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アジア太平洋地域唯一のヴィオラ単独の国際コンクール『第6回東京国際ヴィオラコンクール』入賞者が決定 

2025.6.3
ニュース
クラシック

第6回東京国際ヴィオラコンクール入賞者(撮影:藤本史昭)

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2025年5月31日(土)『第6回東京国際ヴィオラコンクール』のファイナルが行われ、今大会の入賞者3名が決定した。第1位にイーシュウ・リン(中国)、第2位に笠井大暉(日本)、第3位にエマド・ゾルファガリ(カナダ)が入賞。発表後には記者会見が行われ、審査委員の入賞者へのこれからに期待する言葉と、惜しくも入賞を逃した演奏家への賞賛の言葉が述べられた。本会見のオフィシャルレポートが到着したので紹介する。

第1位:イーシュウ・リン(中国)コメント

このような賞をいただけたことを光栄に思います。経験したことがないことでいっぱいの数か月でした。このような大きなコンクールで、そして素晴らしいホールで、とにかく緊張しないよう演奏できるよう心掛けていました。友達や家族の支えに感謝します。

第2位:笠井大暉(かさいひろき)(日本)コメント

とにかくほっとしています。2年前に僕にとってヴィオラのお母さんとも言える今井信子先生に薦められてヴィオラに転向しました。いつも支えてくれて、一番感謝するとともに、この賞を今井先生にささげたいと思います。

第3位:エマド・ゾルファガリ(カナダ)コメント

本当に特別な1週間を過ごせたことに感謝します。日本に来るのは初めてでしたが、日本の食べ物や文化など、そして、もちろん日本の素晴らしホールで弾かせていただけたことにも感謝しています。

第6回東京国際ヴィオラコンクール

審査委員長:佐々木 亮(日本)コメント

国際コンクールの審査委員は今回初めてでしたが、これほど多くの方の演奏を一度に聴くことができて、非常に刺激になりました。コンテスタントの皆さんそれぞれに良いところがあり、その中で選んでいかなくてはいけないということは想像以上に大変なことでした。痛みをともなうほどでした。ですから審査はすごく難しかったですけれども、ファイナルに残った3人の方々は、平均して非常に高い芸術性を示されていました。でも、もしかしたら別の日なら結果は違っていたかもしれないと思うほど、皆さんそれぞれにとても良いところがあって、順位を決めるのが難しかったです。今日の審査会では、審査委員全員でしっかりデスカッションをし、最終的にこの結果となりました。皆さん、すごいポテンシャルを持っていらっしゃるので、この先も頑張って欲しいと思います。

審査委員:川崎雅夫(アメリカ/日本)コメント

ヴィオラスペースには何度かこれまで出演しておりまして、東京国際ヴィオラコンクールは第2回目の時に審査をしました。やはり入賞する方々は、個性ある方々で、毎回それだけの素晴らしい演奏家が出てきますが、第2回で審査した時より、全体的なレヴェルは上がっていると感じました。今回、ファイナルに残れなかった方々の演奏のレヴェルもとても高かったです。その中で選ばれた今日の3人は、意志がはっきりした方々でした。今回、コンクールを受ける人は大変だったと思いますけど、こういう結果で素晴らしかったと思います。

審査委員:サンジン・キム(韓国)コメント

今回審査委員であったことを誇りに思っています。今井信子さんは、私にとって憧れであり、スターであり、今井先生なくしては今の自分はあり得ないと思っております。会場も素晴らしかったし、そして桐朋学園オーケストラが特に素晴らしく、皆さん頑張ってくださいました。コンテスタントのレヴェルが高く、皆さん、自分の言葉で音楽を発してくださったと思います。演奏のたびに、違う面を見せてくださり、色んな音楽的側面を知ることができました。その中で選ばれたこの3人は本当に素晴らしいと思います。

審査委員:マテ・スーチュ(ハンガリー)コメント

この審査委員ができたことに感謝いたします。ピアノでもヴァイオリンでもないコンクールにこれだけのお客様がいらしてくださった!こうしたことは、今井信子さんなしにあり得なかったと思います。この審査委員に入れていただいたことにハンガリー人として誇りに思います。この審査委員の仲間は、経験が実に豊富で、彼らと一緒に何かができるということは大きな喜びでした。コンクールというプロセスは本来そんなに複雑ものではなく、皆が正直になれるものではないでしょうか。コンクールは色んな事が非常にクリアに行われるということが良いことだと思います。そして素晴らしい才能と出会えたこと、色んなアイデアを聴けたこと、そして入賞した3人の方々には、これからもヴィオラを愛し続けていただけたらと思います。

審査委員:シンウン・ホアン(アメリカ/台湾)コメント

日々、この審査委員の方々といられたとこ幸せに思っています。毎日、ヴィオラ以上のことを話す機会がありました。本当にたぐいまれな努力を目の当たりにすることがきました。皆さん、本当に第一級の音楽家たちです。毎日聴くことが楽しみで、家族に電話して今日こんなことがあったのよと伝えこともありました。音楽を創造するということと、競争するということが同時に発生し、コンクールは一見、相反することのように思えます。しかし、その中でも、皆さん個々の声を大事にして欲しいと思いますし、それを信じて欲しいと思っています。ここにいらっしゃる方も、いらっしゃらない方も、「自分の声」を出したということに誇りを持って欲しいと思います。そして、入賞しなかった方にも「おめでとう!」ということを伝えたいと思います。今井信子さんがここまで築いていらしたということ、そして古い音楽、新しい音楽が、ここに、ヴィオラを介して世の中に伝わっていくことは非常に喜ばしいことだと思います。

審査委員:ラーシュ・アンネルシュ・トムテム(ノルウェー)コメント

日本でヴィオラのコンクールを続けてくれていることに感謝いたします。第1次から聴いていますと、今日が非常に感慨深く感じられます。参加者それぞれが演奏家としての主観と客観があり、客観をみていくことにより、主観が生まれるという、とても興味深い経験をしました。各ラウンドで演奏家たちの違う横顔がみえ、色々な種類のものを聴いて、ソロ、協奏曲、室内楽の分野で色々な面がみえてきました。音色、力強さ、そして、シューベルトやブラームスにおける内向性、バルトークでの葛藤などなどです。ヴィオラ作品は、晩年に作曲された作品がたくさんあり、ブラームスのソナタも遅過ぎた感もあります。しかし、若い人が晩年の作品を理解して弾くということはとても難しいことであると同時に、良いチャレンジでもあることと思います。20代から30代の音楽のキャリアというものは非常に難しいものです。コンクールというものは本当に大変なものですが、いい意味でも悪い意味でも、皆さんの人生を左右するものだと思います。ここにいらっしゃる皆さんは、それを乗り越えてここにいらっしゃるとういうことで、それは大きな成長の証だと思います。

審査委員:ディミトリ・ムラト(アメリカ/ベルギー)コメント

私は、スイスの小澤征爾国際室内楽アカデミーで今井信子先生にレッスンを受けた時に、東京でヴィオラの国際コンクールをやるから受けにこない?と言われました。コンクールのレパートリーを見たら膨大でどうしようと思ったことが、今とても懐かしく思い出されます。プロとなって音楽活動をするということは、本当に難しいことです。でも、良いチャレンジでもあります。あるとき振り返ってみた時、音楽家としてだけでなく人間としての限界という壁にぶつかることもあるということを、ここにいらっしゃる入賞者の皆さんにも覚えていて欲しいと思います。でも、それこそが人生の糧になり、成長の材料になっていくと思います。自分に色んなもの課し、チャレンジしていって欲しいです。

記者質問

――審査の方法で2つあると思いますが、次のどちらでしょうか?前のラウンドの評価を一緒にして、次の審査にあたる。もうひとつは、それぞれのラウンドで審査するか?

佐々木: セミ・ファイナルまでは、それぞれ独立したラウンドで審査する、つまり前のラウンドの評価は考えずに選びました。ファイナルだけは第1次からの演奏も加味して総合的に判断しました。

――審査は、投票、〇×式、点数、話し合いなのか?

佐々木: 第1次、第2次、セミ・ファイナルまではyesかnoで評価。ファイナルはそれぞれに、1位、2位、3位が誰かを決めてもらい、その結果を審査委員全員で話し合いました。

――今の音楽活動を教えてください

第3位エマド・ゾルファガリ:去年コンクールの要綱を見て、これはすごいコンクールだと思い、まだ弾いたこともない曲もありましたし、これはとても勉強になると思い、応募することにしました。今年の夏はマールボロ音楽祭に参加することになっています。この音楽祭は室内楽の祭典で、長い期間をかけて室内楽を勉強します。ソロや、コンチェルトを弾く機会もありますが、室内楽の方が自分はずっと好きです。演奏する仲間と一緒に何かを作り上げるということでとても楽しみです。

第2位笠井大暉:17年間ヴァイオリンを弾いていましたが、2年前の小澤征爾国際室内楽アカデミーで、友達のヴィオラで遊んで弾いていたら、今井信子先生がそれを聴いてヴィオラ弾いてみたらと言ってくださいました。弾いているうち、ひとめぼれじゃないですけど、すぐに好きになってそれから2か月くらいで転向しました。そして僕も、2年前にマールボロ音楽祭に行ったんですけど、マールボロのオーディションも、ヴィオラを始めて2か月くらいで受けたんです。いつも今井先生に支えていただき、去年初めて、国際コンクールで優勝させていただき、コンクールを受けることで新しいレパートリーが増え、新しい自分がどんどん磨かれていくと思い、東京国際ヴィオラコンクールも受けることにしました。

第1位 イーシュウ・リン:4歳からヴァイオリンからはじめ12歳で、素晴らしい先生方に出会い、ヴィオラに転向しました。多くを学ぶことができました。優勝することがゴールではなく、学ぶプロセスというか非常に大切であり、それがプロへの道につながっていくと思い、このコンクールを受けることにしました。今、音楽大学4年なので大学院へ進んで勉強していきます。

関連情報

第6回東京国際ヴィオラコンクール 公式サイトhttps://tivc.jp/news/