Survive Said The Prophet、フェイクじゃなく本当の想いを一つ一つ音にした「10年やってまだ本気でケンカできる環境を誇りに思う」

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2023.6.7
Survive Said The Prophet

Survive Said The Prophet

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昨年リリースの傑作アルバム『Hateful Failures』で新たな次元へ突入したSurvive Said The Prophet、通称サバプロが放つ期待のニューシングル。TVアニメ『ヴィンランド・サガ』SEASON 2オープニング・テーマに起用された「Paradox」は、絶対の武器であるキャッチーなメロディの良さを軸に、容赦なくラウド&ヘヴィなサウンド、ドラマチックに変転する構成、そして「一歩ずつ進んでいくんだ」と叫ぶ強力なメッセージを持つ曲。メンバー個々のセンスと思考がぶつかって溶け合い、進化し続けるサバプロを象徴する新たなキラーチューン誕生を祝して、メンバー4人に話を訊いた。

――去年のアルバム『Hateful Failures』はアメリカで録ってましたよね。今回の新曲は、そのあとに作ったものですか。

Tatsuya:いえ、その時にこれも録ってます。なので、実は(アルバムの)初回限定DVDの中で、ホワイトボードに「Paradox」というタイトルが書いてあったりして、映像ではうまく隠したんですけど、ちょっとだけヒントを残してあったりするんですよ。なぜかアルバムの曲数よりも1曲多いぞみたいな。だから、その時に録ってました。

――『Hateful Failures』は、今聴いてもすごいアルバムだなと思います。どんなレコーディングだったんですか。1か月行ってたんですよね。

Ivan:3週間ぐらい?

Tatsuya:今まではメンバーだけじゃなくて、マネージャーやチームの人たちと一緒に行く形が多かったんですけど、今回初めてメンバーだけで行って。あっちでは自分たちで何もかもやるということで、レンタカーを借りて、買い出しもやって、4人の時間を深めに行くみたいなレコーディングだったんですよ。だから僕らの本当に生々しい感じというか、すげぇリアルなものが録れてるアルバムかなと思ってます。

Show:4人になって初めてのアルバムだったので、それがどういう変化をもたらすか、自分たちでもわからない状態のままで作っていったんで。一人減ると当然変わってくるわけですけど、それがいい状態に転ぶかどうかわからないままで行ったから。もしかしたら、そのまま解散するかもしれないみたいな。

Tatsuya:あー、思い出してきた。

Show:解散まで行くかはわからないけど、4人だけで過ごす3週間の中で、仲が悪くなるかもしれないし、もっと良くなるかもしれないし、ギャンブル的な感じで行ったから。でも結果的に3週間という時間が、前に進ませてくれたような時間になったから、今もこの「Paradox」という楽曲を世に出せてる。という結果でした。

――それは3週間の間に、腹を割って話し合う時間があったということですか。

Show:それもあったし、こいつらがケンカしたり。ケンカして、僕がキレるみたいな。

Tatsuya:で、僕はキレるタイミングをなくして(笑)。

Yosh:まあシンプルに言うと、合宿みたいな感じをイメージしてほしいんですよね。30歳、男4人が、リビングルームと寝る部屋しかない場所で3週間過ごすのは、バンドじゃなくても普通にカオスだと思うんですよ。おのおのしっかり家もあって、自分たちの生活スタイルがあって、それを築いたあとに原点回帰みたいな感じで。

Tatsuya:出会った頃の僕らに帰るみたいな。

Yosh:そうそう。

Ivan:普通やらないよ。

Yosh:そこを自らバンドでやるという意味でのギャンブルというのは、みんな意識があったんで。けど、その気持ちが結果的にアルバムに入れられたのは、さっきShowが言った通りです。

Tatsuya:僕ら、コロナの時期にすれ違いが多くて、会わない時間が増えちゃったんで。四六時中一緒にいた奴が急に会わなくなると、「何考えてるんだろうあいつ」みたいな、疑心暗鬼みたいな気持ちも生まれて、ボタンの掛け違えみたいなことがあって。それがあらためて状況が戻って来て、逆にグッと寄り添ってみたらどうなるんだろう?というのが、ある種の賭けだったんですよ。

Yosh:だからアルバムのタイトル通りですよね。「憎しみの過ち」。

Yosh

Yosh

――ああー。『Hateful Failures』はそういう意味だったのか。

Yosh:はい。最終的にそうなりました。

――ちなみに、さっき言ってたケンカって、何をケンカしたんですか。

Ivan:何だったっけな。いつもケンカしてるんですよね。

Tatsuya:あの時は、ジャケットのデザインについて。

Ivan:まあケンカというか、言い合いというか。バーッて言い合ってたら、こっち(Show)がキレて、二人(Yosh&Ivan)で目を見て「あれ? どうする?」みたいな感じだったから(笑)。おもろかったけどね。

Yosh:インタビューでここまで話したことないけど(笑)。けど、正しいアクションがそこの部屋で全部行われていたというか、一人一人の正しいアクションが個人で行われた中で、じゃあ団体としてどうする?という決着が、すごくいい形でついたなと思っていて。「ドラマがないとバンドじゃない」というところもありますし、かといって、ドラマに取り込まれて落ちていくバンドも中にはいるわけで、ケンカというワードが出ましたけど、最終的に支え合いになったのかなって、今振り返るとありますけどね。その時は余裕がないから、自分の気持ちを吐き出すだけになるんですけど、受け取って、解釈して、時間をかけて、それが作品になるというプロセスがあって、フェイクじゃないというか、本当に思っていることを一つ一つ音にしているんだなっていうのは、今回に限らず、どのアルバムにも感じますね。

Ivan:今でもメンバーがケンカできる環境を、誇りに思ってますね。夫婦とかもそうじゃないですか? 言い合いできなくなってしまうって、良くない状況じゃないですか。10年やっててまだとことんケンカできるのは、すごい誇りに思ってますね。もちろんケンカが好きなわけじゃないけど(笑)。いつも平和で最高ですっていう感じでいたいんですけど。ね?

Yosh:熱い気持ちは間違いなく、クリエイティブにみんなすごくあるから。

Ivan:それって、本気でぶつけ合ってるっていう勝負じゃないですか。

Show:でもそれをあんまり出し続けちゃうと、問題がまた起きるんで…(笑)。それは二人に限らず。みんなそうじゃないですか。思ってることを全部おっぴろげて、出していくことはすごく難しいというか、そのバランスがどれだけ近くに寄るか、どれだけ遠ざかるか。そこはこの2,3年の(バンドの)命題になっていたような気がするので。さっきTatsuyaが言ったように、コロナでまったく会わなくなった時期に、考える時間ができるから、「俺が考えてるということは、こいつも何か考えてるだろうな」とか、勝手に想像がふくらんでいっちゃって、それが1,2年ぐらい続いて、お互いがお互いを見えない状態で、戦いもしないし。

Ivan:勝手に妄想して、勘ぐっちゃってる感じだよね。

Show:というところでの、アメリカのレコーディングだったから。というのがさっきの話に繋がるんですけど。

Ivan:あえて選んだもんね。あえて今やるかって。

Tatsuya:だからイチかバチかのギャンブルだったし、駄目だったら駄目でしょっていう感じ。しかも、僕が(バンドに)入ったのは『FIXED』(2016年)からなんですけど、その時のプロデューサー(クリス・クラメット)に戻るということだったから。なんだかんだ、メンバー全員で行くのは久しぶりだったし、『Inside Your Head』(2020年)はShowだけが海外に行って録ったりしてたし、そこからまた少し空いて、久しぶりにまた全員で行くというのがこのアルバムだったので。

Tatsuya

Tatsuya

――サバプロのヒストリーの中でも、めちゃくちゃ重要なアルバムですね。道理で、音から感じる気迫が違うなと思います。そして話を今に戻して、新曲の「Paradox」。TVアニメ『ヴィンランド・サガ』のオープニングテーマに起用されるのは、「MUKANJYO」(2019年)に続いて2度目になりますか。

Yosh:『ヴィンランド・サガ』のチームに「もう一回」と言っていただけたのがすごく光栄だったんで、間違いなく気合いは入ってましたね。

――曲調や歌詞のテーマはどこから?

Yosh:音に出てる通りのダークな部分と、あとは、人間の中にいる二つの世界観というか…メインキャラクターのトルフィンは、いろいろな葛藤を心に思いつつも、生きてる限りは前に進む、そしてその方法を探していくという意味では、自分と同じような立場に立っているような気がしたので。前回の「MUKANJYO」と同じように、自分を重ねて曲と歌詞を書かせていただいたんですけど、アニメサイドからも「好きなように作っていいよ」と言っていただけたので、何の苦もなく、自分たちの持っているイメージを音にして、これだったらいいんじゃないかというものを出して、そのままOKが出たので、嬉しいです。

Tatsuya:「海賊と奴隷」というテーマがずっと頭にあるって言ってたよね。アニメの内容に寄り添って。

Yosh:そうだね。ストーリーライン的に、今までは先頭で戦っていた人間が奴隷になってしまって、という二つの世界観がはっきりしていて。自分の中の葛藤があって、というものを曲にしていきました。

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