北海道に初上陸! 最高にエキサイティングな編成で贈る『俺クラ・スペシャル』、その見所とは?~三浦一馬(バンドネオン)×ニュウニュウ(ピアノ)インタビュー

2025.4.14
インタビュー
クラシック

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2024年に始動した『俺クラ』が、2025年6月に北海道に初上陸。人気と実力を兼ね備えた俊英の“俺”たちが、世界トップレヴェルの響きを誇る札幌コンサートホールKitaraに集結する。

今回の『俺クラ・スペシャル』には、ヴァイオリンの石田泰尚とバンドネオンの三浦一馬、ピアノのニュウニュウ、そしてゲストとしてトランペットの児玉隼人が出演する。このインタビューのために、三浦とニュウニュウが『俺クラ』への思いを語ってくれた。

インタビュー日が初対面だったがすぐに打ち解け、和やかムードで取材はすすんだ。

――おふたりは、6月の公演が初共演となるそうですね。

三浦:まさにいま、はじめましてです。ニュウニュウさんはデビュー当時から天才少年、というイメージを持っていました。

ニュウニュウ:お会いするのは初めてですが、YouTubeで三浦さんの演奏を見て、とてもかっこいいと思っていました。

三浦:ありがとうございます!

ニュウニュウ:バンドネオンの演奏を見たのは、三浦さんの動画が初めてでした。三浦さんの室内楽の動画を見ると、他のミュージシャンたちの呼吸や、他の楽器の音をとても注意深く聞き、みなさんと一緒に呼吸を合わせています。本当に素晴らしいミュージシャンだと思います。今回、初めてバンドネオンと共演するので、リハーサルも本番もとても楽しみにしています。

三浦:日本語がとてもお上手ですね。

ニュウニュウ:演奏より緊張します、リストの曲よりも(笑)。

――三浦さん、改めて昨年に始まった『俺クラ』のコンセプト、それから、これまでの公演を振り返っての感想をお聞かせください。

三浦:強烈なキャラクターの石田さんとピアノ、そして私とのトリオのような形が基本のスタイルです。石田さんとはこれまでもコラボレーションもしてきましたが、少人数の室内楽編成での共演は少なく、また、ピアソラ作品も演奏はしてきましたが、ピュアな室内楽という形での初めてのコラボレーションでした。自分にとっても新しい試みで、とても新鮮でした。お客さまもその意図をよく理解してくださったというか、少人数編成ながら、我々のパッションや音楽に対するリスペクトがお客さまにも伝わって、とても盛り上がっていただいたと思います。そして今回、その「スペシャル」バージョンで、素敵なゲストをお招きします。

――石田さんとは数多く共演されていますが、石田さんってどんな方ですか?

三浦:いつも、その質問に悩むんですよね(苦笑)。

ニュウニュウ:……(チラシを見ながら)ボス(笑)。

三浦:(笑)。目から来るものと耳から来るものとで、ギャップが大きいんですよね……(笑)。客観的に思うことは、オーケストラのコンサートマスターであり、ソリストとしての活動もある。ある意味で厳格な伝統やマナーなどを重んじる音楽界において、自分のスタイルを貫いてあの地位を確立していることだけでも、どれだけ認められているかがわかります。そして、誰よりも努力家だと思います。これほど忙しいのに、楽屋でもずっと練習していますし、さまざまなスタイルの公演をすべてものにしている人も珍しいと思いますよ。尊敬しています。

――ゲストの児玉さんについてはいかがですか?

三浦:今回が初共演です。それこそ、十数年前のニュウニュウさんのような「天才少年、現る!」と。

――ニュウニュウさんは、石田さん、児玉さんともに今回の公演が初めましてですね。どのような印象をお持ちですか。

ニュウニュウ:石田さんはとてもファッショナブルで、クールなステージに魅力があります。僕のコンサートのプログラムにも、さまざまなスタイルの音楽を入れているので、共演がとても楽しみです。

児玉さんは、昨年初めて動画で見て、瞬く間にその演奏に惹かれました。児玉さんは2009年生まれですよね。実は私の日本デビューが2009年、その時12歳でした。なので、彼の映像を見た時、当時の自分を思い出しました。そして、すぐに共演したいと思いました。クラシック音楽もポップスもジャズも演奏できる、とても多才なアーティストだと思います。

――ニュウニュウさんは、『俺クラ』に初めて参加されます。

ニュウニュウ:すごく楽しみです。ソリストだと、基本的に一人で練習し、一人でステージに上がります。……寂しいですね。(『俺クラ』のような)室内楽の機会は、とても貴重です。

室内楽は、ジュリアード音楽院に留学していた時にたくさん演奏していましたし、ヨーロッパや中国でもさまざまな室内楽のコンサートに出演してきました。先日も、香港とマカオで室内楽のコンサートをおこなったばかりです。他のミュージシャンと初めて会っても、一緒に演奏するとすぐに距離が近くになる。室内楽は素晴らしい方法だと思います。

――ピアノとバンドネオン、それからヴァイオリン、トランペットという組み合わせ、そして出演されるみなさんのお名前を見て、驚きました。今回、どんなコンサートになるでしょうか?

ニュウニュウ:一番エキサイティングなコンサートになると思います!

三浦:今回の話をよく受けてくださったなあと思います(笑)。そもそも定番の、いわゆるクラシックのコンサートでは、バンドのような編成のものはおそらく入らないですが、今回のバンドネオン、トランペット、ヴァイオリン、そしてピアノという編成は、他ではまず見られないと思います。今までなかったことを、Kitaraのステージというラボでやってみるということそのものが面白いと思います。どんなサウンドになるのか……自分もまだイメージしきれていません。ということは、まだ編曲していないことがバレてしまった(笑)。

ニュウニュウ:(編曲は)いつごろできますか?(笑)

三浦:帰ったらすぐに!(苦笑)

――今回のプログラムについても教えてください。オープニングに演奏されるのは「月の光」なのですね!

三浦:「月の光」は、『俺クラ』のテーマ曲のような存在で、オープニングに披露してきました。

――プログラム前半、ニュウニュウさんのソロで「ノクターン」や「花火メドレー」、それから石田さんとニュウニュウさんがクライスラーなどを演奏します。プーランク「城への招待」の原曲は、ピアノとヴァイオリンとクラリネットですね。

三浦:「城への招待」は初回の『俺クラ』からプログラムの核として、メインとして演奏しています。クラリネット・パートを、バンドネオンで弾きます。ピアノ・パートは、ロマン派の音楽を思わせるところもあります。

――そして後半、「ラプソディ・イン・ブルー」と「リベルタンゴ」は全員で演奏されます。

三浦:この作品は、4人の共通のレパートリーです。今回の『俺クラ』を象徴する作品として、そしてみんなが関われる作品として選びました。

ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」は、シンフォニックジャズのように言われています。コラボレーションの象徴でもありますし、アメリカという国の象徴のような感じもしますし、いろんな楽器がそこに参加できるところがこの曲の魅力です。

ニュウニュウ:三浦さんの編曲に、少し即興を入れたいと考えています。私は、ジャズやブルースがすごく好きで、アメリカにも10年ほど住み、ニューヨークのジャズ・バーにもよく行っていました。「ラプソディ・イン・ブルー」を弾くたびに、ニューヨークでの思い出が蘇ってきます。

――同じく後半には、ピアソラ4曲もラインナップされています。ニュウニュウさん、ピアソラの音楽ってお好きですか?

ニュウニュウ:好きです。ピアソラの音楽を演奏するたびに、いつも気持ちよくなります。2年前、香港でフランス人ピアニストと2台ピアノのコンサートをした時、アンコールとして「リベルタンゴ」の2台ピアノバージョンを演奏しました。お客様も喜んでくださいました。それから、ジュリアード時代にも弾いたことがあります。

――三浦さん、ぜひピアソラの魅力を教えてください。

三浦:今回ピアソラの前にガーシュウィンを演奏しますが、彼らには共通するところを強く感じます。二人とも、もともとあった音楽、例えば、ガーシュウィンならばクラシックやジャズがあって、ピアソラならばタンゴがあって……でもそこから新しいところに音楽を押し上げているように感じます。だから、クラシック音楽とかジャズなどを融合させたガーシュウィンと、もともとあったタンゴにジャズやクラシック音楽などを融合させたピアソラ。それぞれ、ニューヨークとブエノスアイレスという、いろんな人がいる移民の街に生きた二人だからこその混ざり合いを感じるのです。

ピアソラの音楽は、普遍的で、さまざまな人の心に響き、何よりも人の感情の一番深いところまで手づかみで訴えかけてくるものがあります。そして、パワーがある。ピアソラの音楽って暗くて悲しいけれども、そこに共感を覚えるのだろうと思います。

ニュウニュウ:三浦さんはほんとうに、ピアソラの音楽にとても精通していますよね。いま、三浦さんのお話してくださったことをかみしめています。素晴らしいですね。ピアソラご自身もバンドネオン奏者でした。バンドネオンは、ピアソラの音楽に最も適している楽器だと思います。

――そういえば、バンドネオンという楽器は、中国ではポピュラーなのでしょうか?

三浦:中国のバンドネオン奏者はあまり聞いたことがないですね……どうなんでしょう?

ニュウニュウ:そんなにポピュラーではありません。でも、バンドネオンと似ているアコーディンはとても人気があります。私の父も、アコーディオンを弾けると以前に言っていました。

――ニュウニュウさんのお父さまは声楽家ですよね。

ニュウニュウ:はい。歌もピアノもできますし、タンゴも踊ります。

――ニュウニュウさんもダンスをしているのですか?

ニュウニュウ:はい。でも、タンゴではなく、いまヒップホップを練習しています。

三浦:じゃ、『俺クラ』では、ニュウニュウさんは「ピアノ&ダンス」で(笑)。

ニュウニュウ:(笑)。じゃあ、石田さんと……。

一同:(笑)。

――今回は『俺クラ』の札幌での初公演となります。おふたりの札幌での思い出と合わせて、最後に読者の方へメッセージをお願いします。

ニュウニュウ:これまで2回札幌に行っていますが、そのうち1回は、ちょうど「さっぽろ雪祭り」の時期で、めっちゃ大きな像がありました。今までで、もっとも幸せな思い出のひとつです。そしてKitaraは、私の日本デビューの頃に演奏したことがあり、世界でもっとも好きな音楽ホールのひとつです。再び演奏できるチャンスがやっと訪れました! 嬉しいです。このコンサートは、今年の一番スペシャルなコンサートになると思いますので、みなさま、ぜひお越しください。

三浦:札幌には何度も行っていますが、やはり僕はKitaraのホールが大好きです。響きが素晴らしいです。あと好きなのは、冬の中島公園! ホールは公園内にありますが、本番の数時間前、まわりに誰もいなくて辺りがシーンとしているとき、ザクザクと雪の中を散歩する! 札幌ももちろんだけど、Kitaraが好きなので、とても楽しみにしています。今回のコンサートは、今のところKitaraでしか聞くことができませんので、全国からぜひ来ていただきたいと思っています。

取材・文=道下京子 撮影=池上夢貢 

公演情報

『俺クラ・スペシャル』
 
■日時:2025年6月13日(金)18:30開演
■会場:札幌コンサートホールKitara 大ホール
 
■出演
石田泰尚(ヴァイオリン)/ 三浦一馬(バンドネオン)/ ニュウニュウ(ピアノ)
ゲスト:児玉隼人(トランペット)
 
■演奏予定曲
・ショパン:夜想曲 第2番 変ホ長調 Op.9-2 [ニュウニュウ]

・ファリャ:スペイン民謡組曲 [三浦一馬、ニュウニュウ]
・プーランク:城への招待[石田泰尚、三浦一馬、ニュウニュウ]
・ガルデル:首の差で [石田泰尚、三浦一馬]
・ビジョルド:エル・チョクロ[石田泰尚、三浦一馬]
・ピアソラ:オブリヴィオン [石田泰尚、三浦一馬、ニュウニュウ]
・ピアソラ:アディオス・ノニーノ[石田泰尚、三浦一馬、ニュウニュウ]
・ピアソラ:ブエノスアイレスの夏  [石田泰尚、三浦一馬、ニュウニュウ]
・ピアソラ:タンガータ[石田泰尚、三浦一馬、ニュウニュウ]
・ピアソラ:タンティ・アンニ・プリマ(アヴェ・マリア)[児玉隼人、ニュウニュウ]
・ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー[ALL]
・ピアソラ:リベルタンゴ [ALL]
ほか、予定
※演奏曲、曲順は変更になる場合がございます。予めご了承ください。
  • イープラス
  • 三浦一馬
  • 北海道に初上陸! 最高にエキサイティングな編成で贈る『俺クラ・スペシャル』、その見所とは?~三浦一馬(バンドネオン)×ニュウニュウ(ピアノ)インタビュー