DEPAPEPEと押尾コータローによるアコースティックギターユニット・DEPAPEKO、選曲の妙味とアレジの妙技を盛り込んだ新作と東名阪ツアーを語る
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DEPAPEKO
およそ6年半の時を経て、DEPAPEKOが帰ってきた。徳岡慶也と三浦拓也のDEPAPEPEと、押尾コータローによるアコースティックギターユニットとして、2018年に1stアルバム『PICK POP!~J-Hits Acoustic Covers~』を発表、その後はライブでの共演を中心に活動してきた3人が、待望の2ndアルバム『PICK POP II ~meets the WORLD~』を4月9日にリリースした。J-POP、洋楽、クラシック、お互いの楽曲のカバーから書き下ろしの新曲まで、選曲の妙味とアレジの妙技をたっぷり盛り込んだ、ファン待望の作品だ。アルバムの選曲について、アレンジについて、そして6月から7月にかけて開催される東名阪ツアーについて、仲良し3人組の本音トークに耳を傾けよう。
――前作アルバムから数えると6年半。お待ち申し上げておりました。
押尾コータロー:1stのあと、僕はもうすぐにでもアルバムを出したかったんですけど、DEPAPEPEはDEPAPEPEのアルバムやライブがあって、三浦くんは『Geopark』というソロアルバムを作り出して、押尾コータローもソロを出してて、DEPAPEKOで2枚目のアルバムを出すのはさすがにおこがましいと思ってたんです。でも僕はDEPAPEKOが大好きで曲のアレンジはいっぱい作ってて、「徳ちゃんどうかな? 三浦くんどうかな?」とか言って、ライブ用に楽譜ができたら送っていました。で、僕のデビュー20周年アルバム『My Guitar My Life』(2022年)の中に、DEPAPEKO名義で「ボヘミアン・ラプソディ」のカバーを入れたんですけど、ここに入れたら次のアルバム作れないやんって、ちょっと心配してたんですよね。そしたら急に「アルバム出そうよ」という話になって、もうめちゃくちゃ嬉しいです。
――DEPAPEPE側も、やりたい気持ちはずっとあった。
徳岡慶也:もちろん。押尾さんとはデビューして以来毎年何かしらご一緒していて、たぶん一番会う先輩ミュージシャンなんですよ。海外も一緒に行ったり。なので、DEPAPEKOとして音源を1枚出したけど、DEPAPEKOの間が空いた感覚にはあんまりなってなかったというか。日々押尾さんが新しいDEPAPEKO用の曲をいっぱい作ってくれて、アレンジしてくれて、今回のアルバムにも入りきらなかった曲がまだまだいっぱいあるんです。音源としては2枚目ですけど、毎年毎年ライブで披露したりして、ずっとそのまま進んできたという感じですね。
押尾:常にアイディアはありましたね。
――ファーストはJ-POPというテーマがありましたけど、今回のテーマは?
押尾:3人とも洋楽も好きなので、洋楽も邦楽も入れたいということで、ディレクターとも相談して、もっとワールドワイドにしようとテーマを作って、“じゃあクラシックも入れようか”というふうに内容が決まっていった感じです。いろんなジャンルがいい感じで混ざっていて、よくできた選曲になっていると思います。
三浦拓也:入りきらなかった曲もたくさんあったりするんですよ。もっといっぱい洋楽の候補もあったんですけど、他の要素も入れたいので、泣く泣く外したりとか。
押尾:そうなんです。レパートリーやアレンジ済みでも外したものもありますし、コンセプトに合わせた新たな選曲もあります。クラシックでも「ボレロ」(ラヴェル)は元アレンジがありましたが、「運命」(ベートーヴェン)は新たな選曲で、三浦くんが素晴らしいアレンジをしてくれました。
■この3人でDEPAPEKOとして活動する楽しみとは?
――押尾さん、この3人でDEPAPEKOとしてやる楽しみは、どこにあると思っていますか。
押尾:表現できることの精度が上がるというか、表現できることが増えるのが面白い。やっぱりDEPAPEPEの良さっていうのは、徳ちゃんのメロディセンスと三浦くんのコードワークや演奏テクニック。しかも、それぞれがメロディとバッキングを入れ替わることもあって、そのバランスが素晴らしい。そこに押尾が入るとどうなるか? 最初は僕がパーカッシブなところとベースのところをやればいいかなと思っていたんですけど、もう一捻りできないかと思って、僕がメロディを弾くアレンジもありかなって、それを考えるのが楽しいんですよね。他にも今回のアルバムに入っている「RYDEEN」(YMO)は、テクノのピコピコサウンドもギターで表現しているんですが、それは1stアルバムに入ってる「チョコレイト・ディスコ」(Perfume)のアレンジがきっかけなんです。演奏そのものは、僕の伴奏と徳ちゃんのギターでも成り立つんですけど、そこに三浦くんのピコピコギターが入るだけで、よりトリッキーなサウンドになるですよね。
――あれ、すごいですよね。機械でループしてるのかと思いました。人間リズムマシーン。
押尾:大変なんですよ(笑)。でも、三浦くんは“スキルアップに繋がります”とか言って、すごく前向きなんです。
三浦:最初からできたわけではなくて。でもDEPAPEKOで筋肉がついたんでしょうね。弾けるようになってよかった(笑)。
押尾:今では弾きながらしゃべれます。
三浦:演奏技術もそうだし、音楽的にも成長できるから、毎回制作に入るとすごく楽しいです。ギターじゃない楽器をアコースティックギターに置き換えてやってたりするので、音運びがすごい難しかったりするのが、逆に面白いんです。弾き応えがあります。
――テクノポップ、J-POP、洋楽、クラシックの楽曲とか、それを全部ギターでアレンジするという挑戦をしているわけですね。
押尾:そこが面白いんです。今回やった「ボレロ」も僕一人でやってるバージョンがあって、DEPAPEPEも二人でやってるバージョンがあるんですけど、3人だとよりやれることが増えるので、かなり面白いアレンジになりました。あと、僕が考えもつかなかったアレンジをしてくれたのが「運命」で、三浦くんが“こんなアレンジはどうですか?”って、ビートの効いたアレンジにしてくれて、この発想はなかったなと。斬新なアレンジになって、僕はすごく好きです。
三浦:ありがとうございます。「運命」は3人でセッションする感じで、あの“ジャジャジャジャーン!”を一つのギターリフだと捉えてやったらかっこいいかなというのと、ただ有名なところだけを切り取るんじゃなくて、総譜の中にある旋律を繋ぎ合わせてやりたいなと思ったので。それと、ちょっとファンキーなリズムとのアンサンブルがうまいこと混ざるように、押尾さんとメールで相談しながら、作っていきましたね。
押尾:みんな忙しかったんです。DEPAPEPEも海外ツアーに行ってて、メールのやり取りも海外でした。
三浦:その時にすごい面白かったのは、DEPAPEPEは基本はレギュラーチューニングでやるから、元々のギターの音域の中で全部決めるんですけど、押尾さんは変則チューニングで音を下げたりするので、ギターなんだけどギター以上の可能性を再発見できるようなアレンジが、すごい楽しかったです。“ギターでこの音まで出るんですね”って。その上で“ビートを出すならこういうリズムのほうがいいですね”というようなやり取りをしながら作れたので、すごく面白かったです。
――難しいという意味では修行っぽいですけど、楽しい修行のような。
押尾:確かに。楽しい修行でした。
■音源通りの音をアコースティックギターだけで完成させるのがDEPAPEKOのすごさ
――徳岡さんも、今回のアルバムで新たな発見はありましたか。
徳岡:そうですね、押尾さんのアレンジは本当に発見だらけで。「RYDEEN」しかり、「Let’s Groove」(アース・ウィンド・アンド・ファイアー)のアレンジも大好きなんですけど、メロディとバッキング以外にも印象的な音をやっぱりちゃんと入れてくれるので、弾いてて“本当に音源通りの音がギターだけで鳴ってるな”と思って、それがやっぱりすごいなと思います。コードとメロディで演奏することは簡単やと思うんですけど、アレンジとしていろんな音を、ホーンやストリングスみたいな音を散りばめて、アコースティックギターだけで完成させるというのがDEPAPEKOのすごさというか、押尾さんのすごさやなと思いますね。
――それって、同じギタリストへ向けての密かなメッセージでもあったりしますか。
押尾:ぜひ弾いてほしいです。譜面も出すので、同じようにコピーして弾いてくれる人がいたら嬉しいなと思います。例えば3曲目の「我願意」(王菲/フェイ・ウォン)は、中国ですごく人気があるのでアレンジしたんですけど、伴奏のところで僕と三浦くんが、まるでハープのように流れるような音を弾いている中で、徳岡くんが歌い上げるアレンジにしようと思って、八分音符を三浦くんが弾いて、僕はその裏を弾いて、二つを重ねると“タカタカタカ”って音が繋がるんです。それができた時に“よしできた!”と思ったんですけど、“この地味な奏法を誰がわかるんだろう”と(笑)。
三浦:“我願意奏法”と呼んでます(笑)。
押尾:徳ちゃんは徳ちゃんで、メロディを間違えられないプレッシャーもあるけど、僕と三浦くんはとにかく二人で合わせないといけない。
――優雅で綺麗な曲だなぁと思って聴いていましたけど、舞台裏でそんなことになっていたとは。
押尾:僕と三浦くんは大変なんです。
三浦:リズムがずれるとハープっぽさがなくなるので。一口にバラードと言っても、普通にアルペジオのパターンだとしても、“3人いるからあえてこういうアレンジにしよう”とか、ヘッドホンで聴いていただくと定位が分かれているので面白いと思います。
――「アイドル」(YOASOBI)もすごく細かいアレンジですよね。情報量が多すぎて、どうなっているんですか、これ。
徳岡:どうなってるんですかね(笑)。ほんまに(オリジナルの音源で)聴こえてる音はほぼ入ってると思います。たぶんYOASOBIさんも、あの音数をアコギ3本で表現できるとは思ってなかったと思います。でも、ほぼできてるんですよね。
三浦:合いの手のフレーズとか、メロディと伴奏の合間に対旋律みたいなフレーズが入ってるんですけど、押尾さんのアレンジでギターっぽくなってるところが弾いててすごい楽しいんですね。原曲にあるフレーズなんですけど、ギターっぽい感じにちゃんとなってて、そこがすごく素敵です。
――そして、3人のオリジナルの新曲もありますよね。アルバムの最後に入っている「meets the WORLD」。
押尾:そうなんです。これは、3人とも作りたいと思ったんですね。作らなくても曲は揃っていて、11曲でもよかったんですけど、ここはDEPAPEKOとして1曲作りたいと思って。とても思い入れのある曲です。
――パッと聴きは爽やかで心地よく、でもこれって変拍子ですよね。よく聴くと。
押尾:そうなんです。作って、ライブでやって、“しまった”と思いました(笑)。これじゃ手拍子できないなって。
三浦:“変拍子やけどエイトビートで刻めるような曲にしよう”というアイディアを押尾さんが出して、そこから始まった曲です。
押尾:次は手拍子できる曲にしよう(笑)。
――パッと聴いて心地よく、よく聴くと超絶技巧。それがこのアルバムの、DEPAPEKOの聴きどころだと思います。
押尾:例えば「RYDEEN」を聴いていた僕と同世代の人には、ほくそ笑んでもらえる部分もあるんじゃないかと。あとは今の自分たちがいいなと思う曲で、「アイドル」もですね。僕は「アイドル」の曲から入って、『推しの子』というアニメを見てなかったんです。ちっちゃい女の子が見るアニメだと思ってたんですけど、まず曲がかっこいいなと思って、アニメも見てみようと第一話を見た時にストーリーにぶっ飛んで、さらに好きになって、これをなんとかアレンジしたいなと思いました。ほかの方がアレンジしたバージョンも色々聴いて、3人でやるならラップからしかないと思ったんですよね。
――ラップの部分も、ギターで見事にアレンジしていますよね。
押尾:最初はラップの部分でくじけそうになって、途中でやめようかなと思ったんですけど(笑)。でもどうしても「アイドル」がやりたくて、やるなら完コピを目指したいと。ぜひ今の世代の人がこのアレンジを聴いて、ほくそ笑んでくれたらいいなと思ってます。
――そうですね。対象年齢がすごく広い。
押尾:ギターが気持ちいいサウンドになってると思うので、曲を知らなくても“何かいいな”と思ってもらって、例えば「我願意」を知らなかった人がこのアルバムを聴いて、原曲を聴いてみようかなと思ってもらえたらうれしいし、どれもオリジナル曲をリスペクトしたアレンジになっているので、聴き応えがあると思うんですよね。自信作です、本当に。
――そして6月末から7月にかけて、東京、名古屋、大阪でリリースツアーが開催されます。どんなライブを見せたいですか。
徳岡:久しぶりの2ndアルバムで、もうライブで演奏している曲もあるんですけど、初披露になる曲もたくさんあるので、そのへんを楽しみにしていてほしいです。最初にライブで「ボヘミアン・ラプソディ」を弾いた時もすごい緊張したんすけど、たぶん同じ感じになると思っていて、だからこそやりがいがあるなって、このアルバムの曲を見てて思いますね。すごく楽しめると思うので、ギター3本だけの演奏をぜひ生で聴いてもらいたいです。
――どれが一番難しそうですか、三浦さん。
押尾:三浦くんは、簡単な曲はないと思う(笑)。
三浦:「アイドル」はどんどん転調するので気合が入ってます。音源ではリズムにばっちり合った演奏をしているんですけど、ライブは3人のグルーヴ感が加わるので、よりかっこよくなるんじゃないかなと思いますね。ライブになると、曲の勢いみたいなものがすごく増えるし、何よりも“やっぱりギターって楽しいな”というのを、このアルバム作っていてあらためて感じられたので、その気持ちをライブでも出したいなと思います。3人でいる時の楽しいとか嬉しいとか、そういう気持ちを来ていただいた方にも伝えることができたらいいなと思っています。ギターを弾かなくてもみんながギターの仲間みたいになるような、そんなライブになればいいな。
押尾:DEPAPEKOとして、まだライブでやっていない曲があるので、その点ではドキドキなんですけど、ライブ自体はもうやりたくてうずうずしている感じですね。ギター演奏としても自信はあるんですけど、音の重厚感というのはDEPAPEKOならではと思っていて、ギター3本で作るレンジの広いサウンドを大音量で聴いてもらえるので、ぜひ観ていただきたいなと思います。そして演奏だけじゃなくて、我々はちゃんとしゃべりますので(笑)。
――そういえば以前に、しゃべりすぎてコンサートが1時間くらい押したという話を聞いたことがあります。
三浦:初期はそうでした(笑)。最近はちゃんとしてます(笑)。
押尾:イベントはちゃんと時間を守りますよ。
徳岡:ワンマンでも守ってください(笑)。閉館時間があるので。
――自由にやってほしいです。我々がそんな3人を観たいので。
押尾:クールに演奏するだけじゃなくて、おしゃべりも含めて、自分たちがやってて楽しいなというのが伝わるコンサートにします。ぜひ観に来てほしいですね。サウンドは間違いなくかっこいいので、コンサート全体を楽しんでほしいと思います。
取材・文=宮本英夫
リリース情報
SECL3180 / ¥3,300- (税込)
https://DEPAPEKO.lnk.to/PICKPOP_II
<収録曲>
ライブ情報
[名古屋公演]
[大阪公演]
イープラス https://eplus.jp/depapeko_pp2/