CHIANZ 「楽しくやっていたら、ひょんなことからこんなところで演奏できちゃった、みたいな。そういうバンドでありたい」DIY精神に根差した音楽活動の所以
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CHIANZ
2024年3月に1stシングル「GIG」をリリースして、活動を始めたガールズバンド、CHIANZ(チアンズ)。
その顔ぶれは、日中をルーツに持つシンガーソングライター、Foi(Gt, Vo)、国内外のアーティストへの楽曲提供も行うシンガーソングライター、eill(Key, Vo)、YABI×YABIのボーカリスト兼ギタリストとして活動しているChie(Gt)、そしてYABI×YABIのボーカリスト兼ベーシストに加え、サポートミュージシャンや舞台女優としても活動中のTsukikawa Rei(Ba)の4人。それぞれのバックグラウンドから、音楽という一点のみで結びついているプロフェッショナルなミュージシャン集団なのかと思いきや……。
彼女たちがどんな関係なのかは以下のインタビューで彼女たち自ら語っているので、そちらに譲るが、話を聞きながら、だからこそ純粋にDIY精神に根差した音楽活動に取り組めるのかもと思って、ちょっと目から鱗が落ちたような気も。
そんなCHIANZが7月2日に2nd EP『MESSY』をリリース。
1st EP『OGYA』から1年ぶりとなる同作には、改めてCHIANZらしさを追求したシティポップナンバー「MESSY」、シューゲイザー的なアプローチにバンドとしてのこだわりが窺えるCHIANZ初のバラード「TONIGHT」、昨年9月に先行配信したガレージロックナンバー「GIRL」、そして1stシングルである「GIG」のリミックスバージョンの計4曲を収録。ハプニングを乗り越え、完成させた4曲を聴いて、ぜひCHIANZの成長を感じ取っていただきたい。そして8月10日(日)に東京・表参道のWALL&WALLで開催する『CHIANZ 2nd EP release party“MESSY”』で、その音を生で体感してほしい。
――まず初めにCHIANZがどんなバンドなのか聞かせてほしいんですけど、シンガーソングライター、バンド、サポートミュージシャンと、それぞれに活動していた4人が新たにCHIANZを組んだのは、どんなきっかけがあったんでしょうか?
Foi:元々、私たち、10代の頃に同じオーディションを受けていて、それがきっかけで仲良くなったんですけど、知り合ってから8年目とか9年目ぐらいに最初はeillちゃんと「バンドやりたくない?」「バンドやろうよ」みたいに盛り上がって。その時はChieちゃんもReiちゃんもHi Cheers!ってバンドをやっていたから誘わなかったですけど、Hi Cheers!が解散することになったので、ギターとベースだからちょうどいいじゃんって誘ったんです。
――オーディションで出会ったとき、4人はどんなところで意気投合したんですか?
eill:謎の組み合わせなんですよ。レッスン生がたくさんいたんですけど、最初は全然仲良くなくて。
Foi:逆に、なんで仲良くなったんだっけ?(笑)
eill:急にクリスマスを毎年一緒に過ごすようになって。
Chie:そうだね、確かに。元々、eillちゃんとFoiちゃんは同期で、Reiちゃんと私はまた全然別だったんですけど、2人でYABI×YABIというユニットを始めていて。でも、一緒にセッションしたことがあったよね? もしかしたら、そがれきっかけだったのかな。
eill:気づいたら、マイメン(=親しい友人、信頼できる仲間の意)4人って言ってたんですけど、その時すでにLINEのグループ名が“治安ズ”だったんですよ。
Foi:そうそう。元々、治安ズってLINEのグループがあって、バンド名を付けるってなったとき、“何にする?”“治安ズでよくない?”ってなりました。
――1st EP『OGYA』に収録されている「NOT MY FAULT」のMVでみなさんが着ているつなぎの胸ポケットにも“治安ズ”と漢字で書かれていましたね。
eill:元々、そっちが先で。
――なぜ、治安が良い、悪いの治安になったんですか?
Foi:20歳の時だったかな。4人で遊んでいるときに、プリクラ撮ろうよってなって撮ったら、ライティングのせいなのか、ちょっとイカつめの、治安が悪い感じの写真が撮れたんですよ。
eill:Reiちゃん、ヤンキー座りしてなかった?(笑)
Tsukikawa Rei:ちょっとやめてよ(苦笑)。
Foi:しかもね、アロハシャツ着てたよね(笑)。
Rei:私だけじゃない。みんな、変な服を着て、不思議なかっこうしてたよ(笑)。
eill:とにかく治安が悪く見えたんですよ。
Foi:それで、その日からLINEのグループ名が治安ズになったっていう。
Foi
――そこから、それぞれに活動していたみなさんがバンドを組もうと思ったのが興味深くてですね。バンドって自分1人の気持ちでできるものじゃないから、めんどくさいこともあると思うんですけど。それにもかかわらずバンドを組んだのは、この4人だったら何ができると考えたんでしょうか?
eill:逆に私はソロだから孤独を感じることもけっこうあって、バンドだったら同じ気持ちでステージに立ってもらえるのかな、バンドってそういう熱いものなのかなって、バンドっていうものにずっと憧れはありました。
Foi:私も同じです。バンドに対してずっと憧れがあって、そもそも音楽を始める時はバンドをやりたいと思っていたんです。グループ活動ってけっこう好きなんですよ。だって、自分だけじゃ作れないものが作れるじゃないですか。
――2024年3月の結成から1年4ヵ月、CHIANZの活動をしてきていかがですか? バンドって思ったよりめんどくさいと思ったことはないですか?
Foi:そんなふうに思うことはないですけど、私たち、CHIANZってプロジェクトを全部、自分たちでやっているんですよ。たとえば、グッズの発注とか納品とか、そういうのも自分たちでやっていて。
eill:経理もね。
Foi:そうそうそう。そういうところは大変なんですけど、みんなしっかりしてるから、当初、心配してたような、ちょっとケンカになるんじゃないのかなみたいなのはなかったね。
eill:ないですね。やっぱり4人仲良しなので。この4人で音楽を作っているっていうのが大きいのかな。ちゃんと音楽を続けている人たちとバンドを組みたかったんです。だから、今のところケンカはないです。Reiちゃんはどうですか?
Rei:1年間やってみてですよね? eillちゃんとか、Foiちゃんとか、ソロで活動していた2人がなんでバンドをやりたいのか最初はちょっとわからなかったんですけど、今の話を聞いて、そういうことだったんだって思ったり。制作とかライブとか一緒にしてきた中で、こういうことを思ってたから、あの時そんなふうに言ってたんだっていうのが繋がりました。
――バンドをずっとやって来たChieさんは、バンドってどんなところが良いと思いますか?
Chie:誰かと一緒にアイデアをいろいろ出し合いながら、1個のものにするっていう共同作業が好きなんですよ。だから、バンドをやっていたいっていうのは昔からありました。
――影響を受けた音楽とか、好きな音楽とか、4人それぞれに違うそうですが、それがCHIANZの音楽にどう結びついているかはいったん置いておいて、参考までに、どんな音楽が好きなのかおひとりずつ教えてもらってもいいですか?
Foi:私は10代の頃ずっと中国にいたので、C-POPからの影響はけっこう自分の中にある気がしています。C-POPもいろいろなジャンルがあるんですけど、その中でもR&Bテイストのポップスがけっこうルーツで。だから、日本に帰って来てからも、J-R&Bとか、それ以外だと、日本の歌謡曲とかも高校生の時は聴きあさっていました。
eill
――日本の歌謡曲っていうのは?
Foi:サザンとか、歌謡曲じゃないかもしれないけど、aikoさんとか、宇多田ヒカルさんとか、そのラインナップを日本に帰ってきてからけっこう聴いていたので、それが今作る音楽にはルーツとしてあるんじゃないかなと思います。
eill:私はK-POPがすごく好きで。少女時代とか、KARAとかが流行ったのが小学生の頃で、K-POPで踊ったりしてました。そこからヒップホップとか、そっちの深いところも聴きながら、昔から母がモータウンがすごく好きなので、スティービー・ワンダーとか、マイケル・ジャクソンとか、モータウン・レーベルのアーティストもけっこう聴きました。なので、R&BソウルとK-POP、その2つが自分のルーツかなとは思ってます。
――ChieさんとReiさんは?
Chie:私はちっちゃい時は、音楽を音楽としてちゃんと聴いてなかったというか、ダンスをやっていたので、ヒップホップとかEDMとか、ダンスの音楽ばかり聴いていたんです。その後、ギターを中学生の時に習い始めたんですけど、ギターの先生がけっこう古い洋楽が好きで、80年代ぐらいの洋楽を割と広く浅くギターでやることが多くて。そこからは大きな影響をもらっていると思いつつ、好きな音楽がけっこう変わるタイプで。なんなら何でも好きなタイプなので、それこそボカロもすごく聴いてたし、ジャズギターも好きだし。でも、何が一番好きかって言ったら、やっぱりレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)みたいなロックなんです。
Rei:私も元々、70年代のイギリスのロックバンドがドンピシャで好きで。たとえば、イエスとか、レッド・ツェッペリンとか、XTCとかが好きで。そこからいろいろ飛んで飛んで、R&Bとか、ファンクとか、アメリカの音楽も聴くようになって。でも、結局のところ、日本の音楽よりは、洋楽にずっと親しんできた人生だったかなと思っています。
――なるほど。そんなふうにバックグラウンドの全然違う4人が集まってバンドを始めたわけですが、4人共通してと言うか、CHIANZとして、理想としているバンド像みたいなものってあるんでしょうか?
Foi:音像としてはTHE 1975っていうのがありつつ、クールなガールズバンドがやりたいねみたいなことは、最初からずっと言っていて。アジアにとどまらず、世界にもみんなで行けたらいいよね、みたいなのはありますね。
――さて、7月2日に1年ぶりとなる2nd EP『MESSY』をリリースしたわけですが、どんな作品になったのか手応えを聞かせてもらってもいいですか?
Chie:リリースは久しぶりなので、反響がシンプルに楽しみというところもありつつ、これまでは割と、あっちに行ったり、こっちに行ったりみたいな感じでやってきて、前回のEP『OGYA』もそれぞれの曲のカラーが違ったんですよ。でも、今回のタイトル曲はそれに対して、ある意味、原点回帰という気持ちも混ざっているので、それがどんなふうに聴かれるのか楽しみでもあります。
eill:確かに『OGYA』は思い返すと、ジャンルが全然違う4曲が集まっていたので、もはや音楽シーンにジャンルなんてなくなってしまった令和っぽいEPだなっていうふうには思ってたんですけど、やっぱりCHIANZとして名刺代わりになるサウンドってある程度はあったほうがいいかなと思ったんですよ。それでCHIANZの中で一番聴かれている「GIG」で出会ってくださった方が、“これがCHIANZだよ”って言ってくれるような曲を目指して、「MESSY」を作って。その中でオートチューンを使って、CHIANZらしさを大事にしつつ、プラスαで新しいサウンドも入れてみました。なので、Chieちゃんが言うとおり聴いてくれる人の反応が楽しみですね。
――FoiさんとReiさんも手応えを聞かせてください。
Foi:2人が言ったことと重なっちゃうんですけど、『OGYA』はほんとに“こういう曲を作りたいよね”って作ってきて、曲のジャンルみたいなものはちょっとばらついてますけど、CHIANZとしてのオリジナリティは4曲ともちゃんとあるような気がしていて。それを経ての今回のEPってことで、「MESSY」は2人が言ったように原点回帰というか、これがCHIANZでしょって言える曲なんです。『OGYA』の制作や、その後のライブを経験しながら、4人でやってきて、eillちゃんと私の声の重なり方とか、みんなのプレイスタイルの生かし方とか、段々わかってきたというか、掴めてきた上での新曲なので、これが今の私たちのベストだと思っているんです。これがどう受け取ってもらえるのか、すごく楽しみです。
eill:データが全部なくなったことも話したほうがいいんじゃない?
――えっ?
Foi:余談なんですけど、楽曲を制作するとき、私のパソコンでプログラミングを組むんですけど、そのパソコンをリュックごと盗まれちゃって。
――えぇっ、じゃあ、新曲のデータが全部なくなっちゃったんだ。
Foi:そうなんですよ。しかも、レコーディングが1週間後だったので、みんなに土下座して、本当にごめんなさいって謝って、“一緒に復元してください”ってChieちゃん家に行って、eillちゃんとReiちゃんはオンラインでやり取りしながら、一日かけて作り直したんです。ほんと、間に合ってよかったですよ。
eill:その後、知恵熱出して、レコーディング4日間あったうちの2日間しか来られなかったんですよ(笑)。
Chie:でも、Foiちゃんは何も悪くないよ。なくしちゃったとかじゃないんだもん。普通に事件に巻き込まれただけなんだから。
eill:ほんと治安が悪い(笑)。
Foi:でも、溜まった厄が全部落ちたと思うから、ここからたぶんうちらうなぎのぼりだよ(笑顔)。
――データを作り直す中で、曲やアレンジが磨き上げられたなんてこともあるんじゃないですか?
Foi:確かに。変えたところもありました。だから、悪いことだけではなかったかもしれないです。
Chie:そんなふうにいろいろな思いが込められたEPなんです。
Foi:だから、ほんとに、みんな聴いてください!
Rei:ライブをやりながら曲を貯めて、パッケージを出すバンドもいると思うんですけど、私たちは逆にパッケージを出してからライブを始めたので、やっぱり今回のEPのほうがライブ感があるというか。データが飛んじゃうっていうハプニングはありましたけど、レコーディングそのものはスムーズで、みんなのセッション感っていうのも出た気がしていて。2曲目の「TONIGHT」は、ライブでやっていた曲なので、そういうところも聴きどころなんじゃないかな。1st EPの、手探りしていたCHIANZとはまた違った、今のCHIANZ、等身大のCHIANZをお届けできるんじゃないかと思っています。
Chie
――ところで、CHIANZは曲作りはどんなふうにやっているんですか?
eill:「MESSY」は久しぶりに、みんなでセッションしてできた曲です。
Chie:CHIANZはドラムがいないので、ドラムだけ先に作って。
Foi:コード進行を決めて。
Chie:そこから相談しながら、各々にフレーズを足していくんです。最初に作った「GIG」は、それこそ“せーの”で作っていきました。
――曲が形になってきたら、歌メロを乗せ、歌詞を乗せていく?
eill:歌メロはけっこうオケと同時進行でやってますね。歌詞は2人でね。
Foi:別日に集まって、曲のテーマとか、物語の設定とか先に決めて、ああだこうだ言いながら、2人で言葉をはめていきます。パートによっては、持ち帰って、日を改めて、それぞれに書いてきたものを照らし合わせるみたいなこともします。
――そういう時、全然違う感じのものにはならないんですか?
Foi:やっぱり、10年ぐらいお互いの曲を聴いているからならないですね。
eill:逆に、Foiちゃんがこういうメロディーを歌ってくれたらいいなとか、こういう歌詞を歌ってくれたらいいな、みたいなものが出てきちゃうんですよ。トップラインを作る時に私は歌わないけど、Foiちゃんに歌ってほしいからこのメロディーを作ったみたいなのはけっこう多くて。それは彼女の歌のファンであるからこそ作れるものなんだと思います。
――FoiさんとeillさんのツインボーカルもCHIANZの魅力だと思うのですが、担当パートはどうやって決めているんですか?
eill:えー、わからないです。どうやって決めてるんだろ?(笑) 曲を作っている時から、“ここはうちじゃない? ここはFoiちゃんじゃない?”みたいな感じで自然と決まるんですよ。
Foi:前の曲はこうだったから、今回はこうしようみたいなのはあるんですけど、ほんとに自然に決まるよね?
eill:うん。しかもお互いに異論はない。
――おもしろい。さて、ここからは1曲ずつ聴きどころを聞かせてください。1曲目の「MESSY」はさっきもおっしゃっていたとおり、CHIANZにとってど真ん中の曲であると同時にオートチューンを使ってプラスαで新しいサウンドも入れたそうですが、左右で音色を変えたギターのカッティングを重ねたところはなかなか技ありだなと思いました。
Chie:「MESSY」ってタイトルどおりわちゃわちゃ感というか、乱雑としている感じがありつつ、まとまっているといいなっていう理想がまずあって。ギターもけっこう箇所箇所でいろいろなことをやってみようということで、それこそそのカッティングもフレーズとコードのカッティングを入れてみたりとか、音色もエフェクターを掛けて、ちょっと変にしてみたりとか、そういう工夫をいろいろ散りばめてみました。
――その他、「MESSY」のこんなところを聴いてほしいというのがありましたらぜひ。
Rei:今回、ドラムは私の尊敬する上原俊亮さんに叩いてもらったんですけど、上原さんのドラムもめちゃめちゃ聴いてほしいです。私たちと同世代なんですけど、ドラマーとして本当にやばい人なんですよ。
eill:ベードラは“せーの”で録ったもんね。
Rei:はい。なので、上原さんのすごいドラムとベースのセッション感を楽しんでいただけたらうれしいです。
Tsukikawa Rei
――スラップを交えながら、16ビートを刻むReiさんのベースもグルービーで、存在感がすごくありますね。
Rei:ありがとうございます。
eill:Reiちゃん、フルートもやったんですよ。
Rei:忘れてた。そうだそうだ。ちょっとサンプリング的な感じで、1ヵ所だけ吹かせてもらったんですけど、どこで鳴っているか、みなさん探してみてください。
――そして、すでにライブでもやっているという2曲目の「TONIGHT」は、CHIANZ初のバラードだそうで。
Foi:最初はけっこう同じテンション感のスケール広めのライブ映えしそうなやつを作ろうよって作り始めたんですけど、作ってるうちにサビを4つ打ちにしちゃおうってなって。だからバラードと言いつつ、サビで急に疾走感が出るところも含め、一癖あるところがおもしろいと思ってます。
Chie:実際、音の広がりをめっちゃ意識して作ったよね、この曲。ドラムの音色もエンジニアさんと一緒に“もっと広い感じに”“もっともっと広い感じに”って言いながら手を加えていって。
Foi:録り音とかけ離れたものにしちゃいましたね。
Chie:そんなふうにエフェクティブにしつつ、サビの両脇のギターは逆に生で録るみたいな、そういう音色の工夫もして、広がりのある音像を意識しました。
Foi:広ければ広いほどいいみたいなね。だから、けっこう効果音的な立ち位置ぐらいのことまでギターでやっちゃったところもありましたね。
――ギターソロ以外はフレーズを弾くというよりは、世界観を作るようなギターワークになってますよね。
Chie:そうですね。もうサビなんかは壁を作るみたいにジャカハカ弾きましたね。
Foi:最初と最後のギターの単音のリフはレコーディングでも弾いてもらったんですけど、自宅でデモ作りしている時にChieちゃんが入れてくれたやつの無機質な感じが逆によかったので、そっちを使ったんですよ。
――そんなところにも音作りのこだわりが表れている、と。
Chie:音色はかなり試行錯誤しました。
Foi:こねくり回しました。
Chie:ライブでやっていたからこそ、音源ではどうしようみたいところはあった気がします。
eill:次に「TONIGHT」をライブでやるの楽しみ。
――レコーディングを経て、ライブバージョンも変わりそうですね。そんなふうに空間的な広がりを求めた音像の中で、ベースはグルービーに鳴っているという印象でした。
Rei:「TONIGHT」も上原さんと“せーの”で録ったんですけど、上原さんには最近、ライブでもサポートで入っていただいているので、そのグルーブ感はもしかしたらちょっとライブ寄りにはなっているかもしれないです。レコーディングを思い返すと、音源を録るぞっていうよりは、むしろライブのテンション感でやっていたような気がします。
Foi:この曲、eillちゃんがコーラスにボコーダーを足してくれたのがめっちゃよかった。
eill:私、バラードで普通にコーラスを積むのがあんまり好きじゃなくて。なぜかというと、メインの歌メロのニュアンスがともすれば消えちゃうからなんですけど、この曲のサビのメロディーは私にとって、すごく高いキーなんです。なので、Foiちゃんがメインを歌って、私はオク下でハモっているんですけど、プラスでボコーダーでちょっと広がりを作って。歌詞はちゃんと聴き取れるけど、横には広がっていてっていう歌の音像的にも深いところまでちゃんとあるものになるように考えました。
Foi:だから私が高いところにいても、eillちゃんの声がしっかり来る。ミックスは佐々木優さんという方にやってもらったんですけど、ミックスでもすごくいいバランスが取れたと思います。
――なるほど。今のお話を念頭に聴き直してみます。
Foi:ミックスもけっこう試行錯誤してたんですよ。『OGYA』は特に。いろいろな方とやりながら、バンドとしての混ざりを探っていたんですけど、ソロの曲を一緒にやっていただいたミキサーの方だと、ちょっと滑らかすぎるとか、ちょっときれいすぎるとかあって、ジャンル的にもちょっと違ったりするから、今回はバンドを普段メインでやっている方とやってみたいね、みたいな話もして、佐々木さんにお願いしたんですけど。何かまた新しい感じで混ざったと思いました。
――3曲、佐々木さんにお願いしたんですか?
Foi:いえ、「MESSY」と「TONIGHT」の2曲をお願いしました。
eill:「GIRL」はいつもレコーディングをしてくれている白石経さんにミックスまでやってもらいました。
――その「GIRL」は、『OGYA』を作る時にはすでに曲としてはあったとか。
eill:初ライブからやってましたね。
――アップテンポの8ビートで、タイトなバンドサウンドを打ち出した曲になりました。
eill:もう単純にライブで盛り上がる、ロックバンドらしい曲を作ろうって作ったんですけど、やってみたら意外とハマるもんだなって思いました。みんな、器用なんですよ。この人たちは。だから、どんな曲をやってもきれいにハマるって、すごく感じました。
――ルート弾きに徹していると思わせ、意外にフレーズが動いているベースがかっこいいです。
Rei:歌との兼ね合いを考えつつ、サビはメロディーを立たせるために、ほぼルート弾きしかしてないんですけど、AメロとかBメロとか、逆に遊べるところはカウンターメロディー的なアプローチをしたいと思って、けっこう動いちゃおうって弾きました。
――アウトロはほぼベースソロと言ってもいい。
Rei:フェイドアウトしていくのにちょっと往生際が悪いですよね(笑)。
――そんなことはないと思いますよ。「GIRL」はギターのリフもかっこいい。特にBメロが。
Chie:そこは私が出しゃばって、先に入れちゃったギターに合わせて、Foiちゃんとeillちゃんがいい感じに歌を当てはめてくれましたね。
――ギターが先だったんですか?
Chie:そういうのがCHIANZは割と多いかもしれないです。私、コードを考えずにフレーズを入れちゃうタイプなんですよ。
――Foiさんとeillさんはギターのフレーズが先に決まっているとやりづらくないですか?
Foi:全然やりづらくないですよ。
eill:CHIANZの音楽はけっこうChieちゃんのリフが原点になってることが多いです。
Foi:いつも何パターンも作ってきてくれるんですよ。
Chie:でも私、優柔不断だから、何パターンも作った中からいつも決められないんですよ。2人は決めるのがうまいというか、ディレクション力があるんでしょうね。だから、そこはいつもスムーズにできてるんじゃないかなって思います。
――そうか。そういうところに4人ならではの化学反応があるんでしょうね。そして、最後にもう1曲、CHIANZの代表曲である「GIG」のリミックスバージョンを収録したのはなぜでしょうか? もう1曲、新曲を入れることもできたんじゃないかと思うんですけど。
Foi:バンドと違うサウンド感のものが1曲あってもおもしろいよね、クラブでかかってるようなやつが1曲あってもいいんじゃないかなっていうのと、リミックスで海外の人と一緒に何かできたらおもしろいんじゃいのかなっていう話から始まったよね?
eill:「GIG」がアジア圏でもけっこう聴かれているってこともあるんですけど、バンドでこういうハウス的というか、ダンス的なプロダクションでリミックスを出すって、日本ではなかなかないじゃないですか。だから、そういうところにもアプローチしていったらおもしろいと思って、Foiちゃんと一緒に曲を作ったことがあるLIU KOIさんという台湾のプロデューサーさんにお願いしたんですけど。ここから台湾を含め、アジアに広がっていけたらなっていう気持ちもあって入れました。
――どんなふうにリミックスするかはお任せだったんですか?
Foi:いえ、クラブで掛けたいというのも目標だったので、リファレンスをみんなで出して、いろいろ細かく打ち合わせさせてもらって、詰めていきました。LIUさん、元々ダンサーなんですよ。だから、こういうイケイケなダンスミュージックが得意なんでしょうね。リミックスしたやつを何度か送ってもらったんですけど、その度、もっと行こう、もっと行こうって、これになりました。
――ライブでこのリミックスバージョンを流して、4人がダンスしたらおもしろいんじゃないですか?(笑)
Foi:Chieちゃん、ヤバいですよ。めっちゃダンスうまいんですよ。本当に。
――いろいろな可能性があるバンドなんだって、今日、お話を聞かせていただいて思いました。8月10日(日)に東京・表参道のWALL&WALLで開催するリリースパーティー『MESSY』についても聞かせてください。どんなライブにしたいと考えていますか?
Rei:ライブ自体もちょっと久しぶりで、しかも、新しい作品をひっ提げてのライブなので、もうガツンとかませるだけかまして……と思いつつ、ダンスもしたいですよね(笑)。パーティーっぽくしようっていうコンセプトで進めているので、みんなで素敵なパーティーにできたらいいですね。
Foi:セトリもけっこう新しめな感じで組んでるし、グッズも『MESSY』に合わせたアイデアで作っているし、全部が『MESSY』に通じるように仕組んだので、そこも踏まえて楽しんでもらえたらいいなって思います。
――ライブ会場で『MESSY』のCDを販売するんですよね?
eill:そうです。CDのジャケットのデザインはステッカーを使ったものになっているんですけど、当日は無料のステッカーもたくさん用意するので、CDを買ってもらって、その人ならではのオンリーワン『MESSY』みたいな感じでデコれるブースも作るので、ぜひ、『MESSY』というコンセプトに合わせて、いろいろ楽しんでもらえたらと思います。あとは、7coさんというとても素敵なアーティストさんにも出演してもらうんですけど、新しい世代のミュージシャンの方と私たちもご一緒させていただけるのがとても楽しみです。
――ありがとうございました。最後にCHIANZの目標とか夢とかを聞かせてください。
Foi:海外にライブしに行きたいとか、海外でも通じる曲を作りたいとか掲げてバンドを始めたんですけど、ちょっとずつ実現してきているので、今年から来年にかけて、そこをもっと広げていけたらいいなって思ってます。
――海外だったらどこに行きたいですか?
Foi:上海に行きたいです。故郷の北京にもみんなで行けたらいいな。
eill:延泊して上海ディズニーとかも行きたいね。
Chie:海外に行ったらやっぱり遊ばないと。
eill:タイにも行きたいです。
Foi:うわっ、いいね。象に乗りたくない?
eill:そこ!?
Foi:めっちゃおもしろくない? 4人が象に乗ってたら。
――海外ももちろんですけど、国内の大きな会場でやりたいという気持ちは?
eill:もちろんやりたいです! 楽しくやっていたら、ひょんなことからこんなところで演奏できちゃった、みたいな。そういうバンドでありたいなって思います。みんな仲良しで、バンドで海外に行けるなんて超幸せなことだし、そういうふうにずっと続けていきたいなって思います。
――バンドである以前に、さっきeillさんが言っていたマイメン4人というところがCHIANZのモチベーションであり、魅力になっているわけですね。
eill:そうだと思います。去年の12月に渋谷WWWでワンマンライブをやったんですけど、それよりもスケールアップした会場でできるようにいろいろ準備もしているので、これからも期待していただけると嬉しいです! 成長できるよう頑張ります!
取材・文=山口智男
リリース情報
ライブ情報
2025年8月10日(日)WALL&WALL
開場 17:00/開演 18:00
Guest Act:7co