インストシーンを切り開くべく共鳴した、QOOPIE x EYRIEがスプリットツアーを目前に対談「この2バンドで、今でしか起こせないムーブメントがあるはず」
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QOOPIEとEYRIEが『SPLIT TOUR 2025「DEEP DOWN」』を東京、大阪にて開催する。ソウル、ファンク、オルタナ、R&Bなどを独自の解釈で消化する名古屋のインストバンド、QOOPIE。ピアノ連弾とドラムによる全く新しい音楽を生み出す鈴木瑛子とRina KohmotoによるEYRIE。インストシーンを切り開くべく共鳴した両者のスプリットツアーを目前に、QOOPIEのSeisuke Watanabe(Gt)、Kazuki Kato(Gt)、EYRIEの鈴木瑛子(Pf)、Rina Kohmoto(pf)に話を訊く。「DEEP DOWN」の名の通り、シーンに深く刻まれるツアーとなることだろう。
Seisuke Watanabe
ーーQOOPIEとEYRIEの出会いは?
Seisuke Watanabe(Gt):最初にご挨拶したのは2024年の『SYNCHRONICITY』というイベントのときで。O-EASTの2nd Stageで僕らとEYRIEの出番が前後だったんですよ。その時点で対バンも決まっていたんですけど、初めてお会いして。
ーーお互いの最初の印象は如何でしたか?
鈴木瑛子(Pf):EYRIEとは音楽性も違うし、凄く熱い男たちだなと。
Kazuki Kato(Gt):あははは。でもEYRIEは当時から滅茶苦茶勢いもあったし、インストバンドとして意識もしていたので、出番がEYRIEのすぐ後だったので「EYRIEには負けられない」って思ったのは覚えていますね。
Seisuke Watanabe(Gt):あの年の『SYNCHRONICITY』に僕らはオーディションで出演したんですよ。でもEYRIEはもう既にレギュラーのオファーで出演を決めていたので、僕らはよりチャレンジャーの意識を持っていたんですよね。
Rina Kohmoto(Pf):当日、私たちはQOOPIEのライブをステージの袖でずっと観ていたんですけど、満員のお客さんをQOOPIEが沸かせているのを見て「凄いバンドだな」って思いました。でも初めてご挨拶させて頂いたときは「ちょっと意識されているかもな」って思いました(笑)。
Seisuke Watanabe:バレていた(笑)。
Kazuki Kato
ーーそこからどのように交流を深めていったのですか?
Seisuke Watanabe:若手のインストバンドでシーンの前線でガンガンやっているバンドって実はそんなに多くなくて。そういう意味ではEYRIEとQOOPIEは切磋琢磨という言葉が一番合っているというか。お互い意識はしつつ、共演する中で高め合っている関係だと僕は思っています。
鈴木瑛子:QOOPIEとはこれまで数回対バンさせてもらっているんですけど、毎回ライブでのお客さんの湧かせ方に圧倒されるんですよ。凄く良い刺激をもらっています。
Kazuki Kato:仲良くなったのはEYRIEのツアーに呼んでもらったのがきっかけだったのかな。EYRIEのツアーの名古屋公演に僕らが呼んでもらったんですけど、そこで凄くヴァイブスが合ったというか、意気投合して。そこからどんどん仲が深まっていったような印象はありますね。
Rina Kohmoto:でもその日もまだ意識されていたかも(笑)。
Seisuke Watanabe:あははは。意識は今でもしているけどね(笑)。
Rina Kohmoto:初めて対バンしたとき、私たちも「ついにQOOPIEとご一緒出来る!」と思って、楽屋でも色々喋ることが出来るかなって思って話しかけたけど、あまり盛り上がらず(笑)。 Kazuki Kato:いやいや、EYRIEも結構壁を作っていましたよ(笑)。
鈴木瑛子:そんなつもりは全くなかったのに(笑)。 Seisuke Watanabe:お互い意識していたってことで(笑)。
Rina Kohmoto
ーーインストバンド同士、惹かれ合いつつ意識し合っていたのかもしれないですね。
Seisuke Watanabe:同じ畑、同じシーンで戦うものとして、やっぱり「負けたくない」という思いは常にEYRIEに対してあるし、その当時はまだあまり話す関係じゃなかった分、気持ち的には今よりも「負けらんねえ」みたいな思いは強かったと思いますね。
ーー根本的な話になるかもしれませんが、音楽を届ける上でインストだったのは?
Seisuke Watanabe:実を言うと、僕らはあまりインストという形式に強い拘りがあるわけじゃなくて。たまたまボーカルがいなかっただけというか。
Kazuki Kato:そうだね。
Seisuke Watanabe:結成時にもし歌いたい人間が近くにいたらインストじゃなかったかもしれないっていう。今、インストバンドとして評価して頂いていることはとても誇りに思っているんですけど、僕らにとって歌があるかないかっていうのは、正直どちらでも良いことなんですよ。
ーーそれはバックグラウンドにある音楽が影響しているのでしょうか。
Seisuke Watanabe:例えば僕は海外のブルースやファンクを聴いて育ったんですけど、そういう音楽って当たり前に長尺のソロがあるし、ヴォーカルも「歌」というよりは数ある楽器群のひとつでしかない感覚なんですよ。だから歌がないことが当たり前の感覚なのかもしれないです。
Kazuki Kato:インストバンドをやっている自覚は聴いてきた音楽的にもそこまでないのですが、でもやっぱり僕らはみんな楽器が大好きで、好きなものを突き詰めていったらインストバンドになっていたっていう感覚なんだと思います。
Seisuke Watanabe:勿論それは僕たちの感覚の話で、多くの日本人はやっぱりヴォーカルありきだったり、歌詞やメロディを楽しむ人が割合として多いとは思いますけどね。その上で、歌詞がなくてもどうやってオーディエンスに情熱を伝えるかは常に研究しているところではあります。
鈴木瑛子
ーーEYRIEは如何ですか?
鈴木瑛子:私たちも「インストバンドをやろう」という感覚はあまりないかもしれません。私はとにかくピアノが好きで、ピアノってハンマーをポンっと打つだけで音が鳴るシンプルな仕組みの楽器なんですけど、弾く人によって音が変わったり、本当に色んな音が出る面白い楽器なんですよ。そのピアノの面白さを届けたくて立ち上げたのがEYRIEなんです。そうやって始まったインストバンドですけど、歌詞がない分、聴いてくれる人が自由にイメージ出来たり、情景やストーリーを自分で想像したり、そういう面白さがインストにはあるなと思っています。
Rina Kohmoto:私たちはふたりとも小さな頃からクラシックピアノをやっていたことも結構大きいかもしれないです。クラシックって歌物のオペラや歌曲もありますけど、クラシックピアノを習ってきた中で、基本的にインストの音楽をずっと練習してきたので、あまりインストかインストじゃないかみたいな意識がそもそもなくて。それより、目の前の今弾いている曲をどんな情景を想像しながら弾くかとか、このフレーズはどんな気持ちで弾くかみたいなことが小さな頃からベースにあったので、それがEYRIEに繋がっているのだと思います。
ーー「音を楽しむ」と書いて音楽って言うじゃないですか。でも実は「楽しかったから音が鳴っちゃった」のが音楽なのかなと思っていて。
Seisuke Watanabe:ああ、なるほど。
ーー勿論楽しいだけじゃなく、喜怒哀楽全ての感情を音にしたら音楽になったみたいな。それはもう何よりものメッセージだなと。そこが僕の思うインストバンドの共通点だったりするのですが、QOOPIEとEYRIEはお互いをどう捉えたりしていますか?
Seisuke Watanabe:EYRIEの楽曲は、本当に息を飲むような曲が多く、まるで侍の切り合いを見ているような緊張感が常にあって、ライブを観ていても目を離せないほどかっこいいと思っています。
鈴木瑛子:私たちの曲って1曲1曲にストーリーがあって、勿論聴いて頂く人に自由に感じ取って頂ければと思っているのですが、自分たちの中ではどの曲もストーリー性が強いんですけど、QOOPIEの音楽は身体に直接訴えかけてくるというか、頭で考えるより感じるみたいな印象があって。そこがEYRIEとは違う表現だなと思っています。私たちもそういう音楽に挑戦してみたいし、刺激を受けていますね。
Seisuke Watanabe:EYRIEは僕らが持っていないものを持っていますし、逆に僕らはEYRIEが持っていないものを持っている。そこに両バンド、自信を持っている。それがお互いを高め合うひとつの心意気だと思っています。
ーーそうやって切磋琢磨する中で、インストシーンの未来をどう見ていますか?
鈴木瑛子:なぜインストバンドをやっているのかっていう話に戻るんですけど、歌詞がない中でも色んな情景が浮かぶこと、こういう音楽の楽しみ方があるってことを知ってもらうきっかけになるようなバンドになりたくて。例えば同じインストバンドでもQOOPIEとEYRIEじゃ音楽性が全然違うじゃないですか。だからこそ「こんなインストもあるよ」ということをお互いが見せ合っていったり、楽器だけで見せる世界があることを音楽シーンに広めていきたいと思っています。
Seisuke Watanabe:最終的な目標は、僕たちの音楽で僕たちの情熱が多くの人に伝わって、最高の景色を作り続けること。それが最終目標であり夢なので、その為にもまずは間口を広げたい。インストという音楽がサブカルチャー的なものではなくて、音楽の聴き方として誰でも自然に楽しめるものということを、EYRIEやQOOPIEを通して知ってくれたら嬉しいし、そうなることで歌のある音楽もより楽しめるんじゃないかなって思っています。
ーーその第1歩となるのが今回のスプリットツアーでもあるのかなと。
Kazuki Kato:はい。インストシーンって凄く素晴らしい先輩が沢山いるんですよ。でも正直、若いインストバンドがしばらく出てきていない状況がシーン全体にあって。その中で、今回のツアーもそうですし、僕らの活動で、EYRIEとQOOPIEがインストシーンを盛り上げていけたらなと思っています。数年後に「あのスプリットツアー、やばかったな」って言われるようなツアーになると思っています。
Seisuke Watanabe:この2バンドで、今でしか起こせないムーブメントがあるような気がしていて。偉大な先輩方も沢山いらっしゃいますけど、EYRIEとQOOPIEが今一緒にやるからこそ生まれるものが必ずあると思うんです。そこをインストバンドとして切り開いていきたいですし、その情熱が何処までシーンに伝わるかが今回のツアーの鍵を握っている気がしています。
鈴木瑛子:QOOPIEの考えていることに私たちも共鳴したところから今回のツアーがスタートしているので、QOOPIEの勢いに負けないように、インストシーンを盛り上がるきっかけになるようなツアーにしたいと思っています。
ーーこれまでのインストシーンを振り返ると、どのバンドも切り開いてきたバンドばかりだと思うのです。そして今回、EYRIEとQOOPIEがスプリットツアーを行うことで、また新しい風が吹く気が凄くしています。
Rina Kohmoto:ありがとうございます。
ーーただこのツアーに名古屋公演がないことだけちょっと納得出来ないですけど(笑)。
鈴木瑛子:ですよね(笑)。QOOPIEは名古屋だし、私も名古屋が地元なのに(笑)。
Seisuke Watanabe:あははは。でも名古屋は名古屋で考えてることもあるので(笑)。まずは今回のツアーを楽しんで頂けたら(笑)。宜しくお願いします!
取材・文=柴山順次(2YOU MAGAZINE) 撮影=〇〇〇〇
ツアー情報
【大阪】7月19日(土)@大阪・心斎橋CONPASS
【東京】8月10日(日)@東京・新代田FEVER
OPEN17:30/START18:00
ADV4000円、学割2500円