帝国喫茶、ワンマンツアー2025『ストーリー・オブ・マイ・ライト』ファイナルで見せつけた限界突破のステージとバンドの覚悟
ワンマンツアー2025「ストーリー・オブ・マイ・ライト」2025.6.28(SAT)・29(SUN)@大阪・心斎橋 Music Club JANUS
3月に3rdアルバム『帝国喫茶Ⅲ ストーリー・オブ・マイ・ライト』を発表して、そのレコ発ツアーとして5月から全国8都市を巡ってきた帝国喫茶。大阪・心斎橋 Music Club JANUSで、6月28日(土)・29日(日)にツアーファイナルを迎えた。
ジャニスでの初日・28日(土)は、「みんなで“いっせーのーでー!”で始めましょう!」と杉浦祐輝(Gt.Vo)が切り出して、まさしく<いっせーのーでー!>という掛け声から始まるアルバムのオープニングナンバー「光を迎えに行こう」でスタート。初っ端から勢いづけ「貴方日和」「and i」と続き、4曲目「燦然と輝くとは」で駆け抜けていく。杉浦はアルバムを引っ提げてのツアーだと話しかけて、「最高の日を作りましょう!」と「ひとりぼっちの幸せの空へ」「アップオールナイト」「東京駅」とアルバム収録曲を立て続けに披露する。
アクリ(Gt)が「ジャニスただいま~!」と告げると観客からも「おかえり~!」と温かい声が返ってくる。大阪でのライブは4月13日の自主企画「喫茶店の日2025」以来なので、帝国喫茶も大阪の観客を求めていたし、大阪の観客も帝国喫茶を待ちわびていたのが、よくわかるシーンであった。
「今日一旦出し切って、明日は限界突破!」
杉浦も自らを鼓舞しながら、いかに帝国喫茶にとってジャニスが大事な場所かを話していく。バンドを始める前から観客として来ていた場所であり、バンドを組んでからもすぐ出続けている場所だと明かす。思い入れの強いホームだからこそ発揮できる力があるのではと感じていたら、その後に歌われた杉浦が作詞作曲した「会いたいんだよ」 で強い気持ち強い愛が見事に感じ取れた。確実に想いが歌にのっている。
帝国喫茶を初めて観る人のためにもと、杉浦は自分と疋田耀(Ba)、杉崎拓斗(Dr)という3人が作詞作曲するバンドだと説明する。そして、疋田と杉崎もアルバムについて語っていく。疋田は、今作で自分が書いたことがないような曲をかけたこと、そして、その曲たちでどう観客にコミュニケーションが取れるかが新鮮だと話す。ちなみに今も新たに曲を書いているとも付け加えてくれた。杉崎は、今作は光をテーマにした曲が集まったこと、自分にとって光という存在は日常で気付いたら寄り添ってくれているものだと話す。リスナーにとっても自分たちの曲が、そういう存在になれたらと願った。そんな気持ちがこもった曲をと、杉崎が作詞作曲した「なんとなく」へ。
杉崎が作詞作曲した「つもる話し」は、アップビートな曲調が聴いていて気持ち良いし、歌を彩るようなカラフルなライトも眩かった。疋田作詞作曲の「sha na naなjourney」では、杉浦が<待ち合わせ場所はいつもの“ジャニス”にしよう」と粋に歌い変えるも、その後の歌詞が飛んでしまうというミニアクシデントもあったが、それすらも楽しんで乗り越えて、観客を存分に楽しませているのは頼もしかった。観客からも自然にハンドクラップが起きる。
「こっから後半戦!」と宣言してからの「じゃなくて」では、杉浦のギターカッティングが際立っていたし、曲終わり、メンバー全員が照明の光に照らされたシルエットも神々しかった。そこからサーフロックが炸裂する「夏の夢は」ときて、冬のナンバーなのに夏のナンバーのような爆裂感がある「マフラー」へ。後半戦とは思えないくらいに、観客も飛び跳ねて喜びを露わにしている。「カレンダー」では疋田のベースソロも誠に格好良くて、バンド自体のギアがともかく入りまくっているのが伝わってくる。杉浦の俊敏な動き、鋭い目つきに野性味を感じて、何かが始まると胸がざわついていたら、「ガソリンタンク」が鳴らされる。<何もかもぶち壊すような>という歌詞ではないが、何もかもぶち壊す威力に満ち溢れていた。
「次で最後の曲です」と「春風往来」へ。杉浦はギターを弾きまくったかと思えば、ギターをぶら下げたまんまマイク1本で、観客フロアギリギリの柵まで近づき歌いかける。疋田とアクリも杉崎のドラムの前まで集まり、嬉しそうに弾いている。<中指と愛を>と歌われるように、パンキッシュながらピースフルという帝国喫茶の真骨頂とも言うべきメッセージが聴く側へと届きまくる。観客も一緒に「春風往来!」と叫び大団円。メンバーも完全にやりきった感じである。
アンコールでは、今回のツアーのグッズTシャツへと着替えてきたアクリがツアーグッズを紹介。そして、杉浦は「一緒に歌いたい曲があります」と、帝国喫茶が結成された2020年夏に初めて作られた記念すべき「夜に叶えて」へ。観客全員が歌い出しを一緒に熱唱する姿には、帝国喫茶が多くの人に愛されてきたという成長の姿を観れたようで感慨深かった。
「君が月」では、杉浦が<愛していたいよ>と歌った瞬間に、その場を全て掌握したみたいな不思議な魔法のような魅力を感じた。ミラーボールが黄金の月の如く輝いている。曲が終わり、杉浦は帝国喫茶を始めて5年くらいであり、元々は大学の文化祭に出ようとして結成したバンドだと話す。良い時も悪い時も音を鳴らし続けてきたとも話して、こう言い切った。
「ひとりでも欠けたら帝国喫茶の音楽にならない。帝国喫茶の未来だけは信じてやりたい」
風格すら感じたボーカル・フロントマンとしての決意表明。アンコールのラストナンバーはアルバムラストナンバーでもある「ビフォア・サンライズ」。疋田、杉浦、杉崎の作詞作曲が並ぶアンコール3曲並びは帝国喫茶そのもの。夜、月、サンライズという流れも物語性を感じて素敵であった。
全てを出し切った全身全霊のライブを経て、2日目は杉浦の言葉通りに限界突破! 冒頭から気迫を感じるステージに。セットリストは初日同様、アルバム『帝国喫茶Ⅲストーリー・オブ・マイ・ライト』の楽曲を中心に、バンドを代表する新旧の楽曲を織り交ぜた本編・全21曲。この最終日のみ「星のマーチ」「ラブソング」がアンコールで披露された。
フロアに拳が突き上がるアグレッシブなステージでぶち上げたかと思えば、じっと聴き耽りながら体を揺らしたくなるようなラブソングを歌ったりと、ブロックごとに雰囲気はがらりと変わる。メンバー3人が作詞作曲できる強みを存分に活かした、楽曲の振り幅を堪能できるセットで、バンドのソングライティングの幅広さを物語っていた。
特に、杉浦、疋田、杉崎のひとりひとりがアルバムに込めた想いを語り、「なんとなく」「つもる話し」と新曲でこれでもかと盛り上げた流れは、今の帝国喫茶の勢いを表していたように思う。「sha na naな journey」で杉浦がハンドマイクで疋田に絡みにいって肩を組んだり、杉崎やアクリと向き合って会話するように歌うシーンには胸が熱くなった。MCで疋田が突然これだけは言いたいと切り出して、「みんな大好き!」と叫びながら全力ダブルピースでありったけの想いを表現し、その後メンバーが茶化して真似る流れも含め、ホームであるジャニスでのファイナルを誰よりも楽しんでいる様が微笑ましい。
今日まで過ごしてきた日常の風景や湧き上がった感情のひとつひとつが、ページをめくるように次々と想起するようなライブで、まさにアルバムタイトル通り様々な面に光を当ててくれるようなファイナル公演に。最後のMCで杉浦は、いろいろ大変なこともあったと振り返りながら「今みんなの前で歌えてることが一番幸せ」だと語った。
去年に引き続き、ホームであるジャニスで3ヶ月連続でのマンスリーライブ 『LOVE & PEACE & MUSIC IN OUR NEW WORLD』の開催も決定。この日の物語の幸せな続きを、再びジャニスで待ち合わせて、照らし合わせたい。
取材・文=鈴木淳史(6.28)、大西健斗(6.29) 撮影=浜村晴奈
セットリスト
4 燦然と輝くとは
7 東京駅
9 ハル
11 さよならより遠いどこかへ
12 グッバイ・コメット!
13 なんとなく
15 sha na naな journey
16 じゃなくて
17 夏の夢は
19 カレンダー
20 ガソリンタンク
EN1 星のマーチ
EN2 ラブソング
EN3 夜に叶えて
イベント情報
会場:心斎橋Music Club JANUS
OPEN/START 18:30/19:00
10月29日(水) 杉崎拓斗 presents
11月26日(水) 疋田耀 presents
12月18日(木) 杉浦祐輝 presents
オフィシャル先着先行スタート
受付締切:7月21日(月・祝) 23:59