薮宏太に聞く、ミュージカル『She Loves Me』~作品の魅力や楽しさ、ミュージカルに対する想いとは

2023.3.8
レポート
舞台


1963年にブロードウェイでの初演が大絶賛を浴び、日本では1995年の初演から繰り返し上演されてきた人気ミュージカル『She Loves Me』。 2023年5月のシアタークリエ公演では、2009年に同じくシアタークリエ公演で主演を務めた薮宏太(Hey!Say!JUMP)が約13年ぶりに同役を務める。制作発表会見に続いて、合同取材も行われた。

<あらすじ>
ブダペストのとある香水店で働く青年・ジョージ(薮宏太)と新人店員・アマリア(綺咲愛里)は顔を合わせれば喧嘩をする犬猿の仲。同僚のコダリー(岡田亮輔)とイローナ(宮澤佐江)は交際中だが、遊び人のコダリーにイローナは振り回されていた。シーポス(坂元健児)やアルパッド(竹内將人)ら店の仲間達と賑やかに日々を送っているジョージだったが、社長のマラチェック(岸 祐二)は彼に恋人がいないことを心配してあれこれと口うるさく言ってくる。だが実はジョージには最愛の女性がいた。それはなんと文通相手!まだ見ぬ彼女に本気で心を奪われていた。
クリスマスの準備で大忙しのある日、ジョージは遂に文通相手とデートをすることに。期待と不安で落ち着かないジョージだが、同じ気持ちを抱えている人物がもう一人いた。それはアマリアだ。実は彼女も、まだ見ぬ最愛の文通相手とデートをすることになっているのだった。しかしせっかくの夜にジョージは残業を言い付けられてしまう。彼はマラチェックと言い争いになり、勢いで会社を辞めることに。憂鬱な気持ちで文通相手との約束の店へ向かうが、そこで待っていた人物は――。

 

■自分がやるべきことをきちんとやっていくのが目標

――会見でもお手紙にまつわるお話が出ましたが、薮さん自身はお手紙を書くことはあるんでしょうか。

嘘をつけないので正直に言いますが、書かないです。でも、年末に東京ドームでライブをやった時にJr.の子が何人かHey! Say! JUMP宛に手紙をくれました。今の子でも手紙を書く子は書くんだと思いましたね。あまり絡みはなかったんですが、メンバーカラーの便箋などを用意して、「薮くんは優しそうなオーラが出ていてかっこいいです」と書いてくれて嬉しかったです。

――今回アマリアを演じる綺咲さんの印象を教えていただけますか。

今日初めてお会いして、まだあまりお話しできていませんが、凛とした雰囲気ですよね。アマリアも感情の起伏が激しいので、想像がつきません。ファンの皆さんもそう思っていらっしゃるかもしれませんが、あの綺咲さんがどう癇癪を起こすのか楽しみです。

――演出の荻田浩一さんについてはいかがでしょう。

まだお会いしていませんが、経歴だけ見てもすごい方ですよね。ミュージカルに対する取り組み方や演出をたくさん聞けるようにしたいなと思っています。

――主演・座長を務める上で大切にしていることを教えてください。

自然体が一番いいかなと。稽古に入る時、やっぱりジャニーズのアイドルとして接してくださる方が多いので、一発目からちょっと抜けたところを見せたりしています。「そういう人なんだ」と思ってもらえるとその後がすごく楽になるし、稽古場の雰囲気も朗らかで和やかになる気がするんです。座長を務める先輩方を見ても「俺について来い!」というタイプはあまりいない。一番かっこいいのは、やることをやってクオリティの高いものをお客さんに見せること。その姿がカンパニーを引っ張っていくことになると思います。

■キャラクター同士のやり取りや感情の揺れをしっかり見せたい

――13年前はちょっと背伸びをして大人なキャラクターを演じていたということですが、当時からの変化、大人になって改めて感じるこの作品の良さなどはありますか?

当時はデパートなどに行くことも少なく、接客ってなんだろうと思いながらやっていた部分があります。所作などは振り付けを覚えるような感覚もあったので、そういった部分の見え方はちょっと変わるかなと思います。

作品の良さ自体は13年ぶりでも変わらず、男女のすれ違いから生まれるもの、やり取りが面白いですよね。文通相手が実は近しい人だっていうドギマギを、お客さんにも一緒に体験してもらえたら嬉しいです。

――ご自身の役柄の面白さ、薮さんが特に好きなシーンはどこでしょう。

僕が演じるジョージは意外と感情の起伏が激しいので、喜怒哀楽を前面に出すと色々な部分が活きると思うので、そこは意識したいですね。

好きなのは、想いを寄せる文通相手がアマリアだと分かるレストランのシーンです。あとはそのレストランでアマリアにバレないように隠れながら喋る、みたいなシーン。(2009年に演出した)錦織さんが演出にすごくこだわっていて、2009年の公演でシーポスを演じたとっつー(戸塚祥太)、河合ちゃん(河合郁人)と喋りながら壁を這うような芝居をしたのがすごく印象に残っています。

――本作の楽曲のどんな部分に魅力を感じますか?

ジョージが働く香水店に来たお客様に商品を勧めるやり取りの曲がすごく面白くて好きです。あとはアマリアのソロのラストがとんでもない高音。あれを聴けるのは楽しみですね。僕が歌う曲に関しては、タイトルにもなっている「She Loves Me」。前回はジョージがはしゃいでいる様子を表現するために客席に降りて歌いました。悩みやいがみ合いが解消された開放感の中で歌う曲でもあるので、僕も楽しかったです。

■ミュージカル作品に対する自信や取り組み方が身に付いてきた

――昨年も『ジョセフ・アンド・アメージング・テクニカラー・ドリームコート』や『BE MORE CHILL』といったミュージカル作品の主演を務められていました。改めて、ミュージカルの楽しさ、アイドルの仕事との違いを教えていただけますか?

一番いいのは、稽古や本番中にすごく規則正しい生活ができることですね。毎日自分の体調を気にして、朝起きた時に「今日はこういうコンディションだ」とか「ちょっと違和感があるから、本番までの数時間で何かできることはないかな」と逆算して準備をする。その繰り返しがルーティンになると、生活が律せられるし、忙しいのに逆に健康になります。

あとは、言葉を音楽に乗せることでよりその言葉が引き立つというか。喋っているだけだと意外と入ってこない言葉も、曲になると印象に残ることが多いですよね。それがミュージカルの魅力なのかなと思います。

――ちなみに稽古中のルーティンは。

本番でも稽古中でも声が出るようになるまでの時間は同じなので、「稽古がこの時間だから何時間前には起きよう」と決めて準備をし始めます。その時間を決めておくと本番もスッと同じようなルーティンで行けるので。それと、稽古中でも必ずバラエティの仕事が入ってくるので、喋らないといけない時は「ちょっと有岡(大貴)頑張ってね」みたいな(笑)。でもメンバーもそういう期間は気遣ってくれますね。「この人は今こういう仕事をしているから」っていうのがメンバー同士で分かるので、お互いサポートしあっていますね。

――会見でもミュージカルについて「少しずつ自信がついた」とおっしゃっていました。具体的にはどんな部分でしょう。

『ジョセフ』も『BE MORE CHILL』も、その前の『ハル』もそうですが、1ヶ月近い公演をする中で、1ヶ月間大きな波がなく安定して歌えたんです。その期間を乗り越えられたことはすごく自信というか安心に繋がりました。

――最後に改めて本作の見どころをお願いします。

見ての通り、個性が際立つキャストが揃っています。僕も稽古を通して皆さんがどんなキャラクターを作り上げるかすごく楽しみですね。『She Loves Me』を知っている方は想像して答え合わせに来てほしいですし、知らない方も、一人として嫌なキャラクターはいない、みんな愛せる作品なので、お気に入りのキャラクターを見つけて帰っていただけたらいいなと思います。

公演情報

ミュージカル『She Loves Me』
 
日程・会場:
<東京>2023年5月2日(火)~30日(火)シアタークリエ
<大阪>2023年6月3日(土)、4日(日)東大阪市文化創造館
<愛知>2023年6月8日(木)~10日(土)御園座
 
台本:ジョー・マスタロフ
作曲:ジェリー・ボック
作詞:シェルドン・ハーニック
翻訳・訳詞・演出:荻田浩一
 
CAST:
ジョージ:薮 宏太(Hey! Say! JUMP)
アマリア:綺咲愛里
イローナ:宮澤佐江
アルパッド:竹内將人
コダリー:岡田亮輔
マラチェック:岸 祐二
シーポス:坂元健児
 
港 幸樹

小原悠輝
折井洋人
福永悠二
天野朋子
樺島麻美
笘篠ひとみ
藤咲みどり

製作:東宝
  • イープラス
  • 荻田浩一
  • 薮宏太に聞く、ミュージカル『She Loves Me』~作品の魅力や楽しさ、ミュージカルに対する想いとは