「独立したてのもがいていた自分を思い出す」手越祐也、初のソロベストアルバム『手越祐也 SINGLES BEST』リリース記念インタビュー
2021年7月7日にソロデビューして以降、精力的に音楽活動を行なってきた手越祐也。そんな彼が初のソロベストアルバム『手越祐也 SINGLES BEST』を5月14日(水)にリリースする。1stシングル「シナモン」からリリース順に並ぶ楽曲を辿りながら、独立したてのもがき苦しんでいた自分を思い出すと語る手越祐也。当時作詞した「wake me up」に込められた思いとはーー?
『手越祐也 SINGLES BEST』
ーー5月14日(水)に初のソロベストアルバム『手越祐也 SINGLES BEST』をリリースされる手越さん。2021年7月7日にソロアーティストとしてデビューして以降、精力的に音楽活動を続けてきたなか、今このタイミングでソロベストアルバムをリリースすることの意図とは?
まず、今までたくさんの曲をリリースすることができたので、アルバムとしてまとめられるほどの材料が溜まったことがひとつの理由です。そして、2024年はソロデビューしてから一番多くのことがかない、自分を取り巻く状況も変わった年でもありました。その勢いのまま2025年も地上波のバラエティー番組に出演させていただいたり、アーティストとしてもオファーをいただき歌うことができています。そこで必要に感じたのが「手越祐也の音楽をわかりやすく伝えられるような作品」でした。
ーーこれまで以上に、ソロアーティスト・手越祐也が人の目に触れる機会が多くなったということですね。
「やっぱりテレビの力って大きいんだな」と改めて実感しています。ファンの方たちはもちろん僕のことをずっと見てくださっていますし、対バンで僕を知った他アーティスト、他バンドのファンの方たちがYouTubeでMVを見てくださる機会はありましたが、最近テレビで僕を見て「あれ? 手越祐也ってひとりで歌ってるの?」とYouTubeを検索して「なんかいいじゃん、ライブに行ってみようかな」と思ってツアーに足を運んでくださる方も増えてきたと聞いて。じゃあ、今までずっと応援してくださっている大事なファンの方にも、最近興味を持ってくださって「どれから聞けばいいの?」とわからない方にも届くような作品を作ろう。それってやっぱり、今までのソロ活動の歴史とやってきた音楽をわかりやすく認識していただけるシングルズベストじゃないの? ということで、このタイミングでリリースしようと思いました。
「シナモン」
ーーソロデビュー曲の「シナモン」から13thシングル「Flash back」まで、これまでリリースしてきたシングル楽曲をリリース時期が早いものから順番に並べた「手越祐也 SINGLES BEST」。改めて手越さんが歩んできたソロアーティストとしての道のりを振り返るのに最適な内容になっていると感じましたが、ご自身は頭から聞いてどんな思いでしたか?
僕は独立後のことをしっかり準備してから事務所を辞めたわけではないので、音楽をやっていく方法すらわかっていなかったですし、楽曲のリリースの仕方だってわかっていませんでした。でも、やっぱり一番好きなのは歌うことだったんですよね。だから、最初は順風満帆からほど遠い状態でしたし……でも、だからこそそれらを乗り越えた先にある今の状況に対して、充実感や感謝、ありがたみを強く感じることができているので、最初のモヤモヤした時期というのは自分にとって必要だったんだろうなと改めて振り返ると思うんです。
そういう意味でも、この曲順の最初のほうに戻れば戻るほど辛かった時期や自信がなかった自分を思い出しますし……もがきながら、足掻きながら、必死に世に出していった楽曲たちが最初のほうに並んでいるのを見ると、当時のまだ地に足がつききっていない、ちょっとふわふわした気持ちや不安だったり、レコーディングの風景やMVを撮影した現場、周りのスタッフたちと話した内容などが鮮明に浮かび上がってきて……聞いているとフラッシュバックしますね。まさに「Flash back」っていう曲がその道のりの最後にあるんですけど(笑)。
ーーなるほど!
今わざと上手いこと言ったわけじゃないですよ?(笑)。
ーーライブのみで披露されていた「wake me up」が初音源化されて本アルバムに収録されています。この楽曲は手越さんご自身が作詞されているということですが、どんな思いで作ったのでしょうか?
「wake me up」は、このアルバムに収録されているどの曲よりも早くできあがっていた楽曲なんです。事務所を辞めて独立してすぐにJUONが曲を作ってくれて、そこに僕が詩をつけたものなんですが、今お話ししたように、まるで暗闇のど真ん中にいるようなモヤモヤしていた時期で、不安や苛立ちみたいなものもたくさん抱えていて。
それらを言葉にすると角が立ってしまうけれど、音楽に乗せることによって“表現”として聞く人の心にダイレクトに伝わるという……それこそが音楽の素晴らしさや魅力だと僕は思っているんです。そういう意味では、当時の思いを“全部乗せ”した楽曲になっています。
ーー歌詞の端々にメッセージが込められているのですね。
「世界の果てまで」という言葉が入っていたり、サビも「コンプライアンスに支配されていたらシリアスになっちゃうし、それってreliance(依存)それともgovernance(管理)なの? いいから目を覚ませよ!」って……当時の僕だから書けた詩ですし、こうやって苛立ちとかもすべてエネルギーにして表現できるのが音楽やアーティストの良さですよね。
ーー今はこういった詩は出てこない?
今じゃ絶対にこの歌詞は書けないですね。これほどの不安や苛立ちがないので(笑)。
ーー当時と今の歌い方も違うのでしょうね。
そうですね。当時は「俺のこの思いを聞いてくれー!」って100%生身に宿して歌っていましたが、今は俯瞰しながら歌っている感じかな。厳しい時代を楽しく生きられずに、不安や苛立ちを抱えている人も多いと思いますが、そういう人たちに向けて「俺もそうだったから大丈夫だよ」という思いを込めて歌っています。この詩を書いた当時よりもますます世の中は息苦しくなっていますが、「人生もっと楽しもうよ」と思うし「俺らみたいなエンタメ側の人間が笑顔を届けなくてどうするの?」とも思っているので……自分のパフォーマンスで風穴を開けたいですよね。
ーー4月23日に先行配信された「Never-ending」のほかにも、「ヒラヒラ」と「ばいぶれーしょん」が新曲として収録されています。それぞれどんな楽曲になりましたか?
「ヒラヒラ」は情景が浮かびやすい曲にしたかったので、美しい水面みたいなメロディーラインにしてほしいとリクエストしていたんです。だから自分も自然とそういったイメージで歌っていましたね。
サビの「ヒラヒラ、キラキラ」といった言葉がすごくキャッチーで耳に残るので、歌い方もかなりこだわっていて……1番のサビに関してはあえて「ヒラヒラ」のヒラをひとつずつハッキリとブレスを入れて耳に残すような歌い方をしています。そこから色んなことが「僕」と「君」にあったからこそ、2番目のサビの「今年もヒラヒラ舞い落ちて」のところは一息で流れるように「ヒラヒラ」の部分を歌ったりと、1曲の中でも物語をより鮮明に思い浮かべられるように歌い方を細かく変えました。
Aメロは低めのキーで落ち着いた感じに歌っていますが、Bメロでキーがグッと上がるので喉の開き方を変えて華やかな感じに歌ったり。レコーディングで思いついたことを色々と試しながら、この楽曲の物語を伝えるための表現を探っています。
ーー「ばいぶれーしょん」はいかがでしょう?
仮歌は女性が女性キーで歌っていたんですが、あえてキーを変えずに女性キーのままレコーディングさせてもらいました。サウンドはジャジーでオシャレなんですが、曲名を平仮名にしたり、恋愛に対しても未熟で慣れていない主人公の「そこまで自信がないけれど、でも好き」みたいなもどかしさを表現したいなと思って……キーを下げて歌うこともできますが、そうすると落ち着きが出ちゃうんですよね。
だからあえて高いキーのままで、声を張らずに年齢を下げた感じの声色にするように歌ったり、高いところをか細いファルセットで歌ったりと、「ばいぶれーしょん」の主人公の目線になって歌っています。
ーーライブで聞くのが楽しみな曲でもあります。
そうですよね。「ばいぶれーしょん」は生バンドやシンフォニックのような生演奏がとても映えると思いますし、生演奏によって曲の世界観が大きく広がっていく楽曲だと思います。曲を作るときからその先にあるステージや照明の雰囲気、演出といったことまで頭の中で想像していますし、レコーディングもステージで歌うことを見据えてやっているので、新曲の「Never-ending」、「ヒラヒラ」、「ばいぶれーしょん」はそれぞれステージで歌っている自分がしっかりと想像できる楽曲になりました。
ーーそして今回は初となる3形態リリースですね。
ファンの方たちはご存知のように、僕はワンパターンが好きじゃないのでこういった結果になりました(笑)。それに、みなさんそれぞれ目的も違うと思いますから。「曲だけ聞きたい」、「曲を聞いて、ライブ映像も見たい」、「本人コーラス入りカラオケで一緒に歌いたいし、Blu-rayの高画質でライブ映像も見たいし、全部の会場のビハインドシーンも見たい」といった、すべての人の欲求をかなえますよという意味での3形態に加えて、「せっかく3つ出せるんだったら、ジャケットのビジュアルも変えたいよね」と当然のように変えています(笑)。
ーーおっしゃるように、Blu-rayとDVD版には「OVER YOU」ツアーファイナルのライブ映像がついています。改めて振り返って、どんなツアーになりましたか?
すべての楽曲が大切な作品ではありますが、なかでも「OVER YOU」は自分にとってのターニングポイントであり、当時の自分の本当の姿とメンタリティーを重ねる歌詞であり、Jリーグ、野球、バスケットといった色んな試合会場に呼んでいただいて歌ってきた楽曲です。2022年7月にリリースした楽曲の曲名を時間が経ってからツアータイトルにすることってあんまりないと思いますが、今まで俺を支えてくれていた人をはじめ、多くの人が聞いてくれていた「OVER YOU」をツアータイトルにするというのが自分にとってひとつ大きな出来事であったのは間違いないです。
独立してからずっと一緒にやってきたマネジメントスタッフ、バンドメンバー、コンサートスタッフのみんなは俺の一番辛かった時期を知っているし、そこからまた地上波に出られるようになった僕の軌跡をライブを通して見届けてくれているので、「OVER YOU」のツアーが始まるときの士気もすごく高くて。そこに輪をかけてファンのみんなのボルテージも高かったので、全員で明るい未来に向けてすごく前向きなライブを作ることができたなと、改めて振り返っても感じています。
5月20日(火)から始まる「手越祐也 LIVE TOUR 2025 NEVER END」は「OVER YOU」を絶対に越えますが、当時の手越祐也が作るライブとしては100点満点を叩き出しているんじゃないかなと思いますね。初日の横浜(KT Zepp Yokohama)からすごい熱量をもらって、全国7か所を回ってきたツアーファイナルの完成し尽くされた姿をぜひ映像で見ていただきたいです。
ーー特典で初めて見る人に見どころを伝えるとすると?
僕の作るライブは常に「誰もが自分のスタイルで楽しめるもの」を目標としているんです。最高のエンターテインメントを届けたいと思っているので、ライブにはすべての要素を入れるようにしているんですよね。切ないラブソングやジャジーな曲、スパニッシュの曲から和の曲、ロックもあるし、ちょっとセクシーな曲もある。原曲を忠実に再現することもあれば、原曲とはちょっとアレンジを変えることもあって。もう本当に“全部乗せ”ですよね(笑)。さらに、すべての曲について照明やバンドの演奏、僕の表現の仕方を細かく変えているので、ひとつのライブで喜怒哀楽のすべてを見られるのが手越祐也のライブの魅力なのかなと思います。
一度でもライブに来てもらえれば絶対に心を掴める自信がありますし、それをプロのカメラマンが1ミリも余すことなく撮ってくれた映像が特典で見られますので、ぜひ堪能してください!
取材・文=とみたまい 写真提供=フォーライフミュージックエンタテイメント
ツアー情報
リリース情報
2025年5月14日(水)発売
①BEST ALBUM + 本人コーラス入りカラオケ(CD:2枚組)+ Blu-ray付
②BEST ALBUM(CD:1枚)+ DVD付
③BEST ALBUM(CD:1枚)
2024.12.20 Zepp Haneda