実験成功!キタニタツヤがEP『LOVE: AMPLIFIED』に仕掛けたサプライズに込められた真意を紐解く

2023.7.28
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キタニタツヤ

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6月14日、キタニタツヤが4曲入りのデジタルEP『LOVE: AMPLIFIED』をサプライズリリースした。内容は、「シンガー・キタニタツヤ」と「プロデューサー・キタニタツヤ」の二面性にスポットを当て、全曲にコラボアーティストを配した、極めて野心的なものだ。さらに、直前まで情報を遮断し、リリース4日前のYouTube配信をきっかけに始まった「キタニタツヤを増幅せよ」プロジェクトに基づき、ファンを巻き込みながら徐々に情報解禁してゆくユニークな手法も大きな話題になった。突然のサプライズリリースゆえ、まだ耳にしていない人もいるかもしれない。大型タイアップのシングルやアルバムの形態ではないので、熱心なファン以外には届いていないかもしれない。しかしこの『LOVE: AMPLIFIED』は、今後のキタニタツヤを語る上で極めて重要な作品だと感じている。その画期的な内容について、今あらためてキタニタツヤ自身に解説してもらおう。

――EP『LOVE: AMPLIFIED』はそもそもどんなきっかけで作ろうと思ったんですか。

これは僕発信ではなくて、レーベルのスタッフが最初に言ってくれたんですけど。もともと書下ろしの仕事はよくしていて、というか自分のキャリアの始まりがそこなんですね。作家志望だったので。それが去年の秋とか今年の頭とか、自分が曲を作らずにシンガーとして呼ばれることが、3曲ぐらいポンポンポンと続いたんですよ。たまたま。「自分にこういう需要があるのか」と思っていたところへ、レーベルのスタッフが「キタニタツヤの作品としても、シンガーオンリーでやる曲を作って、シンガーのキタニタツヤとプロデューサーのキタニタツヤと、両方の面を同時に出したらどうか?」と。ほかにそういうことをやっている人もあんまりいないですし、「そのほうがキタニタツヤという人を知ってもらえるんじゃないか?」と。

――はい。なるほど。

自分は、自分に対する認知として「曲を作る人間」なんですね。シンガーとしてのキタニタツヤに対しては、自分はそこまで価値を感じていないんですよ。自信がないんです。もともと曲を作りたくて、ついでに歌っているみたいな優先順位が自分の中にはあるので。シンガーとしての自分には、いまいち自信を持ちきれない部分があったので、そう言われた時に「うーん」という感じだったんですけど。ただ、他の人に曲を書いてもらって、それを歌いたいというのは純粋な欲求としてあったし、それをやることによって、曲を作る人の仕事を見れるんじゃないか?という下心もあったりして(笑)。いい勉強ができるかもしれないみたいな意識もあって、「じゃあやりましょう」ということになりました。

――どうでしたか? 実際やってみて。

僕がシンガーとして歌ったのは、NEEというバンドと、indigo la Endというバンドの曲なんですけど、どっちもレコーディングを見に行かせてもらって。でも「シンガーに徹する」という鉄の掟があったので、スタジオで何か言いたくなっても言わないという、意見を求められた時だけちょびっと言うぐらいで、ほとんど何も口出しをしていないんですよね。でもそこでスタジオ見学が出来て、自分のレコーディングの仕方と全然違う部分もあったし、曲作りってみんな独学でやっている世界なので、それぞれがガラパゴスになっているんですよね。だから人のやってることを見ると、学べることがめっちゃあるから。そういう点は本当に楽しかったですね。

――プロデューサーサイドの2曲はどうですか。

これはもう、いつもやっていることと大きく変わらないというか。自分がシンガーさんに対して「こういうことをやってみたい」という欲求がけっこうあって、ただ、いつもは依頼が入ってからやるわけじゃないですか。多くの場合は、依頼をいただいてからそのシンガーさんに自分が興味を持って、「この人だったらこういうことをやりたい」ということを考えてやるわけなんですけど、今回の、Eveさんとsuis(ヨルシカ)さんというのは、シンガーとして自分がめっちゃ好きで、「この人が俺の曲を歌うんだったらこういうことをやりたい」というものをもともと考えていたりしたので。それを自分のモチベーションきっかけで始められるのが、すごく良かったですね。

――曲の話はまたのちほど、詳しくさせていただくとして。情報解禁にまつわる「キタニタツヤを増幅せよ」企画、面白かったですね。あれについては?

あれは、もともとこのEPの企画を提案してくれたスタッフとは別のスタッフから、「ドッキリ企画をやりたい」ということで、みんながあれこれ言いながら、スタッフ全員で考えていくみたいな形だったので、自分一人だと思いつかなかっただろうなと思います。僕という人間が、面白おかしいことをして、ファンをおちょくりたいみたいな気持ちがあることは、たぶんみんなわかってくれていて(笑)。だからこそ、そういう企画を出してくれると思うんですけど、案の定、みんな上手におちょくられてたので。ファンの人たちは。うまくいって良かったです。

――みんな、おちょくられてるのがわかりつつ、乗って来るみたいな。

そうですね(笑)。ただYouTube生配信の「放送事故」に関しては、けっこう焦ってる人もいたし、信じた人もけっこういたみたいです。データが紛失してしまったみたいな、それを芝居として映像を撮るんですけど、その時はスタッフも僕も、嘘とわかってるんですけどハラハラしてました。「ドッキリで良かった」みたいな(笑)。

――キタニタツヤ一流の、ファン巻き込み型の情報拡散でしたよね。

そうですね。音楽だけひたすらやってても面白くねえな、という感じはあるので。だとしても、僕は一人でどんどんアイディアを出せるタイプではないから、最近はスタッフ陣が助けてくれて、チーム感が出て来ていい感じですね。

――サプライズリリースのあと、反響はどんなふうに耳に届いてますか。

すごく喜んでもらえたなと思います。もともと自分が好きなアーティストを呼んだだけなんですけど、共通のファンがわりといることは、肌感覚として理解していたので。たとえばEveさんだったら、このへんの人たちは喜んでくれるだろうとか、NEEだったらこのへんの人たちが喜んでくれるだろうとか、ファン層の中でもここらへんとここらへんかなとか、なんとなくの予想はあって、まんまと喜んでくれたというか、サプライズの誕生日プレゼントが成功したみたいな、そういう感覚があったので。うまくいって良かったです。