイターたちの想いを少しでも多くの人へ届けたいと思う。

しかし、無限にある可能性の中から、最終的に「良い!」と感じたものを選ぶのはアニメソングファンの皆だ。クリエイターが考え「これはどう?」と発売したCDを手に取るのは我々なのだから、アニメソングの可能性を作っているのは我々だとも言えるのではないだろうか?

それと同様に『アニメソングの可能性』のリアルおイベントがもう一度開催される”可能性”に私は賭けたいと思う。ご来場頂いた皆さんの声が次回に繋がる。ぜひ連載記事の「アニメソングの可能性」も盛り上げて頂けると次回開催がグッと近付くはず! よろしくお願いしたい。

■『アニメソングの可能性!~ということで現地で検証してみた〜』PHOTO GALLERY
次のページにてレポート内では掲載しきれなかった写真を掲載!

文・レポート=前田勇介

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