「深くて壮大なテーマのある作品」 平間壮一に聞くミュージカル『ヴァグラント』の魅力や注目ポイント

インタビュー
舞台
2023.6.9

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ポルノグラフィティのギタリストである新藤晴一がプロデュース・原案・作曲・作詞を手がけるオリジナルミュージカル『ヴァグラント』。1918年の日本を舞台に、“マレビト”と呼ばれる芸能の民と、ある炭鉱で暮らす人々を描く物語だ。主演を務める平間壮一に、本作への意気込みやオリジナル作品ならではの魅力を聞いた。4月某日行われた、ビジュアル撮影の模様とともにお届けする。

■熱い思いを持つカンパニーで挑むオリジナル作品

――稽古はこれからですが、今回楽しみにしていることはなんでしょうか。

日比谷フェスのリハーサルなどで、キャストの何人かと(新藤)晴一さんにお会いして、熱い人が多いなと感じました。まだ深くお話はできていませんが、みんな信念や訴えたいことを持っている人たちだという印象を受けました。この人たちが集まって一つの作品を作ったら何かしら起きる気がしています。特に同じ役の廣野(凌大)くんに関しては、初めて会った気がしないというか、何か似たものを感じました。自分の世界があったり、言葉の受け取り方や物の見方が人とちょっと違ったりするんじゃないかなと感じますし、それがこの作品にいい影響を与えそうだと思います。

――脚本はもう完成しているんでしょうか。

まだ完全ではなく、三稿目くらいです。100年前のお話で、(今の)僕らから見たらもう決まっていることだけど、自分たちが住んでいる土地や新しい法律について、あの時こう変えていたらもっと生きやすい世の中になっていたんじゃないかと考えさせるような部分があったり、未来の自分たちに向けて「幸せの場所は見つけられたかい?」と問うような曲があったり。晴一さんは希望や未来というものをすごく大切にしていると言っていました。人間模様ももちろんありますし、今僕たちが生きている日本をもっと良くできるよねという思いも込められている。古いものが全て悪かったわけでも、新しいものが全ていいわけでもない。すごく深くて壮大なテーマをやろうとしていると思います。でもその中に一人ひとりが持つ悩みなどもあって、いろいろな思いが織り交ざっていますね。

――キャストの皆さんの印象はいかがですか。

平岡(祐太)くんとの共演は本当に楽しみです。先輩ですが、これまで接点があまりなかったので。僕としては、アミューズはあんまり先輩後輩っていうイメージがない事務所だと思っています。もちろん年上の方は尊敬していますが、みんながみんな自立しているというか、平等にいる感じがして。だから稽古場に入った時にどんな空気感になるか楽しみですね。

■オリジナル作品は、無理なく言葉に思いを乗せられる

――オリジナル作品のどんな部分に面白さや魅力を感じますか?

上手く説明できないんですが、オリジナル=それが本物である、というところです。海外の作品ももちろん素敵だし、できるのは嬉しいです。でもやっぱり、オリジナルがあるのが少し悔しい。よく言われるのが「アメリカ人がちょんまげをつけて侍の役をやることはないだろう」と。でも僕らはかつらをつけて髪を染めて、洋服を着てアメリカ人の役をやっている。嫌じゃないけど、日本人(の役)でもいいじゃんという思いもある。だから100%自信を持ってやれることが本当に嬉しいです。

――日比谷フェスティバルでは、ミュージカル曲とロックやポップスの違いという話も出ていました。平間さんが感じる違いや本作の楽曲の魅力はどんなものでしょう。

台本はいただいているものの、まだ完成していないので掴みきれない部分があるんです。そんな中で曲を歌うことで、ビジュアルだけの状態からイメージがどんどん膨らみました。祭り的な要素が入っていたり、訴えかけてくる曲になっていたり。

多くのミュージカルと違うのは、日本語で作られたオリジナルの楽曲で、何一つ無理なく、気持ちよく歌えることです。英語で作られた楽曲を翻訳すると、どうしても無理しながら歌う部分が出てくる。そのストレスがないのが一番の特徴ですね。

――新藤さんが書かれる言葉の魅力を教えてください。

押し付けがましくないというか、とにかく優しくて丸くてスッと入ってくる。違和感なく、言葉として聞こえる印象です。誰が聞いても晴一さんだとわかるものって、多分演劇にした時にくどくなっちゃうと思うんです。でも晴一さんはいろいろな音楽やミュージカルを知っていて、しかも大好きでいてくださるので、バランスも取れていて。本当に優しい方だということが文章に出ていると思います。「演技もミュージカルも大好き!」ってあんなに可愛い顔で言ってくださるとは思っていませんでした(笑)。

――思いの乗せやすさにも違いが出るんでしょうか。

『RENT』に出演した時に、日本語が音に聞こえないというのが一番の課題でした。元が英語だと、日本語にした時にすごく早くなったり無理に文字を埋めたりするからのっぺりしがち。でも今回は無理がないので、自然と言葉になる。お客さんも「何か違う」と思う可能性は大きいです。

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