オルガニスト・濵野芳純「オルガンの魅力をさらに広めていきたい」~『オルガン名曲決定版 2025』オフィシャルインタビュー
濵野芳純
2025年5月17日(土)ザ・シンフォニーホールにて、数々のコンクールで受賞を重ねる若きオルガニストの濵野芳純による『オルガン名曲決定版 2025』が開催される。この度、濵野芳純へのオフィシャルインタビューが届いたので紹介する。
オフィシャルインタビュー
取材の場に現れたのは、すらりとした長身で爽やかな笑顔の青年。若手俳優かと見まがう風貌だが、実は、今もっとも注目を浴びている新鋭オルガニストなのだ。彼の名は、濵野芳純。2024年4月にりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館の専属オルガニストに就任し、「かすみん」の愛称で、はやくも新潟のファンの熱い視線を浴びている存在だが、その経歴はちょっと異色だ。
「ピアノをずっと習っていて、フランスのサンソン・フランソワなどの演奏が好きでよく聞いていたのですが、音楽家になろうとは夢にも思っていませんでした。関西学院大学に入学したとき、キリスト教系の大学なのでチャペルにオルガンがあり、学生のチャペル・オルガニストのレッスン生を募集していました。おもしろそうだなと思ったのが、オルガンとの運命的な出会いです」。
『オルガン名曲決定版 2025』
以来オルガンの魅力にすっかりとりつかれ、心はオルガニストへの道へと傾いたという。「周囲は二回生の頃には就職の話題で持ち切りでしたが、既にオルガンを本格的に学びたいと思っていたので、留学の準備を始めていました。そして単位を取り終えた四回生の後期に、レッスンを受けていた坂倉朗子先生と同じ、アムステルダム音楽院に留学しました。留学生活では、オルガンや音楽史などももちろん、一般教養の科目なども勉強し、非常に興味深いものでした。その後、フランスのトゥールーズ音楽院でも学びました。トゥールーズは教会に素晴らしいオルガンがあることでとても有名なんです。音楽院で教会の鍵を借りることができ、教会のオルガンをいつでも弾けたことは、貴重な体験でした」。
ハイレヴェルで知られる第9回武蔵野国際オルガンコンクール3位受賞をはじめ、メシアンコンクール第4位ほか、数々の受賞歴を誇る濵野は、幅広いレパートリーをもち、フランス音楽なども得意だと語っている。ザ・シンフォニーホールでの大阪デビューリサイタルで選んだのは、ブクステフーデからバッハ、フランク、そしてフランスのオルガン作曲家として名高いヴィドール作品などである。「バッハの《トッカータとフーガ》は誰もが知る名曲ですが、とても華やかで、演奏効果も高い曲ですね。皆さまもよくご存じの《主よ人の望みの喜びよ》では、朗らかで美しい旋律にご注目ください。フランクの《前奏曲、フーガと変奏曲》は派手な感じではありませんが、厳かな響きが際立ち、ぼく自身もとても好きな曲のひとつです。フランスの作品からは、ヴィドールの《トッカータ》を取り上げます。フランスのオルガン作品は色彩豊かなところが大きな魅力ですので、そのあたりも聴いていただけたら嬉しいです」。
京都出身の濵野にとって、スイス・クーン社製のオルガンの名器を備えたザ・シンフォニーホールは、憧れの存在でもあるという。「ザ・シンフォニーホールでのピアノの演奏会に行ったとき、バランスのよい残響を持つホールの素晴らしい音響に魅了されました。ザ・シンフォニーホールは大阪の中心の一等地にある歴史あるホールですので、ここでオルガンリサイタルを開催できるのは本当に楽しみです。この楽器の魅力をさらに広めていきたいと考えていますので、ぜひご期待ください」。
取材・文=伊藤制子
公演情報
会場:ザ・シンフォニーホール
濵野芳純(オルガン)
ブクステフーデ:前奏曲 ニ長調BuxWV139
バッハ: オルガン協奏曲 第2番 イ短調 BWV593
バッハ(デュリュフレ編): 主よ人の望みの喜びよ BWV147
バッハ(デュプレ編) : カンタータ 第29番 「神よ、われ汝に感謝す」より シンフォニア
バッハ: トッカータとフーガ ニ短調BWV565
フランク: 前奏曲、フーガと変奏曲
ヴィドール: トッカータ