愛と夢と魔法の世界へ!北翔海莉Dramatic Revue 『LOVE&DREAM』
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トップスター北翔海莉を中心とした宝塚星組公演、北翔海莉Dramatic Revue 『LOVE&DREAM』が、有楽町の東京国際フォーラムホールCで上演中だ(17日まで。のち大阪梅田芸術劇場メインホールで23日~28日まで上演)。
抜群の歌唱力を誇る北翔海莉の魅力を存分に発揮したこの作品は、第1部が「夢と魔法の王国」ディズニーの楽曲で構成されたレビュー、第2部が100年の歴史の中で「愛と夢の世界」を育み続けて来た宝塚歌劇の名曲で綴るショー・ケースという、豪華な2部構成。北翔と、妃海風を中心とした星組選抜メンバー38名が、休憩込み2時間25分を、ロマンにあふれた世界にひたらせてくれる。
冒頭、北翔扮する夢先案内人である、いわば『LOVE&DREAM』号の車掌が、妃海の旅の少女を夢の旅に誘って舞台はスタート。ここで北翔の豊かで温かい歌声によって、ディズニーミュージックが歌われた刹那、もう胸がいっぱいという気持ちにさせられた。アメリカで生まれたディズニーと日本で生まれた宝塚。夢の世界を追い求める二大巨頭とも言うべき両者が、融合したことのときめきには、やはり比類ないものがある。誰の心の中にもきっといるはずの少年・少女。その憧れがこの美しいステージには詰まっているのだ。
ことに、ディズニー世界はなんと言ってもプリンセスの牙城。「いつか王子様が」への憧れを抱いて、様々な作品のディズニープリンセスに扮し、歌い踊る妃海をはじめとした、娘役たちの活躍が宝塚世界の目に新しい。ディズニーワールドならではのアップテンポで軽快な音楽もたっぷりと織り込まれていて、意外にも衣装替えは少ないのだが、その分多彩な曲に集中できる利点があった。
そしてもちろん、プリンセスが憧れる目線の先にいるのは、北翔以下、男役たちが見事に具現するプリンスな訳で、ディズニー世界のトップスターがミッキーマウスであるように、宝塚星組世界の揺るぎなきトップスター北翔が、ポスターにもなっているガラスの靴を捧げて悠然と立つスターぶりには舌を巻いた。妃海の紫のドレスも美しく、階段に光の道が輝くラストシーンはシンデレラ城そのままだった。
そこから休憩を挟んで続く第2部は、宝塚100年の歴史の中から生まれた名曲、そして、北翔海莉Dramatic Revueの名に相応しく、北翔のこれまでの足跡、懐かしい役と歌も盛り込まれた贅沢な内容。「すみれの花咲く頃」からはじまり、「宝塚」がタイトルに含まれる楽曲の数々、宝塚の第二の故郷とも言えるパリにまつわる多彩な曲目、更に『ベルサイユのばら』『風と共に去りぬ』『うたかたの恋』『華麗なるギャツビー』『王家に捧ぐ歌』、そして『ノバ・ボサ・ノバ』と、これぞ宝塚を代表する作品の楽曲があふれる。特に、名場面の再現もある一方で、この曲に新しい振付をつけるというのは、並大抵の覚悟ではなかっただろうという新場面もあり、輝かしい100周年、新世紀の101周年を終え、本当の意味で真価の問われる新しい時代へと歩みはじめた宝塚の、年頭を飾る公演としての、構成・演出を担った齋藤吉正の気概が随所に感じられる仕上がりとなっていた。
そんな作品を支えた北翔海莉は、もうとにかく何を歌っても上手い、この一言につきる歌いっぷり。様々な名曲も、まさかもう一度この役柄に扮している北翔を見られるとは思わなかったという場面も、自在に歌い演じ魅了する。歌唱力があるという言葉では足りない、この人の歌はすでに「芸」という域に達している。それだけに、数多くの楽曲を歌っているにもかかわらず、まだあの曲もこの曲も聞きたいと思わせたほどだった。
妃海はその大活躍ぶりから、やはり第1部の印象がより強く、元気溌剌なプリンセスという色合いがこの人ならでは。観客にはもちろんだが、おそらく本人にとっても記憶に残る公演となったに違いない。
星組に組替え後初めてのショー作品への出演となった七海ひろきは、近年大いに役幅を広げているが、今回はきっちりと二枚目枠。自身も演じていた『ベルサイユのばら』のオスカルの持ち歌や『うたかたの恋』など、真っ白の役柄に扮して存在感を発揮している。もう1人、十輝いりすも本来のおおらかな個性を示したのはもちろんのこと、「薔薇のタンゴ」の芯を務めるなど、パッショネイトな魅力も披露。2人の存在は北翔にとっても、大きな力になっていることだろう。
他に、スタイル抜群の十碧れいやと麻央侑希は、やはりプリンススタイルの多いこの作品では一際目を引くし、夏樹れい、ひろ香祐、音咲いつきなど、歌える人材を多く起用した後半に向けて、作品が更に加速していったのは彼女たちの力による。妃海に次ぐ娘役としてフューチャーされていた綺咲愛里に並んでの登場が多かった天彩峰里の愛らしさも印象に残った。
総じて、宝塚とディズニーがこれだけがっぷりと四つに組んだ、その夢の相乗効果が素晴らしく、これは企画の勝利とも言える。何よりも北翔が率いる今の星組ならではのレビュー作品が、2016年年頭に生まれ出たことを喜びたい。
【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】