SHISHAMO ロックンロールサウンドと胸キュンに満ちた平均20.4歳の初武道館

2016.1.12
レポート
音楽

SHISHAMO

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SHISHAMO NO BUDOKAN!!! 2016.1.4 日本武道館

2016年1月4日(月)、SHISHAMOが初の日本武道館公演を開催した。平均20.4歳で迎えた大舞台(観客は約9000人。はソールドアウト!!!)で、3人は「これまでで最高!」と断言したくなる素晴らしいステージを展開してみせた。

オープニングは大学生くらいの女子(MVでもお馴染みの上原実矩)を主人公にしたムービー。気になる男の子に電話をかけて「あのさ、SHISHAMOって知ってる? 魚じゃなくて、バンドのほうのSHISHAMO。1月4日に武道館でライブやるんだけど、一緒にいかない?」と誘い、1月1日に「あけましておめでとうございます。明々後日って、楽しみだよね。そういえばさ、SHISHAMOのこと予習してくれた? この前送った“about SHISHAMO”見てくれた? え、見てないの?! いまからURL送るから!」という流れがあって、SHISHAMOのメンバー(イラスト)が画面に登場、これまでのキャリアを振り返る映像が始まる。2010年に高校の軽音楽部で結成、部活の顧問の先生が音源を行きつけのトンカツ屋で流していたところ、現在のSHISHAMOのマネージャーが偶然耳にして、CDを制作することに――その後の躍進ぶりはご存知の通りだが、平均年齢20.4歳で日本武道館ライブに到達したのは本当にすごいなと感じ入っていると、画面は武道館の外に移り、再びムービーへ。SHISHAMOタオルをクビに巻いた女子は武道館の入り口前でなかなか来ない男子を「5時に待ち合わせって言ったのに…」と焦りながら待っている。ようやく来た男子にタオルを渡し、そのまま会場のなかへ。扉を開けると……そう、そこはSHISHAMOのライブ会場! リアルタイムの胸キュン演出に観客席から大きな歓声が沸くなか、いつも通りホンワカしたメロディのSEとともにメンバーが(吉川美冴貴→松岡彩→宮崎朝子の順で)登場。テレキャスのジャキン!とした音が鳴り響き、オープニングナンバーの「僕に彼女ができたんだ」が放たれる。心地よい疾走感に溢れたギターリフ、しなやかなでタイトなドラム、骨太のグルーヴを生み出すベースがひとつになり、SHISHAMOにしか体現できないロックロールへ繋がっていく。そのままの勢いで「僕、実は」へ。心地よく飛び跳ねるダンスビートによって、オーディエンスは楽しそうに身体を揺らし始める。メンバー3人とも素晴らしい笑顔。緊張はまったく感じられず(緊張していないはずはないが)、初めての武道館ライブを全身で楽しんでいるのが伝わってくる。

SHISHAMO

「明けましておめでとうございます! 本日は“SHISHAMO NO BUDOKAN!!!”にお越しくださいまして、ありがとうございます! 最後までよろしくお願いします!」という宮崎の挨拶を挟み、2ndシングル「量産型彼氏」。オーセンティックなシャッフル系ロックンロールと“僕じゃだめなのはどうしてなのかな”と恋に悩む男子の気持ちを描いた歌がひとつになったこの曲は、SHISHAMOの音楽の魅力に直結している。宮崎の単音のギターソロ、吉川のドラムソロのキレも抜群だ。さらに松岡の飛び跳ねるようなベースラインを軸にした「デートプラン」、多彩なリズムアレンジが楽しいミディアムチューン「サブギターの歌」を披露し、最初のMCへ。ギターを置き、客席の近くまで行って生声で「武道館!」「イエーイ!」というコール&レスポンスする宮崎。「楽しみにしてくれてましたか? 私たちも楽しみにしていました!」という彼女も本当に嬉しそうだ。

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「今日はワンマンでしかやらない曲もいろいろ出来たらいいなと思ってます」(宮崎)という言葉に続き、SHISHAMOの奥深い歌の世界を体感できるナンバーが次々と演奏される。「いつかどこかへ行っちゃうようなそんな女がいいのでしょう」と切なくフレーズが感情豊かなボーカルとともに広がる「花」、“ヘタレな僕”と“経験豊富な女の子”の恋愛をテーマにした「こんな僕そんな君」(エンディングにおける、口笛とギターソロの絡みも何だか切ない)、別れてしまった“君”を思い、眠れない夜をひとり過ごす“私”を主人公にした「昼夜逆転」、どこか淡々としたメロディと好きな人に対する“ホントは帰りたくなかった”という思いを綴った歌詞がひとつになった「旅がえり(仮)」。宮崎自身がインタビューなどで何度も語っている通り、SHISHAMOの歌詞は彼女の体験ではなく、ほぼすべて想像上の物語がもとになっているのだが、彼女曰く、“まず歌詞を書かないと、曲が出来ない。言いたいことやメッセージ性はないけど、好きな音楽をやるために歌詞を書いている”ということだそう。しかし、ライブで彼女たちの楽曲を聴いていると、ひとつひとつのラブストーリーが生き生きと立ち上がり、きわめてリアルな情感とともに伝わってくるのだ。その瞬間にオーディエンスの胸に訪れるキュンとした気持ち――まるで少女マンガや恋愛ドラマを観ているときのような――がこのバンドの魅力であることはまちがいない。また、楽曲が持つストーリー性、そこに浮かび上がる繊細な感情を際立たせるような演奏も確実に向上していた。そう、ロックンロールバンドとしての鋭さに加え、歌を伝えるための表現力を身に付けたことが、現在のSHISHAMOの人気につながっているのだ。ステージを見つめ、じっくりと楽曲に耳を傾けるオーディエンスの姿も強く心に残った。

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切ないムードに包み込まれた武道館の雰囲気をガラリと変えたのは、ワンマンライブ恒例の「ドラム・吉川美冴貴の本当にあった○○な話」。この日は「大学2年生でバンドに集中するために大学を辞めたんですけども、その短いキャンパスライフのなかで私と正反対の位置に属していた人種、そう、リア充大学生」「彼らが主にTwitterでつぶやく言葉で、私がイラッとくる言葉を紹介したいと思います」ということで、第3位は「~なヤツだコレ」(使用例/今日の飲み会、○○と○○来るのか。楽しいヤツだコレ)、第2位は「最高かよ」(楽しく遊んでるときのコラージュ写真付き)、第1位は「○ケ月でしたとさ」(付き合った記念日/カフェやレストランでの写真付き)。「じつは在学中は、誰よりも彼らに憧れてました」というカミングアウトを、自らの非リア充ぶりをネタにする吉川のトーク、ミュージシャンとしてはちょっとどうかと思うほどおもしろい。

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この後は「こう見えてもSHISHAMOは6年目なんですよ。今日は武道館という節目ということで、高校のときに作った曲を演奏してもいいでしょうか」(宮崎)ということで初期の楽曲「お菓子作り」「宿題が終わらない」「夢のはなし」「行きたくない」を披露。ソングライティング自体は初々しさたっぷりだが、どの曲にも“エッジの効いたロックンロール×10代女子のリアルと妄想が混じった歌詞”というSHISHAMOの芯の部分がしっかり込められている。オリジナル曲を作り始めたときから宮崎は、このバンドでやりたいことを(おそらくは無意識のうちに)掴み取っていた――そのことを満員の武道館で示したことは、彼女たちにとっても大きな意味があったはずだ。

ミュージックビデオのNGシーンを紹介した後、ブラックミュージックのエッセンスをたっぷり含んだシングル曲「熱帯夜」、そして、“新しい彼氏が出来ると、その前に好きだった人のことを忘れる”という女性心理をリリカルに描いた「女ごころ」を披露、ライブはクライマックスに向かっていく。「生きるガール」「バンドマン」というアッパーチューン2連発でオーディエンスの興奮度をグッと引き上げ、松岡のリードでタオルを回す練習した後、ライブだけで演奏されている「タオル」、さらに彼女たちの存在を広く知らしめたヒットチューン「君と夏フェス」へ。演奏のテンションはさらに強まり、鋭利なロックンロールをダイレクトに響かせる3人、本気でカッコいい! どんなに高揚感を増しても”歌を伝える”という軸がまったくブレないこともSHISHAMOの強みだろう(3つの楽器の音、ボーカル、コーラスのニュアンスまでが手に取るように体感できる音響も最高だった)。本編ラストは「君との事」。“ばいばいレイラ どうか元気でね”の切なく、美しいメロディがもたらす余韻のなか、3人はステージを後にした。

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アンコールは、卒業式の学校をモチーフにした映像に導かれた「さよならの季節」からスタート。桜の紙吹雪が舞い散るなか、卒業してしまう先輩に向けられた恋愛ソングが広がっていくこの光景は、この日のライブの大きなハイライトだったと言えるだろう。さらに「次の曲はみんなで歌えたらいいなと思ってます」(宮崎)というMCによってオーディエンスが声を揃えてコーラスした「休日」を演奏した後、3月2日にニューアルバム「SHISHAMO3」がリリースされることを告知し、その収録曲「中庭の少女たち」を披露。そしてメンバーはこの日最後の言葉をオーディエンスに向けて投げかける。

「サッカー選手になりたかったんですけど、小学校6年生のときに才能がないことに気付いて。その後、デザインの職業に就きたいと思って、高校のデザイン科に入ったんですけど、そこでも自分には才能がないことに気付いて。いまも音楽家として才能があるのかわからないんですけど、こうやって1万人近くお客さんが集まってくれて、これだけの人が私たちのことを好きでいてくれるんだったら、これからもがんばろうと思いました」(吉川)

「やることはいつものワンマンと変わらないんですけど、桜を降らせたり、映像を使ったりとか、ジーンと来ることがあって。感動的なライブを出来たことが自分でも嬉しくて、みなさんもそう思っていてくれたら、とても嬉しいなと思っております」(松岡)

「バンドをやり始めたのもただの部活で、(吉川を指さしながら)オリジナルの曲を作れってウルサイから作って。こんなにたくさんの人の前でやれると思ってなかったのに、やりたいとも思ってなかったのに、こんなに嬉しい気持ちなのはとても……嬉しいです」(宮崎)

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3人の真っ直ぐなコメント、喜びと照れと感動が入り混じった表情からは、結成6年目、平均年齢20.4歳で到達した初の武道館ライブの手応えがはっきりと感じられた。

最新シングル「君とゲレンデ」と胸キュン度100%のガレージ系ロックンロール「恋する」でライブは終了。さらにオープニングの映像の続きが映し出され、武道館の外で男子が「あのさ…好きになっちゃったかも」と言い、女子が「SHISHAMOのこと? それとも…私?」と返す。観客からは再び“キャー!”という歓声。こうして初の武道館ライブはエンディングを迎えた。

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3rdフルアルバム『SHISHAMO3』のリリースに続き、4月9日(土)の川口総合文化センター リリア公演から初の全国ホールツアー『SHISHAMO ワンマンツアー2016春』も決定。トレンドに関係なく脈々と受け継がれてきた数々のロックンロールバンドのダイナミズムを引き継ぐエッジの効いたバンドサウンドと、まるでポップシーンを彩る女性シンガーたちのようであり、かつ等身大の胸をキュンとさせる恋愛ソングとを共存させたSHISHAMOの音楽は、まちがいなくさらに大きなポピュラリティを得ることになるだろう。


撮影=柴田恵理 文=森朋之

SHISHAMO

セットリスト

SHISHAMO NO BUDOKAN!!! 2015.1.4 日本武道館

1. 僕に彼女ができたんだ
2. 僕、実は
3. 量産型彼氏
4. デートプラン
5. サブギターの歌
6. 花
7. こんな僕そんな君
8. 昼夜逆転
9. 旅がえり(仮)
10. お菓子作り
11. 宿題が終わらない
12. 夢のはなし
13. 行きたくない
14. 熱帯夜
15. 女ごころ
16. 生きるガール
17. バンドマン
18. タオル
19. 君と夏フェス
20. 君との事
[ENCORE]
21. さよならの季節
22. 休日
23. 中庭の少女たち
24. 君とゲレンデ
​25. 恋する

 

リリース情報

ニューアルバム『SHISHAMO 3』
2016/03/02(水) リリース

SHISHAMO 3

XQFQ-1403 ¥2,500(税込)
シングル「熱帯夜」「君とゲレンデ」などを含む全11曲入り

 

ライブ情報

SHISHAMO ワンマンツアー2016春

前売:全席指定 ¥4,400-(税込)
一般発売:2016年3月20日(日) 10:00~
先行販売:2016年1月5日(火) 12:00~
詳細はこちら>>http://shishamo.biz/

4月9日(土)   埼玉 川口総合文化センター リリア(メインホール)(17:00開場 17:30開演)
4月16日(土) 神戸 神戸国際会館こくさいホール (17:00開場 17:30開演)
4月17日(日) 広島 JMSアステールプラザ 大ホール (17:00開場 17:30開演)
4月23日(土) 茨城 結城市民文化センター アクロス (17:00開場 17:30開演)
4月24日(日) 千葉 市原市市民会館 (17:00開場 17:30開演)
5月1日(日)   高松 サンポートホール高松 (17:00開場 17:30開演)
5月4日(水祝) 金沢 本多の森ホール (17:00開場 17:30開演)
5月5日(木祝) 名古屋 センチュリーホール (17:00開場 17:30開演)
5月7日(土)   神奈川 神奈川県民ホール 大ホール (17:00開場 17:30開演)
5月8日(日)   仙台 イズミティ21(大ホール) (17:00開場 17:30開演)
5月15日(日)  福岡 福岡サンパレス (17:00開場 17:30開演)

 

 

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